悪夢に悩まされる少年ジェイク。暗躍する<黒衣の男>により攻撃される<暗黒の塔>。頻発する地震の原因はこれだと主張するが、母も義父も信じず、カウンセリングを受けさせられている。ある夜、ジェイクは男の夢を見る。彼は<ガンスリンガー(拳銃使い)>ローランド、、、
監督はニコライ・アーセル。
デンマーク出身。
代表的な監督作に
『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(2012)がある。
原作はスティーヴン・キングの代表作、
「ダーク・タワー」シリーズ。
主演のガンスリンガー/ローランド役にイドリス・エルバ。
主な出演作に
『マイティー・ソー』(2011)
『プロメテウス』(2012)
『パシフィック・リム』(2013)
『マンデラ 自由への長い道』(2013)等がある。
共演にマシュー・マコノヒー、トム・テイラー、キム・スヒョン、アビー・リー、フラン・クランツ等。
本作『ダークタワー』は、有名作家の長大小説「ダーク・タワー」シリーズを原作としている。
原作読者が予告編を見れば察しただろうが、
映画『ダークタワー』は
原作のエッセンスを使用したオリジナル作品となっている。
原作ファンはまず、
原作の忠実な再現では無いという事を留意して観るべきである。
その上で、
記憶を真っさらにして、初見の気持ちでこの作品を観れば、
オッサンのガンアクションが格好良すぎる映画として楽しめる。
弾を込め、狙い、撃つ!
この一連の流れる様な動作が美しく、
頭の中で真似する事請け合いである。
まず純粋に、アクション映画として楽しみむ。
そして、原作ファン様に用意されている
随所にちりばめられた「スティーヴン・キング」ネタを見つけて楽しむ映画。
それが本作『ダークタワー』であろう。
因みに、パンフレットが充実しているので、原作が好きで余裕があれば購入される事をオススメします。
-
『ダークタワー』のポイント
悩める少年の苦悩と冒険
オッサンの格好良いガンアクション
随所に配置された「スティーヴン・キング」ネタを探す楽しみ
以下、内容に触れた感想となっております
スポンサーリンク
-
原作の再現に非ず、実は、、、
本作『ダークタワー』は、スティーヴン・キングの原作「ダーク・タワー」の設定を基本とした、映画オリジナル作品。
なので、原作の忠実な再現では無い。
原作有の作品を映画化する場合、
1:原作に忠実に映画化する。
2:原作をアレンジして映画化する。
3:原作の設定のみ拝借してオリジナル作品を作る。
の3つがあげられるだろう。
スティーヴン・キング映画化作品で言うと、
1:『ミザリー』
2:『シャイニング』『IT ”それ”が見えたら終わり』
3:『ダークタワー』
と言えるだろう。
(キングの映画化作品には他に、原作に忠実に映画化しておきながら、「原作より面白い」と言われる『スタンド・バイ・ミー』や『ショーシャンクの空に』なんて作品もある)
この辺は作品作りの英断なので、一概にどれが一番素晴らしいか、とは断言出来ない。
個人的には、『ダーク・タワーⅠ ガンスリンガー』の映像化を観たかった気持ちがある。
だが本作は「スティーヴン・キング映画化作品」においては珍しい、純粋にアクションを楽しめる作品となっている。
原作を知らない人間でも楽しめる様に、敢えてこういう敷居の低い形で映像化したものと思われる。
そういう意味ではオリジナルだが、
本作は原作と全く違うパラレルワールドという訳では無い。
これはパンフレットで原作者がほのめかしている事だが、
実は映画の世界は、原作本篇が終わった後のループ後の世界である可能性があるのだ。
そうした視点で観ると、また新たに「ダーク・タワー」の世界観が拡がる様な感じがして、これはこれでアリだな、と思ってしまうのだ。
原作では白人(デッタ・ウォーカーの悪態から察するに)だったローランドが、映画で急に黒人になっていたのもそういう理由なのかも知れない。
-
原作ファンの為のネタ探し
少年ジェイクとの交流と、
派手なガンアクションをメインに据えた構成。
これが映画『ダークタワー』であり、
原作未読の初見さんにも易しい作りを目指している。
しかし、原作というか、スティーヴン・キングファンはそれでは物足りないだろうとの配慮からか、
本作には「スティーヴン・キング」ネタが随所にちりばめられている。
そして、それを探すのが、実は一番面白いんじゃないかと思うのだ。
目立つものを上げてみる。
まず、映画の最初のロゴ・クレジット。
会社名が色々出てくるのが映画の定番だが、
本作はその中にさりげなく「亀と薔薇」があしらわれたロゴの会社が混じっている。
その名は「テット・コーポレーション」、原作にも出てくる。
また、原作では馴染み深い「19」という数字も随所に出てくる。
本作でのジェイクの能力「千里眼」。
そういう生まれ持った超能力を、本作では<輝き(Shine)>と呼んでいる。
これは、『シャイニング』や『ドクター・スリープ』で使われた時と同じ意味合いであろう。
また、廃遊園地での甲板に、「PENNY WISE」という文字が見えた。
これは『IT』の「ピエロのペニー・ワイズ」を彷彿とさせる。
いまにも「それ」が出て来そうで震えたシーンだ。
(むしろ出て来たら面白かった)
他にも、「おや?」と思うシーンが多数あった。
それらの主立ったものは劇場版パンフレットにまとめてある。
(ジェイクを苛めていたヤツが、映画『IT ”それ”が見えたら終わり』のいじめっ子と同じとか)
2度観、3度観する予定のある方は、是非とも購入をしておく事をオススメする。
また、原作翻訳者の風間賢二氏による「ダーク・タワー」シリーズの世界観の説明が、分かり易く、詳しく載っているのでそれも読み応えがある。
むしろ原作ファンは、このパンフレットだけでも購入すべき価値がある。
-
少年ジェイク
メインキャラのひとり、ジェイク・チェンバーズ。
彼の年齢は、原作では11歳だったが、映画では14歳の設定だ。
スティーヴン・キングの作品には少年キャラが多数出てくる。
中でも、「11歳」という、日本で言う所の「小六世代」が人生の黄金時代として描かれ、少年と言えばその年代の印象である。
『スタンド・バイ・ミー』『IT』etc…
「ダーク・タワー」シリーズのジェイク少年もそうだ。
だが、映画では少し年齢を上げて、
庇護者的な存在というより、より自主的に動き戦う事の出来る「もう少しで一人前の男」として描かれている。
これにより、お互いが長所を活かし合うバディ・ムービー的な側面もあるのが、本作の面白い所である。
原作未読者はガンアクションを楽しみ、
原作ファンは、ネタを探して楽しむ。
同じ映画なのに、原作を知っているかいないかで、こうも楽しみ方に違いが出てくるのか。
そういう意味では大変興味深い、メタな構成の作りになっている『ダークタワー』。
ある意味、「キングの総集篇」と言われた原作の意味を、忠実に再現した映像化作品とも言えるのではないだろうか。
スポンサーリンク
さて次回は、世界の破滅した後、残された人間はどう生きるか、小説『世界の終わりの天文台』について語りたい。