映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』感想

 

 

 

村で三味線と折り紙の芸を披露しているクボ。彼は曖昧な状態の母と二人暮らし。それでも、正気な時の母は父との思い出を楽しく語ってくれる。独眼のクボは、その目を祖父に奪われたと言う。そして、日が落ちたら外出してはならぬと母に言われていたのだが、、、

 

 

 

 

監督はトラヴィス・ナイト
アニメーション製作会社のライカのCEOでもある。

ライカ製作のアニメーションには
『コララインとボタンの魔女』(2009)
『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012)
等がある。

 

ライカが製作するアニメは、

ストップモーション・アニメーション。

 

簡単に言うと、実写のフィギュアをちょっとずつ動かしながら撮影したアニメーションだ。

パラパラ漫画の豪華なヤツと言えばわかりやすい。

全て手作り、全て手作業。

 

この事実に驚愕するクオリティの高さだ。

そして、舞台は日本。

とは言え、
何時かは分からぬ、何処とも知れぬ、
いわば、

映画オリジナルの日本が舞台なのである。

 

時代考証や事実との整合性に目くじらを立てるより、

日本風ファンタジー世界と割り切って観ると、
その世界観の鮮やかさに見とれる事間違い無しである。

 

3DCGが全盛の時代に、
敢えて技術と労力を投入してアナログな作品を作る。

この贅沢さは何者にも代え難いオリジナル。
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はそんな拘りの映画である。

 

 

  • 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のポイント

拘りのクオリティ(全て実写)による脅威の世界観

鮮やかで美しい日本風ファンタジー

舞台が日本風なので、色々ツッコみが楽しめる

 

 

以下より、内容に触れた感想となっています

 


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  • 脅威!!拘りのストップモーション!!

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はストップモーション・アニメーションである。

実在のフィギュア(人形)をちょっとずつ動かしながら作った作品だ。
勿論、背景も手作り
波の質感の素晴らしさにも注目だ。

だが、その制作における労力は想像を絶する。

パンフレットによれば、
一週間で作れるのは平均「3.33」秒
総作業時間「1,149,015」時間。

この事実を予め頭に入れていたら、あまりの細かさに観ていて震える。

細かい作業を根気よく、亀の歩みで作り上げて行った作品である。
正直、聞くだけで背筋がムズムズして拳でぶち壊したくなる。
脅威の忍耐力である。

正直、その見た目は3DCGアニメと殆ど変わらない。
その上、労力や製作時間はCGの方が安上がりになるだろう。

だが、3DCGプリンター等の最新技術を使い、
様々な試行錯誤を繰り返し、
細部や背景まで気を抜かず「実物」に拘って作品を作り上げる。

この確固とした信念に支えられた作品には、独特の雰囲気と一本気な存在感を感じる。

人がやらない困難な道を行く。
だがからこその、オリジナルである。

 

  • ごちゃ混ぜジャパン!

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は、日本からインスピレーションを受けた作品である。

江戸時代の一地方のとある村を舞台にした作品の様に見受けられる。

その世界観を形成するのに、特に細部に拘っている。

村の街並み、竹や落ち葉の表現。
特に素晴らしいのは、登場人物達の衣装である。

その質感は実写ならでは、本職の時代劇もかくやと言わんばかりのクオリティである。

…とは言え、村落の人物の衣装が鮮やかで極彩色なのはご愛敬。

その他にも、
祭りで阿波踊りをしたり、
朱塗りの鳥居の先に墓石が立ち並び、その近くに川があったり、
自由の女神の様な兵馬俑(へいばよう)?っぽい巨大な像が雪の中に埋まっていたり、

ちょっと観ていて「?」となる部分も多数ある。

だが、事実や時代考証、舞台設定の整合性を追求するより、
折り紙、落ち葉、着物といった「日本の美」を目一杯詰め込んでみました!という、短絡的な無邪気さを楽しんだ方が面白い

本作は、日本風ファンタジーなのである。

 

  • 実に惜しい!設定の投げっぷり

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はビジュアル面のクオリティが突出している。
そして、ストーリーも面白く、随所に笑いを仕込むという余裕も感じさせる。

その一方、魅力的な設定をもうけて置きながら、それを存分には活かしていないのが惜しく感じられる。

まず、何故クボの目を奪う必要があったのか?
何か、秘密とか、能力とか関係しなかったのだろうか?

本作においては、単に厨二的にカッコイイからという意味しか無いのが残念だ。

また、クボの折り紙の特殊能力の根拠は何?
修行?生まれ持った能力?それとも、守護霊的な何かが存在しているの?

魅力的な「力」であるが故に、話の本筋とは全く関係ない便利パワーでしかないのがモヤモヤする。

月の帝って、ぶっちゃけ兵を持ってないの?
実は兵どころか、「月の帝」の勢力は3人しかいない説すらある。

非情な物語に比して、敵が小物っぽいのでバランスが取れて無い感じもする。

題名の「二本の弦の秘密(原題:TWO STRINGS)」の意味とは?
母の髪、父由来のヒモ、クボの髪で弦は3つになりましたよね。

敢えて「二本」としたのは、母と父の事を強調したかったのだろうか?
それとも、もしかして「二本」と「日本」の駄洒落!?

そして、クボの名前
てっきり、クボとは「公方」から採られた称号の意味合いがあるのかと思ったら、別にそんな事も無かった

もしかして、単に知り合いの「久保さん」から取った名前とか言わないでしょうね、、、
それ、名字ですよ、、、

と、まぁ色々ツッコんでみるのも面白い映画という事をいいたいのだ。

 

  • 声優紹介

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は劇場でも吹き替えで上映されていた。

クボに矢島晶子(クレヨンしんちゃんの野原しんのすけ)、
サルに田中敦子(攻殻機動隊の草薙素子)、
月の帝に羽佐間道夫(映画『ロッキー』のロッキー)と実力派揃い。

クワガタ役はピエール瀧
なんでもやる俳優は声優も出来る。

一方、本家の声優は豪華俳優を起用している。

クボ:アート・パーキンソン
『ゲーム・オブ・スローンズ』のリコン役。

サル:シャーリーズ・セロン
クワガタ:マシュー・マコノヒー
月の帝:レイフ・ファインズ
闇の姉妹:ルーニー・マーラ

クボ役は若手の子役だが、他は主役を演じる一線級の役者を並べている。
機会があったら英語版でも観てみたい。

 

 

脅威と拘りの作家魂にて鮮やかで素晴らしい世界観を作り上げた作品、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』。

そのビジュアルのみならず、舞台が日本風なので、ご当地の我々としては「ツッコみ」という楽しみ方もある。

拘りの世界観に浴しつつ、
それを冷静に判断も出来るという滅多に無い感覚を味わう事が出来る。

作品自体の完成度も高く、観ていて純粋に面白い。
だから、凄い。

アニメーションの可能性の広さに驚かされる作品なのである。

 


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さて次回は、作品のジャンルが変わる程の広さと度量を持っている?小説『ダーク・タワーⅣ 魔術師と水晶球』について語りたい