映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』感想  伝統を継承しつつ、新しき展開をも見せる!!

 

 

 

施設が放棄され、恐竜たちが思いのままに住むイスラ・ヌブラル島の「ジュラシック・ワールド」。しかし、火山活動の活発化により、島の恐竜は絶滅の危機に瀕していた。クレアは恐竜保護を訴えていたが、その彼女にコンタクトする人物がいた、、、

 

 

 

 

監督は、J・A・バヨナ
スペイン、バルセロナ出身。
主な監督作に
『永遠のこどもたち』(2007)
『インポッシブル』(2012)
怪物はささやく』(2016)等がある。

 

出演は
オーウェン:クリス・プラット
クレア:ブライス・ダラス・ハワード
メイジー:イザベラ・サーモン

レイフ・スポール、ジャスティス・スミス、ダニエラ・ピネダ、ジェフ・ゴールドグラム、トビー・ジョーンズ 他

 

 

前作『ジュラシック・ワールド』(2016)で、
15年ぶりのシリーズ復活を果たした「ジュラシック・パーク」シリーズ。

制作総指揮に
スティーヴン・スピルバーグ、
コリン・トレボロウ(前作監督)

脚本に
デレク・コノリー、
コリン・トレボロウ

という布陣で、
「ジュラシック・ワールド」シリーズの第二作目として製作されたのが、
本作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』です。

 

映画史に残る傑作、『ジュラシック・パーク』(1993)に始まるシリーズ。

それを意識してか、
本作は、

安心、安定の「いつもの」ジュラシック・シリーズ。

 

 

皆さんは「行きつけの店」みたいなものはありますか?

「マスター、いつもの」みたいなヤツ。

安心感のあるコーヒーを飲める店。

シリーズの伝統を受け継ぎ、崩さない

 

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はそんな感じを受けます。

 

恐竜保護団体のクレアは、
とある大富豪から連絡を受けます。

それは、かつて「ジュラシック・パーク」を創設したジョン・ハモンドのパートナー、ベンジャミン・ロックウッド。

彼の代理人イーライ・ミルズの主導により、
火山の噴火で恐竜が死滅する前に出来るだけ多くの「種」を助け出し、
別の新天地へと移動させる計画を聞かされます。

恐竜にはタグ付けがされており、その所在は今でも確認出来ると言います。

そして、特に知能の高いヴェロキラプトルの「ブルー」も保護対象となっており、
彼女の捕獲協力者としてオーウェンに白羽の矢が立ちます、、、

 

本作は、あくまでいつもの「ジュラシック」シリーズ。

しかし、そのテイストを残しつつ、

一味違ったテイストも加えています。

 

伝統を残しつつ、
少し、新しい物も入れる。

この微妙な塩梅が、
観ている方としては心地良い、

いつもの展開なのに、
観ていても飽きない

 

そういうバランスを実現しています。

 

恐竜がいて、
ハラハラドキドキの大冒険。

良い人もいれば、
悪い人もいる。

逃げろ!
ヨダレを垂らしている、アイツから逃げるんだ!

いつものテイスト、
安定の面白さ、

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はそういう映画なのです。

 

 

  • 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のポイント

ドキドキの大冒険

ハラハラの鬼ごっこ

エゴまる出しの人から死ぬよね

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 人形復活

かつて『ジュラシック・パーク』(1993)という映画は、
『ターミネーター2』(1991)と共に、
映画におけるCGの可能性を見せつけた作品です。

『ジュラシック・パーク』は、
CG、着ぐるみ、アニマトロニクス(人形)を組み合わせて、
リアルな恐竜を作り上げ、

当時の観客の度肝を抜きました。

 

初代『ジュラシック・パーク』を
クリス・プラットとブライス・ダラス・ハワードが解説する動画

 

 

しかし、時は過ぎ、CG技術は進歩、
『ジュラシック・ワールド』(2016)では着ぐるみは無くなり、
アニマトロニクスも1シーンのみだったと言います。

 

ですが、今回、
監督のJ・A・バヨナはアニマトロニクスを復活させます。

彼は、自らの監督作の『怪物はささやく』(2016)でも、
「怪物」をアニマトロニクスで作った実績のある監督。

そのJ・A・バヨナが、
「ジュラシック」シリーズの伝統を復活させた形です。

 

観ている方としては、
実物のアニマトロニクスとCGの区別が全くつきません。

ですがおそらく、アニマトロニクスを使ったと思われる場面は、
クレアがT・レックスでロデオをするシーン。

実物に乗って、左右に動く恐竜に対する反応は、
リアルだからこその演技の出来た場面だと思われます。

他にも、
「横たわるブルー」の手術シーンなど、
実際に触れるからこその演出があり、
CGには無い、アニマトロニクスだからこその魅力を活かしています。

 

  • 言語の壁を越える演出

アニマトロニクスを復活し、
それによる演出を見せてくれたJ・A・バヨナ。

彼は他にも独特の演出をしていたと言います。

それは、
恐竜の鳴き声を撮影現場で流す」という事です。

 

かつて、スティーヴン・スピルバーグも『ジュラシック・パーク』の撮影現場で行ったというこの演出。

J・A・バヨナも、撮影現場で恐竜の鳴き声が流せるように、
常にプレーヤーを準備していたそうです。

 

J・A・バヨナはスペイン人。

主な出演者は皆英語圏の人間なので、
コミュニケーションには通訳が必要となります。

しかし、
実際に現場で恐竜の鳴き声を知らせずに流し、

出演者を驚かせる事でリアルな反応を引き出すと共に、

言語では無く、演出により、
「ここは緊迫した場面なんだ」と出演者に伝えていたといいます。

 

こういうリアルな反応にて、
直感的なものを引き出す事は、

言語の壁を越えて、多数の国の老若男女に届けるエンタテインメント映画においては、
観客にダイレクトにその意図が伝わる、
面白い演出であると言えます。

 

細かいニュアンスを直感的に伝える、

こういう撮影方法も映画にはあるのだという、興味深い話です。

 

  • 二本分の面白さ

本作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は、
前半と後半でまるで別の映画の様なテイストとなっています。

 

前半は、正に「ジュラシック」シリーズ。

火山島から危機一髪で脱出するハラハラドキドキの大冒険は、
イキナリのクライマックス感を味わえます。

また、
剥き出しになる人間のエゴ、
「恐竜を使って金儲けに走る悪人」という、
いつもの「ジュラシック」シリーズならではのモチーフも盛り込まれています。

 

しかし、充分盛り上がる前半から、
後半はちょっとテイストが変わります。

富豪の屋敷を舞台に、
監禁からの脱出と、「モンスター」相手の鬼ごっこ。

モンスター・ムービーのテイストです。

え?こんな事するの?「ジュラシック」シリーズで?
と一瞬思いますが、

思い出してみると初代の『ジュラシック・パーク』からして、
クライマックスで、閉鎖空間での鬼ごっこがありました。

 

「アニマトロニクスの復活」
「恐竜の鳴き声で出演者をビビらせる」
「閉鎖空間での鬼ごっこ」

これらJ・A・バヨナが復活させたテイストは、
完全に初代『ジュラシック・パーク』を意識しているのですね。

初代を意識しているからこその、
ちびっ子の活躍、「メイジー」という孫娘は必須の要素なのです。

 

とは言え、
私としては、閉鎖空間での鬼ごっこをやるのなら、
もっと徹底的にやって欲しかった。

オーウェン(主役)、クレア(ヒロイン)、メイジー(ちびっ子)というメンバーに加えて、

大富豪、悪徳司会者、傭兵、科学者などなど、
「鬼」役のインドラプトルに噛みつかれる雑魚役のメンバーも逃げるパーティーに居ても面白かったと思います。

まぁ、それをやったら『プレデター』みたいになって、
初代のテイストが損なわれ、
対象年齢も「全年齢」から逸れてしまうので、

「ジュラシック」シリーズを意識して、
敢えて統一感を重視したのだと思います。

 

  • クローンの悲劇

「ジュラシック」シリーズで描かれるテーマは、
人間のエゴ、
そして、「クローン技術によって復活したモノの在り方」があります。

 

過去の「ジュラシック」シリーズでは、
クローン技術により産まれた生物でもその尊厳を尊重し、
生命の在り方を自然のままに、人間が撤退する展開となっていました。

とは言え、それは一方で、
人間と恐竜はお互いにその生活圏を区別し、
相互不可侵の関係を築くというものでした。

『劇場版ポケットモンスター ミューツーの逆襲』で描かれるクローン生物の在り方も、
同様の展開を見せていました。

 

しかし、
「ジュラシック」シリーズの伝統を律儀に継承する展開を観せて来た『ジュラシック・ワールド/炎の王国』では、
最後に驚愕の展開をみせます。

恐竜を人間の生活圏に解き放ち、
恐竜と人間が不可分に交わる、新しい世界が始まってしまうのです。

 

その決断を下したのは、
ちびっ子のメイジー。

自らもクローンである彼女は、
まるで自己の存在を主張するかの如くに恐竜達を解放します。

「危険だから、恐竜は隔離する」という発想では無く、

「クローンだからといって、隔離された空間に押し込まれる」という枷を意識し、

それから自由を志向したのです。

ラストシーンで、
ブルーがトラックの狭い空間を拒絶し走り去って行ったのが印象的です。

やっている方は区別のつもりでも、
やられる方は差別でしか無い。

そういう問題提起でもあったのですね。

 

  • 出演者補足

クレア・ディアリング役を演じたのは、前作同様ブライス・ダラス・ハワード

前作ではちょっとお転婆な感じでしたが、
本作では少し大人しくなっていました。

また、前作ではおっぱいを強調し、
いちいちセクシーポーズをとってくれる、サービス満点の演技でしたが、
本作ではそのあざとさは激減しています。

賛否両論ありましょうが、
次作でのキャラはどうなるのか、その辺りも楽しみです。

 

メイジーの教育係アイリスを演じたのは、ジェラルディン・チャップリン

何処かで拝見したなぁ、、、
と思っていたら、監督の過去作の『怪物はささやく』にて、
主人公の学校の校長先生を演じていました。

ラスト、美味しい役で再登場するかと思いきや、
普通に退場してしまいました。

次回作での登場はあるのか?
それも注目です。

 

 

 

 

今までの「ジュラシック」シリーズの伝統を意識し、継承しつつも、
新しい展開を観せてくれた『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。

しかし、物語はまだ続きます。

激変を迎える世界、
正に『ジュラシック・ワールド』が始まるのです。

既に、今の時点で続篇が待ち遠しい、
続篇、続篇を、はよ!!

 

 

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前作『ジュラシック・ワールド』です

 

 

 


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