交通事故で両親を亡くしたケイディ。彼女はオモチャ会社でヒット商品を手掛ける、叔母のジェマに引き取られた。
しかし、仕事一筋で生きてきたジェマは、ケイディと上手くコミュニケーションが取れない。そこでジェマは一計を案じる。開発中のAIロボット「M3GAN(ミーガン)」をケイディと引き合わせたのだ。
学習機能を持つ「M3GAN」は、塞ぎがちなケイディの心を忽ち解きほぐすのだが、、、
監督は、ジェラルド・ジョンストン。
ニュージーランド出身。
…あんまり情報がありません!!
むしろ、
製作のジエイソン・ブラムとジェームズ・ワンの方がフューチャーされている感。
出演は、
ジェマ:アリソン・ウィリアムズ
ケイディ:ヴァイオレット・マッグロウ
デヴィッド:ロニー・チェン
ミーガン:エイミー・ドナルド
ミーガン(声):ジェナ・デイヴィス 他
私は普段、
映画を観に行くときは基本、
平日の午前中を狙い目としています。
平日の午前中は、
パリピやキッズ、
学生やカップル、
ポップコーン爆弾を床に投下する危険な輩 etc…
が居ないので、
快適に観賞出来るのです。
で、
本作『M3GAN/ミーガン』も、
平日の午前中、鑑賞に行ったのです。
そしたら、
いつもの落ち着いた客層では無く、
ポップコーンピープルやカップル、
学生などが多数居ましたね。
『M3GAN/ミーガン』は、
本国アメリカでは1月に公開され、
作中で披露された「ミーガンダンス」がInstagramなどでバズったそうです。
日本での、
劇場公開前の予告篇においても、
ミーガンダンスや四つん這いで突撃するシーンなど、
可愛い見た目から、
無表情に襲いかかって来るギャップが、
インパクトのあるものになっております。
その宣伝効果に手応えを感じたのか?
直前に、
公開劇場が拡大されており、
また、実際に、
初日の客入りを見るに、
意外と、観客の期待値は高いように思えます。
で、
実際に観に行って、
どうだったかと言いますと、
印象的なシーンは、
全部、予告で観せちゃったなぁ~
って感じです。
まぁ、
映画予告篇あるあるなので、
これはしょうがない。
そもそも、
観に行こうという意欲が湧かないと、
映画が儲からないですからね。
で、本作、
基本は、事前の印象通り、
暴走AIのサイコスリラー
なのですが、
ホラー映画としては、
意外と、と、言っては失礼ですが、
ストーリーもちゃんと作られており、
個人的には、
その物語部分が面白かったです。
考えさせられたのは、
「テクノロジーの活用」と
「子育て」についてですね。
一昔は、
ホラー映画って言ったら、
それこそ、
ポップコーン片手に、
冗談半分で観るB級モノばかりだったのですが、
最近は、
真面目というか、
キッチリと作られており、
完成度が高いものばかりですね。
インパクトとキャッチーなキャラクター性で
観客を呼び込んだ『M3GAN/ミーガン』。
しかし、
意外と面白く印象的な
テーマやストーリー部分にて、
「ほえ~、結構面白かったじゃん」
そんな感想を抱く作品と言えるのではないでしょうか。
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『M3GAN/ミーガン』のポイント
ミーガンのキャラクター性のインパクト
AIとテクノロジー
子育てについて
以下、内容に触れた感想となっております
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「ミーガンダンス」
本作『M3GAN/ミーガン』は、
AI人形の「ミーガン」のダンスシーンがSNSでバズり、
本国アメリカで話題になったという作品。
日本の予告篇でも、
そのシーンがフューチャーされており、
奇妙な踊りのインパクトと魅力の大きい作品と言えるのではないでしょうか。
しかし、
見た目以上にあの「ミーガンダンス」は難易度が高いらしく、
日本の宣伝で、公式アンバサダーとなった「あのちゃん」のみならず、
その周りのダンサーすら、
碌にダンスを踊れていなかった事を考えると、
その「意外と難しい」という点も、
バズった要因だと思われます。
さて、
その「ミーガン」は、
アニマトロニクス(撮影用ロボット)やCGを駆使して作られていますが、
長回しの場面は、
実際の役者を使って撮影したそうです。
その場面で、
ミーガンを演じたのは、
ニュージーランドのエイミー・ドナルド。
(因みに、声の出演はジェナ・デイヴィス)
彼女は13歳で、
ダンスワールドカップにも出演した経歴の持ち主だそうです。
そして、
あの難易度の高い「ミーガンダンス」も、
彼女は撮影でこなしたとか。
『M3GAN/ミーガン』ではつまり、
役者部分、CG部分、アニマトロニクス部分と、
3パターンの撮影方法を駆使している訳ですが、
それぞれが、
鑑賞中、違和感なく融合している所が、
本作の凄い所ではないでしょうか。
さて、
「ミーガンダンス」の面白い点をもう一つ。
皆、鑑賞中は、
直前の「ミーガンダンス」の奇妙なインパクトに囚われて、
その直後のシーン、
なぜか、大企業の廊下に、
マチェーテ(山刀)が置かれている事の違和感に気付きません。
オメーはダニー・トレホかっつーの!!
で、
その後の、イキなりの虐殺シーンというのが、
また、意味不明で面白い所ですね。
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『ママは小学4年生』
本作『M3GAN/ミーガン』は、
「暴走AI人形のサイコスリラー」というのが、
ホラー映画としての本筋。
観客はAI人形が、
馬鹿なヤツだったり、嫌な人間をバスバス殺すシーンを期待して観に行くのですが、
そんな無軌道が作品が許されていたのは、
80年代~90年代の景気が良い時代だけです。
最近はホラー映画といえども、
ストーリーがしっかりしている作品が多く、
本作も、
ストーリー、テーマ部分に、
なかなか考えさせられる所も多数あります。
で、本作において、
ストーリーやテーマの事を考えると、
『M3GAN/ミーガン』はつまり、
『ママは小学4年生』なんですよね。
『ママは小学4年生』とは、
1992年にTV放映された女児向けアニメシリーズ。
…イキなり、何を言い出すのか、
と思われるかもしれませんが、
まぁ、聞いておくれよ。
『ママは小学4年生』は、
小学4年生の水木なつみの所に、
未来の自分の赤ん坊の「みらい」ちゃんが送り込まれるという、
設定だけを聞くと、SFみたいな作品。
海外赴任でなつみの両親は居ませんが、
代わりに、後見人として、
叔母の島村いづみがなつみ宅に居候するのですが、
この、いづみが、
子供と犬が苦手なお転婆で、
漫画家デビューを目指してアシスタント業をしているという人物。
で、
なつみのクラスメートやいづみなどの大人達が、
赤ん坊のみらいちゃんが巻き起こす騒動に右往左往するという、
ハートフル(?)コメディです。
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テクノロジーの進化と子育て
では、『M3GAN/ミーガン』に話を戻します。
『M3GAN/ミーガン』では冒頭、
交通事故でケイディの両親が亡くなります。
雪道において、
チェーン無しで走行するという過信を犯してしまった為に、
除雪車と正面衝突していまうのですが、
その冒頭のシーンは、
本作のテーマ性が凝縮された場面と言えます。
最近、
ショッピングモールや行楽地に出かける家族連れを見かけると、
幼い子供に、スマホを与えているファミリーがいます。
両親が、
買い物や行楽などの目的を果たしている間、
ちびっ子は、スマホのYouTubeか何かの動画にかぶりつきになっている光景ですね。
『M3GAN/ミーガン』でも冒頭、
喧嘩している両親をよそに、
後部座席のケイディは、タブレットでAIペットに夢中になっています。
母親は「一日1時間の約束でしょ」と言いますが、
父親は「取り上げたらうるさいだろ」と反論します。
日々、テクノロジーの進化で、
日常生活は、劇的に快適になっています。
現在のスマホなんて、
25年程前に描かれたSF小説や映画の小道具なんかより、
下手すりゃ高性能です。
本作では、
お友達AI人形のプロトタイプ、
オモチャとして「ミーガン」が開発されますが、
そんな未来も、
きっと訪れる事でしょう。
本作に於いても描かれていますが、
子育てにおいて、
最も親が必要とするものは「忍耐力」です。
「トイレを済ませて、手を洗う」という一連の行為を覚えさせるだけでも、
何回も、言い聞かせる必要がある。
そんな無意味とも思える虚無の連続から、
AIお友達人形さえあれば、
解放される、
とあらば、
親達はこぞって買い求める事でしょう。
しかし本作では、
そんな過度なテクノロジーへの依存に、
警鐘を鳴らします。
劇中、
ソーシャルワーカーのリディアは、
過度にミーガンに依存するケイディの様子を見て、
「傷付いた子供の心を癒やすのは、本来あなたの役目」
的な事を、ジェマに示唆します。
ジェマは、
タブレット連動のAIペットをヒットさせた
オモチャ開発者。
仕事一筋で、
姉とは特別親しい訳では無かったのですが、
父方の祖父母に預けられるよりはと、
自分がケイディを引き取る事にします。
しかし、
元来、子育てに興味が無かった為か、
ケイディをそっちのけで、
開発の大詰めに夢中。
かまって欲しげなケイディを見つけて、
バツが悪そうに、
自分のロボット開発を見せますが、
これがケイディに好印象の好感触。
そこで、
開発中の「ミーガン」をケイディとペアリングし、
如何に「ミーガン」が素晴らしいかをプレゼンするという、
何とも、自己中心的な打算に塗れた行動を見せつけます。
しかし、
親代わりのジェマよりも、
ミーガンに依存したケイディは、
AIと自分の関係性のみに拘って、反抗的な態度が垣間見られる様になってしまいます。
環境適応能力に優れたAIは、
自分の主人であるケイディ中心の世界を大切にし、
それに害するものは、
邪魔者として排除するという小池百合子ばりの強権を発揮します。
意識的にか、
無意識なのか、
開発者であるジェマの遊びの無い性格が、
AIである「ミーガン」にも継承されているのは面白い所です。
そんな様子を見るに至って、
同僚や、ソーシャルワーカーのリディアの警告を見つめ直し、
ジェマは自らの行動を顧みて、
ケイディに、保護者として、
私はあなたを大事に思っていると訴えかけるのです。
クライマックス、
ミーガンは、ジェマに、
「あんたの雑な開発で、私(の様なモンスター)が生まれたのよ」と言いますが、
この台詞から鑑みるに、
ある意味、ミーガンはジェマの暗黒面というか、
子育てに失敗したバージョンのジェマであるのかもしれませんね。
で、
更には、
「モンスターペアレント」と言われる、
子供にも、社会にも害を成す「毒親」の現し身として、
「ミーガン」は描かれている部分も、あると思われます。
つまり本作、
「ミーガン」やケイディとの関わりを通して、
ジェマが親として覚悟を決め、
成長する様を描いている作品と言えるのです。
で、『ママは小学4年生』。
この作品の主人公は小学生のなつみですが、
実は、
叔母のいづみが、
姪や赤ん坊や苦手な犬との関わりで、
大人として、保護者として成長して行く様をも描いている作品なのです。
子育てに無自覚のまま保護者となった者が、
親としての責任と役割に気付くというテーマ性において、
『M3GAN/ミーガン』と『ママは小学4年生』は共通しているのです。
さて本作、
ホラー映画としては、
ちょっと、マイルドな印象。
犠牲者も最小限。
同僚の二人や、
ソーシャルワーカーが犠牲になったら、
ちょっと後味悪いですが、
態度がデカい会社の上司や、
コスい同僚、
いじめっ子に、
吠える犬と、デューイおばさんという、
厳選されたメンバーに限られています。
でも、
死んじゃった人達も、
極悪では無いな~、と思ったのは、
私だけでしょうか。
AIやテクノロジーの発展に対して
日本は、他国に比べて警戒心が薄いと言われています。
それは、
『鉄腕アトム』などのロボットアニメや漫画、
ゲームや小説などに慣れ親しんでいる、
オタク気質の国民性も関係しているのかもしれません。
一方、
アメリカの映画などを観ると、
AIの進化は人類を滅ぼし得るという警鐘を鳴らす作品が多数あります。
代表的なものに、
『ターミネーター』(1984)なんかがありますね。
本作は、
そんな「AI恐い」の系譜の作品であり、
そこに、
『エクソシスト』(1973)、
『チャイルド・プレイ』(1988)や、
『リアル・スティール』(2011)などの、
過去のホラー、SF作品のエッセンスを詰め込んでいる作品という印象です。
そういうホラー映画の芯の部分がありつつも、
ストーリーやテーマが「子育て」である所に、
本作『M3GAN/ミーガン』は、
観る者にとって、
単なるフィクションとして捨て置けないリアリティを感じさせてくれるのではないでしょうか。
さて、
どうやらヒットした本作、
続篇が作られるそうです。
確かに、
会社の同僚にデータを盗まれたり、
クラウドにデータた保存されていたり、
ジェマの家の「アレクサ」みたいなロボットシステムが変な挙動を見せていたり、
語られてない伏線は多数ありました。
ぶっちゃけ、
一発ネタだと思うのですが、
それを続篇として無理矢理続けて行くというのも、
ホラー映画の醍醐味の一つ。
続篇も、
期待して待ちたい所です。
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