学校でちょっと浮き気味のマイルス、叔父のアーロンに連れられて、地下でペイントアートをやって、憂さを晴らしていた。その時、ふと、カラフルな蜘蛛に手を噛まれる。翌日から、なんだか、体の調子がおかしい。まるで、スパイダーマンの様な能力が身に付いているのだが、、、
監督は、
ボブ・ペルシケッティ、
ピーター・ラムジー、
ロドニー・ロスマンの3人。
声の出演は、
マイルス・モラレス/スパイダーマン:シャメイク・ムーア(小野賢章)
ピーター・B・パーカー/スパイダーマン:ジェイク・ジョンソン(宮野真守)
グウェン・ステイシー/スパイダーグウェン:ヘイリー・スタインフェルド(悠木碧)
ピーター・ポーカー/スパイダー・ハム:ジョン・ムレイニー(吉野裕行)
ペニー・パーカー:キミコ・グレン(高橋李依)
ピーター・パーカー/スパイダーマン・ノワール:ニコラス・ケイジ(大塚明夫)
アーロン:マハーシャラ・アリ(稲田徹)
ウィルソン・フィスク/キングピン:リーヴ・シュレイバー(玄田哲章) 他
『スパイダーマン:スパイダーバース』。
作っているのは知っていましたが、
私が、実際に本作の映像を見たのは、
映画『ヴェノム』(2018)のオマケ映像が初でした。
実写を見た後、
スタッフロールが終わって、何が始まるかと思いきや、
本篇とは全然関係無い、アニメの宣伝を見せられた。
その印象は、極めて悪かったです。
正直、
観るつもりは無かったですが、
本作は、
第91回アカデミー賞にて、長編アニメ映画賞を受賞しています。
チェックしておくかな、
程度で観に行ったら、
まぁ、面白かったですね。
やっぱり、
観る前の期待度やハードルというものは、
鑑賞後の印象に多大な影響を与えますな。
という事で、
スパイダーマン初の長篇アニメ映画作品が、
本作『スパイダーマン:スパイダーバース』です。
基本的には、
個人行動、タイマン重視のイメージのあるスパイダーマン。
しかし、
本作には、沢山の「スパイダーマン」が出て来ます。
まるで、
スパイダーマンのバーゲンセールだな!
と、ベジータなら言ってしまうかもしれません。
個性豊かな様々なスパイダーマンが出て来る本作。
単騎でも強いヤツが、複数集まった!
奇しくも、
戦隊ヒーロー的な雰囲気もあり、
ちょっと豪華な気分を味わえます。
とは言え、
基本は、オリジンストーリー。
少年の成長物語なのです。
即ち本作は、
王道の少年ヒーロー物語。
熱く、そして、真っ直ぐな正義がカッコ良い!
『スパイダーマン:スパイダーバース』は、
そういう作品なのです。
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『スパイダーマン:スパイダーバース』のポイント
王道の成長物語
沢山の「スパイダーマン」達
選択が、少年をヒーローにする
以下、内容に触れた感想となっております
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To be a Hero!!
本作『スパイダーマン:スパイダーバース』は、
少年がヒーローとなる成長物語、
王道の、少年ビルドゥングスロマンです。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
これは、
「スパイダーマン」シリーズで、
繰り返し語られるテーマです。
しかし、
人知を超えた「力」を持つものが、
全て、正義の味方という訳ではありません。
本作の悪役のキングピンもそうですし、
Dr.オクトパスも、
スコーピオンも、
なんか、見ようによっては、蜘蛛にも見えるし、
スパイダーマン(のバリエーション)の一人!
と、言い張っても、問題ないかもしれません。
では、何が、「ヒーロー」と「ヴィラン(悪役)」を分けるのか?
それは、「力」を何の為に使うのか?
その選択の結果なのです。
悪徳に塗れた街で、
法の裁きから免れている人間の悪行に、
制裁を加える。
そういうビジランテ(自警団)的な行動が、
スパイダーマンの行動理念。
誰に頼まれる訳でも無く、
誰に感謝される訳でも無いのに、
勝手に、世界の平和を守っている、
自己満足といえば聞こえが悪いですが、
謂わば、
極度な責任感を発揮しているのです。
「権力」や「責任」を持っている者が、
必ずしも「倫理」や「正義」の為に、
その「力」を奮う訳ではありません。
自分の持っている「力」を奮うのは、
誰の為?
自分の為?
それとも、
他の誰かの為に?
本作の主人公マイルスは、
自分のスパイダーマンの力を上手く発揮出来ずに、
壁にぶつかります。
何故、力を使えなかったのか?
それは、
スパイダーマンとなろうと、意気込んでいたから。
スパイダーマンとは、
力があっても、なろうと思ってなれるものではないのです。
スパイダーマンたる所以は、
その責任感なのです。
マイルスが持った責任感とは、
自分を鍛えてくれたピーター・B・パーカーを助ける為、
自分が勇気を出せば、
ピーター・B・パーカーや、
奇しくも仲間になった、他のスパイダーマン達を助ける事が出来る、
その責任感からなんですよね。
責任感が、
少年をヒーローへと変える。
これは、
何もアニメだけの事に限ってはいません。
人は、
その人生において、
どういう生き方をするのか、という選択、
それだけは、自分自身で選ぶ事が出来ます。
結局は、
人生、自分一人でも、生きて行かねばなりません。
ですが、
違う世界に、自分と同じ責任を負う、
別の自分が存在する(かもしれない)。
そう思えば、
何かしらの勇気と希望、
そして、孤独感もいくばくかは、薄れるかもしれません。
だから、
『スパイダーマン:スパイダーバース』は、
観客に、
「君もスパイダーマンに慣ろうぜ?」
と、そういう事を訴えてくれる作品なのです。
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スパイダーマン達の共演
本作では、メインのスパイダーマンが、
7人出て来ます。
元々、世界に居たスパイダーマン(ピーター・パーカー)は、
市民に愛され、誰もが知っているキャラクター。
謂わば、
最も成功した「スパイダーマン」ですが、
皮肉にも彼は、キングピンに殺されてしまいます。
マイルス・モラレスは、
次元の重なり合わせの結果、
他の次元からやってきた「スパイダーマン」では無く、
別世界の、
「噛まれるとスパイダーマンになる」原因の因子を持つ蜘蛛、
に噛まれたので、
本作の舞台で、スパイダーマンと成った少年。
他の5人のスパイダーマン達は、
別世界の存在。
ピーター・B・パーカーのスパイダーマンは、
ヒーロー生活に疲れ、
結婚も失敗し、
人生の倦怠期に突入しています。
青髯を生やし、
腹もメタボ気味です。
しかし、
フレッシュなマイルスに、スパイダーマンの心得を教える過程で、
自分自身の初心と理想が復活する事になる、
この展開が、熱いですよね。
グウェンのスパイダーグウェンは、
フィギュアスケーターの様な、しなやかな体のライン、
そして、
黒と白のメインのカラーに、ピンクのラインと、靴の緑のワンポイント、
このカラーリングが絶妙なキャラクターです。
グウェンが世界にやって来たのは、
実際に実験が行われる前。
つまり、
次元の重なり合わせは、
世界線のみならず、
時間も超越しているというのが、ポイントです。
その流れで、
1933年からやって来たスパイダーマンも居ます。
それが、スパイダーマン・ノワール。
仲間のスパイダーマン達と比べると、
何故か、白黒のモノトーン。
そして、
「ノワール」という名が示す通り、
時には、ハードボイルドに、悪人を傷付ける事もあるキャラクター設定です。
勝手なイメージですが、
映画『ウォッチメン』(2009)に出て来た、
「ロールシャッハ」というキャラクター的な印象を持ちます。
スパイダーハムは、
昔懐かし、
いかにもアメリカンアニメ的な、
カートゥーンキャラ。
喋る豚という時点でシュールですが、
それがスパイダーマンというのが、
どういうリアクションをとれば良いのか、分かりません!!
ペニー・パーカーは、
ロボットの「SP//DR」を操縦する女の子。
まるで、日本のアニメの萌えキャラの様な動きである。
「SP//DR」の操縦には遺伝的な適合性が必要で、
それは、蜘蛛に噛まれたペニー・パーカーのみが可能という設定。
操縦席でお菓子を食べながらの活躍を観せてくれます。
本作、凄い事は、
タッチの違う「絵」を同化させている所です。
モノトーンのスパイダーマン・ノワールが違和感が無いのが不思議ですが、
それ以上に、
カートゥーン調のスパイダーハム、
萌えアニメ調のペニー・パーカー、
これらが、マイルス・モラレス達と同居して、
馴染んでいるのが摩訶不思議です。
私が思うに、
これらのキャラクターは、
絵のタッチは違っても、
背景との境界や、
影を強調する部分にて、
「丸を重ねたモザイク模様」で陰影を作っている所で、
共通点を作っている様に思います。
本作は、ビビットなカラーリングながら、
「丸」が目立った作画の演出をしています。
まるで、
古いブラウン管のカラーテレビを観ている様な印象。
絵のタッチが違うのに、
同じ世界で同居出来るのは、
そういう陰影の部分で、溶け込んでいる様に気を配っていたからなのですね。
この奇妙ながら、
違和感が無い、
まるで「漫☆画太郎」のババアキャラの中で、
突如、美少女が出て来る様な驚き、
この演出は、一見の価値アリですね。
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声の出演者補足
スパイダーグウェンの声優は、ヘイリー・スタインフェルド。
映画デビュー作の『トゥルー・グリッド』(2010)の少女マティ・ロス役が、高く評価されました。
近作は『バンブルビー』(2018)で主演を演じています。
また、
映画版『思い出のマーニー』(2014)の英語吹替えで、
主演のアンナも演じていますね。
スパイダーマン・ノワールの声優は、ニコラス・ケイジ。
アメコミファンとしても知られる彼は、
『ゴーストライダー』(2007)のゴーストライダーや、
『キック・アス』(2010)のビッグ・ダディ役で、
彼の趣味と実益を満たしている印象です。
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)のレッド役もアメコミ的で、
個人的にはオススメです。
(評価には個人差がある映画ですが、それを言うなら、ニコラス・ケイジの出演作の殆どがそうですよね)
キングピンの声優は、リーヴ・シュレイバー。
『デッドプール』(2016)で散々ネタにされた、
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)に、
セイバートゥース役で出演しています。
また、
第88回アカデミー賞の作品賞を受賞した、
『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)にて、
マーク・ラファロ(ハルク)、
マイケル・キートン(バットマン)、
と共演し、
夢のアメコミコラボを達成したと(一部のファンに)話題になりました。
声優としては、
『犬ヶ島』(2018)にて、
主人公格の、犬の「スポッツ」を演じていたのが印象的です。
因みに、
『犬ヶ島』で共演したエドワード・ノートンも、
『インクレディブル・ハルク』(2008)にて、ハルクを演じた俳優です。
少年が、ヒーロー=「スパイダーマン」へと成長する、
王道ビルドゥングスロマン、
『スパイダーマン:スパイダーバース』。
「力」を持っている者がヒーローなのでは無く、
「責任」を負う「選択」をした者が、
ヒーローへと成長する権利を手に入れる、
だからこそ、
その勇気を推奨する、
『スパイダーマン:スパイダーバース』は、
誰もがスパイダーマンに成れるのだと、
そういう正義の選択をする者を応援する作品と、
言えるのではないでしょうか。
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