漫画『束縛愛 彼氏を引きこもらせる100の方法』小路啓之(著)感想  愛とは相手を縛る事!?その方法も色々ありまして…

 

 

 

アリサちゃんは犬を飼っていた。
光太朗くんはトガリネズミ。
そして、クラスで目立たない地味娘のミオリが飼っているのは、同い年の男の子ユウゴだった、、、

 

 

 

 

著者は小路啓之
独特の世界観と絵柄で人気を博した漫画家。
2016年、没。
代表作に
『イハーブの生活』
『かげふみさん』
『来世であいましょう』
『ごっこ』
『犯罪王ポポネポ』
『メタラブ』等がある。

 

『束縛愛 彼氏を引きこもらせる100の方法』。
題名からして、既に意味深ですね。

全2巻で打ち切り気味ですが、きちんと終わりました。

ジャンルとしては

一応ラブコメ!?
しかし、楽しい気分とは程遠い。

 

やってる事はコメディタッチなのに、笑えるかと言うと全然そんな事はないんです。
不思議ですね。

絵柄はポップでキュート。

 

それなのに、

衝撃の展開らしき物が濫発され、心安まる暇すらありません。

 

しかし、この微妙な不愉快さが奇妙な読み味を生み、このギリギリのラインが独特な世界観を形作っています。

事故で家族を失い、天涯孤独となったユウゴ。
彼を保護し、ミオリは空き家にペットをして飼う事にします。
しかし、小学生ではお金を稼ぐ事は困難。
手っ取り早い方法として、エロ画像で釣りますが、、、

1巻では展開で読ませ、
2巻は設定を拡げようとしますが、「まき」が入り終わりに向かいます。

その終わり方も読者に判断を投げかける形です。

絵柄、台詞、世界観、ストーリー、展開、
全て個性的。

 

殆どオンリーワンとも言える独特で個性的な読み味を持つ希有な作家と言えるでしょう。

好きな人は好き、そうでは無い人はスルー。

好みが別れますが、ちょっと奇妙な漫画を読んで独特の雰囲気に浸りたいと言う方にはオススメの作品です。

 

 

  • 『束縛愛 彼氏を引きこもらせる100の方法』のポイント

ポップでキュートな絵柄から、衝撃展開の落差

独特の雰囲気の世界観

モヤッとするラストを如何に受け取めるか?

 

 

以下、内容に触れた感想となっています

 


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  • 小路啓之という作家の特徴

小路啓之という漫画家は独特だ。

ポップでキュートな絵柄
そこからの急転直下のトラウマ展開

異国風の街並みに、ネタと懐かしさ溢れる台詞回し

書き込まれた背景とモブキャラ

これら全てが合わさって、独特な世界観とオンリーワンな雰囲気を持つ漫画を多数描き上げています。

2016年に亡くなってしまいましが、作品は残っています。

好き嫌いは分かれますが、強烈な個性と読み味を持つ多数の作品達。

捨て置くには惜しい。
奇妙な漫画が好きな人は、是非チェックして欲しい漫画家です。

 

  • 打ち切り?計算?

本作『束縛愛 彼氏を引きこもらせる100の方法』は全2巻。

正直、打ち切り臭が漂っています

現に、2巻では展開を拡げる雰囲気を見せていながら、ラストの数話で駆け足気味に話を終わらせています。

幼少のユウゴがブルー城崎のホームページを見ていたが、その事が後に活きていない。
怪しげな「テラもっさん」が後半いなくなる。
ミオリの母親が全く出なくなる。
「守我十一」の建築物を探している、という設定が全く意味が無い。
出て来ただけで終わった、高木ブ1。

「引きこもり少年を飼育する」という魅力的(?)な設定と、特徴的な数々のキャラクター、そして伏線を置いておきながらそれを放置して終わるのが惜しい感じがします。

しかし、作者の過去の作品においても、
正直キャラクターや設定を、その場のノリだけで使い捨てにする事も多いのです。

これは、全ての作品がコンパクトにまとまっている、分かり易く言うと「打ち切り体質」だからなのか、
それとも計算して意外な展開を演出する為にキャラクターや設定に拘っていないのか、判断は迷います。

しかし、この自らが作り上げた魅力的な設定にすら拘らない作品作り自体が、実は独特の魅力を作っている事も又、事実なのです。

 

  • ラストの数字の意味とは?

ミオリとユウゴとくくるの数字の意味。

ラストのこの部分の解釈は読者に投げかけられており、人によって解釈が分かれる部分でしょう。

様々な受け取り方があるでしょうが、私の解釈を披露してみたいと思います。

あくまで個人の意見なので、正解ではありません。

ミオリの数字が0から1になったのは、楽し事が始まるという期待感
つまり、一生懸命世話をしたユウゴが遂に自分の望む事をしてくれるという充足感から得た「幸せカウント」だと思われます。

とは言え、その思いは自分が飼っているペットが思い通りの事をしてくれたという支配欲からくる感情だという事がポイントです。

ミオリは海に行ったり、映画に行ったり、ラーメン屋に行ったりしたかった、という思いを持っていましたが、
それはあくまで、対等な関係では無く、自分の保護下において、という限定条件での事だったのです。

だから、ユウゴを再び引きこもらせる=支配したかったのですね。

ユウゴの数字が「∞+1」から1に変わったのは、何故か?

ユウゴの幸せは元々、ミオリを喜ばせる事
それは相手の要求に無限に応える事だと思われます。

それは、「要求に応える」という事では1ですが、その回数自体は無限大という事なのだと思います。

それが、単なる「1」に変化したのは、最早自分の要求すら捨て去り、ミオリ個人に支配される事を選んだ、つまり、対象が限定されたからでしょう。

ラスト「2」になったのは、その対象がミオリからユウコになったからだと思われます。

くくるの数字が「1」になったのは何故か?
そして「1」のままだったのは?

くくる自身の数字が「0」から「愛の方程式」に変わった、つまり「カウント1」されたのはミオリに興味をもってから。

くくるはミオリの行動を探る内、そのミオリの不思議な行動を引き起こす本質はユウゴにあると見つけます。

つまり、くくるの興味のある面白い物=幸せを感じる対象とは、ミオリからユウゴへとシフトしているんですね。

なので、興味のあるものとしての対象(ユウゴ)が常に目の前に居る。
(ミオリや娘にはそれ程興味は無い)
だから、カウントは「1」のままだったのだと思います。

まぁ、あくまで私の個人的解釈です。

読んだ人が各個人で色々考えられるのが、このラストの面白い所です。

 

 

 

打ち切り的な終わり方ですが、奇妙で歪な愛の形を描いた作品『束縛愛 彼氏を引きこもらせる100の方法』。

独特な世界観を持つ希有な作家の奇妙な作品です。

この読み味は人を選びますが、好きになれば作者のどの作品も楽しめる事請け合い。

普通の漫画に読み飽きたら、こういう漫画にもトライしてみてはどうでしょうか?

 

全二巻の作品です

 


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さて次回は、これもまた奇妙な読み味、同作者の漫画『メタラブ』について語ります。