映画『きみと、波にのれたら』感想  現代に蘇る昭和の洗礼!?令和よ、これがトレンディドラマだ!!

大学進学を機に、幼少の頃過ごした港町に越して来た向水ひな子(むかいみず)。引っ越し早々、不審火が発生し、火事に巻き込まれる。そんな彼女を救出したのが、消防士の雛罌粟港(ひなげし・みなと)。それが切っ掛けで、二人は付き合う事となる、、、

 

 

 

監督は、湯浅政明
アニメのTVシリーズとして、
『四畳半神話大系』(2010)
『ピンポン THE ANIMETION』(2014)
ネットアニメのシリーズとして、
『DEVILMAN crybaby』(2018)
映画監督として、
『マインド・ゲーム』(2004)
『夜は短し歩けよ乙女』(2017)
夜明け告げるルーのうた』(2017)を監督している。

 

声の出演は、
向水ひな子:川栄李奈
雛罌粟港:片寄涼太
川村山葵:伊藤健太郎
雛罌粟洋子:松本穂香 他

 

 

サーファー。
男女二人が恋愛する、ラブストーリー。

 

…え?
今、90年代初頭!?

私をスキーに連れてって、的なアレですか?

そう、
本作『きみと、波にのれたら』は、

懐かしのトレンディドラマ風味。

 

流行廃りは、
一周回って、新しくなるというもの。

当時を知らない人からみると、
新鮮に見えるかもしれません。

 

イマイチ、ピンと来ない人に、
更に分かり易く端的に言うと、

本作は、

王道展開のラブストーリーです。

 

こうなると、胸キュン(死語)
こうなると、切ない、
そんな展開が目白押しです。

波瀾万丈と言えますが、
ある意味、安心して観る事が出来ます。

 

…こう言うと、

アニメ好きな、陰キャの我々の様な人間には無縁の作品の様に思ってしまいます。

まぁ、実際、
ストーリー的には、そうなんですがね!

とは言え、本作、

アニメーション的な、
動きのケレンミが気持ち良いです。

 

陽キャは、
声優の配役込みで、ラブストーリーを楽しむのでしょうが、

陰キャのアニメ好きとしては、
動きの面白さに注目すれば、本作を楽しむ事が出来ます。

そういう意味では、

本作の題材を「サーフィン」にしたのは、
神レヴェルのチョイスです。

 

サーフィンと言えば、リア充の陽キャ。

それでいて、
アニメーションとしては、
人物、波、
それぞれの表情を描く事になるので、
動きの表現が多彩

正に、
陰も陽も兼ね備えた、
『きみと、波にのれたら』は、
そんな作品と言えるのです。

 


 

  • 『きみと、波にのれたら』のポイント

切ない、王道展開のラブストーリー

人物、そして、波の動きの表現の面白さ

喪失の哀しみを乗り越えて、人生は続く

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


スポンサーリンク

 

  • 波に乗って、生きて行け

『きみと、波にのれたら』。

そう、
この題名を見ると、
思い出すのは、ラプラスですかねぇ。

かつて、
ポケモン金・銀では、
金曜日のみに出没するレアポケモンとして出現したラプラス。

アニメの影響もあって、
「なみのり」と言えば、「ラプラス」という印象があります。

 

…え?
ポケモン関係無いやん!!

 

閑話休題。

 

「きみと、波にのれたら」という題名を見ると、

「ああ、一緒にサーフィンをするラブストーリーなんだな」
と、思いがちです。

確かに、そういう一面もあるのですが、
本作を観終わると、

この題名には、
言外の意味も込められていたのだと解ります。

 

『きみと、波にのれたら』は、
アニメーション的な動きのケレンミが面白い作品です。

その動きが、
如何無く発揮されるのは、
サーフィンのシーン。

そのサーフィンのシーンでは、
人物の動きもさる事ながら、

波の表情、
波の動きや、光の屈折・反射などが、
活き活きと描かれています。

 

湯浅監督の前作は、
『夜明け告げるルーのうた』。

「ルーのうた」は、
内容的には『崖の上のポニョ』の丸パクリでしたが、
動きが素晴らしい作品でした。

その「ルーのうた」でも、
海と、歌と、水の表現が多彩でした。

いわば、
本作では、再び、「ルーのうた」で挑戦した、
「水」の表現を活かしたのだと言えます。

 

その上で本作では、
波の表現という、
「動き」の面白さの追求をすると共に、

そこに、テーマ性をも込めているのです。

 

雛罌粟港は、何でも出来る、器用なカレシ。

それでいて、
消防士になったのは、
幼少の頃、海で溺れた時、助けられた経験があり、
自分も、人助けに関わる仕事がしたいという理由からでした。

料理も出来て、
運動神経の良くて、
立派な仕事をしている。

志のある生き方をしている港を、
ひな子は、凄いと言います。

 

ひな子から見ると完璧(パーフェクト)超人に見える港ですが、
彼は実は、
努力の人だと、後に判明します。

そんな港が、
生前、最後に願ったのは、
「ひな子が、自分の波に乗ってくれる事」でした。

 

ひな子が波に乗る?
むしろ、港より上手く乗ってるんだけど?

一瞬、そう思いますが、
「波に乗る」というのは、比喩表現。

つまり、端的に言うと、
「自分の進むべき道」を見つけて欲しいと、
願っていたのです。

 

これは勿論、
教示的な意味では無く、
あくまでも、「願い事」のレベルですが、

港の死後にこの「願い」を見ると、
それは、
自分の死を乗り越えて、前に進んで欲しい
という意味にも受け取れます。

 

港は、ひな子を自分のヒーローだと言っています。

それは、
幼少の頃のひな子こそ、
溺れた自分を助けた少女だったからです。

海で溺れ、
暗い水の底に沈んで行く港。

それを助け、
水面に引き上げるのがひな子。

そして、

火事で火に巻かれたひな子を助けたのは、
消防士という「水」を使う港。

本作では、
「水」は生命を象徴する媒体として描かれており、

海に沈むのは、死の暗示、
消火という「水」を使う行為は、「生」への希望、
そして「水=波」に乗るという行為は、希望へ向かって生きるという意思の表われであると言えます。

 

それは、死んだ港が「水」を媒介として現われる事にも表われています。

歌を唄って、港が出現するのは、
「水」を振動させる、
つまり、
生の鼓動であるから、なのかもしれません。

 

では、何故港が、ひな子の下に戻って来たのか?

それは、
「サーフィン=波乗り=生の希望」を喪失したひな子を、

元の彼女、
「サーフィン好き=波乗りに果敢に挑戦する=生の希望満ち溢れた存在」
として、蘇らせる為なのでしょう。

 

ラストシーンの、
ダイナミックな「波乗り」シーン。

これこそ、
進みべき道を知らずとも、
力強く進む事を表明するマニフェストであり、

だからこそ、
ひな子の復活を見届けた港は成仏したのです。

 

この様に、
「水」により、
「生」と「死」が、絡まり合う様を演出した作品
『きみと、波にのれたら』は、
そう言えるのではないでしょうか。

 

そう考えて、
改めて、題名を見ると、
「きみと、波にのれたら」。

本当なら、
きみと、一緒に人生を過ごせていたら
良かったのに、

そういう港の想い、
ひな子の願いが表われている、

切なさを感じる題名と感じられるのです。

 

 

 

確かに本作は、
リア充のラブストーリーを描いた作品なのですが、

それでも、
アニメ的な演出が光る作品です。

何となくの印象で、
何となく敬遠するのは勿体ない。

アニメ的に観ても、
動きの面白さや、

如何にもアニメ的なキャラの、
雛罌粟洋子とかに着目して観るのも、面白いかもしれません。

(ラストシーンだけ、ひな子に敬語を使うのが、ツンデレキャラたる所以)

動きと、
歌と、
水を愛した作品

『きみと、波にのれたら』は、
楽しもうと思うなら、
如何様にも楽しめるアニメ作品なのです。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

「EXILE TRIBE」の歌う映画の主題歌が、コチラ


スポンサーリンク