映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』感想  すっごい面白いけれども、もっと大風呂敷を広げられたハズ!?           

世界に恐竜が解き放たれて、4年が経った。
人里離れたシエラネバダ。ヴェロキラプトルの「ブルー」が住み着いたその場所で、オーウェンとクレアは、まるで自分の娘の様にメイジー・ロックウッドを育てていた。反抗期の彼女に手を焼きながらも愛情を注いでいたが、そのメイジーを何者かに拉致される。
一方、アメリカ中西部。巨大イナゴの調査をしているエリー・サトラー博士は、旧友のアラン・グラント博士に協力を仰ぐ、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、コリン・トレヴォロウ
監督作に、
『彼女はパートタイムトラベラー』(2012)
『ジュラシック・ワールド』(2015)
『ブック・オブ・ヘンリー』(2016)がある。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)では、共同脚本、製作総指揮を手掛ける。

 

出演は、
オーウェン・グレイディ:クリス・プラット
クレア・ディアリング:ブライス・ダラス・ハワード
メイジー・ロックウッド:イザベラ・サーモン
ケイラ:ディワンダ・ワイズ
ルイス:キャンベル・スコット
ラムジー:マムドゥ・アチー
ヘンリー・ウー博士:BD・ウォン

エリー・サトラー博士:ローラ・ダーン
アラン・グラント博士:サム・ニール
イアン・マルコム博士:ジェフ・ゴールドグラム 他

 

 

先日、ネットニュースにて、
アメリカのベストセラー作家、スティーヴン・キングが、
「大人になって席を立った映画」として『トランスフォーマー』(2007)をあげていました。

事の発端は、作家のリンウッド・バークレーのツイート。
ここ数年で、始めて席をたった映画として『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』をあげていた事。
スティーヴン・キングは、それをリプライして、上記のコメントを寄せました。

 

え!?

そんなに、面白くないの?
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』!?

いや、確かにね、
私も『トランスフォーマー』は非道いと思いましたけれども!
SFアクション映画に徹すればいいものの、
何故、童貞高校生が彼女をゲットする話にしたのか!?
アホくさ。
と、思いましたけれども!!

 

しかし、
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、
鑑賞前の期待値が高いです。

何しろ、
前作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のラストで、
全世界に、恐竜が解き放たれたのですから。

その、直接の続篇にて、
何が描かれるのか?

元々、
地球の支配者(Dominion)は恐竜でしたが、
彼達が絶滅し、人類が新たなる支配者として君臨していました。

その、
新旧の支配者が地球に存在する状況となった本作、

副題である「新たなる支配者」とは、
(原題の副題は「Dominion」つまり、支配者の部分のみ)

人類の事を指すのか?
それとも、
古い支配者である恐竜の復権の事を指すのか?
それとも、
また、新しい種が生まれるのか!?

鑑賞前に、
色々と想像が膨らみ、
そういう楽しみが公開前からありました。

 

 

で、
実際に鑑賞して、どうだったのかと言いますと、

成程、
「良くも悪くも」いつものジュラシックシリーズだな

 

という印象です。

 

 

先ずは、恐竜達が、沢山出て来る事に、
まぁ、ぶっちゃけ、

恐竜とか、
怪獣とか、
ポケモンとか、そういうのが大好きな私は、
それだけで、満足なんだよなぁ!!

 

雪山で、
町中で、
山林で、
研究施設内で、

あらゆる所で、
恐竜と鬼ごっこ、
或いは、かくれんぼ!!

良いねぇ、

この厨二以下の思考力、
小学生レベルの知能でも充分楽しめる王道エンタテインメントである事、
そしてそれを、
最新技術と大金を掛けて仕上げたという本気度が、
本作の凄さを表しています。

 

 

また、
過去のシリーズの登場人物が、

ある程度、
集結しているのも、
お祭り感があって良いですね。

「ジュラシック・ワールド」シリーズの主人公の、
オーウェンとクレア。

「炎の王国」のキーパーソン、メイジー。

『ジュラシック・ワールド』で、
調教師として活躍したバリー(オマール・シー)など。

そして、
旧シリーズ、「ジュラシック・パーク」より、

1に出演したエリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)
1、3に出演したアラン・グラント博士(サム・ニール)
1、2と、「炎の王国」に出演したイアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールド)も、
メインキャラとして復活。

実は、シリーズ最多出演、
1、と、4・5・6(本作)に出演しているヘンリー・ウー博士(BD・ウォン)。

そこに、
「ワールド」での人気キャラ、
ヴェロキラプトルのブルーや、

本作での新キャラ、
ケイラ(ディワンダ・ワイズ)や
ラムジー(マムドゥ・アチー)なども入り乱れ、

豪華総集篇といった印象。

 

いや本当、
子供心で鑑賞すると、
本作は、面白いンですよ。

でもね、
私は、大人なんですよ。

結局本作って、

1作目の『ジュラシック・パーク』(1993)と、
4作目の『ジュラシック・ワールド』(2015)の、
再生産でしかないのです。

 

「ジュラシック」シリーズに共通する
「恐竜との鬼ごっこ、かくれんぼ」に徹しているのは良いんですが、
それ以上がありません。

私が事前に考察した、

「新たなる支配者」関連のテーマに、
敢えて、深く踏み込まなかったという印象があります。

 

 

ぐちゃぐちゃ、ドロドロのテーマより、
単純明快さを求めたのが、本作の方向性と言えます。

この選択は、
吉と出るか、凶と出るか。

作家のリンウッド・バークレーががっかりしたのは、
この部分なのかもしれません。

 

作中ではテーマについて深く踏み込まず、

あくまでも、
「恐竜との鬼ごっこ、かくれんぼ」に徹した本作。

相変わらず、
恐竜のクオリティは凄いので、
もう、割り切って、
王道のエンタメポップコーンムービーとして楽しむのが、
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の正しい鑑賞方法だと、
言えます。

 

 

 

 

  • 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のポイント

やっぱり面白い、恐竜との鬼ごっこ、かくれんぼ

新旧メインキャスト集結の豪華感

「新たなる支配者」というテーマは、自分で考えよう!?

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 何が起こった!?空白の4年間

私は、6作ある「ジュラシック」シリーズの中では、
一番好きなのは、やっぱり最初の『ジュラシック・パーク』で、
その次が、
『ジュラシック・ワールド』なんですよね。

で、
その『ジュラシック・ワールド』の続きの、
ジュラシック・ワールド/炎の王国』も、
最初の30分は、抜群に面白い。

けれども、
物語の「起承転結」の「起」の部分だけが面白くて、
その後のストーリーは、
正直、あまり楽しめませんでした。
(恐竜が暴れる所は好きですが)

けれど、
ラストシーンで、驚愕と興奮しましたね。
何しろ、恐竜を世界に解き放ったのですから。

ああ、成程、
この「炎の王国」という作品は、
このラストを描く為の、前振りだったのか、と。

今まで、
「パーク」でも「ワールド」でも、
恐竜を、一部地域に閉じ込めて、
安全圏にて、人間がイキっていた訳じゃないですか。

しかし、
人類の生活圏に恐竜が解き放たれる事で、
人類vs.恐竜のガチンコバトルが開始される訳ですよ!!

黙示録と、新しい神話が始まる、
3部作のラストは、きっとそんな話になる、

「炎の王国」のラストで、
そんな期待を抱きました。

 

そして、
実際に題名が、
『Jurassic World : Dominion』だった訳ですよ。
邦題は『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。

世界の支配者となるのは、
恐竜か?人類か?
そういう話になると、期待に胸を膨らませました。

 

 

以下、内容のネタバレが含まれます

 

 

で、
前情報を持たずに、
映画を観たのですが、

事前に期待した物語の展開は、
何と、
最初の2分くらいの説明ダイジェスト映像にて解説され、

物語は、
「炎の王国」から4年後の世界が描かれます。

端的に言うと、
人類は、その生活圏に恐竜を受け入れ、共存している」と。

 

木村拓哉ならこう言うね、
「チョ、待てよ」と。

まるで、
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)から
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012)に飛んでしまった様な感覚、
シンジ君、置いてけぼりにされちゃった。

 

いや、
私はね、
結果では無く、
両者が共生に至るまでの、過程が観たいのよ。

黙示録だって描けた、
神話だって語れた。

それを抛(なげう)って、
「共生してま~す」って、何だよ。

 

そもそも、
「炎の王国」のラストシーンで、
オーウェンとブルー(ヴェロキラプトル)は、
互いが、別の道に進む事になったじゃないですか。

で、
何で本作の冒頭で、
元カノと寄りが戻るみたいな感じで、
お隣さん同士で暮らしているんだよ!?

一体、この両者に何があったんだよ!?

 

いや、そもそもだよ、
恐竜って、変温動物だろ?

恐竜絶滅の原因って、
気候の寒冷化とする説もあるじゃないですか。

そんな「寒さに弱い」が定説のハズの恐竜が、
何故、平然と雪国で暮らしているのか?

*最新の研究では、体温を一定に保ち、寒冷地でも生活出来ていたのではと推察されているそうですが。

もう、語るべき事が、
山の様にある訳ですよ、
それを、全て「前提」として語らず、
「察しろ」で済ますとは…

 

  • 新たなる支配者とは

崇高な理念と、高邁な理想の元に成し遂げた偉業でも、
それが、
正しい結果を導き出すとは限らない

「ジュラシック」シリーズにおいては、

技術革新にて、新しい道が拓けますが、
それを悪用する存在によって、
毎度、混乱が起こる、

というのが、基本のストーリーラインとなっております。

 

琥珀の中に閉じ込められた「蚊」。

その蚊が吸った、恐竜の体液から、
DNAを採取し、
その僅かな情報から、
現代に恐竜を復元するという、
途方もないアイディアと行動力。

しかし、
そんなロマンと理想も、
金儲けに利用され、
地に堕とされてしまいます。

野心と傲慢さは、
常に、報復を受けるというのが、
シリーズに共通するテーマです。

 

そして「炎の王国」では、
恐竜がDNAで復元出来るのなら、
死んでしまった人間だって、可能だろう、

そういう発想から生まれたクローン人間、
メイジー・ロックウッド。

そんな彼女が、
同じクローン生物である、
「現代の恐竜」達を、
世界に解き放つという決断を下します。

 

さて、
本作では、立派な(?)「ティーン」に成長した彼女。

その出自により、
一目に付くのが危険という事で、
両親代わりというか、
両親であるオーウェンとクレアに、過保護気味で、
「籠の中の鳥」として育てられています。

思春期真っ只中のメイジーは、
自分がクローン生物であるが故に、
そのアイデンティティに疑問を感じてしまっています。

 

しかし、冒険の末に明かされる真実にて、
メイジーは実は、
クローン生物というより、

科学者であった遺伝生物学者のシャーロット・ロックウッドが、
単為生殖にて生み出した子供であったと語られます。

そしてそれは、
ヴェロキラプトルのブルーの子供である、ベータも同様である、と。

 

あ、成程、と思う訳ですよ。

現代の生物は、
哺乳類から、爬虫類、魚類、
更には、昆虫に至るまで、
殆どが、雌雄のDNAの交配によって、
次世代を生み出す事で、
進化を続け、淘汰を乗り越えて来ました。

そんな進化に逆行する様な、
「自分」を永遠に続けるかの如くの「単為生殖」という方法を、
自らのDNAを書き換えて、獲得した。

それはもう、
人類では無く、
別の種であると、断言出来ます

 

しかも、単為生殖という形は、
キリストを自分一人で産んだ、マリアを彷彿とさせます。
(性別は違いますが)

また、本作では、
まるで、黙示録を暗示するかの様に、
「蝗害」が描かれます。

 

「バイオシン社」は持続可能社会を、
DNA技術にて実現すると謳いながら、

その実、
自社の「種もみ」のみを狙わない、
遺伝子改造したバッタを世の中に解き放ち、
世界の食糧供給網(サプライチェーン)を掌握しようと企んだ(と目され)ますが、
制御不能の事態に陥っているのです。

 

「ジュラシック」シリーズで描かれる、
人間の傲慢さが、自らの滅びをもたらすという、
そういうテーマの展開であると同時に、

「蝗害」は、
旧約聖書の「出エジプト記」に記述されたり、
また、
新約聖書の「ヨハネの黙示録」にも、そのエピソードが描かれています。



つまり、ですよ。

本作で描かれるのは、
遺伝子改造巨大イナゴによってもたらされる
古い種の絶滅であり、

そこから、

技術によって、
新しい「種」として誕生した
メイジーやベータこそが、
人類や恐竜に代わる、「新たなる支配者」
=その後の世界を導く「救世主」として存在しているのだと、

そういう話として、
デザインされて、いるのです。

…実際は、語られませんがね!!

 

先程、
恐竜の絶滅の原因として、
地球の寒冷化説があると紹介しましたが、

それと、同じくらいに人気のある説として、
「隕石の襲来」説が語られています。

巨大隕石、もしくは、隕石群の落下による気候変動によって、
恐竜は生き残れなかったという話ですね。

本作においては、

火を付けて証拠隠滅、駆除しようとした巨大イナゴが、
研究所施設を脱出し、

まるで、
隕石群の様に、
夜の恐竜保護区の空を染め上げたシーンにて、
連想させられます。

 

黙示録や、種の絶滅、
救世主の誕生など、

キリスト教を題材とした、
神話の再構築と新世紀の始まりを図ったプロットが、

そこかしこに散見されますが、

本作は、
それを語らず、
敢えて、「恐竜との鬼ごっこ&かくれんぼ」に終始する事を選びます。

 

子供が観て単純に楽しい絵面であったり、

又、
一作目の『ジュラシック・パーク』のオマージュ、
レジェンド出演者の再登場や、
悪人が「ディロフォサウルス」に殺される様子など、
分かり易い面白さを、徹底しています。

 

確かに、本作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、
シリーズの面白さを踏襲した、
無難で、安定、安心の作りであると言えます。

しかし、
個人的には、
壮大な大風呂敷を広げたのなら、
それを畳む伏線回収にチャレンジして欲しかった

新しい神話を描く傑作になれた可能性がありながら、

それを、自ら放棄したのが、
個人的に、残念至極なのです。

 

確かに面白かったけれども、
一作目を超える傑作になる道を捨て、
一作目の再生産という安定を選んだ作品、

それが本作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』だと思うのですが、
どうでしょうか。

 

 

 

 

 

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