ディーンとシンディは娘のフランキーと暮らしている。二人は互いに少し不満があり、微妙なすれ違いを感じていた。だが、出会った頃の二人はお互いに若く、夢があり輝いていた、、、
監督はデレク・シアンフランス。
アメリカ人で、別にフランス人ではありません。
他の監督作に
『BROTHER TIED』(1997)
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)
『光をくれた人』(2016)がある。
ディーン役にライアン・ゴズリング。
現在、ハリウッドでの屈指の人気役者。
出演作に
『きみに読む物語』(2004)
『ハーフネルソン』(2006)
『ラースと、その彼女』(2007)
『ドライヴ』(2011)
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)
『オンリー・ゴッド』(2013)
『ラ・ラ・ランド』(2016)
『ブレードランナー 2049』(2017)等。
シンディ役にミシェル・ウィリアムズ。
キッツイドラマ映画でよく見る印象です。
出演作に
『ブロークバック・マウンテン』(2005)
『シャッターアイランド』(2010)
『マリリン 7日間の恋』(2011)
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)等。
みなさーん、今日はバレンタインデーですよー。
という事で、『ブルーバレンタイン』を是非、幸せな夫婦やカップルに観て欲しいですね。
確実に不穏な空気が流れます(ゲス顔)。
本作はキャッチコピーがまず優秀。
誰もが経験のある、
しかし、今まで誰も観た事のなかった恋愛映画がここに誕生した!
的な事が書かれていました。
そして、確かにそうなのです。
お互いに不満を持ち、危ういバランスの夫婦生活を送る現在のパート。
出会った頃のキラキラした青春恋愛映画のパート。
ディーンとシンディ、
二人の様子の過去と現在が流れる様に、
しかし、対比され描写されます。
出会った頃と現在の対比。
本作で描かれる二人の様子は
恋愛をした事のある人なら、誰もが心当たりのある事なのです。
それ故に観る人の心に強い印象を残します。
『ラ・ラ・ランド』の原型とも言える『ブルーバレンタイン』。
普段、恋愛映画を敬遠している人であっても観て欲しい。
私の様な「ハリウッドアクション脳」の人間でも思う所のある、傑作恋愛映画です。
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『ブルーバレンタイン』のポイント
対比される過去と現在の様子
恋愛と夫婦関係の違い
観る人の経験とシンクロする二人の感情
以下、内容に触れた感想となっています
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溶け合う様な過去と現在
『ブルーバレンタイン』は、
現在の不穏な夫婦生活と過去の幸せな恋愛時代が交互の描写されるという構成になっています。
その切り替えは普通のカット割りの如くに、ごく自然に行われ、観ていてその瞬間は気付かない程です。
しかし、作品の雰囲気が過去と現在でガラリと変わり、ほんの数秒で「あ、変わったな」と観ていて理解出来るのが凄いのです。
溶け合う様に流れる過去と現在。
しかし、それはカット割りの妙であり、水と油ほど違う雰囲気の恋愛映画が交互に立ち現れます。
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結婚生活の現実
ディーンは朝から酒を飲み、気ままに(見える)ペンキ塗り。
片やシンディは片道2時間をかけて通勤、看護師として働いています。
シンディは向上心を持って欲しいと言うが、
現状維持で満足なディーンとは主張が交わりません。
ぶっちゃけ、見た目もハゲてきて、野心も無く幼稚で稼ぎも少ない夫にシンディは幻滅しており、「こんなハズでは」と虚ろな目をしています。
かつてはロマンチックだと思われたディーンの行動の一つ一つに苛立ちを覚え、自分のイライラを行動で示します。
自分にはかつて医師になるという夢があった。
それなのに、コイツと結婚して、出産で夢が叶わず、家から遠い所で看護士程度でこき使われているのに、コイツはのほほんとしやがって、と態度で示してきます。
ディーンは、ペンキの汚れをいつも付けていて、酒飲み。
しかし、シンディに対しては決して暴力を振るわず、理性的で愛情を持って接します。
しかし、シンディにとっては、何してものれんに腕押しなその態度さえも癪に障っているんですね。
そして、ディーン自身、
シンディの期待やイライラを解っています。
だが、それに応えられない、何故か?
昔を知っているシンディはディーンに何かの才能があると思っています。
しかし、ディーン自身はそんなもの無いと自覚しています。
中卒のディーンにやれる事は限られています。
「やれば出来る人」と外から期待をかけられても、自分の分を弁えて、ディーン自身は彼なりに手堅い仕事を選んでいるのです。
アーティストぶって奇を衒わず、堅実な仕事についていますが、シンディにはそれが理解出来ません。
ディーンの良い思い出が頭にあるからですね。
しかし、ディーンが魅力的だったのは、彼が一生懸命シンディの気を惹いていたからなんです。
彼に才能があった訳では無く、自分の出せる全てでシンディに接していたのです。
ディーン自身の出せる物は、出会った頃の部分で頭打ち。
ディーンはそれを自覚しているからこそ、自分には過ぎた存在であるシンディに対して変わらぬ愛をもっているんですね。
シンディがディーンに、「才能あるから何かやって」と言って喧嘩になるのは、
ディーン自身は「才能無いのに、あると言われてもやりようが無い」と痛い所を突かれたからです。
この認識が平行線である為、二人の想いが接する事が無いのです。
ディーンが暴れるのは勿論御法度、
しかし、理性的に愛情を訴えられても、その態度が更にシンディを煽る。
負のスパイラルで、二人は最早修復不能なんですね。
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理想の恋愛
そんな二人でも、出会った頃は輝いていた。
「只一人を愛す」仕事仲間に宣言するディーンは、シンディに一目惚れ。
アプローチを受け、奔放な魅力を持つディーンにシンディは惹かれていきます。
折しも妊娠が発覚、しかし、関係ないハズのディーンに責任を取ると言われシンディはクラクラです。
ディーンはシンディに一目惚れ。
そして、シンディにはディーンがイキナリ現われた白馬の王子様に見えます。
両親にも会い、
これが我らのテーマソングだと、ラブソングを二人で聞き、それが二人の幸せの絶頂です。
現代パートにて唯一良い雰囲気になった音楽。
それは幸せの絶頂の時に愛を確かめた思い出の音楽と判明するくだりは、本作のクライマックスと言えましょう。
過去に最高に幸せだった時に聞いたラブソング、
現代においても効果はありますが、それは既に擦り切れて消えかけているものだと解ってしまうからです。
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経験があるからこそえぐられる
『あの素晴らしい愛をもう一度』ではありませんが、
過去の幸せな想い(恋愛感情)が、現在の夫婦生活で擦り切れてしまったこの状況。
最初の思いが無くなり、後に気持ちがすれ違う事、
これは恋愛をした事のある殆どの人が経験あるのではないでしょうか。
この映画素晴らしいのは、
幸せな時の描写、そして気持ちがすれ違っている様子、
その両方に観客自身が覚えのある、自分の経験と重なる部分が多分に含まれているからなのです。
映画でありながら、
幸せと、そして息苦しい様な苦しみを同時に味わいながら自らの過去を追体験してしまうのです。
この共感性こそが、本作『ブルーバレンタイン』を決定づける最たるものなのです。
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ちょっと言わせて!
ディーンさん、デートでラブホは無いわ~。
そしてシンディさん、今からヤロウって時に元カレの話しますかね~。
でも、世の中の「魅力的な女性」を妻に持つ男性は気を付けた方がいいですよ。
既婚だと知ってても声をかけてくる「ウェーイ系」のヤツはいますからねぇ。
それになびか無いシンディは偉い。
まぁ、「こんなにモテるのに、私の夫はイケテない…」という感じでシンディに鬱屈が溜まってたのは事実ですが。
ディーンが病院でキレたのは、
職場の同僚相手に陰口を叩かれていた事に気付いたから、
そして、自分の妻にアプローチをかけていたスカした男が偉そうに止めに入ったからなんですよね。
ディーンはセンシティブだがら、その辺の感情に直ぐ気付いたんですね。
医者の方も、「ヤベ、ばれてた」と言わんばかりに、被害者ぶって厄介払いの解雇を言い渡していましたね。
シンディもその辺りの事情に気付いたでしょうが、理性と怒りは別物なのです。
あ、あとシンディさん、25人の時点で多く感じますが、絶対低く言ってますよね。
目が泳いでますよ?
まぁ、中卒でロマンチストな陰キャよりのディーンと、
高学歴で男性経験豊富な医者志望のシンディでは、
元から合わなかったのかもしれませんね。
過去と現在が交錯し、愛の始まりと終焉を高らかに描き出した『ブルーバレンタイン』。
そして、観る人の経験と感情に訴え、
人それぞれに独自のビジョン(観賞感)をもたらします。
同じ映画でありながら、どう受け止めるかは人それぞれ。
千差万別、十人十色、しかし、愛を知る全ての人の心に訴える映画と言って良い傑作です。
*本作の監督デレク・シアンフランスの他作品も魅力的です。
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さて次回は、魅力的なのは狼だから!?小説『狼の紋章』について語ります。