映画『オリエント急行殺人事件』感想  豪華出演者!!探偵も、被害者も、容疑者も名演技!

 

 

 

世界一の名探偵、エルキュール・ポアロ。休暇として乗り込んだオリエント急行にて、ヤクザな資産家が殺された。容疑者は乗り合わせた乗客11人全員。「さぁ、殺人者を捕まえるぞ」ポアロの捜査が始まる、、、

 

 

 

監督・主演エルキュール・ポアロ役はケネス・ブラナー
シェイクスピア俳優として有名。
イギリス人で、「サー」の称号も持つ。
監督・出演作に
『ヘンリー五世』(1989)
『ハムレット』(1996)
『恋の骨折り損』(2000)等、
監督作に、
『マイティー・ソー』(2011)
『シンデレラ』(2015)
出演作に
ダンケルク』(2017)等がある。

 

豪華出演陣を、役名(役者名)属性で見てみよう。
エドワード・ラチェット(ジョニー・デップ)悪徳貿易商・被害者

へクター・マックイーン(ジョシュ・ギャッド)秘書
エドワード・マスターマン(デレク・ジャコビ)執事
メアリ・デブナム(デイジー・リドリー)家庭教師
アーバスノット(レスリー・オドム・ジュニア)医者
ハバート夫人(ミシェル・ファイファー)未亡人
ピラール・エストラバス(ペネロペ・クルス)宣教師
ゲアハルト・ハードマン(ウィレム・デフォー)教授
ビニアミノ・マルケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)車販売員
ドラゴミノフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)公爵夫人
ヒルデガルデ・シュミッツ(オリヴィア・コールマン)メイド
ルドルフ・アンドレニ伯爵(セルゲイ・ポルーニン)バレエダンサー
エレナ・アンドレニ伯爵夫人(ルーシー・ポイントン)ダンサー

ブーク(トム・ベイトマン)鉄道会社重役
ピエール・ミシェル(マーワン・ケンザリ)車掌

見知った名前も多いのではないだろうか?

 

雪山で立ち往生した列車内で起きた殺人事件。
犯人はこの中にいる!!

という訳で、『オリエント急行殺人事件』はミステリの女王と言われるアガサ・クリスティーの原作作品の映画化である。

もっとされている様な印象だが、意外と今回が2度目である。

読んだ事無くとも、オチが知られているミステリ作品ナンバーワンと言われる。

 

オチを方々でバラされる位有名且つ、面白い作品なので、

未だ結末をネタバレされていない人は必見の作品である。

 

そして、映画のテンポが良いので、ネタを知っている人もサクサク進む展開を楽しめる。

なんので、曖昧に作品を知っている人は、本来のストーリーの確認を、
知らない人は普通に楽しめる。

重度の原作ファンの人がどう思うかは分からないが、

私の様なライト層には丁度いい映画という印象を受けた。

 

ネタだけ知っていて、ストーリーを知らない作品筆頭の『オリエント急行殺人事件』。
どうせ知るなら、豪華キャストの映画で知ってみるのも悪くないハズだ。

 

 

以下、原作有作品の映画化の難しさを語る。


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  • 懐かしの作品

読書はしますか?
私の趣味の一つは読書ですが、その切っ掛けは『ロードス島戦記』と「ミステリクイズ」である。

「ミステリクイズ」というのは、古今東西のミステリのネタをクイズ方式でまとめた作品で、私はそれを何冊も読んだ覚えがある。

今思えば、元ネタの作品を読まずにミステリのネタだけ知るのは言語道断の所業だが、それで読書にハマったので、一概に悪い事とも言えないのが難しい。

その中でも印象深かったのが、『オリエント急行殺人事件』のネタである。
なかなか衝撃的で、いつか原作を読んでやろうと思っているだけで時は過ぎ、その思いを成就せぬまま幾星霜の過日を経て今に至っている。

という事で、今回、漸く『オリエント急行殺人事件』をちゃんと最初から最後まで観る事が出来たのだ。

 

  • 知られている作品を映像化するという事

なので、私としては始めての『オリエント急行殺人事件』のハズなのだが、何故か「観たことある」様な印象を持った。

それ程、すんなり観る事が出来たのだ。

何故か?
それは、監督の手腕によるものだろう。

監督はケネス・ブラナー。
監督は勿論、俳優、脚本、プロデューサーとしても活躍する。

そのケネス・ブラナーは、
『ヘンリー五世』(1989)
『から騒ぎ』(1993)
『ハムレット』(1996)
『お気に召すまま』(2006)
等といったシェイクスピア作品、
また、
『スルース』(2007)
といった再映画化作品や
『フランケンシュタイン』(1994)
『マイティー・ソー』(2011)
『シンデレラ』(2015)
といった有名原作付き作品を多く監督として手掛けている。

これらの作品には、予め多くの人に知られ、イメージが出来上がっているという共通点がある。

そういう作品を敢えて選ぶケネス・ブラナーという監督は、原作読者のイメージを崩さず、それを無難に映像化するという才能があるようだ。

この無難に済ますという事が、案外難しい。

日本映画でも小説や漫画の映画化作品は多いが、それを観たファンが非難囂々浴びせる事が日常茶飯事な事を考えると、その凄さを理解して頂けるものと思う。

原作ファンなら一言あってしかるべき。
しかし、それを封じて、「まぁ、無難だよね」と言わせるだけでも実は御の字なのである。

ケネス・ブラナーは恐らく、作品をどういう匙加減で作るのかというバランスを、仕事として楽しんでいるのだろう。

なので、出来上がった作品は格別良いわけでは無いが、不満点も無いという物になるのだろう。

そういう観客(原作ファン)の不満を取り除くという心配りを尽くし、本作も丁寧に作られている。

その仕事があまりに丁寧なので、あらすじだけ知っている私でも、内容全てを知っているかの様な錯覚で本作を楽しむ事が出来たのであろう。

正に職人芸である。

 

  • オールスターキャストの必然性

本作『オリエント急行殺人事件』はオールスターキャストである。

何故かと言うと、それは本作がミステリ映画であるからだ。

ミステリ映画やサスペンスドラマの場合、まず目立つのが主人公とその相棒、そして、殺される被害者である。

その上で、さらに目立つのが犯人役という事になり、演じる場合は役者の「格」が大きい人間が選ばれる事が常である。

さて、本作の場合どうか。

あからさまに有名な役者を配置したら、直ぐさま犯人が分かってしまう。

まず前提として、犯人役が有名だとすぐバレるので、全員有名にしてみましたというノリがある。

そして、誰が犯人なのか初見では分からなくしておいて、
実は、全員有名俳優である意味は、、、

というミステリ映画の常套手段を逆手に取ったとみせかけて
実は、ミステリ映画の常套手段をそのまま使用していましたよという事を示し、観客に驚きを与える「メタ的思考」の元に成り立っているのだ。

なので、原作小説も面白いだろうが、『オリエント急行殺人事件』においては、ミステリ映画(やサスペンスドラマ)を見慣れている人間ほど混乱し、仕掛けにハマって面白いという映像ならではの作りになっているのである。

……もっとも、『オリエント急行殺人事件』の場合は、ネタを知っている人が多すぎて、この感動を味わえる人間はごく少ないのが問題なのではあるが、、、

 

  • ポアロの選択

最後に、少しストーリーも語りたい。

本作の肝は、勿論ミステリ部分である。
しかし、テーマ部分も見逃せない。

作中、
「自分は弱き者の味方」
「悪を滅ぼし、善を為す」といった事を言う。

そのポアロが、最後に犯人に対して下した決断。
その胸中は如何ばかりかは知れないが、ポリシーが自家撞着してしまった末の決断を、静かに受け入れている辺りが深い余韻を残す。

あなたなら、どうする?と。

 

 

原作有作品を、文句出ない様に作る。
それは案外と難しい。

しかし、敢えてその方向に特化して、それこそが自分の持ち味だと世に示し続けるケネス・ブラナーの挑戦には、今後も目が離せない。

 

原作小説。名作なだけあって、様々な出版社からたくさん訳が出ている。


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さて次回は、事件が起こっている事にすら気付かない!?小説『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』について語りたい。