性交渉により昂進、蔓延する「種のアポトーシス」に見舞われた人類。東京湾に浮かぶ人工島の自治区には、感染者が男女に隔離され、パートナーの人工妖精(フィギュア)と共に暮らしていた。そのフィギュアの一体である揚羽(アゲハ)は、機能を逸脱した個体を狩る、青色機関の抹消抗体・「海底の魔女(アクアノート)」として活動していた、、、
著者・籘真千歳は2008年『θ 11番ホームの妖精』でデビュー、他に『スワロウテイル~』のシリーズである『~幼形成熟の終わり』『~人工少女受胎』『~初夜の果実を接ぐもの』を発表している。
さて、まず目に付くのがインパクトのある題名である。しかし、それらしき描写はあれど、実際の小説の内容に「販売処」は全く出てこない。完全なる「釣り」である。
退廃的な事を考えているロリコンの方は肩透かしを喰らうだろう。
そして、実際の所は、
割と真面目な「設定SF」だ。
語り口はいわゆるラノベ風なので、「設定SF」に特有の取っつき難さが無い。読みやすくてオススメだ。恥ずかしがらずに買ってみよう。本屋が恥ずかしいなら通販で買えばいいじゃない。
以下ネタバレあり
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「設定SF」
本作は設定SFである。物語を語る手段としてSFを使う「ストーリーSF」というより、SF的世界観、世界設定を語ってゆくタイプの物語である。いわゆる「ハードSF」と言われるものは「設定SF」が多い。
もちろん、設定SFの全てが、物語を蔑ろにしている訳では無いが、中には「俺理論」の披露に夢中な作品もあり、それに乗れなかった場合は読むのが難しくなってしまう。だが、本作はストーリーと構成が練りに練られており、サスペンス要素あり、ラブストーリー要素ありと盛り沢山で物語自体を楽しめる。
読んでいるとちょっと恥ずかしくなってくる様なラノベ風会話シーン。そして、世界観の説明と同等かそれ以上に描写される人物の心情。過剰とも言えるほどの説明がなされるが、ストーリーと会話の軽快さでスイスイと読めるのだ。
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1部と2部が融合する3部
第1部では謎とサスペンスを扱っていながら、それを放っておいて第2部のSF的「愛の逃避行」が描かれる。ちょっと連作短編風の作りだな、と思わせる。
しかし、それが第3部になり、2部のストーリーを進めながら1部の謎に迫りつつ、さらに世界の謎にも繋がってゆくという、この構成力は中々の力技で、見事な盛り上がりをみせる。
確かにちょっと会話はクサいところもあるし、人物の心情を説明し過ぎのきらいもある。しかし、それすらも味と思わせる様な魅力あるストーリーの構成と世界観を描いている本作。
題名に臆さず読んでみては如何だろう?
こちらは続巻
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さて、次回は『BLAME!』をSF作家が小説化したアンソロジー『BLAME! THE ANTHOLOGY』について語ってみたい。