映画『トイ・ストーリー4』感想  エンディングの、その先にも、人生は待っている!!

ボニーは女の子。綿人形のドーリーやカウガールのジェシー、バズ・ライトイヤーでおままごとをするが、ウッディでは遊ばない日々が続いていた。そんなある日、ボニーが幼稚園に体験入学する日が来る。心配で付いて行ったウッディは、友達と打ち解けられないボニーをサポートするのだが、、、

 

 

 

 

監督はジョシュ・クーリー
『インサイド・ヘッド』(2015)の登場人物、ライリーの短篇、
『ライリーの初デート?』(2015)を手掛ける。
本作が、長篇初監督作品。

 

声出演(日本語吹替え)は、
ウッディ:トム・ハンクス(唐沢寿明)
バズ・ライトイヤー:ティム・アレン(所ジョージ)
ボー・ピープ:アニー・ポッツ(戸田恵子)
フォーキー:トニー・ヘイル(竜生涼)
ギグル:アリー・マキ(竹内順子)
ダッキー:キーガン=マイケル・キー(松尾駿)
バニー:ジョーダン・ピール(長田庄平)
ギャビー・ギャビー:クリスティーナ・ヘンドリックス(新木優子)
デューク・カブーン:キアヌ・リーブス(森川智之)

ボニー・アンダーソン:マデリーン・マックグロウ(中村優月) 他

 

 

 

ピクサー初の長篇アニメ映画であり、
世界初のフル3DCG長篇アニメーション作品だった、
『トイ・ストーリー』(1995)。

ピクサー・アニメーション・スタジオの創立者、
エドウィン・キャットマル、
ジョン・ラセター、
スティーブ・ジョブズ。

その一人のジョン・ラセターが監督した、
ピクサーを代表するシリーズが、
「トイ・ストーリー」です。

 

『トイ・ストーリー2』(2000)
『トイ・ストーリー3』(2010)
と続いたシリーズ。

ストーリー的には、
「3」にて、完了した印象でした。

 

しかし、
あの、感動のラストに続きを作る!?

出す作品、出す作品、
その全てが高クオリティのピクサー作品、

期待を持ちつつも、
むしろ、不安が大半以上を持ちつつ、
観に行きました。

作るからには、
前作以上を目指さねばならない。

果たして、
どんな作品になったのでしょうか?

 

 

ウッディの助けで幼稚園を楽しめたボニー。

彼女は自作のオモチャ、フォーキーを作ってご満悦。

そして、何と、
フォーキーはオモチャとして動き、喋り出した!

しかし、
元々、ゴミから作られたフォーキーは、
自分がオモチャでは無く、むしろゴミだと自覚しています。

事ある毎にゴミ箱に逃げ込もうとするフォーキーに、
ウッディはオモチャの何たるかを教えます。

しかし、
どうせいつか捨てられると、
走行中のキャンピングカーから、フォーキーは脱走、

それを追って、ウッディも車から飛び出します、、、

 

 

まず、キャストから言いますと、
メイン所は過去のシリーズと共通しています。

普段、私が映画を観に行く時には、
字幕版を観る事が多いですが、

本作においては、
やはり、日本語吹替えの方に愛着があるので、

メインキャストの
唐沢寿明(ウッディ)や、
所ジョージ(バズ)、
19年ぶりに登場の、戸田恵子(ボー・ピープ)も変わらず、
というのが、嬉しい所です。

更に、
新キャラとしてメインの一人を張る、
フォーキー役を演じた竜生涼。

彼は26歳なのですが、
意外と言うと失礼ですが、
演技が上手い。

本職の声優もかくや、とばかりの活躍を観せます。

 

さて、内容の方です。
結論から言いますと、

本作は、面白かった。

しかし、人に拠っては、
賛否両論が起こるという作品です。

 

感動的なラストだった、
前作「3」を継承しつつ、

その後の物語を語っているのです。

この脚本の力、即ち、
ストーリーに脱帽。

人生というものは、
クライマックスを迎えた後も、
続いて行く。

 

その事を、物語っています。

まさか、
感動のエンディングに、その先があるとは!

 

さて、
アニメ映画というものは、
やはり、基本的には子供向けの作品。

しかし、
その子供を連れて行く、
大人が観ても、面白い作品も、中にはあります。

本作も、そう。

子供が観て夢中になるのは勿論、

しかし、むしろ本作は、
子供を連れて行った、大人の方が、共感出来る作品だと言えます。

 

 

思えば、
第一作目の劇場公開は、1995年。

当時、5歳くらいのちびっ子も、
今では30歳になっているのです。

「トイ・ストーリー」シリーズで語られるのは、
オモチャの人生というか、
オモチャのアイデンティティ。

とは言え、そのオモチャ達が直面するトラブルの数々は、
実際に観ている人間の人生にも、起こり得る事なのです。

 

人生には、様々な事が起こります。

ボニーの様に、幼稚園に入園したり、

アンディの様に、大学に入学したり。

就職したり、
結婚したり、
子供が生まれたり、 etc…

様々な出来事があり、
その度毎に、

人生は転機が訪れ、
選択が強いられます。

 

『トイ・ストーリー4』とは、
正にその、
転機と選択の物語

 

本作は、
これ単品で観ても、勿論面白いです。

しかし、
シリーズを観てきた人間の方が、
より、楽しめるのは確実。

「トイ・ストーリー」シリーズと一緒に成長し、
大人になった人間に対する、ご褒美の様な作品であり、

そんな大人に、
勇気と、希望のメッセージを伝える、

『トイ・ストーリー4』とは、
そんな作品なのです。

 

 


 

 

  • 『トイ・ストーリー4』のポイント

オモチャ(仲間)を見捨てない、ウッディの性格

人生の、転機と決断の物語

かつての子供、現在の大人の為の物語

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • ウッディの性格

前作「3」から、9年ぶりのシリーズ新作、
『トイ・ストーリー4』。

しかし、
ストーリー的には「3」で完結していた為、
どうやって、この続きを作るのか?

それが、期待半分、不安大半でした。

 

しかし、実際に観た本作は、面白かった。

 

「3」では、
アンディに対する忠誠心を持ちつつ、
自分だけ助かるより、
仲間と運命を共にする事を選んだウッディ。

自分だけなら助かるという場面で、
絶対に仲間を見捨てなかったウッディは、
まるで『バックドラフト』(1991)のスティーブン(カート・ラッセル)の様でした。

 

その性格、実は、
アンディが、ごっこ遊びで、
ウッディの役割を、そういう正義感として遊んでいたからであり、

そういう遊びでの役割が、
そのまま、
ウッディの性格に反映されているのですね。

 

その為、
今までのシリーズ(1~3)では、
オモチャ連中のまとめ役にもなっていたウッディ。

しかし、
新しく貰われて行ったボニーの家では、
持ち主の寵愛を得られずハブられ気味で、

更に、
元からボニーの家にて、オモチャのまとめ役だったドーリーと、
役割が被ってしまっています。

 

いわば、
主人に対する、オモチャとしての役割が無い状態なのが、
現在のウッディ。

そんな彼が、
主人のボニーのお気に入りであるフォーキーに、
オモチャの何たるかを必死に教えていたのは、

遊びで気に入られず、
オモチャ連中をまとめる事も出来ない彼の、

唯一の、
主人の役に立つ、彼のアイデンティティと言える行為なのです。

 

フォーキーに拘り、
愚直とも言える暴走を繰り返すウッディは、
しかし、

そういう度を超えた正義感があるからこそ、
魅力的なのです、
ボー・ピープが言った通りにね。

 

故に、
ウッディは、敵であるギャビー・ギャビーをも、助けます。

ギャビー・ギャビーの行動は、
自分勝手な欲求に根ざし、それ故、他を犠牲にする事を厭わない。

ウッディは、それを解っていますが、
又、ギャビー・ギャビーは同時に、
「子供と遊びたい」という欲求の為に、恐ろしい行為をしているという事も、
理解しています。

ウッディ自身、
その思いを抱えているが故に、
敢えて、ギャビー・ギャビーの為に、自分の血を流すのです。

 

合気道の最も強い技とは、自分を殺しに来た相手と、友達になる事だ

そういう趣旨の事を言ったのは、
合気の達人、塩田剛三です。

ウッディの行為は、
そんな、合気の精神を体現していると言えます。

 

「令和」とは、
「beautiful harmony」(美しい調和)だと言いつつ、

喧嘩を仕掛けてきた韓国に対し、
実質的な貿易制裁を課した、何処かの日本の首相。

やはり令和とは、
「和を以て貴し、を、命令する」=「お前ら、俺の命令を聞け」という、
支配者目線のメッセージだったのだと、
改めて考えさせられ、

彼に、ウッディの精神を学んで欲しいものです。

 

  • ボー・ピープの登場

ウッディの行動と状況に感情移入するのは、
子供よりむしろ、
「トイ・ストーリー」と一緒に成長した、
大人の方だと思われます。

 

就職し、一生懸命働いて、
社長にも気に入られ、
重要でやり甲斐のあるポジションを与えられた。

しかし、
社長の引退を機に、
会社は別会社に吸収合併され、

新しい環境においては、
自分の居場所は無い状態。

 

そんな、
世知辛いウッディが出会うのは、
かつて、良い仲だった元カノとも言える、ボー・ピープです。

 

ボー・ピープは「トイ・ストーリー」シリーズにおいて、
可愛いヒロイン、お姫様タイプ、
主人公(ウッディ)に理解のある女性のポジションでした。

「1」では中々重要な役、
「2」では、影が薄くなり、
「3」では、登場すらしませんでした。

しかしボー・ピープは、

「4」では、
現代版にアップデートされたニュー・ヒロインとして再登場するのです。

 

かつての穏やかだった性格は、今は昔。

ドレスはボロボロ、
腕も、壊れて取れてしまっても、

ヤンチャで勝ち気、
千変万化する豊かな表情、
マントを翻し、颯爽とアクションをこなす、

現代において好まれる、
完全に自立した、活動的な女性として描かれます。

 

それに加え、

年月を感じさせない、
ツヤツヤでピカピカのお肌、

腕には包帯(の様に見えるテープ)を巻き、

ヒップも、
モデルの様なスラリとしたタイプでは無く、
アクションに対応出来る、
ムッチリとしたボリュームで描かれています。

その辺り、
キャラクターデザインした人の、
拘りというか、フェチを感じますね。

 

お姫様では無い、
アクション・ガールのボー・ピープと再会し、

ウッディは、
驚愕し、衝突しつつも、
自立したボー・ピープという存在に、
相も変わらず惹かれます

そして、知る事になるのです。

主人(会社)に囚われず、
独立し、自ら、自分の人生を切り拓くという道もあるという事を。

 

そして、
二人が再会したアンティークショップの名前が、
「セカンドチャンス」。

これが、
ウッディの最後の決断に、示唆的な意味を持っているのです。

 

  • 心の声

ウッディの最後の決断。

 

以下、結末に触れた内容が含まれております。

 

 

最後、
ボー・ピープに後ろ髪を引かれつつ、
ボニーの元に戻ろうとするウッディ。

バズは、言います。

「彼女は大丈夫だ」と。

顔を上げるウッディに、
「ボニーは、大丈夫だ」と。

そしてバズはウッディに、
「心の声に従うんだ」と告げるのです。

この場面に、胸が詰まります。

 

ボニーは、
そして、バズ達も、
ウッディが居なくても、やっていける。

ならば、
ウッディは自分が思う様に生きる事も出来るのだ、
と言うのです。

 

「心の声に従うんだ」

これは、
身を粉にして、フォーキーの世話をする様子に、
どうしてそこまで、と尋ねられ、
ウッディが、バズに対して答えた言葉。

この心の声とはウッディの性格であり、

それは、
元々の持ち主であるアンディとの関係性で獲得した、
主人への忠誠心と、
オモチャ仲間に対する責任感であるのです。

 

そのアドバイスを、バズは独自に解釈し、

自分の、録音された台詞ボタンの助言に従って、行動します。

これはまるで、
おみくじとか占いでの「どうとも受け取れる助言」を、
自分に都合の良いように解釈し、

その指針で以て、
より良い方向を、知らぬ内に、自分で目指す事になるという効果に似ています。

つまりバズは、
心の声に従えども、
自分の指針で以て、行動しているのですね。

 

バズもかつて、「トイ・ストーリー」の「1」では、

自分のスペース・レンジャーという設定に固執し、
オモチャという自覚がありませんでした。

しかし、
ウッディ達オモチャ仲間との関係性や、
トラブルを乗り越えるという状況によって、

新しい自分の価値観を獲得し、変化し、
ウッディと友情を結ぶのです。

 

そのバズが、ウッディに言うのです、
「心の声に従うんだ」と。

ウッディも、
かつてのバズの如くに、
自分の設定に固執しています。

バズの「心の声」は、自分で獲得した自分の指針ですが、
ウッディの「心の声」は、アンディ由来のものなのですね。

そんなウッディに、
変わる事も出来るんだ、
自分で決める事も出来るんだと、
バズは助言するのです。

新しい世界を、ボー・ピープと共に見てみたい、

ボー・ピープの所から去るのは、本意では無い、

ウッディの一瞬の表情からバズはそれを読み取って、
ウッディ自身が気付けず、選択出来なかった、
その背中を、押してくれるのです。

 

友情の大事さを語る「トイ・ストーリー」シリーズ。

今までの仲間達はあまり活躍しないのが残念ですが、

本作においては、
フォーキー、
ボー・ピープとの関係性でそれが描かれ、

そして、
バズとの友情、
別れる事もまた、友情の選択の内であり、
切ない所がありつつ、
勇気ある決断を、
二人の関係性にて描いているのです。

 

  • ウッディの神曲

本作『トイ・ストーリー4』は、
ウッディが新しい選択をし、
自分の人生を、新しく生きようとするまでを描く作品です。

この物語構成は、
ダンテの『神曲』を思い出させます。

 

ダンテが、
地獄、煉獄を経て、天国に至り、
最愛のベアトリーチェと再会するのが、『神曲』のストーリー。

 

無知でありながら、
教えた相手に教わる、みたいな関係性を、ウッディと形成したフォーキーは、

まるで、地獄の水先案内人を務めたウェルギリウスの様でもあり、

恋人の様な関係でありながら、
シリーズのおいては、いつの間にか、さよならも言わずに別れたボー・ピープは、

最愛のベアトリーチェという訳です。

 

アンティークショップ「セカンドチャンス」は、
ウッディが巡る、地獄、煉獄であり、

その為に、
ギャビー・ギャビーや、執事のベンソンは、ホラー的な雰囲気を纏っているのだと言えます。

そして、
ダンテが天国にて新しい自分に生まれ変わるのと同じように、

ウッディは「セカンドチャンス」にて、
新しい自分になるチャンスを得るのです。

 

このアンティークショップ「セカンドチャンス」には、
過去のピクサー作品が、
小ネタとして、様々に詰め込まれています。

つまり、
「セカンドチャンス」を巡る冒険は、

ダンテが、
地獄、煉獄巡りで、過去の様々な人物と出会う事とも、
なぞらえられているとも、言える、

のかも、しれませんね。

 

  • 声優補足

『トイ・ストーリー4』にて、
声優を演じた人物の、簡単な補足をしたいです。

 

オバマの様な台詞を繰り返すデューク・カブーンを演じたのは、
キアヌ・リーブス

私は、吹替え版を観たのですが、
デューク・カブーンがキアヌだと後から知って、

「ああ、似合うかも」と納得しました。

キアヌの声質に、ピッタリの台詞が多いキャラです。

 

「4」での新キャラの、
ダッキー&バニー。

黄色い方がダッキーで、青い方がバニーですね。

そのバニーを演じたのは、ジョーダン・ピール

ダッキー役を演じたキーガン=マイケル・キーと共に、
TVでコメディ番組をやっていますが、

その一方、
映画監督として
ゲット・アウト』(2017)
『アス』(2019)を撮影しています。

個人的に、
今後、最も注目している監督の一人です。

 

 

 

新しい状況、新しい世界、

これを目前にした転機にて、
選択と決断を迫られる、

そのウッディの様子を描く『トイ・ストーリー4』。

 

いつでも、新しい事をする時は、
勇気が必要です。

本作ではそれを、
希望で以て後押しします。

これは勿論、

子供にとっても重要ですが、
むしろ、
かつて、子供であり、
今は、成長し、大人に成った人間の方が、共感出来るテーマであるとも言えます。

 

友情の大切さを教えつつ、

それに加え、
新たな旅立ちを選択する勇気を称える、

いつまで経っても、
「トイ・ストーリー」は、
私達を勇気づけてくれるのですね。

 

 

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感動の名作「3」も必見です


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