映画『IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』感想  恐怖に立ち向かう武器、それは友情である

あの夏の日から、27年経った。
ビルは小説家として成功し、自身の著作の映画化作品の脚本も手掛けていた。その撮影中、故郷の旧友から電話がかかって来る。
マイクと名乗ったその人物の話を聞いた途端、言いようも知れぬ不安が呼び起こされる。
自分は、過去を忘れていた…生まれ故郷、メイン州デリーで、少年時代の仲間「ルーザーズクラブ」の皆と一緒に、それ(IT)と戦った事を、、、

 

 

 

 

 

監督は、アンディ・ムスキエティ
アルゼンチン出身。
デビュー作は、ジェシカ・チャスティン主演の『MAMA』(2013)。
監督した前作の『IT/ イット ”それ”が見えたら、終わり。』(2017)は、
ホラー映画史上最大のヒットを記録したとの事。

 

原作は、スティーヴン・キングの『IT』。

 

出演は、(現在/若き日)
ビル・デンブロウ:ジェームズ・マカヴォイ/ジェイデン・マーテル
ベヴァリー・マーシュ:ジェシカ・チャスティン/ソフィア・リリス
リッチー・トージア:ビル・ヘイダー/フィン・ウォルフハード
マイク・ハンロン:イザイア・ムスタファ/チョーズン・ジェイコブズ
ベン・ハンスコム:ジェイ・ライアン/ジェレミー・レイ・テイラー
エディ・カスプブラク:ジェームズ・ランソン/ジャック・ディラン・グレイザー
スタンリー・ユリス:アンディ・ビーン/ワイアット・オレフ

ペニーワイズ:ビル・スカルスガルド  他

 

 

 

先日(2019/11/03)
2019年の、ゆるキャラグランプリの発表がありました。

ご当地部門では、
開催地のゆるキャラ、長野県の「アルクマ」が、
ホームの強さを発揮しグランプリに、

企業・その他部門にてグランプリを獲得したのは、
個人勢のVirtual YouTuber である、
「オシャレになりたい!ピーナッツくん」(滋賀県)でした。

ピーナッツくんは、終始1位を走り続け、
「うさっぴぃ」(2位/愛知県:株式会社宇佐美鉱油)や、
「ペイレンジャー」(3位/東京都:株式会社ゆうちょ銀行)の猛追(組織票)を退けての優勝でした。

 

そのピーナッツくんの、
ゆるキャラグランプリイベント会場のレポート動画を拝見致しました。

ピーナッツくん曰わく、
現地にて、子供に絶大な人気を誇ったのがうさっぴぃ。

会場での投票分は、
ウェブの投票の「2倍」という事もあって、
現地での得票も順位に左右されますが、

子供はみんな、
うさっぴぃ風船を持っていたそうで、
「こりゃ一番人気、子供はうさっぴぃに投票だわ」と言っていました。

やっぱり、
イベント会場で配る風船っていうものは、
子供の心を捉えて離さないのですねぇ…

 

その、うさっぴぃが配っていた、風船の色は、赤色

お祭り、風船、赤色、
ふわふわ浮かぶよ…

ハァイジョージィ

うっ、頭が!?

そう、思い出しましたか?

みんな大好き(!?)、恐怖の象徴、
あの、ペニーワイズが帰って来たのです!!

 

と、いう訳で、
前置きが長かったですが、
『IT/ イット ”それ”が見えたら、終わり。』の続篇、
『IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』の紹介です。

題名長いし、
前作と殆ど一緒で、紛らわしいよ!
という、ツッコみは置いておいて、内容に触れてみましょうか。

 

さて、
まず最初に言って起きたい事は、

完全に、前作を観た人向けの作りとなっています。

 

作品によっては、続篇でも、
前作を観ていない状態で、問題無く楽しめる映画がありますが、
(「エルム街の悪夢」シリーズとか)

本作は、
メインで活躍する登場人物の紹介が一切無いし、
事件の「起こり」や「因縁」の説明が全くありませんので、
事実関係を、本作のみで把握する事は困難となっております。

勿論、
ホラー映画として「ビックリ」部分を楽しめますが、
ストーリーを把握するなら、
前作の視聴は必須となっております。

 

そして、
この姿勢は正しいです。

本作の上映時間は、169分。

それでも、鑑賞中は、時間があっと言う間に過ぎ去ってしまいますが、

何しろ本作、
メイン登場人物全員に、見せ場がキッチリ用意されている作品。

169分という長大な上映時間でも、
カツカツとなっております。

なので、
初見をバッサリ切って、
前作のファン向けに作ったのは、やむを得ないし、
それが、正解だと言えるのです。

 

 

前作から27年後の、2016年。

かつての「ルーザーズクラブ」の面々は町を出て、
それぞれ、社会的に成功した人生を送っていた。

しかし、
一人、町に残ったマイク・ハンロンから、皆に電話がかかって来る。

「あれ」がまた始まった、
「それ」は生きていた、と。

子供時代の記憶を忘却していた6人は、
一人町に残り、記憶を持ち続けていたマイクの招集に応じて、
再び故郷のデリーに戻って来る。

「それ」が再び現われたら、自分達で倒すという、誓いを守る為に、、、

 

 

完全に、前作の続きである本作。

その描写、ストーリー展開は、

前作が好きな人の期待を裏切らない、
ホラーとジュブナイル作品となっております。

 

変幻自在の妖怪「シェイプシフター」であるペニーワイズ。

対峙した人間の恐怖の対象に変身するその能力に、
登場人物も、観客も、
「ヒィッ」となる事間違い無しです。

あのね、
大人になってもなぁ、怖いモノは、怖いンだよ!!

 

 

とは言え本作、

前作がヒットした要因が、
そのまま受け継がれていますので、

ホラーを中心として、
アクション、ロマンス、ギャグ、ジャブナイルといった、
映画の面白い要素を、バランス良く内包

 

している作品と言えます。

老若男女、誰が観ても面白く、
しかも、原作ファンすらも納得させる『IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』、

総合エンタテインメントとして、
優れた作品と言えるでしょう。

 

 

  • 『IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』のポイント

ビックリ、ドッキリ!正統派ホラー描写

若き日の想い出が蘇るジュブナイル

原作ファンも納得の展開

 

 

以下、本篇の内容に触れた感想となっており、また、

前作『IT/ イット ”それ”が見えたら、終わり。』や、
原作小説『IT』の内容にも触れています

 


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  • ジュブナイル+ホラーの真髄!

モダンホラーの帝王と称される、スティーヴン・キングの原作である『IT』は、
数多くある著作の中でも、
氏の最高傑作と推すファンも多い作品です。

ねちっこい程の人間心理の描写、
一度読み出したら止まらない、圧倒的なリーダビリティ、
驚きの展開と、ストーリー、

どれも、最高の作品と言えます。

 

そんな『IT』の、一番の魅力というと、
やはり、ジュブナイル描写。

成長した主人公達が、過去を顧みる事で、
現在と過去の対比が強調され、
二度と来ない幼年期の思い出が喚起されるのです。

その手法として、
原作の『IT』は、
現在と過去がシームレスに繋がり、
ループする二つの時代が、
まるで合わせ鏡の様にリンクして行くというのが、
素晴らしい描写となっているのです。

 

過去の思いでは、
良いことも悪いことも、
共に、懐かしさと苦しさがない交ぜになった感情が喚起され、
それ自体でも、充分に面白いパートです。

しかし、
過去(幼年期)に持っていた「純粋な信じる心」という、
それ(IT)に対抗する最も強力な武器が、

大人になった現在においては、減じているという状態で、

如何に、過去と同じ事を繰り返すのかと、奮闘するのが、
現代パートの面白い所であるのです。

 

原作『IT』では、
そういう計算し尽くされた構成が、面白さを担っているのですが、

しかし、
映画版の『IT/ イット ”それ”が見えたら、終わり。』では、
その尺の都合上、
「幼年時代篇」といった形になっていました。

これは、これで面白く、
世界中でヒットした事を考えても、
「幼年期」に限定したのは、成功と言えます。

 

しかし、
後篇である本作『IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』を、
それに準じた形、
つまり、「現代(大人)」のみで描写してしまうと、

原作の持っていた面白さは失われてしまうのではないのか?

鑑賞前は、そういった不安を持っていました。

 

しかし、
その不安は、杞憂に終わっていました。

流石、映画を作っているスタッフ達は、
何が、『IT』という小説の面白さなのか、それを重々承知だった様で、

「大人篇」においても、
「幼年篇」の描写は絶対必要だ、
そいう理解していたのです。

つまり、

前作では、幼年時代に限定していた描写を、
本作においては、原作同様、
現代と過去が、シームレスに繋がる描写を多用しているのです。

 

実は本作、
原作から改変している部分が、かなりあります。

普通、こういう事をすると、
原作ファンのお怒りを買いますが、
しかし、
本作においては、
そういった事態は、起こっていません。

それは、
映画を作ったスタッフが、
原作の何が面白いのか、
何処が、読者の心を掴んだのか、
それを、正しく理解し、
その核心の部分は、いじる事無く、再現しているからです。

 

幼年篇という、重要なファクターと、

純粋な、信じる心という武器が減じた状態で、

大人になった今でも、友情を武器に恐怖に立ち向かえるのか?

これを、本作はキチンと描写しているので、
ぶっちゃけ、
原作と映画では、クライマックスの描写が違っても、
原作ファン、映画ファン、
共に満足出来る作りとなっているのです。

 

  • それ「IT」の説得力

まず、映画の冒頭、
お祭りに来たゲイのカップルが、デリーの町のイキった若者にリンチされる所から、
物語が始まります。

「他じゃ知らねぇが、ここ(デリー)じゃゲイはお断りだ」

この台詞から分かる通り、
デリーという町には、
お祭りという華やかな表面の下にも、悪意がわだかまっているという事が表されています。

そして、
そのリンチされた男性が、
ペニーワイズの餌食となってしまいます。

 

普通、
ホラー映画においてでも、
こういう場合、
いじめっ子の方が、餌食になるのが定石です。

しかし、
本作においては、弱った犠牲者が、餌食となります

 

これはつまり、
「デリー」という町に潜む悪意こそが「ペニーワイズ」という意味であり、
同時に、
「ペニーワイズ」という存在が、「デリー」を悪意の町に貶めているのです。

鶏が先か、卵が先か、
どちらが原因というより、
デリーの町の悪夢の象徴こそがペニーワイズ、

即ち、「IT」として描写されているのです。

 

その、映画版「IT」の怪物、ピエロのペニーワイズは、
対象の恐怖に自らを変ずる事が出来る、
「シェイプシフター」という西洋妖怪の一つです。

しかし、

何故、こういう能力なのか?
どうして、こういう能力が使えるのか?

ミステリやSFでは、
その理由付け、理論こそが大事となりますが、
本作は、ホラーなので、その理由の描写はありません

 

そういった、
口八丁手八丁で、精神攻撃を仕掛けた果てに、
対象をガブリと一口にする、
つまり、
霊的な、完全なる精神的な存在では無いのですね。

 

普通、そういった描写には、
何か、釈然としない部分が、観客には残ります。

しかし、
映画版「IT」は違います。

何しろ、このモンスターには、物理攻撃が効く

相手も、物理で攻撃して来るけれど、
こっちの物理攻撃も通る、

それが、
前作のラストで、ペニーワイズをフルボッコにした事で、
観客にも、
妙な説得力を持たせているのです。

 

そういう意味では、
倒し方さえ知っていれば、
案外と、フェアな戦いに持ち込めるのです。

 

そして今回、
ペニーワイズを攻略する為に、
悪口でディスるという、精神口撃を展開します

つまり、
ペニーワイズは、精神攻撃を得意としており、

(そのビックリドッキリ描写が、
本作の面白さでもあるのですが)

という事は逆に、
こっちの精神攻撃も、相手に通るんじゃね?
的な感じで、
ルーザーズクラブも、精神攻撃を仕掛けるのです。

 

こっちの攻撃がちゃんと通る、

この平等さこそが、
本作がヒットした要因の一つでもあります。

平等だから、
相手の非道も、納得が行く、

この、超常現象に、
逆説的に、説得力を持たせている、という部分に、
本作の凄さがあるのですね。

言い換えると、
超自然的な相手に、
こちらの普通の攻撃が通るなら、
相手も、自然の産物であると理解する事が出来るという訳なのです。

言っている事が矛盾している様ですが、
こういう、思考・論理のトリックを駆使しているところに、
映画版の「IT」の面白さがあります。

 

  • 小ネタ、原作との比較など

本作は、
前作同様、
原作から、色々と改変している部分が、多々あります。

特に目立つのが、
ペニーワイズの正体の部分でしょう。

 

原作では、
「蜘蛛の化けモノ」的な描写であり、
クライマックスでは、その正体を表しましたが、

映画版では、
下半身こそ、蜘蛛的な足でしたが、
上半身がピエロのままなので、
特に、「蜘蛛の怪物」という印象にはなりません。
むしろ、カマキリっぽい感じです。

 

原作小説では、
作者の別の小説(「ダーク・タワー」シリーズ)で、後に、
ペニーワイズが、
クリムゾンキングという、別世界の邪悪な存在と、何らかの形でリンクしていると判明するのですが、

そういう経緯もあって、
敢えて、
蜘蛛という存在に限定してしまったら、
他作品との関係性やリンクが、ややこしくなるので、
ピエロの姿のままに、
本作では、留めたのだと思われます。

原作では重要な役だった、亀のマチューリンも、
映画版では、
前篇ではレゴブロック、
後篇では剥製という形で、ゲスト出演に留まってしますしね。

 

また、本作に仕込まれた小ネタとして、
原作者、スティーヴン・キングの過去映画化作品のオマージュシーンが多用されている所があります。

例えば、

クライマックス、
トイレのドアに閉じ込められたベヴァリーが血塗れになるのは、
『キャリー』(1976)を彷彿とさせますし、

同じシーン、
トイレのドアから、ペニーワイズが顔を覗かせるシーンは、
『シャイニング』(1980)での、ジャック・ニコルソンの有名なシーンを思い出させます。

また、
ラストシーン、
ビルが、パソコンで小説を執筆している所で終わりになるのは、
スタンド・バイ・ミー』(1986)のラストシーンと同じであると言えます。

 

こんな感じで、ネタがちりばめられていますが、
やっぱり、最大のネタは、

リサイクルショップ(ビルがチャリンコのシルバー号を買った店)のオジサンが、
原作者のスティーヴン・キング本人だった事ですかね。

ビルが、
「小説のラストが非道い」と散々言われていたのも、
スティーヴン・キング自身が、散々言われてきた事ですしね。

実際、
『クージョ』という小説の映画化『クジョー』(1983)では、
ラストシーンが、正反対のオチになってたりするんですよ。

 

こういう、マニアが喜ぶネタも仕入れている所に、
本物のファンが作ったと思われる、
如才なさを感じます

 

 

 

ホラーというジャンルを基礎としつつ、
ジュブナイル的な描写で物語を構成し、

その上、
ギャグ、アクション、ロマンスもバランス良くまぶし、

原作を改変しながらも、
原作ファンすら納得させる作りにする。

それを可能としたのは、
原作小説の持つ、面白い「核」の部分を、

正しく抽出する事に成功しているからであって、

こういう、
本物のファンが作った作品こそ、
原作の映画化の理想的な形なのだと思わせます。

 

誰が観ても、面白い、
奇跡のようなホラー映画、
それが『IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。』なのです。

 

 

前作『IT/ イット ”それ”が見えたら、終わり。』について語ったページはコチラ、

原作小説『IT』について語ったページはコチラです

 

 

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