映画『レッド・スパロー』感想  スパイの生きる、自由無き世界での自己保存とは!!

 

 

 

ロシア、モスクワにあるボリショイ劇場で主役を踊るドミニカ。彼女は演技中の事故で引退を余儀なくされた。病気の母を抱え、金銭的に困窮した彼女に、ロシア情報庁に勤める叔父のワーニャが近づき仕事を依頼する、、、

 

 

 

 

監督はフランシス・ローレンス
ミュージックビデオ監督出身。
ジェニファー・ローレンス主演の
『ハンガー・ゲーム2』(2013)
『ハンガー・ゲームFINAL:レジスタンス』(2014)
『ハンガー・ゲームFINAL:レボリューション』(2015)
を監督した。
他の監督作に
『コンスタンティン』(2005)
『アイ・アム・レジェンド』(2007)
『恋人たちのパレード』(2011)がある。

 

主演のドミニカ・エゴロワ役に、ジェニファー・ローレンス
体当たりの演技の迫力で、現在、若手ではNo.1と言える人気を誇る女優。
主な出演作に
『ウィンターズ・ボーン』(2010)
X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)
『ハンガー・ゲーム』(2012)
『世界にひとつのプレイブック』(2012)
『アメリカン・ハッスル』(2013)
『マザー!』(2017)等がある。

他、共演に、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、ジェレミー・アイアンズ等。

 

本作『レッド・スパロー』は

スパイ・サスペンス。

 

叔父に依頼されたスパイ行為、
ターゲットの男の携帯のすり替えを命じられるが、
お目付役の殺し屋が暴走、ターゲットを殺し、現場から逃走するが、目撃者であるドミニカには口封じの為の死が待っていました。

死か恭順か迫られ、否応なく国家のスパイへと転身する事になるドミニカ。

彼女は「レッド・スパロー」と言われる、

ハニー・トラップを駆使するスパイとして訓練、活躍して行く事になります。

 

ドミニカが命じられたミッションは、

ロシア在住のCIA捜査官、ネイト・ナッシュに近付き、
彼と通じている、国家の裏切り者(モグラ)の名を聞き出す事。

このドミニカとネイトの二人を中心とした、

虚々実々のスパイのやり取りが、本作の魅力です。

 

一体、本心は何処にあるのか?

真実を求め疑心暗鬼になる恐ろしさがあります。

 

、、、さて、観賞時の注意点として挙げられるのは、

ロシア人も、アメリカ人も、英語を使うのでちょっと混乱する

 

という点があります。

一応、ロシア人はロシア訛りの英語を喋るのでそれで判別が出来ます。

そして、ドミニカの叔父さんのワーニャは

プーチン大統領に見えますが、
只のソックリさんです。

 

本人では無いので、余計に興奮しない様にしましょう。

とは言え、「ロシア情報庁」という肩書きと言い、外見と言い、
意識しているのは間違い有りませんが。

そんな感じのサプライズ(?)な楽しみ方もある、
それが『レッド・スパロー』です。

 

 

  • 『レッド・スパロー』のポイント

虚々実々のスパイ・サスペンス

人は皆、何らかの首輪を付けられている

プーチン大統領のソックリさん

 

 

以下、内容に触れた感想となっとおります

 


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  • スパイ大作戦

本作『レッド・スパロー』はサスペンスフルなスパイ映画。

とは言え、「007」シリーズや『キングスマン』的に、秘密道具を駆使したアクションものでは無く、
嘘と裏切りに満ちた虚々実々の物語です。

銃をぶっ放したり、追跡ヘリをバズーカで撃ち落としたり、
「お前、それ目立ち過ぎて、スパイでは無いじゃん」的な感じでは無く、

嘘や裏切りを駆使したり、
裏で仕掛けた事態が後になって表面化したりといった、陰険なものとなっています。

前者が陽キャのパリピで、
後者が陰キャの悪巧み、みたいな感じですね。

 

  • ドミニカのタイムライン

話が複雑なので、主人公ドミニカ目線で話を振り返ってみます。

1:
ボリショイ劇場で事故、再起不能となり、叔父ワーニャの依頼を受ける。
その仕事で殺人を目撃した為、死ぬか、スパイになるか選ばされて、「スパロー」養成所に行く。

2:
「スパロー」の訓練。
同期をフルボッコにして注目され、コルチノイ(ジェレミー・アイアンズ)に見出され、任務に就く。

3:
ロシア情報庁は、CIA捜査官ネイト・ナッシュと通じている内通者(モグラ)をあぶり出したい。
ドミニカはネイトに近付き、そのモグラの名を探るのが任務。

4:
ブダペストにてネイトと接触。
しかし、ネイトはあっさりとドミニカの素性を調べ上げ、彼女が「スパロー」であると見抜く。

5:
ドミニカはネイトらアメリカ側に亡命と金銭報酬を願い出る。
その手土産として、ロシア情報庁が接触している案件(ブーシェ上院議員の情報流出)の横流しを提案する。
ドミニカはその一方、ワーニャからも捜査費の拠出を受ける。

6:
横流しをロシア情報庁に疑われたドミニカは拷問を受ける。
しかし、この事実を利用すればネイトからより信用され、モグラの情報を聞き出せるとドミニカは訴え、ワーニャはそれを受け入れ解放する。

7:
ネイトと接触するドミニカ。
ネイトを殺し屋と共に拷問するが、
ドミニカは殺し屋の隙を突いて逆に殺し、ネイトを解放する。
一方で情報庁のザハロフにモグラの名前を電話で告げる。

8:
アメリカ側に囚われているドミニカと、
ロシア側のモグラとの間で「人質交換」が行われる。
モグラをあぶり出した功績で、ドミニカはロシアにて表彰される。

 

ちょっと混乱するのは、
「5」の25万ドルの話。

詳しく描写されていませんが、
ドミニカはワーニャから25万ドル受取り、
それを取り引きに使用した様に、パッと見では見えます。

しかし、実際は、その25万ドルはウィーンの口座に振り込んでいました。

(恐らく、実際に取り引きに使った25万ドルはアメリカ側が用意したものだと思われます

この部分で勘違いを観客に起こさせるのが、
後々の伏線になっているのですね。

 

  • 後から見ると、明々白々

さて、虚々実々のスパイ・サスペンスですが、後から見ると、ドミニカの行動は一貫していると分かります。

彼女は自分に対してナメた態度を取った者に、キッチリ落とし前を付ける性格です。

それは、バレエ時代から、ワーニャ叔父さん、国家に至るまで変わりません。

その、何者にも屈する事の無い強い意志の貫徹により、
彼女は歪んだ形の勝利を得ます。

印象的なのは、スパロー養成機関の監督官の言葉です。

彼女はドミニカが命令に従っているのでは無く、自分の行動に後付けして命令に従っている様に詭弁を弄しているだけなのだと見抜いていました。

国家の命令に従っている体で、
自分の主張を押し通す

この態度を監督官は知っていたのです。

初見では、コルチノイはドミニカの行動力を買って採用した様に見えますが、
最後まで観ると、むしろ、
監督官が見抜いたドミニカのその意思力(反骨心)をコルチノイも感じたからこそ、「使える」と思い、試してみたのでしょう。

 

こんな感じで、後から考えると、初見時の印象と違った意味合いを持たせたシーンがあるのも、『レッド・スパロー』の魅力なのだと思います。

 

  • 出演者解説

ネイト・ナッシュ役を演じたのはジョエル・エドガートン
何となく見た目が悪者っぽいですが、その見た目に反して良い人を演じる事も多いので油断出来ません。
顔面力のある役者ですね。
出演作に
『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)
『キンキーブーツ』(2005)
『アニマル・キングダム』(2010)
『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)
『華麗なるギャツビー』(2013)
『エクソダス:神と王』(2014)
『ザ・ギフト』(2015)等。

 

 

 

派手なアクションシーンなど無くとも、
サスペンスで十分面白いと証明している『レッド・スパロー』。

虚々実々のスパイのやり取りの中でも、
個人の強烈な意思力ことが事態を打破する鍵なのだと教えてくれる、
そんな作品なのだと思います。

 

 

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原作小説もあります。作者は元CIA捜査官です。

 


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さて次回は、個人の選択が世界を変える『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』について語ります。