漫画『夜郎戯暦』安倍夜郎(著)感想  出来事で振り返る、あんな事、こんな事!!

 

 

 

とある年の、とある日。
ある日は、著名文学者の誕生日、
ある日は、有名芸能人の没日、等々…
自由闊達に一コマ漫画で描く、あの日、あの時、あの出来事のエッセイ集である。

 


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著者は安倍夜郎
2004年に、41歳で遅咲きの漫画家デビュー。
TVドラマ化され、大好評を博した『深夜食堂』の原作者である。

 

本作は、
ジャンル的にはエッセイ漫画になります。

しかし、注意点と致しましては、
本作はストーリー漫画ではありません。

いわゆる、漫画の元祖とも言うべき形態、

一コマ漫画です。

 

『鉄腕アトム』とか、
『ドラゴンボール』的に、

ストーリーがあって、コマ割をして、吹き出しや台詞があって、
各エピソードを紹介している訳ではありません。

 

本作は、あくまで、
一コマ漫画の基本とも言うべき、

ちょっと風刺が入った内容のエッセイとなっております。

 

最初は書評欄の挿絵から始まり、
その次には、月ごとの文学ネタを、
そしてその後、その月にあった過去の時事ネタを、

連載が変われども続けられた一コマ漫画を一つにまとめたのが本作、『夜郎戯暦』(やろうざれごよみ)です。

 

こう書くと、
なんだかとっちらかった内容だと思われるかもしれません。

しかし、一冊の本として謎の統一感があります。

そんな本作は、

あの日、あの時、起こった出来事、
それを日付形式で紹介する形式のエッセイです。

 

その描かれ方も様々。

例えば、「2月29日」。

この日は作家の赤川次郎さんの誕生日だと紹介しています。

そして、閏年だから、人より年を取るのが4倍遅い。

オジサンなのに、女子の活躍する小説を沢山書けるのは、
彼が「若いから」と、独特の見解を示します。

 

また、同月、同日の「年違い」の出来事を題材にとり、
自由な発想を膨らませている日もあります。

「11月3日」は、
「手塚治虫」と「さいとう・たかお」という、
漫画家の巨人が生まれた日。

それにあやかって一コマ漫画には、
『ゴルゴ13』に出て来そうな、デューク東郷風の手塚治虫を書いていたりします。

 

こういうネタの面白さもさる事ながら、
偶にぶっ込んで来る毒舌も良い味しています。

徳川家康を「面白味に欠けるおじさん」と言ったり、
梶井基次郎を見て「顔にコンプレックスがあった」と勝手に断じてみたり、

「え?そういう捉え方?」という、
ある種のニヒルな毒がスパイスになっているのです。

 

残念ながら、365日、全てを網羅している訳ではありません。

しかし、
「あ、この日はこんな事があったのか」
「この日にこの人が生まれたのか」

そういうトリビア的な事を、ランダムに知る面白さがあります。

 

別に、最初から読まなくとも、ちょっと開いたページを何気なく眺めて、
その日に起こった出来事に思いを馳せる、

そういう緩やかな楽しみ方が、
本書『夜郎戯暦』の面白さだと思います。

 

 

あと、オマケで、謎の四コマ漫画、
「モ~モ~ はらみちゃん」も収録されています。

焼肉に執着する謎の女の子を描いた作品です。

 

一コマ漫画と四コマ漫画、
今では廃れた漫画表現ですが、
これを一冊で堪能出来る、

こういった漫画のプリミティブな面白さを再発見せんとする、
『夜郎戯暦』にはそういう狙いもあるのかもしれませんね

 

 

 

  • 『夜郎戯暦』のポイント

日付毎の出来事を紹介するエッセイ一コマ漫画

出来事の連想や毒舌の面白さ

オマケの四コマ漫画「モ~モ~ はらみちゃん」も収録

 


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