穴の隙間から、風が吹き込んでくる。いつか、家を壊すだろう。私はそれが怖くて、布団を被って耳を塞ぐが、息子は、爆竹を鳴らして遊んでいる。デカい尻は、父親にそっくりだ、、、
著者は残雪。
中国生まれ。
著書に、
『黄泥街』
『蒼老たる浮雲』等があり、
先頃、白水社にてまとめて復刊された。
最近、俄に脚光を浴びてきた、
華文SFこと、中国産SF小説。
しかし、
SFに限らず、
中国産小説には、面白いものがある!
と、
言わんばかりに、
ここ最近、
立て続けに復刊されたのが、
この、残雪です。
さて、
『黄泥街』は、
奇妙奇天烈、摩訶不思議でありながら、
妙な余韻をもたらす、印象的な作品だったのですが、
本作はどうでしょう。
本著『カッコウが鳴くあの一瞬』は短篇集。
全9篇、プラス訳者の解説が収録されています。
その解説に、
本書の特徴が端的に描かれています。
「夢」
まるで、夜に見る「夢」の様に、
不可思議で、奇妙な話、
それが、本作に収録された作品だと言えます。
正に、言い得て妙ですが、
それだけでは、流石に見も蓋も無いので、
自分の言葉で例えるならば、
本作は、
まるで、ポエムの様な作品です。
詩的、
というより、ポエム。
何と言うか、
目の前の光景を、
ポエムにしてみたと言うか、
だからこそ、
時系列も、
キャラクターも、
確とした設定が無いという印象。
今は何時なのか?
現在なのか?過去なのか?未来なのか?
いったい誰が喋っているのか?
それすら、良く分からないのです。
ただ、
風の向くまま、気の向くまま、
思い浮かぶままの風景を描いて居ると言えるのです。
勿論、
作品である以上、
それは作者の構成であり、
計算であるハズなのですが、
読者である私にとっては、
それが、ポエムとして認識されるという訳です。
最早、
面白いとか、楽しいとか、
そういう感想すら超越した奇妙な物語。
不思議な話を読んでみたい、
そういう人なら、
本著『カッコウが鳴くあの一瞬』を、どうぞ。
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『カッコウが鳴くあの一瞬』のポイント
夢の様に、奇妙で不可思議な作品群
ポエムの様に、自由闊達な発想
何が起きているのか、解らなくても良い、私も解らないから!
以下、内容に触れた感想となっております
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収録作品紹介
本著『カッコウが鳴くあの一瞬』は、
全9篇からなる短篇集です。
いつもならば、
自分なりに、
収録作品を簡単に解説して見るところですが、
何しろ、
本著の収録作品はどれもこれも、
名状しがたい、不定形さを持っています。
訳者はそれを、「夢」の様に奇妙だと言い、
私はそれを、ポエムの様に自由闊達だと例えました。
正直に言うと、
本著の収録作品は、
これを、どの様に捉えたらいいのか、良く分からない、
そういう作品ばかりです。
しかし、
自分が理解出来ないからと言って、
それが、面白く無い訳では無いのが、
本書の収録作の凄い所。
何が起きているのか解らない、
でも、
書いてある事は、エキセントリックで面白い、
という訳です。
そういう作品ばかりなので、
これを、どう解釈するか、
それは、読む人それぞれに委ねられています。
何しろ、
時系列や、
主観、客観、
それらすら、超越した作品ばかりだからです。
それ故、
作品自体が、
何度でも再読に耐えるという体力を持っており、
その度毎に、違った景色が見える。
そういう意味で、
「詩(ポエム)」なのだと、
本作は言えるのです。
なので、単純に、
作品自体を理解出来なくとも、
ただ、読むだけでも面白い、
本著は、そういう作品集と言えるのではないでしょうか。
では、
私なりに、感想を書いて行きたいと思います。
とは言え、
私も、何も解っていないのですが。
阿梅、ある太陽の日の愁い
母と娘の関係が、
世の中の人間関係の不条理というか、
駄目男に引っかかる駄目女と、
その駄目女から親離れ出来ない子供の悲劇というか。
親子関係と言っても、
それを、積極的に改善しようとしないと、
何も良くならない事の典型と言えます。
霧
これは結局、
自分が過去を思い出している事を、
さも、現在進行形の様に話しているだけなのだろうか?
母は、死んでいる様に思えるが、
どうでしょう?
雄牛
いちいち、老関の、虫歯の例えが面白い。
そして、虫歯がいやだから、
鏡に打ちかかって来るラストがまた、
意味不明。
つまり、雄牛も虫歯の痛みという事?
良く解りません!?
カッコウが鳴くあの一瞬
人に拠って、幸せだっと時を思い出すよすがというか、
その思い出が蘇るトリガーというものは、色々あるという話でしょうか。
ふとした瞬間に蘇る、
過去の記憶のとりとめのなさを、
詩的に描いたと言えるのかもしれません。
曠野の中
ゴム管と針という組み合わせは、
麻薬を連想させます。
つまり、夜の闇を、
麻薬によって、先行きの見えなくなった人生に例えている?
のかも、しれません。
刺繡靴および袁西ばあさんの煩悩
一度話を聞いてあげたら、
事ある毎に、自分語りを始める近所の老人を彷彿とさせます。
どうやらそういう老人は、
何処にでもいるのでしょうね。
そういう老人に懐かれる事を、
取り憑かれると表現するセンスが面白い所。
天国の対話
男と女の語りが、
いつの間にか、入れ替わっているのが興味深く、
また、
詩的な作品。
本書の中では最も長いですが、
まぁ、つまり、
ぶっちゃけると、
何が言いたいんでしょうかね?この作品。
素性の知れないふたり
つまりは、老鷺は男の将来であり、
如姝の語る三十年前に失踪した女性というのも、彼女の未来という訳でしょうか。
まぁ、砕けて例えるならば、
サブカルカップルの話?的な?
毒蛇を飼う者
難しい人間と関わりになると不幸になるという例えなのでしょうか。
本人に悪気が無くとも、
関わるだけで、人を不幸にするタイプの人間を、
毒蛇を腹に飼っていると例えている?
また、
親が、徐々に子供に興味が無くなって行く様子というのも、
妙なリアルさによって描かれています。
まぁ、私が感じた感想なので、
本書の収録作に限ると、
人に拠って、
色々な感想が生まれると思います。
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