映画『海上48hours ー悪夢のバカンスー』感想  パリピ無情、サメに噛まれる!!

春休みのバカンスにメキシコ海辺に出かけた大学生の男女友人5人組。
最終日、ハメを外してジェットスキー(水上バイク)を盗んで爆走するパリピ達。しかし、調子に乗ってチキンレースをした結果、正面衝突。バイクは故障し、沖に流され、スマホの電波は届かず。そして、壊れたバイクに寄り添うパリピを狙って、サメが寄って来た、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、ジェームズ・ナン。
監督作に、
『タワーブロック』(2012)
『ストリートファイターズ』(2013)
『ゲットバック ー人質奪還ー』(2016)
『ネバー・サレンダー 肉弾英雄』(2018)
『One Shot』(2021) がある。

 

出演は、
ナット:ホリー・アール
トム:ジャク・トゥルーマン
ミリー:キャサリン・ハネイ
タイラー:マラキ・プラー=ラッチマン
グレッグ:トーマス・フリン 他

 

 

 

2022年、7月6日、
沖縄県名護市沖で、シュノーケルを付けた男性が漂流している状態で発見、
これは、
『遊☆戯☆王』などで知られる、漫画家の高橋和希さんと、後に判明しました。

司法解剖によって、
死亡時刻は7月4日だと推定、
死因は溺死であるとされています。

腹部には、海洋生物に噛まれた傷が残っていたと言い、

改めて、海の恐ろしさを痛感させられた事件です。

 

 

漫画やカードの絵柄の版権で、
巨万の富を築いた人物の最期がこれとは、
何とも、諸行無常な感じです。

 

成功した漫画家でも海の事故で死ぬ!
況してや、
パリピおや!!

 

 

さて、
『海上48hours ー悪夢のバカンスー』です。

 

先ず、題名ですが、

似た様な邦題の作品に、
『海底47m』(2017)
『海底47m 古代マヤの死の迷宮』(2019)という作品があります。

これらは、
ヨハネス・ロバーツ監督の作品。

ジェームズ・ナンは、
これらの映画にて、第二撮影班の監督だったとの事。

まぁ、つまり、ぶっちゃけ、
前述の2作品とは、何にも、関係はありません

 

まれに、こういう勘違いを誘発させる邦題を付けるときが、
ままあります

例えば、ダリオ・アルジェント監督の
『サスペリアPART2』(1975)は、

実際は、
『サスペリア』(1977)の続篇では無いし、
何なら、公開時期も、『サスペリア』より前なのですが、

『サスペリア』がヒットしたので、
それに便乗した形で、監督の過去作を、
まるで関連作であるかの様な邦題を勝手に付けて、
劇場公開された作品というのが真相です。

 

本作の元々の原題は『Shark Bait』
つまり、サメ映画なんだと、
明確に示されていますね。

そんな本作の内容は、至って単純、

海上で事故って遭難したパリピが、
サメに襲われて困窮するという話。

いわゆる、

ワンシチュエーションのスリラー映画です。

 

 

犠牲者は、大学生5人。

こういう類いの映画の例に漏れず、
順番にサメの犠牲になって行きます。

 

想像通りの展開で、
想像通りの悪夢が始まる、

期待通りの作り、
王道の、低予算スリラー映画と言えるでしょう。

 

しかし、(比較的)低予算スリラー映画と言っても、

本作は手を抜いている訳ではありません。

「海でサメに襲われる」という作品であるので、
水上、水中撮影という独特の困難さが伴っています。

そんな状況で、プールでは無く、
マルタ島の近海で撮影しており、

しかも、
寒い時期だっというのが、凄いです。

実際は、役者の皆は震えていたそうですが、
出来上がった作品は、そんな事、微塵も感じさせていません。

 

期待通りのモノを、
期待通りのB級のノリの王道で、届ける

正に、プロフェッショナルな作り、

『海上48hours ー悪夢のバカンスー』は、
安心、安定のエンタテインメント作品なのです。

 

因みに本作、
パンフレットが、意外とちゃんと作られていて、
好感を持てました。

出演者、監督インタビュー、
コラム、プロダクションノート、
ちょっとしたクイズのオマケとか、

この手の作品は、
パンフが手抜きだったり、
作られなかったりするので、
ちょっと、嬉しかったです。

 

 

 

  • 『海上48hours ー悪夢のバカンスー』のポイント

ワンシチュエーションのスリラー映画

パリピVSサメ!!

海って、本質的に怖いよね

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

 

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  • 海をテーマにした作品

皆さんは、
自分のルーツというか、基礎となる運動ジャンルってありますか?

野球なり、空手なり、陸上競技なり。

私の場合は、水泳です。
「泳げる」というのは、結構アドバンテージが高く、
小学校のプールの時間で困ることは無かったですね。

また、
小型船舶免許の2級と、
ジェットスキーの免許も持っているので、
水には強いタイプです。

…ですが、

海って、独特の恐怖感をもよおしませんか?

船に乗っていても、
この薄っぺらい板きれ一枚の下には、

「海」という、
底なしの群青の絨毯が広がっており、
あのほの暗い緞帳から、何が出て来るか分からず、
一方、
無限にモノを飲み込み、惹き込まれる様な、
妖しい魅力があります。

 

私のそういう感覚が、
個人のものでは無いと思わせるものに、
ウィリアム・H・ホジスンの小説『夜の声』というものがあります。

また、
クトゥルー神話で有名な、
H・P・ラブクラフトの『インスマウスの影』なんかも、
海に対する恐怖が描かれている作品です。

 

そして、映画としては、
本作と同じ、ホホジロザメを扱ったスリラー作品として、
スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975)が上げられます。

『ジョーズ』は、
ホホジロザメに、
ガチ目の男性が戦いを挑む感じの、攻勢の作品です。

 

一方、本作はちょっと違います。
登場人物はパリピのヤワな大学生、
サメ相手に、終始、守勢に回っています。

作品としては、
パリピがウェイでヒャッハーで馬鹿やって、
水上バイクで事故るまでの、
序盤の疾走感はかなりかなりのノリ

しかし、
遭難した後の中盤からは、
物語はペースダウン。

平和な日常が悪夢へと転換された以降は、
スローダウンし、
一人ずつ、犠牲になって行くという息苦しさ、
孤独感、無力感に繋がっています。

 

パリピの無根拠な全能感が一転し、
絶望感に覆われる中盤、

この変化が、
物語を描くテンポ感によって、
表現されているのが、本作の面白い所です。

 

海をテーマにした作品は、
結構沢山あるので、
そういう作品との関連で本作を考えるのも、
面白い所です。

 

  • ホラー映画の登場人物の類型

『海上48hours ー悪夢のバカンスー』は、

海で遭難し、壊れたジェットスキーに取り残されるという、
ワンシチュエーションのスリラー映画です。

なので、
厳密な意味でホラー映画ではありませんが、

しかし、
登場人物は、ホラー映画の類型に、
見事に嵌っています

 

この、
ホラー映画における登場人物の類型というものは、

『キャビン』(2012)によって示されています。

それは、(/の後の名前は本作の登場人物)
処女、童貞、もしくは、それに準じる生真面目な性格。生き残るタイプ/ナット
イケメンの彼氏、彼女/トム
金髪ビッチ/ミリー
体育会系/タイラー
道化/グレッグ

であり、
それぞれ、物語の展開に合わせた、
類型的な「死に方」の役割があります。

 

本作では、

ムードメイカーの道化が、最初の犠牲者になったり、

金髪ビッチが、
むごたらしい死に方をしたり、

体育会系が、
仲間を救うために
自慢の体力勝負に出ますが、
敢え無く散華したり、

散々ヘタレな感じのトムが、
死に方は、格好良くて、

生真面目な主人公格が、生き残る、と。

で、
殺人鬼枠が、
ホホジロザメですよね。

 

で、本作は、
基本に忠実に作ってあるのですが、
不満点もあって、

それは、
ナットの助かり方というか、
どうやって、ジェットスキーを直したのか、
理解出来なかった点です。

エンジンにて、
どのケーブルがちぎれていたのか?

そして、
何故それを、
救命胴着の部品と繋げて、
エンジンがかかったのか?

その辺りの理屈が、
素人の私には、
全く理解出来なかった所が、残念ですね。

やっぱり、スリラー映画において、
「助かり方」は、
意外性と、勇気と決断力、
みたいなものが欲しいですよね。

その点、
誰が観ても分かって、
共感出来る解決法を用意して欲しかったというのが、

本作の不満点ですね。

 

 

とは言え本作は、
類型というか、
ジャンルのパターンに基本、忠実なので、

その意味で、安心、安定の作りになっています。

真面目に、
しっかり作ってあるB級映画だからこそ、

ジャンル映画として、
高いエンタテインメント性がある、

『海上48hours ー悪夢のバカンスー』は、
そういう作品だと思います。

 

 

 

 

 

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