1999年、ノストラダムスの大予言によれば、終末が訪れ、世界が混乱に陥る。そんな世の中を救う為に、密かに体を鍛え、必殺の「無戒殺風拳」を究めた男達がいた…
しかし、今は「2022年」。一向に世界が滅ぶ様子は無い!故に、師範は言った「解散!!」と。
数日後、終末の戦士の一人、勝平は東京に来ていた、、、
監督は、平野隆。
TBSの映画プロデューサーとして、多くの作品に携わる。
本作が、長篇映画監督デビュー作。
原作は、
若杉公徳の漫画『KAPPEI』。
出演は
終末の戦士・勝平/獅闘流:伊藤英明
終末の戦士・守/蛇戦流:大貫勇輔
終末の戦士・正義/馬跳流:山本耕史
終末の戦士・英雄/龍咆流:小澤征悦
師範:古田新太
山瀬ハル:上白石萌歌
入間啓太:西畑大吾
新井久美子:浅川梨奈
矢木徹:倉悠貴
掘田先輩:岡崎体育
柳田:橋下じゅん
テルオ:森永悠希
美麗:かなで
和也:関口メンディー
北中四天王・武智:鈴木福 他
どんな温厚な人間でも、
豹変する瞬間って、あるじゃないですか。
例えば、
金銭トラブル、
色恋沙汰、
暴力 etc…
豹変というか、
普段はオブラートに包んで隠されている、
その人間の本性が垣間見える瞬間がありますよね。
実際は、
自分の意図しない瞬間に、
自分が不慣れな状況に陥って、
慌てふためいているのでしょうが、
そんな、窮地に陥った時に、
人間の本性というか、真価が発揮されるんですよね。
結局はそれも、
場慣れしたら克服出来るのですが、
そうなるまでに、紆余曲折があります。
それはさておき、
本作、『KAPPEI カッペイ』です。
原作は、
若杉公徳の『KAPPEI』で、
2011~14年の間「ヤングアニマル」にて連載、
単行本は全6巻の漫画作品です。
若杉公徳と言っても、
ピンと来ない人が多いかもしれませんが、
『デトロイト・メタル・シティ』とか、
『みんな!エスパーだよ!』とか、
実写映像化された作品名を
聞いた事ある人も多いのではないでしょうか。
で、
私は、若杉公徳の漫画作品の中でも、
『KAPPEI』が一番好きなので、
今回、
期待半分、不安半分で観に行った訳ですよ。
そんな原作ファンが観た
本作、映画版『KAPPEI カッペイ』の出来は如何に!?
率直に言うと、
期待以上に面白かった!!
荒唐無稽な原作を、
ほぼ忠実再現していました!!
まぁ、何しろ、
全六巻の漫画作品なので、
2時間の上映時間内(正確には118分)には収まりきれず、
割愛された人物、エピソードなどもあり、
一方、映画オリジナルな展開も少し交えつつ、
それでも、
上手く、一本の映画作品として、
破綻無くまとめ上げているのは、
中々どうして、
職人技なのではないでしょうか。
1999年、滅んだ世紀末の世界を救うべく、
己の肉体を鍛え上げて続けた終末の戦士達。
しかし、世界が滅びず、
終末が訪れなかった!!
時は2022年の東京。
それでも終末の戦士・勝平は、
チンピラに絡まれていた大学生、啓太を助ける。
見た目もダサく、
その言動も、何処かズレてる勝平だが、
それでも啓太は花見に誘う。
その花見の場に、遅れてやって来た山瀬ハルに、
勝平は一目惚れ!?
かくして、
世間を知らぬ40代童貞、
勝平のドタバタ恋愛劇が始まった、、、!?
そうなんです、
本作は、悪役のいないヒーロー映画、
そして、ぶっちゃけそれって
コメディじゃん!!?
なので本作、
原作を全く知らなくとも、
全く問題無く楽しめます。
そして、
原作を知っていれば、
「あ、こんな感じで映像化したのか!」と、
漫画そのままの忠実な再現ぶりに、
感動する事、必至です。
元々原作が、
『北斗の拳』のパロディというか、
『北斗の拳』の世界観の登場人物が、
少女漫画の「花とゆめ」コミックみたいな感じにラブコメしたらどうなるのか?
みたいなテイストがあり、
その荒唐無稽な設定ぶりが、
コメディとして面白かったのですが、
それを映像化するとなると、
思った以上に難しいのでは?
そう思っていたのですが、
それを可能にしたのは、
原作のキャラを忠実再現したのは、
豪華キャスト陣の迫真の演技!!
特に、
主役の勝平を演じた伊藤英明の顔芸が、
本作ではキレッキレでした。
しかし、
キレッキレなのは顔芸だけではありません。
伊藤英明(40代)を始め、
他の終末の戦士を演じた大貫勇輔(30代)
山本耕史(40代)達の、
上半身裸がデフォルトの衣装である彼達が、
鍛えた筋肉美も又、中々のもの。
何処か、美しさにも似た感動があります(!?)。
原作再現と言えば、
師範を演じた古田新太なんて、
もう原作そのもので、笑いを通り越して驚きがあります。
本作は確かに、
コメディ作品です。
しかし、
扱っているテーマが、
恋のドタバタですので、
何処か、共感出来るというか、
笑いつつも、
「分かるワァ」と頷ける、
そういう絶妙のバランスが、
本作の完成度を高めているのだと思います。
しかも、出演陣、スタッフが、
本気で作っているので、
真剣故に、素晴らしい作品に仕上がっていると言えるのです。
映画『KAPPEI カッペイ』、
中々どうして、
面白いのではないでしょうか。
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『KAPPEI カッペイ』のポイント
40代童貞、初恋のドタバタコメディ
肉体美と、アクションもあるよ!!
しかし、何処か、共感出来るからこその、面白さ
以下、内容に触れた感想となっております
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笑いから転化する、共感性羞恥
本作『KAPPEI カッペイ』はコメディ映画です。
邦画でコメディ映画と言えば、
唾棄して観ずに済ます映画ファンも多いのではないでしょうか。
そもそも邦画は、
一見真剣なテーマの作品に、
照れ隠しなのか、意味の無いコメディを差し挟んだり、
ミステリ作品かと思えばコメディだったり、
コメディ作品かと思えば、「ユルさ」を売りにしたわけわからない作品だったり、
色々、つまらないものが多いですよね。
確かに本作も、
一見、そんな作品群に括られるかと思われます。
しかし、否!!
本作は、
真剣にコメディを作っているのです。
計算された間、
滑稽な状況、
ダサ過ぎる衣装、
荒唐無稽な設定、
繰り返される謎の過去回想 etc…
真面目にコメディに取り組んでいるからこそ、
本作には、抜きん出た面白さがあります。
原作漫画に、
勝平がハルに質問するシーンがあります。
それは、
「悪役のいないアクション映画で、主役は何をするべきなのか?」
的な趣旨の発言でした。
それに対してハルは、
「それって、コメディじゃん」と、
笑って返します。
このシーンこそ、
原作漫画『KAPPEI』の、
そして、
映画版『KAPPEI カッペイ』のメインテーマであると言えます。
映画版では、
ハルのこの台詞は削除されています。
映画内で、
映画のテーマを語ってしまうと、
「メタ」な発言になってしまいますからね。
で、映画では、
「ヒーローは人助けの為に戦ってきた」
「助ける人がいないのなら、今度は自分が幸せになる番」
と、ハルの発言が続きます。
(原作にもあります)
この台詞が、
冒頭の、勝平がポン引きに語った、
「自分の生き方を探している」
という台詞に繋がり、
これが、
作品を貫くテーマになっているのですね。
勝平は、恋愛の片思い、一人踊りに揺らぎ、
守は失恋に身をくねらせ、
正義は反抗期と思春期真っ只中、
英雄は好きな人の為に自分を変えるという奮闘ぶり、
戦闘の為に体を鍛えてきた、『北斗の拳』のケンシロウみたいな達人、
しかし、40代童貞、
それで、引き籠もり過ぎて世間知らず、
更に、コスチュームがダサ過ぎる、
そんなオッサンが、20代女子大生に片思いという、
もう、
十重二十重に張り巡らされたギャップの数々が、
本作のコメディのキモとなっております。
ギャップの滑稽さに笑えますが、
しかし、
青春の懊悩、
初恋の悩み、
将来や、生き方への不安
というものは、
誰しも、経験のあるもの。
本作は、
コメディ要素のギャグ展開に笑いつつも、
しかし、勝平達が吐露する、
青春の悩みの数々を目にするにつけ、
いつの間にか、
自分との共通点を見つける事になり、
勝平達のドタバタが、
自分の事の様に恥ずかしくなり、
故に、
いつの間にか、
勝平の恋愛模様を、真剣に応援してしまうのではないでしょうか。
つまり本作は、
笑いが何時しか、共感性羞恥へと代わり、
故に、
ラストの告白のシーンに、
独特の緊張感と開放感があるのではないでしょうか。
この、笑えるけれども、
ちょっと、自分にも刺さる、
みたいな展開の連続が、
『KAPPEI カッペイ』の面白さなのだと、
個人的には思っています。
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原作との違いについて
本作『KAPPEI カッペイ』は、
漫画版の原作『KAPPEI』を、
ほぼ、忠実に再現しており、
その点においても、
完成度の高い作品となっております。
とは言うものの、
118分という上映時間内には、
6巻分の原作の要素を全部入れるのは、どだい無理であり、
故に、
已む無く、取捨選択した部分も多数あります。
例えば、
原作に登場した、
終末の戦士の一人、
無戒殺風拳・鳳翔流を使う俊也(しゅんや)の存在が映画では丸々消されていたり、
解散後に、
夜の街に「師範」が出没するのですが、
その様子が無かったり、
カラオケで勝平が、
持ち歌となる、
B’zの『ultra soul』(ウルトラソウル)を歌うシーンが無かったり、
結構、惜しいシーンが消されています。
それでも、
映画として全体を眺めると、
破綻無く、
テーマを貫き、
一本の作品としてまとめ上げている所を観ると、
この方向性で正解だったのかな、
と思います。
「ウルトラソウル」は、
版権とか、色々難しいでしょうしね。
でも、
エンディングのスタッフロールの時に流れたら、
完璧だったのになぁ、とかは思いました。
まぁ、
正義の歌う尾崎豊の『卒業』が再現されていた時点で、
御の字としましょう。
一方、
映画オリジナルの要素を、
雰囲気を損なわない範囲で盛り込んでおり、
そこは、
個人的には、嬉しい要素でした。
一つは、
英雄が山瀬ハルに告白するシーンでフラッシュモブが加わり、
豪華になるシーン。
そこで、
守(大貫勇輔)が和也(関口メンディー)とダンスバトルをする場面です。
このシーンは、
演じている役者が実際にダンスを踊れるので、
彼達に併せて、見せ場を作ったと言えるのではないでしょうか。
そしてもう一つが、
ラストシーンの改変です。
以下、ネタバレあり
原作漫画のラストは、
フラれた勝平が、
一年後の花見にて、
男性と親しそうに話すハルの姿を見かけるというものでした。
このラストは、
結局、
惚れた女性にアタックしたとして、
その女性がどんな良い人であっても、
自分が相手の「好み」じゃなかったら、体よくフラれる、
この、恋愛の残酷な現実を見せつけ、
ほろ苦くも、
失恋のありがちな一場面に、
心を振るわせるシーンでありました。
しかし映画版では、
このラストが改変されております。
かつて、
スティーヴン・キング原作のホラーパニック小説『クージョ』が映画化されました。
(映画版の邦題は『クジョー』(1983)
原作では悲惨なラストだったのですが、
映画版では、監督が原作者に「ラストを変えます」と連絡し、
救いのある終わり方をしています。
本作も、そうです。
ラストシーン、
滅亡が訪れ、悪が蔓延る世界。
終末の戦士・勝平が、
モヒカン雑魚のボウガンから少女を助けます。
その勝平の不意打ちを喰らわせようとした悪漢を、
なんと、
山瀬ハルが制圧します。
そのコスチュームには、
「CUTE」のワッペンが、、、!?
勝平とハルが、
バディを組んで終末の戦士として戦っている!!
原作を忠実に再現しておきながら、
まさかの、
ラストのみ改変というサプライズ、
ぶっちゃけ、この感動、
漫画が終了して7年経って、救われた感があって、
自分は、好きですね!!
確かに、
劇中の中盤、
さりげなく、映画オリジナル台詞で、
「一緒に終末を救おう」的な事を、
勝平はハルに言っていました。
しかし、
原作忠実再現という、映画の構成それ自体を伏線として、
最後のみ改変するという小憎らしさに、
中々やるな!!
と感動しました。
本作は、原作知らなくとも楽しめますが、
このラスト改変の感動は、
原作ファンのみが味わえるもの。
本作を映画化した監督・平野隆は、
かなり、本作の理解度が高く、
作品を愛しているんだな、と思いましたね。
滑稽で、ダサくて、
でも、真剣だからこそ、
どことなくカッコ良い。
笑って、
応援して、
感動も出来る、
元々好きだった漫画作品が、
面白く、完成度が高く、
そして、サプライズまで用意されて映画化された!!
本作『KAPPEI カッペイ』は、
中々どうして、
名作コメディ映画と言えるのではないでしょうか。
原作漫画の1巻は、コチラ
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