アメリカの新聞「カンザス・イブニング・サン」の別冊雑誌、
「フレンチ・ディスパッチ」は、フランスのアンニュイ=シュール=ブラゼに編集部がある。
一癖も二癖もある編集者をまとめるのは、雑誌を創刊した編集長アーサー・ハウイッツァー・Jr.。彼が亡くなり、その遺言によって、雑誌は廃刊が決定した。
本作は、その最終号に寄稿された記事から抜粋された3つのエピソードである、、、
監督は、ウェス・アンダーソン。
独特の世界観の映画で、ファンも多い。
監督作に、
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)
『ダージリン急行』(2007)
『ファンタスティック Mr.FOX』(2009)
『ムーンライズ・キングダム』(2012)
『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)
『犬ヶ島』(2018) 等がある。
出演は、
編集長
アーサー・ハウイッツァー・Jr.:ビル・マーレイ
自転車レポーター
エルブサン・サゼラック:オーウェン・ウィルソン
#1「確固たる名作」
J.K.L ベレンセン:ティルダ・スウィントン
モーゼス・ローゼンターラー:ベニチオ・デル・トロ
シモーヌ:レア・セドゥ
ジュリアン・カダージオ:エイドリアン・ブロディ
#2「宣言書の改訂」
ルシンダ・クレメンツ:フランシス・マクドーマンド
ゼフィレッリ・B:ティモシー・シャラメ
ジュリエット:リナ・クードリ
#3「警察署長の食事室」
ローバック・ライト:ジェフリー・ライト
アンニュイ警察署長:マチュー・アマルリック
ネスカフィエ:スティーヴン・パーク 他
題名『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』。
いや、長ぇよ!
題名長ぇよ!
「フレンチ・ディスパッチ」だけでいいじゃん。
書くのが面倒くせぇよ!!
『タイトでキュートなヒップがシュールなジョークとムードでテレフォンナンバー』って、
曲と同じくらい長ぇよ!!
…まぁ、コピペするけどね♡
さて、そんな本作は、
簡潔に言いますと、
短篇3作のオムニバス映画です。
「フレンチ・ディスパッチ」最終号に寄稿された3つの記事。
これを、それぞれ映像化した、
という態の作品。
そんな本作は、
いわゆる、
オシャレ映画です。
「オシャレ映画」と言うと、
何となく、ファッション的な感じがして、軽薄な印象を与えるかもしれません。
しかし本作は、
言葉通りの「オシャレ」さ。
「小粋」な感じの映画作品です。
なので、
まぁ、ハッキリ言ってしまいますと、
本作は雰囲気映画なので、
好きな人は好きですが、
感性が合わなかった人は、
ひたすら、つまらない時間を過ごす事になります。
じゃあ、合う、合わないの基準は何なの?
と、言われると、
それは、実際に観てみないと、何とも言えません。
強いて言うなら、
過去作も雰囲気映画なので、
監督の過去作が好きなら、本作も楽しめると思います。
そんな本作、
過去作からの常連組を筆頭に、
メインから、ちょい役まで、
出演陣が一々豪華です。
こんな端役に、この役者使えるの?とか、
この役に、この役者使う必要性皆無だろ!?とか、
ソックリさんかと思って二度見したら、
やっぱり有名役者だったという登場人物が、多数います。
画面作りがオシャレ、
絵面が綺麗、
出演陣が豪華、
ストーリーは小粋。
現実から離れ、
ちょっと幸せな時間を感じる、
『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』は、
そんな映画です。
-
『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』のポイント
小粋でオシャレなオムニバス作品
豪華出演陣
多重構造のメタ映画
以下、内容に触れた感想となっております
スポンサーリンク
-
多重構造のメタ作品
『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』は、
オシャレ映画ではありますが、
その構成は、
多重構造のメタ作品と言えるものになっており、
その「物語の入れ子」の様式美に感嘆するのが、
本作の面白さなのだと思います。
つまり、
見た目、とか、ファッション的な意味で「オシャレ」と強調しているのでは無くて、
その物語構造の「気の利いた」感じが「オシャレ」なんですよね。
本作は、
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊」の
最終号に寄稿された記事を、
「再現VTR」として、実写化した、
という感じの作品です。
その再現時に、
編集長である、ビル・マーレイ演じるアーサー・ハウイッツァー・Jr.と、
各編集者とのやり取り、
例えば、
このエピソードが良いとか、
これは、絶対必要な部分だとか、
そういうやり取りが挟まる事が、メタですが、
エピソードの#1と#3は、更に、
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊」の最終号に寄稿した記事を、
講演やTVのインタビューで話しているという、
多重構造を作り出しています。
つまり、
例えば、#1の「確固たる名作」ならば、
観客が観ている「確固たる名作」のエピソードは、
→J.K.L ベレンセンが、講演でモーゼス・ローゼンターラーの話をしており
→それは「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊」の最終号に寄稿された記事であり、
→それは、過去のJ.K.L ベレンセンが、その場で体験した事、
→或いは取材して判明した事
という、
まるで、噂話の連鎖というか、
伝言ゲームの様な、多重構造になっているのです。
映画的には、
観客が観ている映像のエピソードが「事実」ではあるのでしょうが、
それを講演で語る場合、
「実際に起こった事」に、
「編集者の私見」が、如何に割り込むのか、
という様子が、共に描かれているのが、
本作の面白ポイントであります。
例えば、#3では、
ジェフリー・ライト演じる、編集者のローバック・ライトが、
完全に見ていない部分=カーチェイスの部分は、
コミカルチックなアニメ映像に、急に変わります。
これは、
記事を書いている本人が、
想像で書いている(創作)している部分だと、ほのめかしていると考えられます。
また、
#1と#3は、
映像が白黒ですが。
#2の殆どは、カラー映像です。
これは、おそらく、
#1と#3の編集者のJ.K.L ベレンセンとローバック・ライトは、
講演とTV番組という形で、
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊」の最終号の記事の事を語っており、
それはつまり、
両者とも、編集者としては引退しているのかもしれません。
反対に、
#2の執筆者の、
フランシス・マクドーマンド演じる、ルシンダ・クレメンツは、
未だ、現役の編集者であるため、
現場の空気が保たれ、記憶が鮮明であるために、カラーであるのではないかと思います。
-
出演者に、元ネタアリ
物語が多重構造として成り立っている『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』ですが、
本作では更に、
メインのキャラクターに、
実際にモデルになった人物が居るという意味においても、
多重構造と言えるのです。
先ず、
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊」という雑誌事態が、
「ニューヨーカー」という雑誌を元ネタとしているそうです。
そして、
編集長のアーサー・ハウイッツァー・Jr.は、
「ニューヨーカー」を創刊した編集長であるハロルド・ロス、
そして、二代目編集長のウィリアム・ショーンの影響を受けているそうです。
以下、
パンフレットの受け売りですが、
自転車リポーターのエルブサン・サゼラックは、
ジョゼフ・ミッチェル、リュック・サンテ、ビル・カニンガム
#1の寄稿者J.K.L ベレンセンは、
ロザモンド・ベルニエ
美術商のジュリアン・カダージオは、
ジョゼフ・デュヴィーン
#2の寄稿者ルシンダ・クレメンツは、
メイヴィス・ギャラント
#3の寄稿者ローバック・ライトは、
A・J・リーブリング、ジェームズ・ロールドウィン、テネシー・ウィリアムズ
に、それぞれ、
影響を受けていると書かれています。
それぞれ、
元ネタとなった人物には、
どの様な経歴があるのか、
その辺りも調べてみると、
作品の世界観がより広がって、面白いと思います。
見た目は勿論、
構成や、設定が一々オシャレ、
『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』。
現在は、
インターネット、動画配信サービスなど、
映像が主体となっていますが、
その映像にて、
文字文化の面白さの再考を促すという試みもまた、
本作の面白さではないでしょうか。
スポンサーリンク