ついに始まったハード・レインにより、地球は灼熱の惑星へと変貌した。かつての国際宇宙ステーション「イズィ」を中心とした「クラウド・アーク計画」によって、人類は生き残りを図るのだが、、、
著者はニール・スティーヴンスン。
著書に
『スノウ・クラッシュ』
『ダイヤモンド・エイジ』
『クリプトノミコン』等がある。
『七人のイヴ(Ⅱ巻)』の発売です。
ぶっちゃけ、
前巻である『七人のイヴ(Ⅰ巻)』は、
全く面白くありませんでした。
*『七人のイヴ』Ⅰ巻の感想はコチラのページに書かれております。
続きを読むべきかどうか迷ったのですが、
正直な批判をするなら、
最後までよむ必要があると思い、
このⅡ巻も買って読む事にしました。
どうなの?
面白いの?
元合衆国大統領のバラク・オバマや
世界一の大富豪のビル・ゲイツ、
そして、出版社の御用作家がツイッターで絶賛していましたが、
果たして、それを信用していいのだろうか?
いや、それを判断する為にも、
自分で読む必要があるのだ!!
という事で、読んでみた本作『七人のイヴ(Ⅱ巻)』。
本巻は、面白かった!!
この違いは何でしょうか?
Ⅰ巻はつまらなくて、
Ⅱ巻は面白かった理由は何でしょうか?
かつて、
「小松左京賞」の選考において、
小松左京はこう述べておりました。
「SFは、人を描かなくてはならない」
ハァ?SFはアイデアだろ?
と、当時の私は思ったものです。
だから、
伊藤計劃や円城塔を見逃したんじゃないの?と。
しかし、
本作『七人のイヴ』のⅠ巻とⅡ巻を読むと、
小松左京氏の言葉が痛いほど身に沁みます。
Ⅰ巻では、
SF的なアイデアの描写は充分。
しかし、
状況・設定の説明に終始し、
そこにおける人間の感情や苦難は描かれていませんでした。
それが不満点だったのです。
しかし、Ⅱ巻は違います。
著者が、
「これこそ、書きかかったモノだ」
と、言わんばかりのトラブルの連続!
それに伴う、
人間の情動と奮闘が存分に描かれています。
Ⅰ巻では、
トラブルが起こる度に、
それをスルーするかの如く別のエピソードに飛んでいましたが、
Ⅱ巻では、
そのトラブルに直面し、対処している様子が、
ちゃんと描かれているのです。
私はホラー小説が好きなのですが、
それも、
別に残酷描写や怪奇描写が特別好きという訳では無くて、
(いや、好きなのか!?)
不条理な危機や危険に直面した人間が、
その困難や苦難を乗り越えようと奮闘する様が読みたいのです。
翻って、SF。
私がSFが好きなのも、同じ理由なのだと、今回改めて気付かされました。
SFにおいても、
トラブルや未知の状況において、
その壁や問題を解こうとする人間の奮闘や努力が読めるからこそ、
それが面白いのです。
「SFは人間を描かなくてはならない」
とは、この事なのだと思います。
確かに、
SFには多様な描き方があります。
思弁的な描写をする作品もありますし、
言語表現に特化した作品もあります。
本作のⅠ巻の様に、
SF的な設定の描写に特化した作品もあり、
それが好きな人がいるという事も理解出来ます。
しかし、
私の個人的な好みとしては、
やっぱりⅡ巻の様に、
トラブルにおける人間の奮闘と努力の様子が読みたい感じがあります。
その意味では、
Ⅰ巻が好きだった人には、
むしろ、Ⅱ巻は方向性が違うと感じるかもしれません。
ですが、
私の様に、
「SFでも、物語が読みたい!」と望み、
Ⅰ巻で挫折した人にこそ、
Ⅱ巻を読んで欲しい。
これぞ、読みたかったものだ、
そう感じるハズの作品、
それが『七人のイヴ(Ⅱ巻)』なのだと思います。
しかし、
物語は、まだまだ続く!!
Ⅲ巻は、期待して待ちたいです。
-
『七人のイヴ(Ⅱ巻)』のポイント
SFならではのスペクタクル描写
危機、また、危機の連続
独特の虚無感が漂う読了感
以下、内容に触れたツッコミが入ります
スポンサーリンク
-
どう売るのか?
Ⅰ巻の時点ではくそつまらなかった『七人のイヴ』。
しかし、Ⅱ巻は凄く面白いです。
ぶっちゃけ、
私としては、3分冊にするより、
極厚の1冊にするか、
もしくは
上下巻組にすべきだと思いました。
3分冊だと
Ⅰ巻の時点で切ってしまう人間が続出します。
それに、値段の問題もあります。
本巻は2000円(税抜き)。
頑張って3500円位の1冊にするか、
2300円位の上下巻にした方が、
まだ買いやすかったと思います。
上下巻の場合は、
Ⅱ巻の140ページか、
もしくは
150ページくらいで止めれば、
続きが気になって下巻を読まずには居られないと思うのですが、、、
しかしやはり、
値段が高い=儲けが多くなる、
また、
内容的にも区切りが良いところで分けられるという理由にて
3分冊としたのだと思われます。
これらの判断は難しいですが、
今回は失敗だと思うのですが、どうでしょうか?
-
物語における悪役の必要性
『七人のイヴ(Ⅱ巻)』が面白かった理由。
それは、
明確な悪役、そして目的があったからです。
Ⅰ巻は、
ただ、何となくミッションをこなしているだけという印象でした。
それを、ただ描写している、というだけ。
ですが、
科学設定や描写を読みたければ、
講談社の「ブルーバックス」シリーズを読んだり、
雑誌の「ニュートン」なんかを読む方が面白いです。
設定や状況描写が多いのは本作の特徴です。
何故そうなったのか、と言えば、
物語を作る上での考証、裏取り、資料集め、
それを綿密に行う必要性が、本作の作品の性質上絶対であり、
そこで集めた膨大な資料を捨て置くには勿体なく思ったのでしょう。
折角集めた知識、資料、
それも、物語に組み込んでしまえ、
そう考えたのだと思います。
しかし、
ある程度なら面白いですが、
Ⅰ巻の様に、
丸々一冊が状況・設定説明に充てられると、
それはちょっと説明過多だな、
物語の割合を多くして欲しいな、と思います。
その分、
Ⅱ巻は物語の割合が大増量しています。
それを引っ張るのは、
ミッションを成功させようという明確な目的意識の描写、
そして、
悪役という強烈なキャラクターの登場です。
やはり、
物語には、
読者が焦点を当てやすい対象、
「困難の設定」が必要なのだと思います。
Ⅱ巻においては、
計画外の突発的なトラブルの連続という外的要因、
そして、人間関係という政治がからむ内的要因にて、
物語が二重に困難に陥ります。
これが面白さに直結しています。
しかし、Ⅱ巻でこれが出来るなら、
Ⅰ巻の時点でも、いくらでも盛り上げられた、
そう勿体なく考えてしまうのは、贅沢なのかもしれません。
あくまでも、
盛り上げるべきは、宇宙における絶望的な状況下での生き残りの奮闘、
そこに焦点をあてた物語が、
ここまでの『七人のイヴ』となっているのです。
-
それでも、ちょっとツッコみたい!!
さて、物語的には面白いⅡ巻。
しかし、ツッコミを入れたい部分もあります。
そもそも、
密航者を認めるというのは、どういう意図なのでしょうか?
その密航者の口車に乗せられるのに気付かない人間が、
果たしてそんなにいるのか?
密航する事を正当化する人間の言説を認めるのは、
それ自体が欺瞞であると気付かないものなのか?
先ずは、そこをツッコミたいです。
まぁそれは物語的に面白いから良いのです。
しかし、
結局、生き残りが月の残りや火星を目指すというのなら、
地球が残っている段階の、
そもそもの計画段階で、
冗長性を持たせた「別プラン」として、
「月行き」「火星行き」
も計画してしかるべきだったのではないのか?
と思ってしまいます。
「オイオイ、結局月に行くのなら、地球がある内から計画しとけよ」と。
まぁ、そこ言っちゃったら、
話が展開しませんしね。
あと、
帯でネタバレするのはどうかと思うぜ!!
「生き残る」のがバレバレになるじゃないですか!!
(まぁ、勘のいい人なら、七人のイヴが誰になるのか、途中で大体絞れますが)
とは言え、
数々の苦難を乗り越え、
新たな人類の生みの親となる、
「七人のイヴ」。
もう、
この時点で、物語が終わったかの様な虚無感がありますが、
実は、まだ続きがある!
続きを読める!
果たして、それは蛇足なのか?
それとも、大団円へと導くのか?
Ⅲ巻は、期待して待ちたいと思います。
*Ⅰ巻の感想はコチラのページから。
*書籍の2018年紹介作品の一覧はコチラのページにてまとめています。
スポンサーリンク