映画『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』 感想  悪夢と絶望に満ちた7日間!!

 

 

 

FBIのデズモンド捜査官が担当するテレサ・バンクス事件。それはその後、違う土地で繰り広げられる悲劇の幕開けであった。その場所とは「ツイン・ピークス」。地元の高校に通うローラ・パーマーこそ、後に町全体を揺るがす事件の被害者となる少女だった、、、

 

 

 

監督はデイヴィッド・リンチ。他の映画監督作品に
イレイザーヘッド(1976)
エレファント・マン(1980)
デューン/砂の惑星(1984)
ブルーベルベット(1986)
ワイルド・アット・ハート(1990)
ロスト・ハイウェイ(1997)
ストレイト・ストーリー(1999)
マルホランド・ドライブ(2001)
インランド・エンパイア(2006)がある。

主演のローラ・パーマー役にシェリル・リー

他、共演にレイ・ワイズ、クリス・アイザック、キーファー・サザーランド、デヴィッド・ボウイ、カイル・マクラクラン等。

 

本作『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』はTVシリーズ『ツイン・ピークス』の前日譚である。

よって基本的にはTVシリーズを観ていないと人物関係や世界観が分かり難いだろう。

もっとも、TVシリーズを観ていたとしても分からない部分がかなりある。

 

しかし、そういう謎は謎として、

自分で解釈したり、妄想したり、考えたりするのが面白い作品である。

 

これは、デヴィッド・リンチの他の作品にも言えることだ。
その上で、本作『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』の特徴的な点は、

絶望に彩られた悪夢的世界を展開している所である。

 

ローラ・パーマーは死ぬ。
それが作品の前提にある。TVシリーズも、映画版もだ。

それ故、死に至るまでの苦痛に満ちた7日間を描いた本作は陰惨の一言に尽きる。

しかし、その悪夢を粘り強く映像化した点は驚嘆すべき事柄である。
観る人の心に深い傷跡を残す『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』。
観るにはある種の覚悟が必要な作品だ。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 当時の反応とは?

TVの『ツイン・ピークス』の旧シリーズは何とも中途半端な所で終わった。
多くの謎が解明されつつも新しい謎や、絶妙の引きを残したままであったのだ。

視聴者のフラストレーションは溜まった事だろうが、そこで映画化の報を受けてさぞ喜んだ事であろう。

しかし、映画化は続きではなく前日譚であった。

これは、例えば『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版で「人類補完計画」の話をせずに「エヴァンゲリオン制作秘話」みたいな話をする様なものであった。

それでもファンは喜んだ。
もう一度『ツイン・ピークス』を観られるのだと。

しかし、当時『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』を観た客の反応は散々だったらしい。

『ツイン・ピークス』TVシリーズはメインの謎がありつつも、町の住民の何処かユーモラスな日常も同時に描いており、その硬軟織り交ぜたストーリーが人気を博した一因であった。

しかし、映画版は『ツイン・ピークス』の闇の部分を凝縮した内容で、TVシリーズの「笑い」要素を期待した観客の顔にドロドロの黒いタールを塗りつけてしまったのだ。

これに、当時のファンが「期待外れ」と怒ったのも無理ない事かもしれない。
あまりの恐ろしさに逆ギレしてしまったのだ。

だが、この作品が駄作かと言うとそうではない。
むしろ恐ろしい傑作と言えるだろう。

 

  • 何故前日譚なのか?

『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』はTVシリーズ『ツイン・ピークス』の2つの前日譚がセットになっている。
冒頭の「テレサ・バンクス事件」とメインの「ローラ・パーマー最期の7日間」の二つだ。

「テレサ・バンクス事件」は作中で語られつつも、詳しくは描写されなかった事件だ。
この事件の捜査の様子を描き、ある程度の謎が解明された。
だが不可解な失踪が相次ぎ、結果さらなる謎が噴出し、観ていて頭を抱える展開となっていた。

この、「謎の解明がさらなる新しい謎を生む」というのは如何にも『ツイン・ピークス』的面白さがあった。

そして、メインが「ローラ・パーマー最期の7日間」である。
ローラが追い込まれ、死という絶望の沼に沈んでいく様がねっとりと描かれる。

TVシリーズでも盛んに言われた「ローラは死にたがっていた」というセリフにもうなずける程の苦しみ塗れの生であった。
むしろ、死が救済だったのだ。

そしてそのローラの最期の7日間において、いままでのTVシリーズの設定をふんだんに盛り込み、前日譚でありながら総集編のような赴きを作っていた。

映画はローラの死によって終わるが、TVシリーズはその時点から始まる。
しかし、映画版を観るにはTVシリーズを観ている必要がある。
ここに、奇妙な円環が発生する事になる。

総集編である前日譚を作る事で、
ローラの死が中心に置かれ、
TVシリーズがその対極に存在する事になる。

そしてTVシリーズを観たら前日譚が理解出来、そのラストはTVシリーズの最初につながる。

この映画はまさに、計算され尽くされた無限ループを生み出しているのだ。

 

 

だが、しかし、この無限の円環が、遂に崩される。

新シリーズ『ツイン・ピークス The Return』が放映されるのだ。
一体、どんな話になるのか?

謎が解明されるのか?
それとも謎は謎のまま、さらなる謎が生まれるのか?
それは実際今から観てのお楽しみなのだ!

 

 

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さて、次回は『ツイン・ピークス』序章(インターナショナルバージョン)について解説したい。