惑星スパロウランドの領主、若きミハルコ男爵は麗しのアースライト姫を求め銀河を遍歴中。オンボロロボ娘のランパチカ、吟遊詩人のノンシャランを旅の道連れに、今日も今日とて何かが起こる、、、
作者は速水螺旋人。
漫画単行本に
『靴ずれ戦線』
『大砲とスタンプ』等、
イラスト集に
『速水螺旋人 モダニズム』等がある。
本作は『月刊コミック@バンチ』にて現在(2018/01)も連載中。
ミリタリ風の漫画やイラストが多い作者の速水螺旋人。
とは言え、短篇集の『螺旋人同時上映』はSF風味の漫画であった。
そして、本作『男爵にふさわしい宇宙旅行』もSFであり、言うなれば
お気楽スペース・アドベンチャーものである。
憧れの姫に会おうと惑星を股にかけ大冒険。
……ではあるものの、遭遇するのは
旅のトラブルあれこれ。
お金が無かったり、
宿の予約が取れていなかったり、
エアコンが効かなかったり、
見知らぬ旅の道連れがややこしい人物だったりetc…
実際に起こり得る出来事のあれこれが、
SF的に面白楽しく描かれている。
このリアリティとファンタジーの融合具合が面白い本作。
絵も可愛らしくてオススメの一品である。
以下、内容に触れた解説となっております
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読んで楽しいSFアドベンチャー
本作『男爵にふさわしい宇宙旅行』はSFアドベンチャー。
とは言え、宇宙船で惑星を股にかけている筈が、その景色、城や旅籠や浴場等は何処か中世ファンタジー的な雰囲気を持っている。
そして、そこで出会う旅のトラブルは現実的なリアリティのあるあれこれ。
これらの要素、
現実的なトラブルが、
中世風の舞台で、
SFチックに解決されたり(されなかったり)する。
この混淆具合が独特の世界観を形成し、面白く魅力あるものとなっているのである。
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魅力的なキャラクターと絵
世界観の面白さもさる事ながら、本作はキャラクターも魅力的である。
ロボ娘のランパチカの大っきな獣耳(アンテナ)、シッポ(電源コード?)、メイド風の服に手袋と記号的デザインを上手く組み合わせて可愛いキャラクターとなっている。
吟遊詩人のノンシャランは色黒娘。
ダーク・エルフ的な見た目と、ちょいちょい思い出した様に誘惑してくる所がカワイイ。
そいて、主人公たるミハルコ。
基本はムッツリ真面目タイプであるが、身内がいない所ではエロに興味津々なのが面白い。
いたよ、こういう感じの同級生が中学生の時に!
更に、メイン以外のモブキャラさえもいい顔している。
旅籠の主人や宇宙船の乗客、道を歩いているだけのキャラにも個性的なヤツが多い。
p.104ページの盗賊親方の暑苦しい顔などは最高だ。
また、本作は背景からキャラ絵まで、全体に統一感があるので細かい所を見る面白さもある。
宇宙船や旅籠の壁、敷石や風呂場のバブルなど、細かい書き込みにも注目だ。
『男爵にふさわしい宇宙旅行』の様に読み切りアイデアを毎回出し続けるのは難しい。
また、本作ではキャラの頭身が変化する。
立ち絵では8頭身だったりするが、全身をコマの中に入れる時はデフォルメして5頭身くらいになったりする。
こういう漫画的演出を柔軟に利用する漫画というのは最近とみに減った印象だ。
10頭身のキャラクターのバストアップばかりのストーリー漫画が全盛の昨今、
『男爵にふさわしい宇宙旅行』の様に読み切り短篇ストーリーでキャラのデフォルメが効いた漫画はそれだけで貴重である。
それでいて内容も面白いとなれば、これは幸福な事なのである。
こちらは、ちょっと似た雰囲気の作者の短篇集
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さて次回は、宇宙を行くには建築せねばならぬ?小説『星を創る者たち』について語りたい。