映画『エイリアン:コヴェナント』感想  生物の創造と新たなる神!!

 

 

 

大型植民宇宙船コヴェナント号。冷凍ポッドの2000人と人類の「胎芽」を乗せて進み、15人のクルーがそれを守っていた。ある日、燃料補給中の事故により長期睡眠中のクルーは起こされた。その対処中、未探査の惑星から地球の歌が流れてきた、、、

 

 

 

監督はリドリー・スコット
エイリアンシリーズは
『エイリアン』(1977)
『プロメテウス』(2012)を撮っている。

他の監督作品に、
『ブレードランナー』(1982)
『レジェンド/光と闇の伝説』(1985)
『ブラック・レイン』(1989)
『テルマ&ルイーズ』(1991)
『グラディエーター』(2000)
『ブラックホーク・ダウン』(2001)
『悪の法則』(2013)
『オデッセイ』(2015)等がある。

非情に息の長い監督だ。

 

主演のダニエルズ役にキャサリン・ウォーターストン
他の出演作に
『インヒアレント・ヴァイス』(2014)
『スティーブ・ジョブズ』(2015)
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)等がある。

 

裏の主演、ウォルターとデイヴィッドの2役を演じたのがマイケル・ファスベンダー
現在、最も旬な俳優の一人だ。
リドリー・スコット監督作品には
『プロメテウス』(2012)
『悪の法則』(2013)
『エイリアン:コヴェナント』(本作)に出演している。

他の出演作に
『300』(2007)
『イングロリアス・バスターズ』(2009)
『SHAME―シェイム―』(2011)
『危険なメソッド』(2011)
X-MEN:ファーストジェネレーション』(2011)
『それでも夜は明ける』(2013)
X-MEN:フューチャー&パスト』(2014)
『マクベス』(2015)
『アサシン・クリード』(2016)
『X-MEN:アポカリプス』(2016)
光をくれた人』(2016)等がある。

 

久しぶりの「エイリアン」シリーズである。

そして、本作『エイリアン:コヴェナント』は

『プロメテウス』の続篇である。

 

本作のみでもSFサバイバルホラーとして楽しめるが、やはり『プロメテウス』を観ていた方が楽しめる。

序盤はやや長く感じるが、

いわゆる「エイリアン」が出て来てからは俄然、盛り上がる。

 

何しろクルーが15人もいるのだ。

馬鹿な事をするヤツ。
意思薄弱なヤツ。
頼りになるヤツ、色々いて楽しめる。

 

誰が生き残るのか?そんな事を考えながら観るのも面白いだろう。

最早古典的な臭いすら漂う、

SFサバイバルホラー

 

お好きなあなたは必見だ。

 

 

以下ネタバレあり
前作『プロメテウス』の話もしています。


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  • 色遣い、絵心

『プロメテウス』の時もそうだったが、本作『エイリアン:コヴェナント』においても地上のパートがある。

そして、色遣いが独特である。
常に曇り空というか、灰色がかっている感じだ。
そして、光の陰影が美しい。

探索する惑星も緑が多く広々としている。

かつての「エイリアン」シリーズでは、閉鎖空間の恐怖を常に描いて来たが、
『プロメテウス』から始まった新シリーズではその垣根を取っ払い、広大な空間をも常に描いている。

そして、遠景から絵画のように美しい光景、不気味な建造物を見せている。

もっとも、『プロメテウス』では宇宙船内でのエイリアンとの攻防が無かったのが不評だった。

本作『エイリアン:コヴェナント』ではその反省を活かし、地上、屋内、宇宙船内といろんな所で「エイリアン」が(本作では「ゼノモーフ」と呼ばれる)襲いかかって来る。

個人的には、もっと宇宙船パートを多くして欲しかったけれども。

 

  • ノンクレジットの有名出演者たち

ダニエルズ役のキャサリン・ウォーターストンとデイヴィッド/ウォルターを演じたマイケル・ファスベンダー以外の人物はほぼ無名である。

しかし、ノンクレジットのチョイ役がけっこう豪華だ。

最初のシーンにてデイヴィッドと会話しているウェイランド役はガイ・ピアース
『メメント』や前作の『プロメテウス』に出演している。

冒頭で焼け死んだ船長ジェイコブはジェームズ・フランコ
『スパイダーマン』シリーズや『猿の惑星:創世記』に出ていた彼だ。

そして、『プロメテウス』の主人公エリザベス・ショウ役にノオミ・ラパス
写真や絵で出演だ。
『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009)
『チャイルド44 森に消えた子どもたち』(2014)
ラプチャー 破裂』(2016)等がある。

 

  • ドタバタ過ぎて、喜劇的?

一方15名のクルーの内13名はほぼ無名である。
しかし、だからこそ、思い切った「捨て駒」的使い方が出来る。
見せ場を作る必要が無いからだ。

ピンチの時こそ真価が問われる」とは「ストリートファイター」のリュウの言葉だが、『エイリアン:コヴェナント』のクルーは人間力が低いメンバーが多い。

大体、未知の惑星の探検で、宇宙服も着ずにイキナリ生身を晒しますかね?

まぁそれは時間短縮で良いとして、気分悪いとか言いだしたら、防疫、二次感染の為に着陸船に乗せちゃいけないでしょ。
汚染されたら、どうやって母船に帰るんだヨ

この誰がどう考えてもおかしい事に猪突猛進していく馬鹿さ加減
…しかし、観ている方としては面白いのだ。

特に、血糊でスベるネタを2度繰り返したのは笑いポイントが高い。

また、ホラー映画のお約束、
「セックスしてはいけない」
「シャワーシーンは危ない」を同時に消化したヤケクソ具合も笑える。

また、クルーのメンバーの大半をカップル、夫婦にしているのは問題がある。
危機においては理性による冷静な状況判断より、瞬間的な感情を優先しがちになるからだ。

もっとも、長期間の任務をルーチンとしてこなす場合には信頼出来るパートナーがいる場合の方がいい

どっちをとるかの選択ではあるのだ。

…だが、SFサバイバルホラーとしては、やられる人間側がもっと抵抗して欲しかった所。

『エイリアン:コヴェナント』はサバイバルの側面より神話的ストーリーの方に重点が置かれている
今回はその方向性だったと割り切って観るべきだ。

 

  • シリーズの系譜、強い女性

「エイリアン」シリーズの系譜として、毎回強い女性が主人公として描かれる。

シガニー・ウィーバーが演じた、エレン・リプリー。
ノオミ・ラパスが演じた、エリザベス・ショウ。

『エイリアン:コヴェナント』ではキャサリン・ウォーターストンがダニエルズ役で強い女性を演じている。

毎回お馴染みのタンクトップ姿も披露している。

しかし、見た目が「優しいオバチャン」っぽくて、むしろ親しみの方が強かったりする

 

  • 神になろうとした男

しかし本作『エイリアン:コヴェナント』の真の主役はデイヴィッドである。

冒頭のシーン、デイヴィッドの生みの親、創造主たるウェイランドは「人類は何処から来たのか?」と問い、その答えを探そうとする。

(その顛末と結果は前作『プロメテウス』にて語られている)

デイヴィッドを創造した人類であるウェイランドを創造した「エンジニア」。

デイヴィッドは神の神であるエンジニアを虐殺し尽くす。

そして、デイヴィッドはエンジニアの作った生物兵器を元に、神たる人間(=エリザベス・ショウ)を母胎として、新たな生命を創造せんとしたのだ。

つまり神を弑したデイヴィッドは、自らが新たなる神となろうとしているのだ。

エンジニアが作った人類の様に限られた弱い死にやすい生命では無い、
デイヴィッドが目指したのは究極生命である。

 

  • オジマンディアス

デイヴィッドは同じアンドロイドのウォルターに、荒廃した景色を前に詩を朗読する。

その詩は「オジマンディアス」。
「王の中の王(king of kings)」というフレーズもある。

誰が作ったか分かるかと尋ねるウォルターに、
デイヴィッドはドヤ顔でバイロンと答えるが、
正解はシェリーだとウォルターはツッコミを入れる。

このシーンは不気味だ。
ウェイランドに完璧にデザインされたハズのデイヴィッドが間違いを犯している。

つまり、デイヴィッドは何処か根本的に狂ったところがあると暗示しているのだ。

記憶に障害があるのか、「バイロンが好き」という事と「好きな詩」とを混同しているのか、どっちにしろおかしい。

その狂った存在が作った生命がまともなはずは無い。

 

  • プロメテウス

また、シェリーには『鎖を解かれたプロメテウス(Prometheus Unbound)』という詩がある。

人類に火を与えたプロメテウスはゼウスに罰せられ鎖に繋がれる。
しかし、ゼウスはプロメテウスの予言通りに自らの息子に殺される。
そしてプロメテウスはヘラクレスによって解放される。

プロメテウスの生き残りであるデイヴィッドが、神=ゼウス=エンジニアを殺し、自らを創造主という上位の存在から解放し、新たな神として生物を創造せんとする
それが本作『エイリアン:コヴェナント』である。

さらに、である。

バイロンとシェリーと妻のメアリ・シェリー他二名の人物は、バイロン卿の別荘で「ディオダディ荘の怪奇談義」を行った。
その時の怪談が元になり、メアリ・シェリーが書いたのが『フランケンシュタイン、或いは現代のプロメテウス(Frankenstein; or The Modern Prometheus)』である。

フランケンシュタイン博士は新たな生命を作るが、結果苦しめられ自らは死に至る。
博士は怪物を作ってしまったのだ。

自らが作った怪物に殺される創造主

 

プロメテウス、そしてシェリー。
なんとも暗示的ではないか。

 

  • その他、いろいろ連想

クライマックスでエイリアンがテラフォーミングエリアを歩いている時の音がアニメ『ドラゴンボールZ』のセルが歩いている時の音と似ていたのが笑えた。

また、デイヴィッドがアレを口から出しているシーンはピッコロ大魔王みたいだった。
「ダーレガツツイタ ツクテン ツクテン…」

そして、白いエイリアン「ネオモーフ」は『マブラヴ オルタネイティヴ』のBETA「兵士級」を思い出したなぁ。
パクパク。

 

『エイリアン:コヴェナント』は親(=神=創造主)殺しと、新たなる創造が神話的に描かれている。

人類の起源を求め、神に出会いそれを殺し、新たな生命の起源となる。

この神話が宇宙を舞台に何処に広がってゆくのか?

なんだか壮大な話である。

 

こちらは前作

 

『エイリアン』『エイリアン2』『エイリアン3』『エイリアン4』『プロメテウス』の5作入り


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さて次回は、地球に既にエイリアンが!?映画『散歩する侵略者』について語りたい。