映画『散歩する侵略者』感想  ファーストコンタクト!?未知とはどう遭遇すべきか?

夫の慎治が病院に保護された。加瀬鳴海は迎えに行くが、記憶に障害があるのか、どうも様子がおかしい。一方、ジャーナリストの桜井は天野という少年に出会う。彼は自らを宇宙人と言って、桜井にガイドを頼む、、、

 

 

 

監督は黒沢清
監督作品に
『回路』(2000)
『トウキョウソナタ』(2008)
『岸辺の旅』(2014)
『クリーピー 偽りの隣人』(2016)等。

 

原作は「劇団・イキウメ」の舞台『散歩する侵略者』より。

 

主演の加瀬鳴海役に長澤まさみ
近年の主な出演作に
『海街diary』(2015)
『アイアムアヒーロー』(2016)
銀魂』(2017)
『嘘を愛する女』(公開待機中)等がある。

 

共演に松田龍平、長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里、笹野高史等。

 

本作『散歩する侵略者』の設定はSFっぽい。
しかし、そのストーリーはSFという訳では無い。

見知らぬ他者とのコミュニケーションもの、
SF的に言えばファーストコンタクトものである。

 

宇宙人と公言する相手とどう接するか?
それぞれのパターンを観る事が出来る。

また、本作は

ある意味アクションシーンが必見である。

 

アクションがメインでは無いが、見せ場の一つではある。
1998年生まれの恒松祐里が頑張っているので注目されたし。

壮大な設定だが、描かれるのはごく身近な部分。
共感出来る部分が多いのもこの映画の持ち味である。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 三者三様、ファーストコンタクト

『散歩する侵略者』では自称宇宙人の侵略者が3人いる。
加瀬慎治、天野、立花あきらの三名だ。

だが、それぞれ出会う人物により、そのコンタクトの様子が違う。

慎治の場合は、妻の鳴海が文句を言いながらもかいがいしく世話をしている。
そこで、ゼロの部分から「地球の人間的感情」を学んでゆく。

ジャーナリストの桜井をガイドに選ぶ天野は要領がいい。
如才なく立ち回り騒ぎを起こさない。

そんな天野を、桜井は観察対象として接していたが、徐々に侵略者の立場に寄っていく。

立花あきらは武闘派である。
よって当局にマークされ、捕獲される。

侵略者を自称する相手に対しては正しい対処だろう。

 

  • 最大の見せ場!?アクションシーン

テーマとは違うが、本作『散歩する侵略者』の最大の見せ場は侵略者・立花あきらのアクションシーンである。

日本でアクションシーンが出来る俳優は近年めっきり減っている。
アクション映画自体少ないし、CGに頼った合成が横行している部分もある。

そんな中、立花あきら役をやった恒松祐里はよく頑張った。
決められた殺陣を流れる様に演じていた。

もっとも、実際は受け役の演技がよかった部分も多々あった事は事実だが、「一見ひ弱そうなヤツなのに喧嘩が強い」感がちゃんと出ていた。

しかし、物理的に体重差があるので、アクション自体の構成には難があった。
小さい人間には小さいながらの戦い方がある。

宇宙人だからゴリ押しした、という設定かも知れないが、やはりまだまだ、日本のアクションは練が足りない。

機会があれば、恒松祐里さんにはまたアクションシーンを演じて頂きたい。
期待しています。

 

  • 寄生獣!?

冒頭の立花あきらのシーンは、『寄生獣』を思い起こさせるものだった。

そして、映画『寄生獣』にも出演していた東出昌大が神父役として出て来た時には、いつ「ぱふぁ」「おしょくじ」とか言い出すかとハラハラしながら期待してしまった。

 

  • お約束的なもの

黒沢清監督作品は、車を運転している時に背景が不思議空間になる。

なぜそうなるのかは、よく分からない。
不気味な雰囲気作りに役に立ってはいる。

しかし、それを毎回期待している部分も確かにあるのだ。

期待と言えば、
最近の日本映画にはチョイ役で前田敦子がよく出演している

あまりにもよく見かけるので、「今作には出るかな?」といつの間にか期待している自分がいるのだ。

 

  • コミュニケーション

本作『散歩する侵略者』での個人的な興味点は、鳴海と慎治の交流である。

どうやら、元々は夫婦仲が冷え切る直前だった。
それが、記憶が無い状態で夫が帰ってきた。

鳴海は迷惑がりながらもきちんと世話をし、徐々にその状態を好意的に受け入れてゆく。

それは、冷え切った関係をリセットして、もう一度関係をやり直せるチャンスを得たからだ。

そのお互いの交流部分、
徐々に慎治を受け入れる鳴海。
徐々に鳴海と関わってゆく慎治。
不器用な二人の関係性が良い。

まぁ「愛が地球を救う」オチはちょっと眠たくなったが、、、。

 

 

『散歩する侵略者』は概念を奪う侵略者、というアイデア部分を「コミュニケーションの仕方と変化」という観点で映画化している。

荒削りな感じで、テーマ的にはもう一歩踏み込んで欲しい所もあった。
特に鳴海と慎治の交流のオチの部分を詰めて欲しかった。

とは言え、アクションシーンや長谷川博己のコントのような変な歩き方という観るべき点もある。

少し不思議な印象の映画である。

 

原作舞台の劇作家が自ら小説化


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さて、次回は不思議な印象を観た各人が抱く『三度目の殺人』について語りたい。