くんちゃんは4歳の男の子。今日、妹が家にやって来て、お兄ちゃんになりました。しかし、お母さんもお父さんも、赤ちゃんばっかりかまっています。それに拗ねたくんちゃんは、赤ちゃんを泣かしてお母さんに怒られますが、、、
監督は細田守。
3年スパンで映画を作る、キッチリカッチリ職人肌。
監督作に
『時をかける少女』(2006)
『サマーウォーズ』(2009)
『おおかみこどもの雨と雪』(2012)
『バケモノの子』(2015)がある。
声の出演は
くんちゃん:上白石萌歌
ミライちゃん:黒木華
おとうさん:星野源
おかあさん:麻生久美子
ゆっこ:吉原光男
宮崎美子、役所広司、福山雅治、他。
細田守監督。
『時をかける少女』で世間にその名を知らしめし、
以降、三年スパンでクオリティの高い作品をリリースし続けています。
そして、今回リリースされるのは、
本作、『未来のミライ』。
いやぁ~、ぶっちゃけ、
題名と予告ではどんな映画なのか全く分かりませんね。
どんな映画と言われたら、
答えてあげるが世の情け、
世界の破壊を防ぐ為、
世界の平和を守る為、ってね。
本作は、
4歳児くんちゃんの時空を超える大冒険です。
…とは言え、それは4歳児レベルの大冒険、
観ているこっちには、
実に身に覚えのある、
烈海王なら、
「お前の居る場所は我々が幼児時代に通った道だ!」とでも言いそうなレベルです。
つまり、未来のみらいちゃん(くんちゃんの妹)と、
まるで『時をかける少女』みたいに時間を超えまくって、
その結果世界の破滅の危機を食い止める!!
みたいなノリの作品では無いので、その点は御了承下さい。
未来のみらいちゃんが活躍するのは、
くんちゃんの冒険の1エピソードに過ぎないのです。
そしてこの冒険というのが、
あくまで、実際の子供レベルの大冒険。
このシンパシーが懐かしくて、ノスタルジー。
あるある、分かるわぁ、、、
様々なくんちゃんの幼児エピソードにおいて、そういう印象を受けます。
それは、くんちゃんの話だけでは無く、
そのお父さんとお母さんの日常のやり取りの様子にも、
シンパシーというか、思い当たる部分が沢山あります。
更に、それに留まらず、
祖父母との会話、
そして、曾祖父のエピソードなどなど、家族の話がてんこ盛り。
くんちゃんは、何事かあってぐずる度に、
家族のクロニクルを目撃して行きます。
そう、本作は、
くんちゃんが体験する、家族の物語。
なので、本作はむしろ、
子供向けというより、
かつて子供だった、
くんちゃん位の子供を持つ親が観たら一番面白い、
そんな印象を受けます。
子供と一緒に親が観に行けるファミリー・ムービー。
しかし、親の方が面白く思うだろう作品。
『未来のミライ』はそういう映画なのです。
…そして、今、劇場で観れば、
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の特報を観る事が出来るぞ!!
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『未来のミライ』のポイント
題名ほどは活躍しないみらいちゃん
くんちゃんが目撃し、体験する、家族のクロニクル
むしろ、親が観た方が一番面白い
以下、内容に触れた感想となっております
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リア充の映画
細田守監督の映画作品は、
アニメではありますが、
いわゆる、
従来のアニメファンと言うより、
むしろ、
オタク臭をなるべく消す方向で作られた作品という印象を受けます。
声の出演に、声優を極力使わず、
描く題材は「家族の物語」。
陰キャで声優大好きで、家族仲が悪い、
結婚なんか出来っこないタイプのオタク系の人間には、
とんと縁の無い世界を忌憚なく描いています。
そこが、
ガチのオタクの人に、細田守監督が嫌われる要因なんですよね。
我々が届かない世界を、
しかしそれは「一般人には、さも当然の世界」だという事を、
普段意識して無視している厳然だる事実を、
逃避先であるフィクションの世界に持ち込んで来る。
観る人によっては、
フィクションという世界が侵犯される印象を受ける、
ある意味、残酷な映画なのです。
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題名に偽り?アリ!?
さて、一部の観客には『残酷な天使のテーゼ』たる『未来のミライ』。
あ、どうでもいいですけれど、
本作の上映前に、
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の特報が入ったんですよ。
正直、これの興奮が一番デカかった!!
生きる!
2020年まで、生きてやる!!
閑話休題。
え~
本作は、ちょっと題名に偽りがあります。
『未来のミライ』じゃ、
くんちゃんが、未来のみらいちゃんと絡んで何かをする話みたいです。
しかし、実際は、
みらいちゃんと絡むのはエピソードの断片においてであり、
本筋はあくまでも、くんちゃん目線にて、
家族の過去、未来を見通し、体験するクロニクル(年代記)的作品です。
私なら、
『くんちゃんと家族のクロニクル』
みたいな題名にしますね。
まぁ、女子中学生がメインビジュアルに居た方が、
オタクを釣りやすいというのは、厳然たる事実だとは思いますが。
何となく、
『時をかける少女』を彷彿とさせる感じもしますしね。
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親から、子供を観察した目線
とは言え、
作品の内容は至極真面目。
本当に、
真っ当に、
家族のあるある物語になっています。
独占していた親の愛を妹に取られて嫉妬するくんちゃん。
ママ友と話をして、
褒められてデレデレに鼻を伸ばす、お父さん。
その様子が気に食わなくて、
嫌味を言ってマウントを取ってくるお母さん。
こういう、家族間で繰り広げられる、
ワガママとか、
外聞だけのええ格好しいとか、
正論に隠して嫌味を言うとか、
楽しくて、明るいだけじゃない、
家族ならではの鞘当てをキチンと描いているからこそ、
本作はシンパシーを感じる作品となっているのですね。
その本作のメインテーマは、
細田守監督が一貫して描き続けた家族の話、
言うなれば「家族のクロニクル」です。
幼児のくんちゃんは、事ある毎に愚図ります。
しかし、その度毎に、
異世界がドワーッ!!
犬のゆっこには、
嫉妬心を指摘され
未来のみらいちゃんと一緒に
お雛様を直すという共同作業をし、
怒ってばかりのお母さんとは、
子供時代に意外な共通点を見つけ、
自転車に乗れずに拗ねていると、
ひいおじいちゃんにレッスンを受け、
そして、最後には、
自ら、「自分はみらいちゃんのお兄ちゃんだ」というアイデンティティを獲得します。
くんちゃんは、
家族の「索引(インデックス)」からエピソードをつまんで、
現状の自分を見直す、
「人の振り見て我が振り直せ」的な鑑となるエピソードを体験する事によって、
学習し、成長しているのですね。
そのくんちゃんの体験が即ち、
家族のクロニクル(年代記)そのものになっているのですね。
つまり、
一個人の子供の成長、一生というものは、
それ以前、
そしてその後に連綿と続いて行く、
家族の年代記そのものと同等の重さを持つものであり、
過去から受け継いだものを、
未来へと繋げて行く、
それ故、家族というものは、全体で大きな「木」の様な一つのものでもある、
それを、
くんちゃんを一葉の例として、描いているのです。
くんちゃんが思うこと、体験する事は、
過去に家族が体験した事と似たものであるし、
そのくんちゃんが居るからこそ、
その後に家族の系統が続いて行くのですね。
さて、本作はそういう話ではありますが、
一つ、印象的なセリフがあります。
それは、お父さんの、
「子供って凄いね、いつの間にか出来る様になる」
というものです。
これこそが、
本作を作る切っ掛けになったものだと思われます。
確かに、
親目線で4歳児を眺めた時、
ついさっきまで愚図っていたのに、
次の瞬間には急に聞き分けが良くなったり、
ちょっと目を離した瞬間に、
イキナリの急成長を見せる事も多々あります。
これが子供の可能性、成長力か!!
と驚愕すること頻りですが、
もしかして、
自分が知らないだけで、
子供は大冒険を繰り広げているんじゃないのか?
急成長を促す、レッスンなり体験なりしているんじゃないのか?
ドラえもんに誘われる、
劇場版ののび太君みたいに、、、
そう思う事もありませんか?
つまり本作は元々、
そういう親目線の子供に対する驚愕に、
もっともらしい理由を付けてみた作品、
そうとも言えると思います。
そういう目線の元に作られているからこそ、
本作は4歳児よりはむしろ、
その親の方が面白く、シンパシーを感じる作品であるのだと思います。
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声の出演者の補足
主役のくんちゃんの声を演じたは、上白石萌歌。
萌歌ちゃんが4歳児を演じているというだけで萌えます(死語)。
東宝シンデレラオーディションに、最年少でグランプリを獲得した彼女、
最近では『羊と鋼の森』(2018)にて、姉妹共演を果たしています。
その姉の、上白石萌音は、『君の名は。』の三葉役を演じていました。
姉妹で話題のアニメ映画の主役を演じているのですね。
さて、萌歌ちゃん、パンフレットで面白い事を言っていました。
ちょっと抜粋してみます。
「このちっちゃい赤ちゃんが中学生の姿になって現われるって、どんな感じなんだろうなと。例えば、自分の姉が30歳くらいになって帰ってきたら、そこでどんな会話をするんだろう?どんな感覚だろう?」
(パンフレットのp.7、上白石萌歌のインタビューより抜粋)
この発想が面白いですね。
映画通りなら、
「姉に30歳の自分が会いに行く」ハズなのに、
あくまでも配役目線、くんちゃん目線だから、
「自分の所に、30歳の姉が来る」という発想になっているんですね。
こういう柔軟さが良い。
そして、想像出来たとしても、
映画の設定とは微妙に違う辺りも面白い所です。
今後もこの調子で頑張ってもらいたいものです。
子供にねだられて、
或いは、子供と一緒に映画を観に行く時に、
選択肢となる「アニメ映画」。
しかし、むしろ、
そういった子供よりも、
親が観た方が面白さが分かる作品というものが多々あります。
本作『未来のミライ』は正にそういう作品。
親だって、アニメ映画を観て、良いじゃない。
こういう面白い作品もあるんだからさ。
「子供が観たいっていうからさ~しょうが無くさ~観に行ったんだよ」
そういう言い訳で観に行ける、
ある意味、ターゲットをキチンと絞ったマーケティングをしている、
『未来のミライ』はそういう作品であり、
それは、面白さの保証があるからこそ、可能なのです。
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