映画『スタンド・バイ・ミー』感想  二度と戻らない、しかし、忘れ得ぬ少年の日々!!

 

 

 

キャッスルロックの田舎町に住むゴーディは、親友のクリス、イカれた友達のテディと隠れ家で遊んでいた。そこにバーンがやって来てこう言う「死体を見たくないか?」、、、

 

 

 

 

監督はロブ・ライナー
代表作に
『ミザリー』(1990)
『ア・フュー・グッドメン』(1992)
『アメリカン・プレジデント』(1995)
『最高の人生の見つけ方』(2010)

 

原作はスティーヴン・キングの小説。
中篇集「恐怖の四季」の一篇、『死体(原題:THE BODY)』。

 

映画の題名になった、有名な主題歌『スタンド・バイ・ミー』を歌うのは、ベン・E・キング

 

出演は
ゴーディ:ウィル・ウィートン
クリス:リヴァー・フェニックス
テディ:コリー・フェルドマン
バーン:ジェリー・オコネル

エース:キーファー・サザーランド

作家:リチャード・ドレイファス 他

 

 

 

作品というものは、
それに接した年頃によって、
その作品の印象が大いに変わってしまうものがあります。

夏目漱石の『坊ちゃん』などは、
若いうちに読んでおくべき、
と、よく言われますね。

 

映画『スタンド・バイ・ミー』も、正にそういうタイプ。

本作は

二度と戻らぬ、
しかし、
忘れ得ぬ少年の夏の日々を描いた作品です。

 

 

本作を初めて観たのはいつの頃か、、、

確か、私が10歳くらいの時だったのだと思います。

子供が観て、面白かった作品。

それを今観ても、もの凄く面白い。

 

正に、奇跡の様な映画。

 

個人的に好きな映画ベスト10を作ったならば、
必ずそれに入る作品です。

 

行方不明になった少年が列車にはねられて死んでいたという、
不良グループの噂を立ち聞きし、

その死体を見つけて町のヒーローになろうと意気込む少年4人組。

線路脇にある死体を発見しに、
40キロ近い道のりを歩いて探しに行きます。

遠足気分でキャンプを楽しもう、
位に考えて出発しますが、、、

 

舞台は1959年、夏。
(映画公開は1986年:日本では1987年)

30年前に作られた、60年前の話です。

しかし、
中学進学を目前に控えた12歳の少年達のエモーションは、

現代においても全く変わる所はありません。

 

リアルベースの話なので、
勿論、
宇宙人も妖怪もロボットも出てきません。

しかし、
それが無くても、本作は冒険物語。

いわゆる、

行きて帰りし物語なのです。

 

少年達が直面するのは、

兄弟、両親、進学、年上の不良などなどの悩み、

そして、勃発する大冒険の数々、、、

 

現代の映画の様に、ど派手という程では無い、

しかし、等身大だからこそ、

本作を観る全ての人間が共感出来ると言っても過言ではありません。

 

リアルな子供が観て楽しいのは勿論、

かつての子供達が観ると、
更に心に来るものがある、

本作『スタンド・バイ・ミー』こそ、
映画の面白さが詰まった作品だと、私は思います。

 

 

  • 『スタンド・バイ・ミー』のポイント

夏の日の少年達の、行きて帰りし冒険物語

二度と帰らぬ、最も幸せな時代

三つ子の魂百まで

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 12歳という時代

本作『スタンド・バイ・ミー』は、ラストシーン、

12歳の時の親友以上のものを、人生で得る事はあるだろうか?

これに尽きます。

 

子供時代は、
それが普通の事であり、
そして、それなりに悩みも多く、
決して気付く事はありません。

しかし、
大人になると、
如何にあの時代が光り輝いていたか、
その事を折りに付け思い出す事になります。

 

子供時代に観て、大好きだった作品。

今見返しても面白い。

というよりも、
今見返したからこそ気付く事も多いです。

 

子供の時は、
純粋にゴーディやクリス達、子供目線でのリアルな感情、冒険、悩みに共感し、
それが大変面白かったのです。

しかし、
これを今観ると、完全に作家(ナレーター)目線。

懐かしい日々と記憶を噛みしめる様に映画を観ました

私の少年時代の話ではありませんが、
私が子供時代に感じた様々な事が、
この映画の思い出を含めて蘇ってきます

なんだか、
映像も、光の効果を意識しているのか、
郷愁を誘う様な撮り方をしているのだとも気付きます。

(髪の毛がキラキラ光っていたり、映像に光の沙がかかっている感じがあったりする所です)

 

この、
実際エピソードの面白さ+思い出の懐かしさの相乗効果が、
『スタンド・バイ・ミー』を凡百の映画と一線を画するものにしているのですね。

 

本作は、「死体探し」の大冒険、
そのエピソード一つ一つが本当に面白いです。

あった、あった、子供時代に、こういう事、
と、共感出来るものばかりです。

 

犬のチョッパーに追いかけられる話。(26:47)

こういう吠える恐い犬や、
子供と喧嘩するイカレタ大人など、
確かに子供時代にいました。

犬を煽って全力で逃げる(犬&飼い主から)というのは、
子供ならではの危険な遊びの一つでは無いでしょうか。

これが、開始30分位のエピソードだという事実。

小学校の時なら、
もう、チョッパーの「タマを食いちぎれ」だけで、
翌日の学校では一日笑い話になります。

 

橋にて列車に追いかけられる話。(36:51)

まず、冒険の冒頭にて、
テディのチキンレースにて、小手調べをした感がある
列車ネタ。

本命は、列車との鬼ごっこです。

何しろ、
本作では死体の少年を殺した「凶器」とも言える存在、
それが列車ですからね。
危険度はMAXです。

とは言え、子供心に、
「どうせ助かるんだろ?」
とひねくれた見方をしていました。

しかし、
バーンのあまりの鈍くささに、
次第に焦りがゴーディに、
そして、観客にも伝染して行きます

少年の真後ろに迫る列車、あの迫力の映像はしかし、
実際は、映像トリックで、
何百メートルも間隔は空いていたのだそうです。

 

キャンプの夜語り、バカ話と
パイ食い競争の話。(42:31)

銃を持って見張りをしたり、
夜明けに野生動物に思いがけず遭遇し、それを人に言わずに自分の胸だけにとっておく。

キャンプではエピソードがてんこ盛りですが、
中でも出色なのが、パイ食い競争。

ゴーディの語る劇中劇、
デブとバカにされている少年デビー・ホーガンの復讐譚の清々しさが、
素直に笑えてスカッとします。

本作は、
笑える話、冒険にも、随所に「死」の影が垣間見えます

まるで人生そのものの様に、
陰陽併せ持つユーモアですが、
ここの馬鹿さ加減は、素直に笑えるのです。

…とは言え、
今観ると、
ラストのゲロ合戦など、まるでゾンビの共喰いの様にも見えて、如何ともし難いですね。

 

森を横断中、沼に嵌ってヒルに噛まれる話。(1:03:43)

子供の水掛合戦が一転、
自らの体を蝕む、恐怖の存在に気付くというコミカル且つホラー的なエピソード。

Tシャツを脱いだ瞬間、
ヒルが体中にくっついているのは、
ゾッとする場面です。

溢れる血を見たからか、
タマを吸われたからなのか、
失神する気持ちも解らなくもありません。

 

不良のエースとの対決。(1:14:03)

本作では様々な「少年の悩み」が描かれますが、
「地元の年上の不良」というのは、
いつの世も、
どんな場所でも目の上のたんこぶなのですね。

少年が、その日々を脱ぎ捨てる、
つまり、悩みを克服する、
ある種の儀式的なエピソード(イニシエーション)とも言えるでしょう。

 

そして、冒険を終えた少年達は町に帰ってきます。

しかし、
その町はもう、以前の様に「自分の全世界」とは思えず、
ちっぽけなものに見えます。

何故なら、自分が成長して
少年時代が終わったからなのです。

 

  • 少年の乗り越えるべき壁

『スタンド・バイ・ミー』では、
冒険というのは物理的なものだけでは無く、
(主にゴーディを中心として)
精神面においても、その冒険が描かれています

少年の悩み、それは

兄弟、両親、年上の不良などなどです。

いずれも、
少年が「絶大な信頼を寄せる神の様な存在」「自分が勝てない絶対的なもの」
というものですが、

しかし、
相手も自分と同じ人間だと気付く事、
そして、その相手を自分が乗り越える壁だと認識する事が、
少年時代が終わる瞬間なのだと思います。

 

特に主役のゴーディとその家族は
兄の死を引きずっており、

「死体探し」という本作自体の目的も相俟って、

「死」という陰影がそこかしこに見受けられます。

 

ゴーディは、
家族を繋いでいた兄が死んだ事で、
両親、特に父親に、
自分を認識して貰っていないと悩んでいます。

父親に、承認されていないのですが、
しかし、
少年は、友情の中に、それを見出すのです。

兄の「死」によって家族間に吹いた隙間風。

それを「死体探し」の過程にて埋めるのですね。

 

冒険エピソードの合間に挟まれる、
ゴーディとクリスの会話、

また、
テディと彼の父との関係、

進学の悩みなど、

父に認められない、
信頼していた大人に裏切られる、
他人に親をバカにされる、

いずれも子供にとっては身も心もえぐる大問題であり、

これらの悩みを乗り越える、
その過程を描いたのが本作であり、

それは、少年時代の終了を意味するものなのです。

 

  • 三つ子の魂、形成される

冒頭、
クリスの「死」にて少年時代を思い出す作家。

クリスは、
その少年時代と変わらず、
正義感に溢れる人物であり、
しかし、だからこそ死んでしまったのです。

 

さて、
本作『スタンド・バイ・ミー』は、
私の大好きな作品。

映画が面白かったので、
スティーヴン・キングの原作本も買いました。

しかし、、、

映画の方が断然面白かった!!

そもそも、
原題は『THE BODY』つまり「死体」で、
「スタンド・バイ・ミー」という名前も、
映画オリジナルというか、
主題歌から採ったものなのです。

 

映画版『スタンド・バイ・ミー』。

原作者のスティーヴン・キングは、一足先に、
一人で試写で観たそうです。

その時、監督達には何も言わず、
さっさと帰ったとのこと。

しかし、
後日、原作者に「小説より面白い」と言わしめました。

つまり、
スティーヴン・キングは、
映画が原作よりあまりに面白くて、
それが面白く無かったのでしょうね。

悔しくて、
観た直後は、素直に称賛出来なかったのだと思います。

 

それ程の名作だった映画版。

私が小説版「死体」をつまらなく感じたのも、
しょうがありません。

 

しかし、です。

私はこの時、
スティーヴン・キングという小説家の事を知ってしまった

後年、
本作の監督ロブ・ライナーは、
同じスティーヴン・キングの原作『ミザリー』を映画化し、
これまたヒットします。

そして、
この『ミザリー』もまた名作。

映画を観て、
やっぱり、原作を読もうと思ったら、
再びスティーヴン・キング。

そして、
『ミザリー』は映画も原作も共に面白かった!

小説『ミザリー』を読む頃には、
私もある程度成長し、
読書の面白さに気付いたのだと思います。

そして、
スティーヴン・キングは何やら、
ベストセラー作家のホラー作家なのだと言う。

そこから、
他の作品も読み始めたという訳ですね。

IT』やら、
『ドロレス・クレイボーン』やら、
『フォックス・キャッチャー』やら、
『グリーン・マイル』やら
『痩せゆく男』やら
『ペット・セマタリー』やら、、、

映像化された作品を中心に、スティーヴン・キング作品に触れる事で、

映画と
小説の双方向の面白さ

そして、
ジャンルとしてのホラー小説(幻想・怪奇小説)の面白さに気付いた、

というか、
今思えば、
スティーヴン・キング作品(映画化作品・原作小説)によって、
少年時の自分は条件付けされた様な気すらします

 

クリスは少年時の正義感を忘れずに持っていました。

三つ子の魂百までと言いますが、

私も、
この『スタンド・バイ・ミー』が切っ掛けで、
今でも映画と小説が好きな人間になったのだと、
今回、あらためて気付きました。

ある意味、
私を形成した作品とも言えるのですねぇ、、、

 

  • 出演者補足

メインの出演者は少年ながら、
しかし、その配役、演技ともこの上ない作品だったのが、
『スタンド・バイ・ミー』です。

 

中でも、クリス役のリヴァー・フェニックスは、
夭折した天才役者という印象が強いです。

正に、本作のクリスとエモーショナルに重なります。

他の出演作に
『リトル・ニキータ』(1988)
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)
『殺したいほどアリ・ラブ・ユー』(1990)
『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)等があります。

 

テディ役を演じたコリー・フェルドマン

コリー・フェルドマンも、言わば天才子役。

『13日の金曜日・完結編』(1984)
『新・13日の金曜日』(1985)という
スプラッター映画にも出演し、人気を実力を見せつけました。

そして、いわゆる、少年が主人公の子供向け映画に多数出演しています。

『グレムリン』(1984)
『グーニーズ』(1985)これに本作
『スタンド・バイ・ミー』(1986)を加え、

子供が観て楽しめる鉄板映画にいつも出ていた子役として、
同じ子供時代の私の印象に鮮烈に残っています。

 

そして、不良のリーダー、エース役のキーファー・サザーランド

映画俳優としては、
『ヤングガン』(1988)
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)
『ア・フュー・グッド・マン』(1992)
『三銃士』(1993)等の作品のイメージがありますが、

近年ではやはり、
TVシリーズの「24 -TENTY FOUR-」(2001~210)のジャック・バウアーとして有名でしょう。

スゴ腕の捜査官も、
昔はヤンチャしてたんだなぁと、物思いにふけります。

 

 

 

 

忘れ得ぬ、
しかし、
二度と帰らない少年時代の夏の日々を描いた作品『スタンド・バイ・ミー』。

60年前のアメリカの片田舎を描きつつも、

それが万国共通の郷愁を醸し出す、

この懐かしさの共感性こそが、本作の魅力です。

そして、
それは、
気付いた時には、二度と手に入る事のない大切な宝物。

その、
愛おしくも、ほろ苦い思い出を詰め込んでいるからこそ、

『スタンド・バイ・ミー』自体が、

もう一つの子供時代の思い出として、
これを観る人の心の中に、長く生き続ける作品なのだと思います。

 

 

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