映画『1917 命をかけた伝令』感想  ワンカット「風」映像の、圧倒的臨場感!!

突如、エリンモア将軍から呼び出しを受けたトム・ブレイク上等兵。彼は、ウィリアム・スコフィールド上等兵を伴い、将軍のテントを訪れる。将軍が言うには、ドイツ軍は撤退したのだが、それは罠であり、追撃を行うイギリス軍を、逆に討ち果たす計略であると言うのだ。翌朝の突撃を止めさせ、友軍を救助すべく、伝令を携えて出発する、、、

 

 

 

 

 

監督は、サム・メンデス
本作は、祖父から聞いた話を基に作ったらしい!?
監督作に、
『アメリカン・ビューティー』(1999)
『ロード・トゥ・パーディション』(2002)
『ジャーヘッド』(2005)
『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)
『007 スカイフォール』(2012)
『007 スペクター』(2015)等がある。

 

出演は、
ウィリアム・スコフィールド上等兵:ジョージ・マッケイ
トム・ブレイク上等兵:ディーン=チャールズ・チャップマン

スミス大尉:マーク・ストロング
レスリー中尉:アンドリュー・スコット
ジョセフ・ブレイク中尉:リチャード・マッデン
エリンモア将軍:コリン・ファース
マッケンジー大佐:ベネディクト・カンバーバッチ 他

 

 

 

歴史の「年表」ってあるじゃないですか。

あれ、どうやって覚えてますか?

私は、俗人の例に漏れず、
語呂合わせで覚えていましたね。

受験をしたのは、
幾星霜の、遥か昔。

今でも覚えているのは、
良い国(1192)作ろう鎌倉幕府、とか、
鳴くよ(794)ウグイス、平安京、
納豆(710)食ったら平城京、
一難爆発(1789)フランス革命とかですかね。

そして、
行く行く!ドイツへ、ベルサイユ(1919)とかも、
覚えてますね。

まぁ、ぶっちゃけ「イクイク」って語感がお気に入りで、
何をしたのか、覚えてないんですがね!!

 

…いや、知ってますよ、
ベルサイユ条約ですよね。

つまり、第一次世界大戦が終結したのが、
1919年、って事です。

つまり、
1917年は、
未だ、激戦が続いているって事です。

 

現代を生きる我々には、
ピンと来ないのかもしれませんが、

100年前は、
イギリスが、世界の覇権国家だったんですよね。

しかし、
ドイツとの二度の世界大戦により疲弊し、
覇権国家から凋落してしまったのが、
現在のイギリス。

まぁ、
そういう歴史があるから、
今でもプライドが高く、
「EU脱退!!」と息巻いたんですね。

 

閑話休題。

 

つまり、
『1917 命をかけた伝令』の「1917年」とは、
戦争真っ只中の時代なのです。

そう、
本作は、過去、数多く作られた題材ではありますが、

ストレートな、王道タイプの戦争映画です。

 

 

とは言え、
本作には際立った特徴があります。

それは、キャッチフレーズで言われていた、
「全篇ワンカット映像」という、
驚異的な撮影です。

 

え!?
それ、マ!?

カメラを止めるな!』(2018)の、
冒頭37分のワンカット撮影でも驚異的なのに、

まさか、
ハリウッドの大作、
119分の戦争映画で、
そんな事が可能なのか!!?

前代未聞の、この情報に、
胸を踊らせて観に行きました。

 

…しかし、ですね。

アレでした、
本作、

全篇、ワンカット「風」撮影映像ってヤツです。

 

ワンカットに観える感じの、
撮影手法ですよ、
ってだけで、
実際は、割と普通にカットがかかっている印象でした。

期待しただけに、
この、誤情報は、
流石に、どうかと想いましたよ。

 

それでも、
一つのカットが長いというのは事実。

そして、
この、長回しこそが、
本作の特徴なのです。

 

ワンカットが長い、
それは、
カメラが、普通以上に、
登場人物と共に「動く」という事でもあります。

それはまるで、

自分も、映画の中に居るかの様な、
映画の画面が、自分の目線であるかの様な、
そんな臨場感と言えるのです。

 

これが凄い。

ああ、成程。

本作における「ワンカット」とは、
「没入感」と同意なのだな、と私は感じました。

これはもう、
体験するドキュメンタリーと言ってもいいかもしれません。

 

そこで描かれるストーリーは、
至って、シンプル。

メッセージを、目的地の人物に届ける、というもの。

しかし、
シンプルだからこそ、
いくらでも肉付けが可能とも言えます。

 

シンプルで、
だからこそ、没入感も、いや増します。

『1917 命をかけた伝令』、
正に、映画を体験する作品と言えるのです。

 

 

 

  • 『1917 命をかけた伝令』のポイント

ワンカット「風」に見える映像の没入感

第一次世界大戦の「リアル」をてんこ盛りした世界観

行きて帰りし物語

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 惜しい!

『1917 命をかけた伝令』は、戦争映画です。

戦争映画といっても、
ドンパチをパリピ風にウェーイと言って楽しむものでは無く、

また、
実際にあった出来事を基にした、
実録系の物語でもありません。

本作のコンセプトは「没入感」

 

カットをしていない様に見える、
巧妙な撮影技術による、
徹底した長回しによる、臨場感

それはまるで、
自分が、スコやブレイクと一緒に、
メッセンジャーの一人として、「カメラマン」の役割を与えられ、
全てを記録するべく、付き従っているかの様な錯覚に陥ります。

フィクションと言うより、
まるで、ドキュメンタリーの様なリアルさ、

映像を、その場にいながら、体験しているかの様な、
没入感なのです。

 

まぁ、それは良いよ。

素晴らしい。

しかし、
プロモーションで、
「全編ワンカット」と言い切ってしまうのは、
になってるんだよね。

その部分が、
先ず、マイナス要因。

 

そして、もう一つ、
私が、「惜しい!」と思うのは、

事態が切迫していない、
という部分なのです。

 

本作のミッションは、
「翌日の朝の突撃を止める」というもの。

急いだら、割と、速攻で終わる距離感であり、
時間に、微妙に余裕があります。

この設定は、
旅の途中で、
時間的な余裕があるからこそ、
様々な要素、
イベントやトラブルを挿入出来るという事です。

また、
時間的な余裕があるという事は、
昼、夜、朝という、
「時間帯」毎の戦場を描写出来るという、
映像の面白さがあります。

 

しかし、です。

確かに、本作には抜群の没入感があります。

その一方、
ダッシュしているシーンはそれ程無く、
旅は、むしろノンビリしている様な印象すらあります。

没入感はあれど、
切迫した、ひりつく様なライブ感が無いのです。

まるで、
戦場ピクニック体験、
みたいな印象になってしまっています。

 

この辺は、
制作者側の、見せたいものと、

観客である私個人の嗜好がズレているから、とも言えます。

個人的には、
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2002)での、
アラゴルン、レゴラス、ギムリの三人が、
さらわれたメリーとピピンの痕跡を追って、
ひたすらマラソンしている様な、
スピーディーな展開、

ああいう感じが好みなのです。

 

とは言え、
本作の様に、
最初はゆっくり、
ラスト近くは、時間が無くなってダッシュをかます、

みたいな、
緩急のある感じは、
悪くないと思います。

結局、
先行する戦争映画作品、
例えば、
『プライベート・ライアン』(1998)などと、
如何に、違うモノを観せるのか、

それを追求した場合、
戦場や、兵士の、
リアルな、様々な側面を臨場感を持って描写するというのが、
本作の目的だった様に思うのです。

あくまで、
これは、個人的な好みの問題。

 

そして、
最もマイナス要素なのは、
ラスト、クライマックスの、
一番盛り上がるシーンを、
映画の予告篇で使ってしまっている事です。

確かに、
映画をいうものは、
ストーリー、展開の積み重ねで盛り上げるものなので、
シーンの一部だけを切り取っても、
面白さが伝わりにくいものがあります。

とは言え、
最も凄いシーンを予告で使ってしまったなら、
本篇に、それ以上のモノが無いという事であり、

鑑賞時の、拍子抜け感が否めません。

 

本作は、
凄く、面白い、
そして、
傑作になる要素も、多々あったと思います。

しかし、
嘘のキャッチフレーズ、
切迫感の薄い展開、
クライマックスのネタバレ予告など、

微妙に、
個人的な嗜好からズレた部分が多かった、

それが、観ていて、
「惜しいなぁ…」と、
私は、終始、思いました。

 

とは言え、
長回しを多用した没入感と、

ワンカットだと錯覚させる、
撮影、映像技術は凄いもの。

『1917 命をかけた伝令』は、
戦争映画の鉄板の一つとして、
今後、語られる作品であると言えるのではないでしょうか。

 

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