エス・エフ小説『時が新しかったころ』感想  ジュラシック・ロマンス!?白亜紀にて火星人と遭遇!!

 

 

 

 

白亜紀の地層から人骨が発見された。調査の為にトリケラトプス型タイムマシンにて現地に訪れたカーペンターは、幼い姉弟に出会う。なんと子供達は火星人、しかも王族と言うのだが、何故そもそも地球に居るのか、、、

 

 

 

 

著者はロバート・F・ヤング
ロマンスSFの旗手。
短篇集は
『ジョナサンと宇宙クジラ』
『ピーナツバター作戦』
『たんぽぽ娘』
『時をとめた少女』
長篇は
『時が新しかったころ』
『宰相の二番目の娘』
が翻訳されている。

 

本邦では『たんぽぽ娘』で一躍有名となったロバート・F・ヤング。

著者はロマンス中短篇SFが得意という印象だが、本作『時が新しかったころ』は数少ない長篇。

とは言うものの実は、

同名の中篇を長篇化した作品だ。

 

中篇の『時が新しかったころ』はアンソロジーの
ロマンティック時間SF傑作選 時の娘』に収録されている。

ぶっちゃけ内容はほぼ同じ。

 

面白さも変わらない。

コンパクトにまとまって完成度が高いのが中篇、
長い分、より世界観に没頭出来るのが長篇といった所。

 

さて、肝心の内容だが、本作は

アドベンチャーSF。

 

しがないブルーカラー(と自虐する)カーペンターが、
王女と王子を守って白亜紀を大冒険。

若干、『ジュラシック・パーク』(一作目)の雰囲気もある。

 

肩肘張らずに気楽に読めて楽しい作品。
それが、『時が新しかったころ』である。

 

 

  • 『時が新しかったころ』の面白ポイント

白亜紀(ジュラシック)時代を舞台とした冒険

オチが爽やかで感動出来る

元ネタの中篇版と読み比べるのも面白い

 

 

以下、内容に触れた感想に続きます

 


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  • 若干違う中篇と長篇

本作『時が新しかったころ』は、中篇版を長篇化した作品。
殆ど内容は一緒だが、実は読み味が結構違う

中篇版は、
短い分オチまでの距離も近い。
その分、作品がほどよくまとまっている。
姉弟との交流がメインで、ラストのオチの印象で「ロマンティック時間SF」という印象がある。

長篇版は、
長い分、登場人物や設定が多少増えている。
細部をより描写出来るので、ゆっくり作品を楽しむ事が出来る。
姉弟と共に白亜紀を行く、冒険モノという印象となる。

 

翻訳者の中村融氏が解説でも書いていたが、
中篇版はロマンスだとしたら、
長篇版はロマンである。

とは言え、長篇版もオチの感動は中篇版と変わらないので読後は爽やかな印象と感動がある。

強いて言うなら、
中篇は短いので気にならないが、
長篇ともなると、SF的に細かい所にツッコミを入れてしまえばキリが無くなる。
(火星人が地球の空気や食性に何故対応出来るのか?とか、たった5人のテロリストで王族の拉致とか出来るのか?とか)

しかし、細かい所は気にせずに、大らかに物語を楽しむのが正しい読み方だろう。

 

 

カーペンターという人物は、自分の恋愛には自信の無い、しかし、ピンチの時には頼れる存在。

彼は、姉弟から見た「子供目線からの理想の大人」として描写されている。

こういうヒーロー像は幼き時の憧れだが、
現実にて長じた時、その理想像と己は乖離している事が殆どだろう。

ロマンとロマンティックに溢れる本作『時が新しかったころ』を読んだ時、
この衒いの無いヒーロー像の描写も作者の魅力の一つであると気付くだろう。

 


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さて次回は、告白が難しくとも、それはほんのちょっとの勇気があれば実現出来る、映画『幸せへのキセキ』について語りたい。