映画『ザ・フラッシュ』感想  カオスの果ての運命を受け入れろ!!

ジャスティス・リーグの一人として活躍するフラッシュことバリー・アレン。今日も、バットマンらと共に、事件の解決に勤しんだ。
しかし明日は、妻殺しの汚名を着せられて投獄された父に、判決が言い渡される日。已むにやまれぬ気持ちで町を駆けるフラッシュは、自分がスピードの限界を超えて、過去に到達した事に気付く。
バットマン=ブルース・ウェインにその事を相談するが、ブルースは、過去に介入する事があれば、現在に危険が及ぶだろうと指摘する、、、

 

 

 

 

 

 

 

監督は、アンディ・ムスキエティ
アルゼンチン出身。
監督作に、
『MAMA』(2013)
IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。』(2017)
IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』(2019)がある。

 

出演は、
バリー・アレン/フラッシュ:エズラ・ミラー
カーラ・ゾー=エル/スーパーガール:サッシャ・ガジェ
ブルース・ウェイン/バットマン:マイケル・キートン & ベン・アフレック

ノラ・アレン:マリベル・ベルドゥ
ヘンリー・アレン:ロン・リビングストン

ゾッド将軍:マイケル・シャノン 他

 

 

 

曰わく、
「スーパーヒーロー映画の最高傑作」
曰わく、
「トム・クルーズ&スティーヴン・キング絶賛!!」
更に、宣伝で、仕込まれたっぽい観客が、
「胸熱」「掴まれた」「涙が止まらない」等々の台詞をぶち吐く…

…どう考えても、
地雷フラグの数々を公開前からおっ立てまくっている
『ザ・フラッシュ』。

 

また、
元々は、もっと早く公開される予定でしたが、

主演を務めたエズラ・ミラーの暴行事件や何やらがあって、
公開延期などが重なり、
漸く、鑑賞の運びと相成りました。

 

実際、どうなの?
面白いの?

いやね、
これは凄い、面白いですワ!!

 

 

…ブルース・ウェインには反対されたものの、

どうしても父の無罪を証明したいバリーは、
愛する母が死ななければいいという思いに囚われ、

行う事実変更も最小限なら、
現実改変も最小限に留まるだろうと判断。

結果としては、
買い物におけるトマト缶一つにて、
母は死なずに済んだのだが、

その事が、バリーが知る現実の歴史と、
様々な乖離をもたらして行く、、、

 

 

この、
ワクワクする物語で描かれるのは、

アクション、SF、アドベンチャー!!

 

正に、
映画の鉄板の面白さを詰め込んだ作品なのです。

 

まぁ、ぶっちゃけ、
好みはあります。

鑑賞した全ての人が本作を絶賛するかというと、
そういうタイプの作品では無いです。

しかし、
SF、アクション、アドベンチャー、
これらのジャンルが好きな人なら、
間違い無く、ワクワクする作品であると言えるのです。

 

…取り敢えずは、
「家族愛」「感動しました」「涙が止まらない」
といった観客感想コマーシャル映像が流れておりますが、
まぁ、
あれはいつもの、女性客を狙った「釣り」ですね。

私の感覚としては、
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第6部「ストーンオーシャン」のラストの様な、
「切なさ」があると言った方が適していると思います。

 

また、
本作、起承転結がキッチリしており、
その点、
構成もしかっりして解り易い作品なのですが、

実は、
冒頭の「つかみ」の部分がメチャクチャ面白くて、

そこで、グッと物語に取り込まれるンですよ。

 

そして本作、
単品だけ観ても、
その完成度の高さから、面白い事は間違い無いのですが、

ハッキリ言うと、
今までのDC映画を観ていたら、より楽しめる
オモチャ箱みたいな作品と言えます。

 

 

一見さんでも面白い、
しかし、
過去作品を沢山観て、
知っていればいるほど、より楽しめるという、
メタ的な作品でもあるのです。

 

同じアメコミ系の
マーベル映画と比較しますと、

マーベル映画は、
出す作品の平均値が高い、
ヒットを量産するタイプ。

一方、
DC系列の映画は、
微妙な出来の作品も多いですが、

面白い作品は、
無茶苦茶面白い、
正に、当たればドデカい、ホームランバッターの様なタイプです。

 

そして、本作『ザ・フラッシュ』は、
そんなホームラン級の作品であると言えるのです。

 

 

 

  • 『ザ・フラッシュ』のポイント

時間SF映画と、マルチバース展開

選択の物語

DC作品好き程楽しめる、オモチャ箱

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • ザ・フラッシュ

本作『ザ・フラッシュ』は、
主演のエズラ・ミラーの暴行事件やら何やらで、

公開が延期された作品。

また、
「DCエクステンデッド・ユニバース」自体が
新体制の下、
リブートされて無かった事になると決定されており、

謂わば、
今の流れのDC映画の最後の徒花となるのが、
運命付けられている、
そんな作品と言えます。

 

しかし、
徒花というには、
あまりにもデカすぎた
打ち上げ花火級の面白さを持つのが、
本作、『ザ・フラッシュ』です。

 

さて、
フラッシュの特殊能力は、
高速移動。

自身が素早く動けるので、
逆説的に、
周りがスローに見えてしまうというのが、
映像表現的な面白さに繋がっています。

それが如何無く描かれているのが、
冒頭の「つかみ」の部分、

「赤ちゃんシャワー」のシーンです。

 

赤ちゃん助けると思ったら、
まず、お菓子を食べるンかい!!というツッコみから始まり、

ベロをべろんべろん振り回す犬とか、
救助方法も様々なバリエーションがあり、
ユーモアがありつつ、ハラハラもするという、
大変、面白いシーンと言えるのではないでしょうか。

 

同じ「高速移動」の特殊能力を使うキャラとして、
マーベル系列のクイック・シルバーが挙げられます。

特に、
X-MEN:フューチャー&パスト』(2014)
『X-MEN:アポカリプス』(2016)における、

クイック・シルバー活躍シーンにて、
高速移動という特殊能力の
印象的且つ、圧倒的な面白さが描かれているので、

本作に興味を持たれた方は、
ソチラもチェックして頂きたいです。

 

「早い」というのは正義で、
「速い」というのは強いです。

対戦型ゲームに於いて、
「速い」事は、直接強さに繋がる為、

射程を短くしたり、
攻撃の威力を低く設定したり、
自身の防御力を低くしたりして、

他の部分でバランスをとっている事で、
その強さが理解出来ます。

実際の格闘技でも、
「Kー1」で活躍した、元・格闘家の魔裟斗が
「スピードが一番(大事)」と言っていました。

 

見た目的にはヒョロガリのキョロ充みたいですが、

能力だけ言うとチートレベルというのが、
フラッシュ(高速移動)なのです。

 

  • 時間SF映画とマルチバース

本作『ザ・フラッシュ』は、
ジャンル的に言うと、
過去に行く事で歴史が変わってしまった!!的な
時間SF映画の系列に属します。

 

時間SF映画の代表作と言えば、
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)に始まるシリーズ三部作です。

本作でも、
「バック~」の主演がエリック・ストルツであるというバリー達の発言に、
フラッシュ(バリー)が悶絶していましたね。

因みに、
エリック・ストルツは、
我々の知る「バック~」において、
当初、実際に主演として、いくつかシーンを撮っていたのですが、
降板し、マイケル・J・フォックス主演で撮影し直したという経緯があります。

また、
『トップガン』(1986)の主演が、トム・クルーズでは無く、
ケヴィン・ベーコンだと言っていましたが、
(しかもケヴィン・ベーコンは『フットルース』(1984)の主演じゃない?)

これは、
『トップガン』にアイスマン役で出演したヴァル・キルマーが、
かつて、
『バットマン フォーエヴァー』(1995)にて
バットマン役として出演していたという事からの連想かもしれませんね。

 

さて、閑話休題。

「バック~」シリーズでは、
過去の事実を改変する事で、
未来が無かった事になり、
新しい現実(未来)が生成されるという解釈。

本作でも、
バリーはそのつもりで歴史改変を行いますが、

しかし、
実際は、別の時間軸(世界線)が生まれるという展開(解釈)になるのが、
本作のストーリーです。

日本人的に、
一番解り易いのが、
漫画の『ドラゴンボール』の「人造人間篇」のストーリー展開です。

 

『ドラゴンボール』の「人造人間篇」は、
3つの世界線が交わっています。

未来から来て、
歴史を改変しようとしたトランクスは、
しかし、
自身が知る歴史は変わらず、
新しい現実(世界線)が生まれてしまった事を知ります。

トランクスが歴史に介入する事で、
「トランクス以外の戦士が全滅した未来」と
「悟空が病気で死ななかった現在」と
「セルがトランクスを殺害してタイムマシンを奪った未来」が、

漫画の舞台である「現在」にて交差するというのが、
「人造人間篇」のストーリー展開です。

 

本作でも、
マイケル・キートン演じるブルース・ウェインが、
パスタの棒を使う事で、
解り易く説明しています。

過去を変えることは、
その時間の「ポイント(交差点)」から、歴史が枝分かれする訳では無く、
未来のみならず、その交差点からの過去さえも、改変する事になる

と言います。

つまり、
「Y字」に道が分かれるのでは無く、
「十字路」みたいな感じに、辿って来た過去の道も違うものになるという解釈です。

そして、過去改変を繰り返すと、
「皿に盛り付けた茹でたパスタ」の様に、

どこが交差点で、
何が決定的な特異点なのかの区別も付かない位、
カオスな状況になってしまう

と説明します。

 

この、
時間軸(世界線)乱立、
マルチバース(多世界解釈)を扱うのは現在の映画界の流行りであり、

近年の「マーベル・シネマティック・ユニバース」の諸作品、
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)
ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)や

アニメ映画の
スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)、

アカデミー賞を受賞した
『エブリシング・エヴリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)などで、
全盛期として描かれている感があります。

 

本作もその流れを汲み、

時間SFにおける多世界解釈を、
近年の流行りのマルチバース映画として描いています

 

  • DC好きのオモチャ箱!?

本作『ザ・フラッシュ』には、
マイケル・キートンがバットマン=ブルース・ウェイン役として復活するというアナウンスが、
事前になされていました。

このマイケル・キートン版バットマンは、
『バットマン』(1989)
『バットマン リターンズ』(1992)から年を取ったら、
こうなっていたかも?というブルース・ウェインを彷彿とさせます。

 

本作ではそれだけでは無く、
今まで『ジャスティス・リーグ』(2017)などでバットマンを演じて来た
ベン・アフレックや、

まさかの登場、
あの、乳首スーツを着た『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997)にてバットマンを演じた
ジョージ・クルーニーまでも、ラストのオチで出演しました。

いや、
あのラストはですね。

ブルース・ウェインが電話し、車から降りてくる短い時間、
すわ!?
ヴァル・キルマーか?ジョージ・クルーニーか?
クリスチャン・ベイルかも?
それとも、ロバート・パティンソン、ワンチャンあるか?
と、
色々と瞬間的に妄想が膨らんだ、凄く、面白いシーンでした。

「IT」二部作を撮った監督ならではの、
ホラー的というか、
ブラックジョークなオチでしたね。

 

しかし、
こういうノリが理解出来るには、
過去、
色々な人がバットマンを演じて来たという事前知識が必要であり、

本作、
一見さんでも楽しめますが、

そういうネタが解れば、
もっと面白い、オモチャ箱の様な作品と言えるのです。

 

フラッシュの世界線のスーパーマンを演じたヘンリー・カヴィルは、
シルエットだけで、その姿は登場しませんでしたが、

その代わりに、
スーパーガール=カーラ・ゾー=エルとして出演したが、
サッシャ・ガジェ

で、過去、
映画『スーパーガール』(1984)にて、
スーパーガールを演じたのはヘレン・スレイターですが、

本作のクライマックス、
ヘレン・スレイターと並んで立っていたのが、

元祖、映画版『スーパーマン』(1978)にてスーパーマン=クラーク・ケントを演じた
クリストファー・リーヴです。

更には、
過去、「スーパーマン」を演じる企画があったと報じられた
大のアメコミ好きと知られる、
ニック・ファッキーーーーーン・ケイジ!!こと、
ニコラス・ケイジが幻のスーパーマンとしてカメオ出演。

彼は息子に、
スーパーマンの本名の「カル=エル」という名前を付けているんですよね。
カル=エル・コッポラ・ケイジという名前です。

また、ニコラス・ケイジと言えば、
『キック・アス』(2010)で演じたビッグ・ダディが、
まんま、バットマン的な見た目でしたねぇ…

 

他にも
「ジョーカー」を彷彿とさせる笑い袋が出て来たり、
ワンダーウーマンこと、ダイアナ登場シーンではいつもの音楽が流れたり、
音楽と言うと、
マイケル・キートンのバットマンの活躍シーンで、
懐かしの音楽が流れたり、

色々、見つけたら面白い、
オモチャ箱的な作品と言えます。

 

  • 選択の物語

興業的には、
ライバルの「マーベル・シネマティック・ユニバース」の方が上ですが、

個人的には「DCエクステンデッド・ユニバース」の方が
明らかに上回っていると言える部分があります。

それが、
女性キャラの格好良さです。

ワンダーウーマン(ガル・ガドット)の正義感と画になる感、
ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)の自由奔放さと戦闘力、

そして、本作の
サッシャ・ガジェ演じるスーパーガールも、
見た目のインパクトは充分でした。

しかし、残念なのは、
キャラクターの掘り下げが充分では無いと感じてしまいました。

 

これは、
二度目の復活、
三度目のゾット将軍を演じたマイケル・シャノンも、そう感じた様で、

「自分に意思が無く、まるで(ストーリーを推進するだけの役回りの)アクションフィギュアになった気分だ」
と、本作のゾット将軍を表現しており、

これは、カーラ・ゾー=エルのキャラクター描写にも共通していると思えます。

個人的には、
カーラ・ゾー=エルとゾット将軍の絡みで、
もっと物語が掘り下げられただろうと思うと、
そこが、本作において、物足りない部分でした。

 

しかし、
マイケル・シャノンは同時にこうも言っています。

「私は、演技に興味があり、その意味では、本作はエズラ・ミラーの作品である」と。

つまりは、
本作、エズラ・ミラー演じるバリー・アレン/フラッシュの物語に焦点を当てているのです。

 

本作は、選択の物語、
もっと細かく言うと、諦める事、手放す勇気を持つ事の話なのです。

 

自身の能力で過去へ赴いたバリー。
その帰り道、
謎の奇怪な存在に吹っ飛ばされ、
自身が18歳当時の歴史に降り立ちます。

そこで、
18歳の自分(バリー)と対面し、
彼と協力して、問題に対処する事になります。

 

本作、バディムービー的な側面があるのですが、
その相棒が同一人物というのが面白い所。

母が死に、父が投獄され、
心に鬱屈を抱えた陰キャのバリーと、

母が存命のまますくすく育ち、
パリピな普通の人生を送っている陽キャのバリー。

演じるエズラ・ミラーの一人二役なのですが、
映像的に違和感が無く、
会話や表情が自然で、
まるで、別の人物同士が絡んでいるかの様にも感じるのが凄いです

 

頼りなさそうな陰キャの印象に反して、
ヒーロー活動で培ったのか、
高速移動という自身の能力を駆使する経験と、
強固な意志力と理想、
そして、
危機に瀕しても、一旦立ち止まる冷静な判断力も兼ね備えています。

反して、
能力を得たばかりの18歳のバリーは、
力の凄さ、面白さに振り回されて、
短絡的な行動が多いです。

しかし、失敗する事が多けれど
若さ故の猪突猛進、直情径行、
その素直さに好感が持てる事も又、事実です。

 

一人二役と言えば、クリストファー・リーヴのスーパーマンシリーズの
『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(1983)では、

善の心を持つクラーク・ケントと、
悪の心を持つスーパーマンが対決するという、
一人二役の場面があり、印象に残っています。

そのシーンにおいては、
スクラップ工場で、
組んず解れつの喧嘩バトルをしているのですが、

本作に於いては、
クライマックスにて、物事に対する決断の場面にて、
互いの主張が対立するという形で描かれます。

 

作中、印象的に描かれる場面があります。

幼少期のバリーが、
答えが「24」になる計算式を書け、という宿題を解いているのですが、
「その回答が無限にある!!」と言って憤っています。

母のノラは、
24になる計算式を書き続けるバリーに対し、
「時には諦める事も重要よ」と諭します。

 

幼くして母を喪ったバリーは、
その記憶を持っていますが、

母が存命の18歳のバリーはおそらく、
日常に埋もれて、そんな言葉は忘れてしまっているでしょう。

 

本作において、
基本的に絶対不可侵な変わらぬ歴史という「特異点」は、
実は、バリー本人だと指摘されます。

(『ドラゴンボール』の未来トランクスと同じです)

そして、
その「特異点バリー」を歴史に介入させたのは、
実は、
何度も時間をループする事で、
年を取って容貌魁偉となってしまった18歳(だった)バリーだと明かされます。

 

ラストバトル、
スーパーガールはゾット将軍に敗北、殺害、
バットマンも戦死します。
それは、この世界線の地球人類の滅亡を意味します。

何度繰り返しても、
毎回、そうなってしまいます。

18歳バリーはそれを認めず、
何処かに解決策があるハズと、
何度も時間をループし、
同じ事を繰り返しては、スーパーガールとバットマンの死に直面します。

 

特異点バリーはしかし、
積み上がる可能性の歴史を一望し、
結末が変わらぬのに、バリエーションだけ無限にあるという、
答えのない解答に気付き、

この世界線(時間軸)を諦めるしか無いと悟ります。

母が存命の世界線が、人類滅亡するのなら、
母の死を受け入れて、未来に希望を託す事を選び、

バリーは、
自らの手で、歴史改変の修正を行います。

 

このテーマ、
同日公開となった『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)と、
奇しくも、同じテーマに、
違ったアプローチを試みています。

「アクロス~」では、
悲劇の運命(愛する人を喪う)に抗う事が描かれますが、

本作においては、
悲劇の運命を全うすると選択し、自ら手を下します。

 

勝利で終わらない、
大団円にはならない。

しかし、
悲劇を受け入れる事で、
過去を諦め、未来に希望を繋げるという事は、
その実、積極的選択であるというのが、本作のテーマであるのです。

本作では、
ベン・アフレックのブルース・ウェインがバリーに、
過去に戻れて歴史を改編出来ると告白、相談された時に、

過去の悲劇が、現在の我々を作っている
という言葉に、込められています。

長く遠回りしましたが、
バリーは、自らの経験で以て、
ブルースの言葉を実体験するという訳なのです。

 

 

 

 

アンディ・ムスキエティ監督は、
あの長大なスティーヴン・キングの原作小説『IT』を、
前後編の5時間程度の映画にまとめ上げるという離れ業をやってのけました。

そして今回も、
複雑で難解なストーリーを解り易くまとめ、

そこに、テーマ性とキャラクター描写、
アクションとギャグもてんこ盛りという、
超豪華な作品を作り上げました。

 

この手腕が買われ、
新生「DC」の映画シリーズにて、
「バットマン」の映画の監督に抜擢されたそうです。

 

現行の「DCエクステンデッド・ユニバース」は、
この後、「ブルービートル」と
ジェイソン・モモアの「アクアマン2」で終了、

エズラ・ミラーのフラッシュもこれで見納めとなるかもしれません。

しかし『ジャスティス・リーグ』(2017)での伏線、
未来から来たフラッシュが、
バットマンに警告するシーンがあって、
この後、どんなストーリーがあったのかなぁ…

なんて、思いを馳せてしまいます。

 

暴行事件やら何やらがあって、
「ファンタスティック・ビースト」のシリーズでも、
強制退場的な形になったエズラ・ミラー。

本作の一人二役の演技を観るに、
役者の演技としては突出しているので、
彼の今後は気になる所。

 

個人的には、
スーパーガールを演じたサッシャ・ガジェがもっと観たいので、
役者継続で、彼女の掘り下げを行って欲しいですね。

 

マイケル・キートンは、
今年72歳。

それで、あの演技を観られたのが、
恐悦至極というか。

 

映画の内容の面白さも、さることながら、
メタ的な、オモチャ箱的豪華さ、
エズラ・ミラーのやらかし、
「DC」本体のゴタゴタなど、

色んな意味で楽しめて、興味深い。

『ザ・フラッシュ』は確かに、
ヒーロー映画の傑作と言える作品なのです。

 

 

 

 

 

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