砂の惑星ミッザー出身のキャッシャー・オニールは、自らの母星を圧政から解放する為に強力な武器を探している。そんなある日、宝石の惑星ポントッビタンに立ち寄ったキャッシャー・オニールは執権から依頼を受ける。それは馬をどうするか、という事だった、、、
著者はコードウェイナー・スミス。
本書を含む「人類補完機構」シリーズの全中短篇を集めた3巻本は、1993年に発売されたコードウェイナー・スミスの作品集成「The Rediscovery of Man」の全訳だそうだ。
『スキャナーに生きがいはない』
『アルファ・ラルファ大通り』
『三惑星の探求』(本著)
の3冊がそれである。
また他に、「人類補完機構」シリーズの唯一の長篇として
『ノーストリリア』がある。
本巻『三惑星の探求』は、「人類補完機構」シリーズの世界観で活躍するキャッシャー・オニールの連作、そして「人類補完機構」以外の短篇5篇を収録している。
1,2巻は奇想天外で恐ろしくも興味深い物語が語られていたが、本巻のストーリーは
穏やかな物語の終わりを連想させる。
SF、そして短篇としての完成度や面白さは前の2巻の方が勝っている。
一方本巻はシリーズの掉尾を飾る巻として、
話の締めくくりの役割のあるエピソード
を置いた感じだ。
(もっとも、未訳作品を集めたらたまたまそうなった、とも言えるが)
どちらかというと、
コードウェイナー・スミスの残りの著作を集めたという印象が強い。
まさしく、本巻こそはコードウェイナー・スミス補完計画のメインの巻だったのではないだろうか?
以下ネタバレあり
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収録作品解説
本著『三惑星の探求』は11篇収録。
「嵐の惑星」が中篇、残りが短篇だ。
その内、
「宝石の惑星」
「嵐の惑星」
「砂の惑星」の3篇がキャッシャー・オニールの冒険連作もの。
「三人、約束の星へ」にもその後のキャッシャー・オニールが登場する。
上記4作品と「太陽なき海に沈む」の5篇が「人類補完機構」シリーズ。
残り6篇はそれ以外のコードウェイナー・スミスの短篇だ。
宝石の惑星
「ポントッビタン」という摩訶不思議な響きが既に面白い。
星の住民とキャッシャー・オニールの文化の違いが面白い。
ラストのオチの、優しくも少し哀しい感じが印象的。
嵐の惑星
惑星ヘンリアダ環境、生物の描写が面白い。
しかし、作品自体はト・ルース等の登場人物が再三再四に亘るほのめかしの連続を繰り広げるので読んでいてイライラする。
砂の惑星
当初の目的を違う形で達成し、人生の目的を失った人物が平安を見出すまでの物語。
最終回的雰囲気に満ちている。
三人、約束の星へ
超凶悪で恐ろしげに見えたものが、よく見たらそうでもなかったという話。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
ニワトリもフィンスターニスも。
太陽なき海に沈む
コードウェイナー・スミスの妻、ジュヌヴィーヴ・ラインバーガーのオリジナル作品。
美しく、無垢なるものが失われ、
それを見せつけられた者の心からも無垢が失われる様が描かれる。
無常観のある作品だ。
第81Q戦争(オリジナル版)
アイデアは面白いが、少々読みにくい。
『スキャナーに生きがいはない』収録の改稿版の方が素直に面白い。
西洋科学はすばらしい
宇宙から来たならライターくらい作れるだろう、というツッコミ待ちの作品。
「旅人を虜にしようと罠を仕掛ける」古典的作品だが、その罠がミエミエで何処かズレているのが面白い。
ナンシー
読めるオチをどう魅せるか、という作品。
一度認識が変わってしまうと、それ無しでいられない。
どうしても、現実を認めない、
自分の見ている事を現実と認識する為に様々な理屈を作ってしまう。
辛い世界をどう認識して生きて行くのか?
その問いかけが哀しい。
達磨大師の横笛
面白い設定だが、それだけで終わってしまったという印象の作品。
アンガーヘルム
何やら訳がわからない所から始まって、徐々に事情が飲み込めてくる、この職人芸的短篇構成が見事。
一方でオチが優し目な感じだった。
親友たち
「ナンシー」と同じく、辛い世界で生き抜く為に変えてしまった現実にしがみついている人間の物語。
自分としては「アンガーヘルム」をラストに持って来た方が良かったのでは?と思ってしまうが、あえて「親友たち」をラストに置いて看護師さんと一緒に泣きながら本を閉じる構成を作っているのが憎い。
読んでみると「人類補完機構」シリーズ以外の作品も面白い。
しかし、その本質は「人類補完機構」シリーズと変わらない部分が多い為、結局何を書いても「人類補完機構」シリーズとなってしまったのだろう。
まだまだ語り尽くされていない世界観、しかし、最早これ以上が望めないのが惜しい限りだ。
しかし、まだ長篇が残っている。
それが『ノーストリリア』だ。
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という訳で、次回は勿論『ノーストリリア』について語ってみる。