映画『ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』感想  ワルいヤツ程魅力的!?口八丁で巨万の富を築いた男!!

 

 

 

レイ・クロックは訪問セールスマン。同時にいくつものシェイクが作れるマルチミキサーを売り歩いていた。そんなある日、マルチミキサー6台を一気に購入したいという店が現れる。レイは興味を持ち、その店に突撃する。その店の名は「マクドナルド」、、、

 

 

 

監督はジョン・リー・ハンコック。他の監督作に
『しあわせの隠れ場所』(2009)
『ウォルト・ディズニーの約束』(2013)等。

主演のレイ役にマイケル・キートン
『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)で役者として完全復活した感がある。
近作に
『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)
『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)等がある。

共演にニック・オファーマン、ジョン・キャロル・リンチ、ローラ・ダーン、B・J・ノヴァク等。

 

本作『ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』はいわゆる実話系である。
映画的アレンジを加えているが、ほぼ事実らしい。

とは言え、この映画、

観る人によって感じ方は全然違うだろう。

 

華々しいサクセスストーリー、
盗人猛々しいコソ泥の欲望人生、
ビジネスに必要な事を教えてくれる啓発、
自分を信じ明日を生きる活力、

その全てが当てはまる。

だが、一言で言うなれば、

動き続ける男のモーレツ映画、である。

 

正直に言ってレイは良い人間ではない。
しかし、だからこそ非常にエネルギッシュで魅力的な人物なのである。

レイの不実さ、精力的な行動力、それらを礼賛する事無く、しかし、否定もせず上手いバランスで描いている。

 

決してレイの様な人間にはなりたくない。

しかし、

レイが持っていた信念や行動力を持ってすれば、私だって何かやれるんじゃないのか?

 

そんな根拠の無い自信を観る人間に抱かせる。
『ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』を観ると気分が無意味に上昇する。

この「悪人が故の魅力」に溢れた本作。
多くの人に観て欲しい。

 

 

以下ネタバレあり


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  • アゲアゲ!人生は自己肯定から始まる!?

レイは貧乏ではない
デカイ家を持っているし、高そうなクラブにも通っている。

それなのに、訪問販売というしんどい仕事を続けている。
契約をとれず、ホテルでうなだれ、落ちた気分を自己肯定の啓発レコードで無理矢理上げている。

そこまでするのは何故か?
レイは満足しない人間なのだ。
もっともっとと欲しがる。
そして、この飽きるとこの無い欲望が爆発的成功を呼び込む。

それは、マクドナルド兄弟とフランチャイズ契約を結んだ時から始まった。
その時、レイは52歳。

全ての天才が日の目を見ることは無い
しかし、諦めなかった者にのみ勝利はもたらされる

レイは、啓発レコードのそのセリフを長い時間を懸けて実証してしまったのだ。

 

  • 人生は弱肉強食

「ファストフードシステム」はマクドナルド兄弟のオリジナルでレイが考えたものではない。

しかし、それをシステマチックにフランチャイズとして拡げたのは紛れもなく彼であった。

レイは「フランチャイズを拡げる事」に決定権を持っており、マクドナルド兄弟からその権利を託された時から、その目的は一貫していた。

そして「バーガー屋に土地と名前を与えショバ代で稼ぐ」というシステムを確立し、その会社の社長となる。

レイはそのシステムの創始者であった。

そして利益を上げる為にあの手この手を試し、その障害になるとしたら、創始者すらも追い落とす。

こういう人の成果を自らの喰い物にするゲスな人間は一定数いる

しかし、そこまでやったからこそ、さらなる拡大もあったのだ。

 

  • レイの魅力

レイは訪問セールスの鬱憤を晴らすかのように爆発する。
まるで長年溜まったマグマの様である。

そして、兎に角走り続ける。
この勢いが凄い。

レイが嫌な人間でありつつも、観客が彼を憎めないのは前半のうだつの上がらなさを観ているからである。

それだけでは無い。
観客は、レイの境遇に自分を重ねさえするのではないか?

冴えない人生が一変、信念と情熱で成功を掴む
これは典型的アメリカンドリームである

だから、レイを否定出来ない。

性格や手段は褒められなくとも、レイの様に諦めなければ、自分も成功を掴めるのでは?なんて思っちゃう。

このポジティブ思考の伝播こそレイの最大の魅力であり、「マクドナルド」を通じてアメリカ中に、そして観客に伝わっていくものだ。

だからこそ、思わず皆が、レイに共感し肯定してしまうのだ。

 

 

兎に角不思議な魅力に溢れたレイと『ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』。

気分は昂揚し、自分も何かしなければと、イキナリ張り切り出してしまう。

しかし、そういう気分になれるからこそ、この映画を観る価値は十分にあるのだ。

 

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さて、次回は小説『カメラ・オブスクーラ』について語りたい。折角上げた気分もしおれてしまうかもしれぬが。