映画『ベイビー・ブローカー』感想  歪で壊れやすく、それでも優しい家族の物語

赤ちゃんポストに預けられた「赤子」を略取、勝手に横流ししてマージンを稼ぐブローカーの二人、サンヒョンとドンス。
ある夜、ウソンと名付けられた赤子が預けられる。その赤子を連れ去る様子を、見張っていた警官に目撃される。
更には翌朝、心変わりした母親のソヨンは、赤子の様子を見に赤ちゃんポストに戻ってきて、、、

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監督は、是枝裕和
現在、日本の監督で最も国内外で評価が高い監督。
監督作に、
『誰も知らない』(2004)
『花よりもなほ』(2006)
『空気人形』(2009)
『歩いても 歩いても』(2008)
『そして父になる』(2013)
『海街diary』(2015)
『海よりもまだ深く』(2016)
三度目の殺人』(2017)
万引き家族』(2018)
真実』(2019) 等がある。

出演は、
ハ・サンヒョン:ソン・ガンホ
ユン・ドンス:カン・ドンウォン
ムン・ソヨン:イ・ジウン
アン・スジン:ペ・ドゥナ
イ刑事:イ・ジュヨン 他

カンヌ国際映画祭にて、
毎回、高い評価を受けている是枝裕和監督。

現在、
日本出身の監督としては、
最も、国際的な評価が高い映画監督と言えるのではないでしょうか。

そんな是枝裕和監督の最新作は、
韓国製作の韓国語作品である『ベイビー・ブローカー』。

前作『真実』が、
フランス製作、フランス語映画で、
2作品連続で、国際的な作品となっております。

さて、本作、『ベイビー・ブローカー』です。

「赤ちゃんポスト」に捨てられた赤子を勝手に略取。

それを横流しして、
マージンを得る。

やっている事のトンデモ無さ、
倫理観の欠如に、唖然とします。

そして、
そんな冒頭の設定、粗筋を聞くと、

人倫に悖るブローカーと、
責任感の無い母親、
それを狙う警官も冷徹、
ヤクザも絡んで、

血で血を洗う、
鬼畜達の鎬合いが始まる!!

…みたいな、印象を受けますよね。
ヴァイオレンス描写に定評のある、韓国映画なら、尚更。

でも、本作は、
そんなエンタメ脳に犯された内容では無いです。

ぶっちゃけ、

メインの登場人物、全員善人!?

やっている事、
起こっている事の酷さに反比例し、

その実態は、
鑑賞前の印象とは、大分違います。

以下、内容に触れております

人は、それぞれの理由で、
人生を送っています。

ブローカーの二人は、
赤子の横流しは、

施設で暮らす事になるよりも、
子供を欲しがっている、
責任ある人間に預けた方が、幸せになる、
我々はいわば、キューピッドだ、

などと宣います。

しかし、
これが妄言では無く、

自身が、
母親に捨てられた過去を持つドンス、

自身の家族が壊れた過去を持つ、
サンヒョンの言葉であるが故に、

それなりの説得力があります。

又、
母親側にも、

無責任故に赤子を捨てたのでは無く、

赤子を巡って、
不倫関係の父親とトラブルになり、
それを殺害したが故、

累を及ぼす事が無い様に、
自らが身を引いたという事情があります。

ブローカーを追う、刑事、
アン・スジンも、
劇中では詳しく語られませんが、

私生活で、
おそらく、子供が生まれい(生まない)らしき事情があり、

彼女なりの、
個人的な感情も、
事件を追うという動機に繋がっている部分が窺えます。

そう、
本作は、結局、
是枝裕和作品。

監督が常に追い求めているテーマ、

事情を抱えた者達が寄り添い、
疑似家族を形成する

というものを、
本作でも踏襲しています。

結局は、
家族というものは、
生まれながらに形成されるものでは無く

日々の生活と経験と、
各自の、家族を続けようとする意思によって、
繋ぎ止められている

意外かもしれませんが、
自然と家族は生まれず、

「そうなろう」という決断の元に、
家族は形成される

そういう、
綺麗事では無い現実を、
本作でも描いているのです。

人というものは、

初見のイメージとは違い、
それぞれ言い知れぬ事情を抱えており、

そういう、傷付いた魂を相互理解する事で、

人の世が、
より良く変化して行くのかもしれないですね。

日本においては、
赤ちゃんポストは、
2007年に、熊本に設けられ、

その固定したイメージがある為に、
日本映画としては作られ難かったのかもしれません。

そういう意味でも、
今回、監督お得意のテーマを韓国作品として作ったのは、

リフレッシュ的な意味合いもあったのかもしれませんね。

  • 『ベイビー・ブローカー』のポイント

訳あり人物たちが寄り添う、疑似家族の物語

意思と決断によって、家族と成る

ちょっと、ロードムービー的な雰囲気もあり

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