ミッションを終え、「ホーム」へと帰還中の宇宙探査船「センサー」は、生命反応のある惑星「トゥカニ・プライム」を発見した。コールドスリープから目覚めたバズ・ライトイヤーは、その惑星の探検を決断する。
しかし「トゥカニ・プライム」は狂暴な生物が跋扈する、居住に適さない場所であった。惑星からの脱出を試みるも、バズの失敗で宇宙船が損傷、エンジンとエネルギーが失われてしまう。
乗組員全員が惑星に足止めされる事に責任を感じたバズは、燃料エンジンの実験に志願するのだが、、、
監督は、アンガス・マクレーン。
1997年にアニメーターとして「ピクサー・アニメーション・スタジオ」に参加。
短篇作品、
『バーニー』(2008)
『ニセものバズがやって来た』(2011)
「トイ・ストーリー」のTVシリーズ
『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』(2013)
長篇映画の
『ファインディング・ドリー』(2016)の共同監督。
声の出演/日本語吹替えは、
バズ・ライトイヤー:クリス・エヴァンス/鈴木亮平
アリーシャ・ホーソーン:ウゾ・アドゥーバ/りょう
イジー・ホーソーン:キキ・パーマー/今田美桜
モー・モリソン:タイカ・ワイティティ/三木眞一郎
ダービー・スティール:デール・ソウルズ/磯部万沙子
ソックス:ピーター・ソーン/山内健二(かまいたち)
ザーグ:ジェームズ・ブローリン/銀河万丈 他
映画「トイ・ストーリー」シリーズは、
「ピクサー・アニメーション・スタジオ」の看板作品であり、
実質、ジョン・ラセターの作品です。
「トイ・ストーリー」という作品は、
「3」で完結しており、
その後に描かれた『トイ・ストーリー4』は、
主人公のウッディの出奔が、
まるで、
セクハラ問題でピクサーを追い出されたジョン・ラセターと重なり、
それは即ち、
「トイ・ストーリー」シリーズの完結をも、意味していました。
しかし、
「トイ・ストーリー」フランチャイズは死んでいなかった!!
今回、
「トイ・ストーリー」のスピンオフとして、
人気キャラクターである「バズ・ライトイヤー」に焦点を当て、
「トイ・ストーリー」のアンディは、
どんな映画を観て、影響を受け、気に入って、
バズのオモチャを買ってもらったのか?
そういうテーマにて作られたのが、
本作『バズ・ライトイヤー』です。
で、昔、
『スペース・レンジャー バズ・ライトイヤー 帝王ザーグを倒せ!』(2000)
という作品があったのですが、
(ピクサー・アニメーション・スタジオの作品では無い)
本作では、
その作品との繋がりは無いような感じがしますね。
そんなこんなで、
新しい「トイ・ストーリー」フランチャイズというか、
シリーズになりそうな予感がする
『バズ・ライトイヤー』は、
正直、一旦、
今までの「トイ・ストーリー」は忘れて観るべき作品
だと感じました。
「トイ・ストーリー」の「バス」を意識するよりも、
「ピクサー・アニメーション・スタジオ」の
新作SFアニメ映画として観た方が、
精神衛生上、良いし面白い作品と言えます。
事実、
本作は第一作目の『トイ・ストーリー』(1995)を手掛けたチームは、
本作に携わっておらず、
これまで、
「トイ・ストーリー」シリーズで、
バズの声優を務めてきたティム・アレンは、本作について
「素晴らしい作品だけど、オモチャとの関連が無い」
=これまでのバズとの一貫性が無いと、コメントしています。
正に、彼の指摘こそが、
これまでの「トイ・ストーリー」シリーズを愛して、
本作に、
言葉にならない期待を胸に観に行った人間が、
「面白いンだろうけれど、何か、違う」と感じる、
その理由の答えと言えるでしょう。
バズ・ライトイヤーというオモチャの元となった作品、
それは、どんなだろう?
スペース・レンジャーという位だから、
「スター・ウォーズ」みたいな宇宙規模の活躍をして、
大冒険と、アクションと、
時々、子供受けするギャグとかが入る大活劇、
何も考えずに、
ド派手に楽しめる作品みたいな、
そんな感じのものを、
期待してしまうのではないでしょうか。
ですが、
本作は、違います。
「スター・ウォーズ」みたいな規模では無いですし、
子供受けする解り易さもありません。
スケール感も、
一つの惑星というか、
割と、地域が限定されている感じです。
むしろ、
『トップガン マーヴェリック』(2022)の方が、
スケール感があったりします。
確かに、
SF的なアイディアは面白いし、
人間ドラマと教訓をテーマにし、
ストーリーを組み立てている辺り、
今までの「大人が観ても楽しめる」ピクサー作品の系譜に、
確かに連なる作品です。
しかし、
アニメーション作品って、本来、
子供が観て楽しむべきものなのではないでしょうか。
子供が観てちんぷんかんぷんな作品なら、
そもそも、親(大人)も観ないのですから。
そう、本作を観た正直な、私の感想は、
本末転倒です。
「トイ・ストーリー」や「バズ・ライトイヤー」が好きな人間は、
かつての子供である親世代であり、
その世代向けに作ったのかもしれませんが、
子供が観て楽しいと思える活劇や派手さが無い作品は、
そもそも、親も観ないのです。
衝撃的だったのは、
私が観た時の劇場の様子。
同日に公開された『エルヴィス』は盛況でしたが、
なんと本作、
劇場は、私一人。
完全貸し切り状態。
これは、寂し過ぎますが、
本作が、親や子供目線で見つめて、
如何に期待されてないか、
それを物語っているのではないでしょうか。
本作は、
主人公が完全オリジナルなら、
「それなりに良い作品」として評価されたハズです。
しかし、
「トイ・ストーリー」に思い入れのある人が観ると、
逆に、
「何か、違う」と感じてしまう作品でしょう。
想像・空想と思い出を超える事は、難しい、
「バズ・ライトイヤー」のオリジンを描いた本作を観て、
私は、そう思いました。
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『バズ・ライトイヤー』のポイント
新作SFアニメとして観るならば、良い作品
失敗の挽回に拘るより、期待される事をせよ
子供が観て楽しい作品こそ、大人も楽しいのでは
以下、内容に触れた感想となっております
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作品として素晴らしいテーマ、でも、子供受けはしない
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本作『バズ・ライトイヤー』には、
今まで「トイ・ストーリー」を、
メインで作ってきたジョン・ラセターは関わっていません。
つまり、
「トイ・ストーリー」フランチャイズを続けるにあたって、
全く新しいチャレンジとなる、
その、新生第一号となるのが、
本作『バズ・ライトイヤー』という訳です。
本作『バズ・ライトイヤー』の
主人公「バズ・ライトイヤー」は、
少々頑固というか、
よく、職場とかに居る、
「仕事は出来るけれど、とっつき難く、単独行動しがちな先輩」
のイメージです。
後輩に仕事を教えず、
「俺がやっとくから、お前、引っ込んでて」と、
平気で言っちゃう人です。
よく言えば、責任感が強い、ですが、
端的に言うならば、協調性が無いタイプ。
バズは、
宇宙船のエンジンを損傷させた事に責任を感じ、
エネルギーの再構築の為に、
一回のテスト飛行で、(他人の)4年が吹っ飛ぶ実験を、
何度も繰り返します。
それこそ、
バズにとっては、唯一の名誉挽回の機会なのですが、
その実験期間で、
他の人間は、逗留地を暮らし易くし、
既に、植民が完成し、
現地に適応して行きます。
つまり、
バズが名誉挽回だと思っている行為は、
既に、他の人には、さして重要事では無く、
失敗に固執し過ぎた結果、
一人、取り残され、
無用の長物と化してしまうのです。
本作は、そんなバズが、
仲間との関わりにより、
協調性を学び、
自己の名誉の挽回に腐心する事
=自己実現に邁進する事
=自分のエゴを優先するよりも、
他人を認め、
その他人に期待される人物に成る事が、
よほど、人々に好かれ、
社会の為になる事を、描く作品です。
テーマとしては、
面白く、素晴らしい作品です。
でも、
そんな難しい事、
子供には、分からないよ、
何か、暗いし!!
本来、アニメーション作品って、
子供が観て楽しいものにするべきなのではないでしょうか。
しかし本作は、
全体的に、
色合いが暗かったり、
緑よりも、茶色が多かったり、
イメージ的にも、
マイナスな雰囲気が漂っています。
確かに、
「トイ・ストーリー」のバズも、
最初は傲慢でしたが、
後に、協調性を学ぶというキャラクターであり、
そういう意味で、
本作は、
『トイ・ストーリー』の第一作目のバズを「形式のみ」踏襲してはいます。
しかし、
「トイ・ストーリー」一作目のバズが、
子供が観ても、
「勘違いしてるよ、このオモチャ!」というメタ視点で
ウッディと共に、
その滑稽さにツッコミを入れていたのと比べて、
本作のバズは、
その傲慢さが素であるが故に、
元の作品が持っていたコミカルさを失ってしまっているのです。
ギャグとガチの差が、
元作品と本作の、乖離に繋がっていると感じました。
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バイバイ、ラセター
「無限の彼方へ、さあ、行こう」とは、
バズのキメ台詞。
本作では、その台詞をフューチャーし、
まるで、
『北斗の拳』がアニメ化した時に「お前はもう、死んでいる」を連呼したかの如くに、
「無限の彼方へ、さあ、行こう」を連呼します。
しかし、
本作はそのラストで、
「既に、この星が故郷(ホーム)だ」という台詞があり、
ぶっちゃけ、
「無限の彼方へ、さあ、行こう」という台詞を
全否定する方向に落ち着きます。
さて、
元々、「トイ・ストーリー」において、
「バズ・ライトイヤー」の見た目は、
一作目と二作目で監督を務めた
ジョン・ラセターを模したものだと言われています。
(まぁ、似てませんがね)
初期というか、
設立時の「ピクサー・アニメーション・スタジオ」は、
「ディズニーを倒せ」みたいな気合いが入っていた様に感じました。
アニメ映画が
現在の様に3DCG路線になったのは、
間違い無く、ピクサーの功績であり、
後に、ディズニーに買収され、
その技術が吸収される事で、
その流れは決定的となりました。
しかし、
設立時の主要メンバー、
スティーブ・ジョブズは死に、
エドウィン・キャットマルは引退し、
ジョン・ラセターは追放され、
ディズニー傘下となって久しいピクサーからは、
既に、過去の「志」とクリエイティビティを無くしてしまったのだと、
オールドファンからは、見えてしまいます。
ですが本作は、
そんなオールドファンの批判について、
苦言を呈した作品と、
見る事も出来るのではないでしょうか。
自分達「ピクサー」の新しい世代は、
ディズニー傘下という「新天地」において、
既に、適応している。
昔を懐かしむ、
独立独歩の反骨精神とフロンティアスピリットでは無く、
協調性を持って、
社会に貢献しているのだ。
ラセターの影響から完全に脱した「ピクサー」の、
本作は、
そういうメッセージが込められていると、
私は感じましたが、どうでしょうか。
そういう意味で観ると、
古い自分(バズ)を、
新しい自分(バズ)が倒すというオチも、
古き影響力からの脱却を描いていると感じました。
まぁ、しかし、
描いているテーマは面白く、興味深いですが、
個人のエゴを極めて、
その影響力で引っ張って、
チーム全体を救った『トップガン マーヴェリック』が大ヒットしたのに対し、
結局は、
リーダーシップを発揮しないままに、
自己主張との戦いに終始してしまった『バズ・ライトイヤー』が、
何となく、ウケ無い所に、
観客の好みの違いを感じますね。
本作の監督、アンガス・マクレーンは、
映画製作は、大体4年くらいかかり、
気付けば、世間があっと言う間に過ぎ去っており、
その感覚を、
バズ(の周囲)が、4年飛ばしで年を取るというアイディアに使用したと言います。
強烈な個性を持ちながら、世間から、
思想的にも、世代的にも取り残されるバズは、
他人との協調性を学ぶ事で、
真に、大切なものは何かを学び、
エゴより、他人の期待に応える事を選択します。
『バズ・ライトイヤー』で描く、
そういうテーマは確かに素晴らしいものなのですが、
しかし、
本来、
「トイ・ストーリー」のファンが求めた、
そのイメージの「バズ・ライトイヤー」の物語とは、
本作は、かけ離れています。
笑えて、カッコ良くて、面白い、
宇宙規模の大活劇!!
みたいな、ね。
それを、期待したんですよ。
協調性の大切さをテーマで描いた作品が、
ファンとの協調性の事を考えていないという本末転倒さが、
本作の評価を落としていると言えるのではないでしょうか。
単独作品なら面白い、
しかし、
『バズ・ライトイヤー』は、
「バズ・ライトイヤー」を、
公式が、正しく理解しているとは思えない、
そういう自己矛盾を、
幾重にも孕んでいる部分が、
複雑で、
ある意味、面白いとも、言えるのかもしれませんね。
エンドロールの後に、
ザーグが復活する様なシーンも描かれましたが、
果たして、
新しい「トイ・ストーリー」フランチャイズとして、
続篇が作られるかどうか、
その点も、注目したい所です。
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