ファースト・オーダーの新共和国壊滅に立ち向かうレジスタンスは追い詰められていた。執拗な追跡に合い、希望は風前の灯火。しかし、レイアはルークがジェダイとして戻ったら、希望も芽生えると信じ、レイを彼の元へ送ったのだが、、、
監督はライアン・ジョンソン。
監督作は
『BRICK ブリック』(2005)
『ブラザーズ・ブルーム』(2008)
『LOOPER/ルーパー』(2012)等がある。
出演は、
ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)
レイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー)
カイロ・レン(アダム・ドライバー)
レイ(デイジー・リドリー)
フィン(ジョン・ボイエガ)
ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)
彼等がメインの群像劇である。
他出演に、アンディ・サーキス、ドーナル・グリーソン、グウェンドリン・クリスティ、ケリー・マリー・トラン、ローラ・ダーン、ベニチオ・デル・トロ等。
さて、スター・ウォーズ新シリーズ、エピソードⅧ『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』である。
本作は取りあえず
アクションてんこ盛り。
時間一杯にエンタテインメントが続く。
基本は、レジスタンスとファースト・オーダーの追いかけっこ。
これを、
それぞれの視点、それぞれの立場で描く群像劇である。
また、「スター・ウォーズ」シリーズと言えば、エピソードが変わると数年経っているのがいつものパターンだったが、本作は
ほとんど前回『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の直後の話。
いつものパターンとは違っているのだ。
また、作品の空気感も独特の物がある。
本作では
登場人物の葛藤にも焦点を当てて描いている。
テーマ部分で作品を捉えると、重い感じになってしまうが、
それを、ど派手で息も吐かせぬアクションの連続で軽くしている感じだ。
アクション部分はスカッとする、
しかしその一方、
重めのテーマでズシリと残るものも観客に提供している。
ほとんど無名の監督ではあるが、
「スター・ウォーズ」という枠組みを外す事無く、
それでも自分の傷跡を観客に残してやろうという監督の熱い意気込みを感じる作品。
それが本作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』である。
面白いですぞ。
以下ネタバレあり
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葛藤するジェダイ・マスター
本作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の登場人物はそれぞれ思い悩んでいる。
ポー・ダメロンの熱い思いを評価しながら、その猪突猛進ぶりを危惧するレイア。
座して事態を打開しない(様に見える)ホルド提督にじれったい思いを抱くポー・ダメロン。
煮え切らないルークの態度に戸惑いつつ、自分の出自を気にするレイ。
悪に徹し切れていないとスノークに指摘され、自分自身に疑心暗鬼となっているカイロ・レン。
古参は分別ある行動をせねばと悩み、
一方、若者は勢いで事態を打破せんとジリジリ悩む、
この対比も面白い。
だが、一番悩んでいるのは、作中で一番強いハズのジェダイ・マスター、ルーク・スカイウォーカーである。
彼は、
ベン・ソロ(カイロ・レン)を抹殺しようとし、出来ずに悩み、
レイを導こうにもフォースの恐ろしさに悩み、
自分の過去の愚行に悩み、
ジェダイの歴史を葬り去ろうとして火を付けようかと悩む。
兎に角、優柔不断である。
伝説の英雄の実情は、
等身大の人物を通り越して、人生の苦悩に打ちひしがれた哀れな人間となっている。
話としては、伝説の英雄は今の強くて、敵をバッタバッタとなぎ倒した方が面白いかもしれない。
しかし、現実はままならない。
過去の栄光が輝かしければそれだけ、
後人生で失敗してしまった現在の実情の惨めさが際だってしまう。
ルーク本人もそれを気に病み、世間を捨て引きこもってしまうが、
(そこの所、師匠のヨーダにソックリですな)
時代が許さずレイに詰め寄られてしまうのだ。
そして、だからこそ、
自分の過ちを認め、過去に立ち向かうべく再び立ち上がるシーンは感動的である。
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巧妙な思考誘導
ストーリーは艦隊の追いかけっこ、
テーマの核を担うのはルークの苦悩である。
そして、面白いのが、他の人間の「悩み」の扱いである。
彼等の悩みは、観客にストーリーを読ませない為の、ミスリードを誘う巧妙な思考誘導として利用されているのだ。
ポー・ダメロンからは、事態を座して打開しないホルド提督は無能に見える。
その為、彼は独断専行的に、フィンやローズと協力して独自作戦を展開する。
この時点で、観客はポーやフィンの積極的な行動を応援したくなる。
だが、それは失敗に終わり、結局奏功するのはホルド提督の作戦の方である。
元来の「スター・ウォーズ」シリーズでは、個人の英雄的行動で事態を打破するという展開がメインだったが、
本作ではそれが失敗し、権威主義的指導者の作戦に軍配が上がる。
犠牲の上に成り立つ勝利より、明日生き延びる為の作戦が尊ばれる。
事の成否は時と場合によるが、力押し一辺倒だった「スター・ウォーズ」に一石を投じる展開である。
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思考誘導で導く意外性
また、スノークは「悩み」を利用していた。
それは、観客をも騙すものだった。
カイロ・レンの苦悩は、自分が「悪(ダーク・サイド)」であると証明出来ない事。
実はそれは、スノークが意識して迷わせていた事であった。
彼は、言葉によるプレッシャーで、カイロ・レンが自分を信じられないように誘導していたのだ。
そして、カイロ・レンとレイを繋げ、カイロ・レンの「悩み」を餌にしてレイをおびき寄せようと「釣った」のである。
レイは、カイロ・レンの葛藤が、善と悪で揺れる心であると思ったハズだ。
勿論、観客もそうである。
しかも、レイはカイロ・レンが「転向」する未来が見えたと言う。
カイロ・レン自身も、レイに「お前は俺と共に立つ」と言う。
この事から、「もしかして、カイロ・レンの正義の心が目覚めて、レイと一緒に戦うのでは?」と自然に思ってしまうのだ。
しかし実は、「レイがカイロ・レンを何とか出来る」と思う事こそ、スノークが誘導したかった思考である。
スノーク自身は、カイロ・レンの心は「ダーク・サイド」で支配されていると知っていた。
もっとも、それが自分を裏切らないという事とイコールではなかったのだが。
カイロ・レンがスノークを裏切り、レイと共に戦うが、それは正義の為では無い。
単に、目の上のたんこぶを排除する機会を逃さなかったというだけである。
二人が見た未来、
確かにカイロ・レンは「転向」してスノークを裏切り、
レイはカイロ・レンと共に戦うというビジョンは実現している。
しかし、事実は同じでも、直前の話の流れで観客が想定したハズの登場人物の心情とは、それは全く違ったものなのである。
アダム・ドライバーの演じるカイロ・レンの無表情な演技を利用し、ここまで巧妙な構成で観客のミスリードを誘うというのは、天晴れと言う他無い。
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パターン破りの展開
こういう思考誘導の他に、本作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』ではパターン破りの展開が多く観られた。
従来なら、悩む古参を若者の勢いが助け事態を打破していたが、今作ではそれが叶わず失敗する。
いかにも怪しい存在だった、DJ(ベニチオ・デル・トロ)。
裏切ったと思わせて粋な活躍をしてくれると思いきや、そのまま退場する。
活躍しまくって死亡フラグを立てまくったローズ・ティコ。
見た目的にも、「あぁ、途中で死にそう」と思わせて、まさかの生き残り。
こういう細かい所でサプライズを積み重ねていた印象が強い。
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気になるレイの出自
個人的に一番疑問であった点、「レイの出自」。
本作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』においては、両親は名も無き市民と言われていた。
ならば、レイは突然変異的な、生まれながらの強者なのだろうか?
レイの荒々しい戦闘力は、その生活で身についたものなのろうか?
私は彼女の圧倒的な強さの裏付けが無いのが気になってしょうが無い。
しかし、フォースとはそういう物なのかもしれない。
ラスト近くで描写された様に、なんの訓練もしていない、虐げられた子供もフォースを操る事が出来る。
何せ、万物に等しく満てる物であるのだから。
因みに、子供の名前はテミリ・ブラッグ。
名前があるという事は、今後活躍するか?
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出演者補足
先ずは、ルピタ・ニョンゴ。
スタッフロールで名前を見つけて、出てたっけ?と思い悩んだ。
彼女はマズ・カナタ役。
コード破りが必要だと助言したゴーグルを掛けているCGキャラである。
そう言えば、前回も同じ事で思い悩んだと思い出したのであった。
ファースト・オーダーの最高指導者スノーク役はアンディ・サーキス。
最早CGキャラ界の重鎮である。
彼は
『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム
『キングコング』のコング
『猿の惑星』のシーザー
といったメイン所のCGキャラを軒並み演じている。
映画監督としても活躍する多才な人物である。
キャプテン・ファズマを演じたのはグウェンドリン・クリスティー。
TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のブライエニー役で有名だ。
前作の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では一言も喋らなかった(と思う)が、今回はセリフがあって女子アピールが出来た。
しかし、相変わらずマスクは取らない。
素顔公開は次回に持ち越しか?
そして、本作で一番目立ったと言える、ゴーリキさん以上のゴリ押しを見せたのが、ローズ・ティコ役のケリー・マリー・トランである。
私は彼女を知っている。
昔、バイト先にいましたワ、こういう顔の人。
何処かで見たことあるな~と、ずっと思ってたんですよ。
どう見ても日本人にしか見えない彼女、あなたの記憶の中にも、彼女と同じ顔をした人物が一人や二人はいるハズである。
もしかして、今後、レイとフィンを取り合って三角関係を形成するのだろうか?
キスシーンは中学生っぽくて微笑ましかったが、レイがそれを知ったらフォースの暗黒面に堕ちて銀河が危なくなるかもしれない。
そうなれば、ワンチャン、ジャー・ジャー・ビンクス以上の人気を得るかも?
ぶっちゃけ、今後どう動くのか、一番楽しみなキャラクターである。
最後に、ヨーダ。
見た感じ、CGでは無く、パペット(人形)に見えたが、実際はどうなのだろうか?
CGには無い独特の存在感があった様に感じた。
もしかしたら、CGでパペットっぽい見た目と動きを再現したのかもしれないが、果たして?
本作は、伝説の英雄が葛藤するというテーマの面白さ、
そして、観客を手玉に取る巧みな構成の上手さが光る作品である。
これらにより作り出されたのは、
人は悩み、
事態打破の為に動いても、必ずしも上手くは行かないという世界であった。
プランを立て実行するが、それが突発的に悉く失敗し、
敵も味方も兵力を削りながらも必死で追い、逃げる展開は鬼気迫るものである。
「スター・ウォーズ」という括りがある以上、派手な冒険は出来ない。
しかし、その枠がある中で、安定した守りに向かわず、攻めの姿勢で作品を作ったのは素晴らしい勇気である。
そして、実際面白かったのだから、これまた凄い事である。
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。
シリーズの重圧にも負けぬ作品である。
こちらは前作
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さて次回は、オールスターキャストなら負けてない!?映画『オリエント急行殺人事件』について語りたい。