漫画『帝一の國』(古屋兎丸)感想 ギャグ?いえいえ、これは大真面目な学園政権闘争なのだ!!

 

 

 

自らの国を創る。その思いを胸に赤場帝一は名門海帝高校に入学する。目指すは生徒会長。帝一の学園内権力闘争がはじまる、、、

 

 

 

『帝一の國』は2010~2016年の間、『ジャンプSQ.19』『ジャンプスクエア』に連載された。全14巻で完結している。

高校生男子が学園内権力闘争の勝利を目指し駆け引きの限りを尽くす。このフレーズにピンときたら、是非読んでもらいたい。

きっとあなたの期待に応えてくれるだろう。

 

少年漫画伝統の、ある種のバトル漫画とも言えるが、主に使うのは腕力でも知力でもなく、政治力だというのが少年漫画として面白かった。

 

以下ネタバレあり


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  • 政治力漫画

格闘漫画や知略漫画は数あれど、政治力を競うバトル漫画というのはあまり類を見ない。
帝一はルーム長(学級委員)になる為に学校に献金をし、上級生に取り入る為に奉仕し、下級生を取り込む為に根回しをする。時にへりくだり、時に傲岸不遜に振る舞うが、その様子が決して嫌なヤツでは無い。なぜなら帝一は目標に向かって真摯に、情熱的に邁進しているからだ。
帝一の喜怒哀楽の落差、感情の熱さが読者の共感を生み、どこか、憎めない放っておけないキャラクターになっている。また、その政治的スタンスも人を陥れるものではなく、常の上に行く事を目標としているのが好感が持て応援したくなる。

その帝一のライバルとして存在しているのが大鷹弾と東郷菊馬だ。
大鷹弾の政治力は性格と人望だ。彼は権謀術数に対し正論と社会的常識で対抗する。言わばホワイトナイトである。また、旧態依然とした政治体系を崩す改革者でもある。
一方東郷菊馬は手段を選ばぬ強敵だ。勝利の為には他人に遠慮せず、身も蓋もない事も平気で行う。
清濁併せ持つ帝一、正義の大鷹、ずる賢い東郷の3人を並べ、この内帝一を主人公として置いたのが、絶妙であった。イイコチャンという訳では無いが、皆に好かれる魅力的なキャラクターなのである。

 

  • 真面目だからこその笑い

また、この漫画の魅力はギャグ的な要素にもある。それは、真面目だからこその笑いである。
帝一は感情の振り幅大きい。嬉しい時は高笑いをし、絶望した時は切腹を試みる。その切り替えの唐突さと突飛さに、読者は思わず笑ってしまう。
しかしこの笑いは帝一自体が狙ったボケでは無い。彼のキャラクターがあくまで真面目で、真剣だからこそ生まれるものだ。
その様は、例えば雑魚に容赦ない『北斗の拳』のケンシロウであったり、ギャンブルの際で内面を吐露する『賭博黙示録カイジ』のカイジと同様のものだ。そのあまりの過剰さが突き抜けて、かえって笑いを誘っている。

  • キャラクターの魅力

メインの3人以外のキャラクターもまたいい。
豪腕な政治力を振るう氷室ローランド(名前の語呂もいい)
潜伏してからの一撃が鮮やかな森園億人
2年生編の新入生達もわざとらしい程のアクの強さで、誰が誰の派閥に入るのか、面子を見ただけでワクワクさせられた。
そして、腹心の榊原光明。やはり、野望には莫逆の友たる存在が必要不可欠に思うが、そのパートナーがカワイイ系男子というのが、なかなかどうして、マッチしていた。

 

魅力的な大ゴマ。帝一の私服のファッションセンス。モブキャラの顔においても手を抜かない徹底ぶり。他にもいろいろ語るべき特徴の多いこの作品。きっとあなたの琴線にも触れる部分があるハズだ。

 

こちらは演劇版の『帝一の國』

 


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さて、次回も権力闘争モノ。皇位を巡る駆け引きに翻弄された『天平の三皇女』について語ってみたい。