映画『ビューティフル・ボーイ』感想  絶対駄目!!薬物の恐怖!!


 

ニックは、音楽ライターのデヴィッド・シェフの自慢の息子。六つの大学に合格し、水球の選手であり、共にサーフィンや音楽を楽しむ間柄だった。しかし、大学生活を経て、久しぶり出会った息子は一変していた。ニックは薬物依存症になっていたのだ、、、

 

 

 

 

監督はフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
ベルギー出身、
本作が、英語での映画初監督作である。
主な監督作に、
『オーバー・ザ・ブルースカイ』(2012)
『ベルヒカ』(2016)等がある。

 

原作は、
デヴィッド・シェフの『ビューティフル・ボーイ』と、
ニック・シェフの回顧録『Tweek』を
参考に、組み合わせている。

 

出演は、
デヴィッド・シェフ:スティーヴ・カレル
ニック・シェフ:ティモシー・シャラメ
カレン:モーラ・ティアニー
ヴィッキー:エイミー・ライアン
ローレン:ケイトリン・デヴァー 他

 

 

 

一部のファン層に、
ボーイズラブの描写が垂涎の作品であり、
予想外(!?)の大ヒットを記録した『翔んで埼玉』。

しかし、
映画的には、昨年の、
君の名前で僕を呼んで』(2017)
が、世界的にヒットした、ボーイズラブと言えるでしょう。

 

その『君の名前で僕を呼んで』で、
絶世の美少年として名を馳せたのが、ティモシー・シャラメ。

そのティモシー・シャラメが出演し、
題名が『ビューティフル・ボーイ』!?

一体、どんな映画になるのか!?

 

ハイ、

ドラッグの残酷さを描いた作品でした。

 

その題名と、
予告篇の見せ方から、

本作は、
「ドラッグ依存症の息子と、それを支える父の親子の物語」
的な印象を持たれるかもしれません。

しかし本作は、
そんな生ぬるいヒューマンドラマではありません。

原作が存在し、
それを活かした映画。

観て、感動するとか、
共感するとか、
そういう心洗われるファンタジーでは無いのです。

あくまでも、
ドラッグの恐ろしさを、リアルに描いた作品となっています。

 

 

美しい映像、
美しい場所、
美しい出演者、

しかし、
対比して描かれるのは、

無残たる、薬物依存症と、
それに関わざるをえない家族の苦悩。

 

 

何故、ドラッグが駄目なのか?

本作『ビューティフル・ボーイ』を観て、
その現実を知るべし、です。

 

 

  • 『ビューティフル・ボーイ』のポイント

薬物依存症のリアル

関わる家族の苦悩

孤独と疎外感

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

 


スポンサーリンク

 

  • シャッフルされた時系列

本作、『ビューティフル・ボーイ』を観てまず思う事は、
話が一本道では無い事、

つまり、
時系列がシャッフルされている事ですね。

 

何故、こういう演出にしたのでしょうか?

実話ベースなので、
普通に時系列通りに話を進めても、よかったハズです。

…と、思うでしょうが、
実際は、
実話を、時間通りに語ると、
意外と平板な印象になるのです。

言ってしまえば本作は、
ニックが毎回家族の期待を裏切って、
薬物「止める、止める」詐欺をするだけの話です。

これを、
映画という媒体でドラマティックに語るとしたら、
どうしたらいい?

そう考えた時、
過去の輝かしい思い出と、
現在の悲惨な状況を並列させ、
それらを対比させる事で、
より、感情に訴える演出を生みだしているのです。

 

また、
本作は、ドラッグに溺れる息子に悩む、父親目線の話です。

父のデヴィッド自身、
心は千々に乱れ、
過去の思い出が、現在の悲惨な状況にオーバーラップしているとも、言えるのかもしれません。

 

故に本作は、興味深い事に、
別に、時系列を理解、把握しなくても、
物語が破綻しないのです。

結局、
地獄の様な、薬物依存の日々が、何度も繰り返される
本作は、そういう話と言えるのです。

 

  • 普通の人間をも襲う、薬物の恐怖

薬物中毒と言えば、
誰を思い浮かべますか?

映画関連で言えば、
先ず、思い出すのは、リヴァー・フェニックス

薬物の過剰摂取(drug overdose)が原因で死亡しました。

また、
『ホーム・アローン』(1990)に出演していた、
元、子役のマコーレー・カルキンは、ドラッグ依存症だったと言われています。

そして、
最もホットな人物としては、
ピエール瀧でしょうか。

映画で、
悪徳警官やヤクザ、犯罪者などの個性的な役柄ばかり演じていましたが、

これはもう完全に、役と現実をゴッチャにして悪いのですが、
彼がコカインや大麻を使っていた、
と言われても、
「ああ、やりそう」
という感想が出て来るのは、私だけでしょうか?

 

映画やマンガ、小説などのキャラクターが
薬物依存症になる。

それには、訳があって、
社会的な境遇や、貧困、差別などが関わっている、、、

我々には、そういう思い込みが染み付いていませんか?

薬物に頼るのは、
ピエール瀧や、
マンガの『哲也―雀聖と呼ばれた男』に出て来る、印南みたいな奴ばかりだと、
思い込んでいませんか?

 

でも、実際は、そういう人物だけでは無い、

裕福な家庭で、
恵まれた環境で、
家族に愛された育った様な人物でも、
薬物依存症に成り得るという現実を、

本作は見せつけてきます。

 

父親に「ビューティフル・ボーイ」と愛されて育ったニック。

そんな彼でも、
軽い気持ちで始めたドラッグが、
徐々にエスカレートして、
気付けば、引き返せない所までのめり込んでいるのです。

見るからに堅気では無いピエール瀧も、
美少年と言われるティモシー・シャラメも、
見た目が全然違っても、
薬物依存症というものに嵌れば、
等しく、不幸に陥るのです。

 

薬物は、
脳の神経に過剰な刺激を与え、
それが快楽をもたらす一方、脳の神経を破壊し、
それが元に戻らない為、
もっと、もっとと、加える刺激がエスカレートして行き、
自分では制御不可能になってしまう。

脳が、
薬物を欲する形に、
固定(破壊)されてしまっているからなのです。

攻撃的な性向、
支離滅裂な言動、

典型的な薬物依存の症状を見せるニックには、
哀しい事に、
全ての愛を込めたという「everything」という言葉さえも、
虚しく響くだけなのです。

 

  • 父と息子

本作、
リアルなのは、
父親のデヴィッドが、ちゃんとイライラしている所なのです。

いくら息子と言っても、
これだけ裏切られ続けたら、我慢にも限度があります。

しかし、
本人にぶちまける事は極力避け、
それ故に、他の人物に当たってしまう事が多数あります。

また、ニックは言います。

「父さんは、僕を縛りつける」
「今の僕も、僕自身だ。この僕も、愛してよ」と。

しかし、父親のデヴィッドとしても、
無償の愛を注ぐのにも限度があり、
最早、見るに堪えないとばかりに、
息子のSOSを拒絶するシーンすらあります。

 

薬物依存を抜きにしても、
本作には、父と息子の関わりについても、
テーマの一つとして描かれています。

他人から疎外され、人生を孤独と感じるのは、今だけの事

とは、デヴィッドの言。

正に、人生とはその通りで、
そういう苦しい感情を、
実は、この世に生きている、ほぼ全ての人間が抱えていると、
それを知る事で、
人生の境遇は変わらずとも、自分は一人では無かったんだと気付く事が出来るのです。

しかし、
子供の目線は、あくまでも自分本位であるが故に、
自分がこんなに苦しがっている事を、親(大人・世間)は分かってくれない
と、拗ねる事になるのです。

 

デヴィッドとニックは、
親子であるが故に、
この大人と子供の相克を、
作中、延々と続ける事になります。

悪意に満ちて、退屈なだけが、世界では無いと気付いて欲しいデヴィッド、
行き場の無い感情も含めて、今の自分すら愛してほしいニック、

お互いが、自分の気持ちを理解して欲しいと切望しているのです。

しかし、
二人は親子関係であるという事実は、永遠に変わらないが故に、
二人の主張は、永遠に交わらないという結果に陥ります。

 

専門家から話を聞き、
ネットで調べ、
実際に自分でドラッグを使い、
薬物依存症を家族に持つ人間達のセミナーに参加しても、

デヴィッドは、
ニック自身を理解し得ません。

ニックも、
如何にも構って欲しげに、
分かり易いSOSを発しますが、
肝心な所で、
ニック自身が、いつも逃げ出してしまっては、
元の木阿弥です。

 

一度、齟齬が生まれた親子関係は、
決して、修復出来ない

それは、
父と子故の宿命なのか?

それとも、ドラッグ故の悲劇なのか?

そういう事も、
本作は考えてしまいますね。

 

 

 

デヴィッドは、
一度は、もう無理だとニックの事を放棄しても、

それでも戻って来て、
無償の愛で、息子の憐れな姿を見守り続けます。

 

直ったと思ったら、
再発を繰り返す日々。

かつての「ビューティフル・ボーイ」の面影は無く、
その形骸のみとなった息子の中に、

美しさが戻る時が来ると、
半ば、自分を騙しつつも、
信じるしか無いのです。

この、
信じたい心の中に、
疲労と諦念が混じり合っている様な感情
これこそが、真の、
「無償の愛」の境地と言えるのかもしれません。

 

薬物依存症というものは、
本人だけでは無く、
その家族をも、
延々と続く地獄に引きずり込みます

その辛い現実、
『ビューティフル・ボーイ』は、
我々に、
「ドラッグ、絶対、駄目」という事を、
教えてくれるのです。

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

 

映画の原作の一翼を担った、デヴィッド・シェフによる著書『ビューティフル・ボーイ』がコチラ


スポンサーリンク