映画『インサイド』感想  怖すぎて、もはやギャグ!!ツッコミまくりのホラー劇場!!

 

 

 

産婦人科からの帰り道。子供がお腹を蹴った事に気を取られ、衝突事故を起こしてしまった妊婦のサラ。同乗していた夫は死亡し、自らも補聴器無しでは居られなくなってしまった。そのサラが一人で過ごすクリスマスの夜、見知らぬ女がドアを開けろと訪ねて来る、、、

 

 

 

 

監督はミゲル・アンヘル・ビバス
スペインの監督。
監督作に
『スペイン一家監禁事件』(2010)
『ハーモニー・オブ・ザ・デッド』(2015)

 

出演は
サラ:レイチェル・ニコルズ
女:ローラ・ハリング
アイザック:ベン・テンプル 他

 

 

フランス産のスプラッター・ホラー『屋敷女』(2007)。

本作はそのスペインリメイク(アメリカ資本)です。

原作は未見なので、あくまでも本作のみの感想となります。

 

さて、その本作、どんな作品なのかというと、

今時珍しい、
直球勝負のホラーです。

 

 

夜中に現われた突然の訪問者。

サラはドアを開ける事を拒否し、
警察を呼び、隣人のアイザックにもヘルプの電話を掛けます。

犬のエクスカリバーと共に就寝したサラ。

深夜、雨が降る。

雷が鳴り、その稲光に照らされる、寝ているサラのベッド脇に女が立っている、、、

 

…まぁ、ご想像の通りに、
この謎の訪問者の「女」が大暴れ。

最近流行の
シチュエーションホラーや
アイデアや脚本重視のオシャレな感じでは無く、

どちらかと言うと勢い重視のスラッシャーな感じです。

 

なので、
ゴア表現というか、
スプラッター感も多少ありますので、

血が出るのが嫌いな人はちょっと引くかもしれません。

 

ですが、その一方で、
ホラー特有の、

恐怖が逆転して笑いに転じる

 

感覚も味わえる本作『インサイド』。

ホラー映画の面白さが味わえる作品です。

 

 

  • 『インサイド』のポイント

スラッシャー(殺人鬼)映画

一対一での奇襲の有効性

ホラー転じて、ツッコミからのギャグ的演出

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 女王の帰還

さて、本作『インサイド』。

謎の「女」が家に侵入して、
妊婦のサラに「赤ちゃんを産む手伝いさせて」と言って来ます。

意味が分からない、
訳が分からない、

だから、怖い

その「女」を演じるのは、ローラ・ハリング。

 

2016年、
英BBCが選ぶ、
「評論家が選ぶ、21世紀の映画作品ベスト100」
なるものが発表されました。

西暦2000年以降に公開された映画作品をランキング付けしたものですが、
4位に『千と千尋の神隠し』が入っていました。

(因みに、厳密に言えば、「2000年」は21世紀では無く、20世紀に属しています)

そのランキングで1位を取ったのが、
ディヴィッド・リンチ監督作の『マルホランド・ドライブ』(2001)で、私も大好きな作品です。

 

主演はナオミ・ワッツ。
準主役を演じたのが、本作で「女」を演じたローラ・ハリングです。

ナオミ・ワッツは『マルホランド・ドライブ』でブレイクして、
女優としてのキャリアがスタートした印象ですが、

ローラ・ハリングの方は、
その後は殆ど映画で観る事はありませんでした。

その、ローラ・ハリングが久しぶりに登場!!

 

いやぁ、私、一瞬で分かりましたよ!

稲光に照らされて、初めて見えた「女」の顔、

「あっ!ローラ・エレナ・ハリングじゃん!!久しぶり!!」って。

異常者の役なんですが、
久しぶり過ぎて、なんだか、女の方を観ていて応援したくなってましたよね。

ええ。

 

因みに、
劇中では出てきませんでしたが、
エンドロールでは、ちゃんと名前が付けられていた「女」。

しかし、
パンフレットで確認したところ、
女:ローラ・ハリング
との記載でした。

確か、
「ミランダ」とか「マーガレット」とか、
「M」で始まる名前だったんですが、
ちょっと忘れてしまったのが、遺憾の極みですね。

 

ローラ・ハリング、アクの強い顔の美人なのですが、
1964年産まれなので、
現在は54歳なんですねぇ、、、

月日が経つのは早いなぁ、、、

 

  • スラッシャー映画

そのローラ・ハリングが活躍する『インサイド』。

最近のホラー映画の流行は、
アイデア勝負の凝ったシチュエーションや、ストーリーなのですが、

本作は昔懐かしのスラッシャー映画的な印象を受けます。

 

スラッシャー映画とは、
簡単に言うと殺人鬼が活躍する映画です。

似た用語にスプラッター・ムービーとかありますが、
スプラッターの方は、血飛沫が飛び散る映画

なので、
殺人鬼が犠牲者を血祭りに上げる作品、

「13日の金曜日」シリーズのジェイソンや、
「エルム街の悪夢」シリーズのフレディなんかは、
スラッシャーでありながら、映画的にはスプラッターな感じであり、
この概念は重複する事もしばしばです。

 

本作も、
謎の侵入者「女」は、
図らずも(!?)次々と邪魔者を排除して行きます。

無為無策で突っ込んで行って、
「女」の奇襲を喰らって次々とぶち殺されて行く、サラの仲間達。

殺され方が残忍なものもあったり、
血が噴き出す場面があったり、

そういうゴア表現がある一方、

「なんでそうなるんだよ」
「志村~、後ろ、うしろ~」
「チョ、マテヨ。一人で行くな、相棒と行け!」

「女」に殺してくれと言わんばかりの隙を見せ続ける救助者達の失策の数々に、
ホラーが転じて、もはやギャグ的な印象を抱かざるを得ません

 

残虐性の中に、奇妙なユーモアが垣間見える

そういう意味でも、
昔懐かしのモンスター的なスラッシャー映画と共通点のある作品です。

 

  • その設定、いる!?

夜中に突然の侵入者が家の中に入って来る、
だから、『インサイド』。

シチュエーション的には、
閉鎖空間でのサイコ・サスペンスだったり、
シチュエーション・スリラーだったりする印象なのですが、

実際はスラッシャー・ムービー。

このギャップの面白い作品です。

 

しかし、疑問なのが、
「聴覚に障害がある」という設定です。

 

この設定、
本作においては殆ど活かされていません。

原作の『屋敷女』の名残でしょうか?

本作では、補聴器が不調になり、耳が聞こえなくなる状況が出て来ますが、
それも電池交換(部品交換?)で、直ぐに解決します。

個人的には、
もっと「音が聞こえない」という特殊な状況における、ホラーの独特な演出を観たかったので、

それが無かったのがちょっと残念ではあります。

 

作品に使わない余計な設定は、盛るだけ無駄だと思うのですが、どうでしょうか?

 

  • 産みの苦しみ

その一方、
主人公のサラが妊婦であるという設定は、ちゃんと活かされていて面白かったですね。

 

身重であり、

さらには出産促進剤である「オキシトシン」を接種させられた事によって、
体調が最悪の状況であるサラ。

普段なら不自由で無い事でも、
かなりの制限が課せられています。

ホラーにおいて、
主人公側に課せられるルールや状況による制限などは、
観ていてイライラしますが、
そのイライラが逆に面白さのスパイスでもあるんですよね。

 

ですが、ラストのクライマックス、

組んずほぐれつ、遂に一対一のタイマンをするサラと「女」。

豪雨が降り続く野外、
ビニールを張ったプールに落ち、
呼吸が出来ない状況での水中バトルになります。

ここで、「女」は、
自分よりも、溺れたサラを優先して水中から脱出させます。

再三「女」が言う通り、
彼女の狙いはサラの赤ちゃん。

「私が出産させる」と息巻いていました。

なので、サラを殺すつもりはさらさら無いのですね。

呼吸が続かず、
自分が溺れる事になっても、サラを優先した「女」。

サラが、ビニールを張ったプールから脱出する様子は、
さながら出産シーンの様相を呈していました。

ある意味で、
「女」はその目的を果たしていたんですね。

 

妊婦という状態にて、散々苦しんだサラ。

しかし、最後は、その制限によって、逆に命が救われる、

こういう逆転劇があるのは、観ていて気持ちが良い、
ホラー映画のカタルシスの部分です。

 

そして、本作においてサラが見舞われた困難はつまり、
「結局、出産とは、自分自身の力のみが頼れるもの
だという事を表していたのかもしれません。

 

 

 

昔懐かし風味の、不死身の殺人鬼が活躍するスラッシャー映画である『インサイド』。

とは言え、
襲われる方にも、実はそれに値する理由があったのだ!
という真相は、最近のホラー映画で見られるネタでもあります。

温故知新をしつつ、
現代風の部分もちゃんと残す。

こういう工夫が随所に見られる、
だからホラー映画は面白いし、止められないのです。

 

 

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