映画『シャドウ・イン・クラウド』感想  絶体絶命、危機また危機の連続!!一級品のB級モンスター映画、ここにアリ!!

第二次世界大戦中、1943年8月、ニュージーランド。基地を飛び立つ間際のBー17大型爆撃機に、モード・ギャレットと名乗る女性の空軍大尉が乗り込んで来た。上官からの密命を帯びた鞄を死守するのが目的と言う彼女に、乗組員達は疑いの目を向ける。
モードは個室となっている鉋台の銃座に押し込められるのだが、彼女はそこで、爆撃機に取り憑いた魔物「グレムリン」と遭遇する、、、

 

 

 

監督は、ロザンヌ・リャン
ニュージーランド出身、両親は香港からの移民。
監督作に、
ドキュメンタリー映画『Banana in a Nutshell』(2005)
この作品を劇映画化した『My Wedding and Other Secret』(2011)等がある。

 

出演は、
モード・ギャレット:クロエ・グレース・モレッツ
ウォルター・クエイド:テイラー・ジョン・スミス
スチュ・ベッケル:ニック・ロビンソン
アントン・ウィリアムズ:ビューラ・コアレ 他

 

 

突然ですが、私が一番好きなTVゲームは、
『Culdcept』(カルドセプト)です。

「カルドセプト」は、
カードゲームとボードゲームが融合した様なゲーム性で、

「人生ゲーム」の様にマス目を周り、
マス目に止まった時には、
クリーチャー(兵士)を置く事で、
自分の陣地にする事が出来ます。

で、次に他人がそのマスに止まった時には、
ショバ代を徴収出来る、というシステムなのですが、

止まった方は、
ショバ代を払いたくなかったら、
自分のクリーチャーを召喚して、
相手陣地のクリーチャーと戦わせて、

勝ったら、
踏み倒すどころか、
逆に、陣地を奪う事が出来るのです。

 

で、
その「カルドセプト」シリーズの第一作目で、

屈指の強キャラだったのが、
風属性のクリーチャー「グレムリン」です。

特殊能力に、
「相手のクリーチャーの持ち物を壊す」的なものがあり、
陣地を攻める時も、守る時も、
抜群の安定感で相手を撃破出来ました。

 

と、言うわけで(?)
『シャドウ・イン・クラウド』です。

本作は、
ジャンル的には、いわゆる「モンスター映画」。

主演こそ、
名の知れたクロエ・グレース・モレッツなのですが、

その本質は、
清く正しいB級モンスターパニックムービーの様相を呈しています。

 

第二次世界大戦中、
日本軍の零戦と交戦中に、
空の魔物、グレムリンに襲われる

この設定だけで、
脳がトロけそうなB級っぷりです。

 

まぁ、B級映画なので、
昨今の、
お金を湯水の如く使った作品と比べると、
それ程、派手ではありません。

しかし、

地味ながらも、
工夫を凝らした構成で、
飽きさせない展開となっております。

 

上映時間は、
何と83分。

昨今の作品は、
2時間超えは当たり前、
3時間超えの大作も多い中、

そうそう、コレコレ、
この位の上映時間が、丁度良いんだよ
そんな呟きを漏らしていると、

あっという間に終わってしまいます。

 

戦争モノであったり、
サスペンス的な要素もあり、
B級モンスターパニックムービーであり、
爆撃機という男社会の中に単身乗り込んだ女性の物語だったり、

色んな要素を盛り込みつつも、

あくまでも、
エンターテインメントとして、
コンパクトに、端的にまとめ上げた『シャドウ・イン・クラウド』。

 

中々、拾いものの佳作と言える作品です。

 

 

  • 『シャドウ・イン・クラウド』のポイント

B級モンスターパニックムービー

色んなジャンルごった煮感

己の限界を超えろ!!

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 映画とグレムリン

「グレムリン」とは、
元々は、イギリス発祥の妖精です。

その名が知れ渡ったのは、
第一次大戦中の、英国空軍。

航空機を操縦中に、
突然、原因不明の機械トラブルに見舞われた時、
「グレムリンが悪さをしている」
と、表したのが切っ掛けと言われています。

まぁ、実際は、
整備不足や、運転ミスによるものなのでしょうが、
何でも「妖怪のせいなのね、そうなのね!?」とするのは、
古今東西、変わらないのですね。

 

この「グレムリン」を、
英国の作家、ロアルド・ダールが題材にした事で、
都市伝説的にアメリカにも広まり、
第二次世界大戦中のアメリカ兵も、
原因不明の機械トラブルが起きる度に、
「グレムリンの仕業」と呼んでいたそうです。

 

「航空機に機械トラブルを引き起こす空の魔物」
それが「グレムリン」の属性ですが、

グレムリンと言って、
一番に思い出す映画『グレムリン』(1984)は、
そんな設定とは、全く無縁の内容となっております。

 

『グレムリン』の監督はジョー・ダンテ。

クリスマスに、中華街で買った、
毛むくじゃらで、可愛い、珍しい生物「モグワイ」。

主人公の青年は、モグワイに「ギズモ」と名付けます。

しかし、モグワイの飼育にはルールがあって、
1:光に晒してはいけない
2:水を掛けてはいけない
3:12時過ぎに食事を与えてはいけない

というもので、
3番目のルールを破った時、
モグワイが凶暴化するのですが、
その時の姿が「グレムリン」と呼ばれていました。

『グレムリン』のグレムリンは、
「ヤンチャな思春期直前のガキ」で、
悪さの度が過ぎるいたずらっ子というイメージです。

 

どうでもいい話ですが、
私も幼少期に『グレムリン』を観て面白かった記憶があります。

で、
どういう経緯かは忘れましたが、
「グレムリン」の手袋を持ってましたねぇ。

子供なのに、
モグワイのギズモの方じゃなく、
狂暴なグレムリンの柄が付いた手袋です。

でも、
気に入ってましたねぇ。

 

また、

リドリー・スコット監督の『エイリアン』(1979)は、
宇宙で地球外生命体と遭遇する話ですが、

脚本を書いたダン・オバノンは、
「グレムリン」の伝説を基に作ったと言われています。

言われてみれば、
確かに、そういうテイストも感じますね。

 

「グレムリン」伝説を、
そのまま映像化した作品に、

リチャード・マシスンの短篇小説『二万フィートの戦慄』を原作とした
TVシリーズの「トワイライト・ゾーン(邦題:ミステリー・ゾーン)」
第五シーズン、第3話「二万フィートの戦慄」があります。

「二万フィートの戦慄」はその後、
オムニバス映画『トワイライト・ゾーン/超次元の体験』(1983)の第4話として、
ジョージ・ミラー監督がリメイクしており、

「トワイライト・ゾーン」でも、
屈指の人気エピソードだったと思われます。

 

因みに、
「トワイライト・ゾーン」とは、
日本で言う所の、「世にも奇妙な物語」的な、
一話完結の、不思議で奇妙な話エピソードを描く作品です。

「ウルトラQ」も、「トワイライト・ゾーン」の影響を受けていると言われています。

また、

アメリカの派生作品に、
TVドラマの「世にも不思議なアメージング・ストーリー」というものがありますが、
それには、漫画の『ジョジョの奇妙な冒険』の
第三部のスタンド能力の元ネタの多くが描かれています。

 

さて、
本作の「グレムリン」は、
その見た目が、
「毛の無い巨大な蝙蝠」として描かれています。

奇しくも、
日本においては、
THE BATMAN ーザ・バットマンー』(2022)や、
『モービウス』(2022)といった、
蝙蝠モチーフの映画が連続公開される事となり、

バキの徳川のじっちゃんなら、
「シンクロニシティ!!」と叫んだ事でしょうね。

 

  • 意外と面白い!?構成の妙

本作『シャドウ・イン・クラウド』は、
その基本はモンスターパニックムービーではありますが、

ミリタリーものであったり、
密室でのサスペンス的な会話劇要素もあったり、
男性社会で奮闘する女性の活躍を描いた作品でもあり、

そういった、
色々なテイストをごった煮しているところが、
その魅力の一つでもあります。

これをですね、
83分という、

今時の映画では、
コンパクトに纏めた所に、
ギュッと詰まった面白さが込められているのですね。

 

特に注目したいのが、
前半部分。

モードは体よく、
爆撃機の銃座に押し込められるのですが、
これはいわゆる、
隔離というか、軟禁とも言える状態。

そんな狭っ苦しい場所で、
他のクルーの様子は、マイクを通じて声が聞こえるのみ。

つまり、
クロエ・グレース・モレッツの一人芝居で、
場を持たせているのです。

 

密室状態での、喜怒哀楽の変転、
積もり積もった鬱憤の爆発の後、

密室解禁するのは、
まさかの、
航行中の飛行機の外壁に宙吊りという絶体絶命ぶり。

『クリフハンガー』(1993)や、
フリーソロ』(2018)、
『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』(2020)もかくやという状況を乗り越えた後に、

漸く機内に帰還するのですが、
その時の開放感は、かなりのもの

しかし、
状況は、零戦とグレムリンの「連撃」を受けているという、
パニック継続中。

 

この、絶体絶命ぶり、
様相の違う危機又危機の連続を怒濤の如く続けている
そんな本作の全力投球振りが、

面白さの秘訣となっているのではないでしょうか。

 

 

本作の基本は、
あくまでも、
清く正しいB級モンスターパニックムービー。

しかし、
そこに様々なジャンルをミックスして、

絶体絶命の危機を、
怒濤の如くに連続させる、

このクリフハンガー展開こそが、
本作の面白さをなっております。

上映時間で小粒だと、
侮るなかれ。

ギュッと詰まった面白さに満ちた佳作、
それが『シャドウ・イン・クラウド』と言えるのではないでしょうか。

 

最も有名な「グレムリン」映画
1984年の『グレムリン』が、コチラ

 

 

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