映画『カモン カモン』感想  いやぁ、しんどい。って、お互い思ってるんだよ!

ラジオジャーナリストのジョニーは、現在、子供達に将来の事をインタビューしたドキュメンタリーを製作していた。
そんな折、母の一周忌も近いという事で、妹に連絡したジョニー。妹のヴィヴは、単身赴任している不調の夫のサポートを考えていた。
一人、残される息子ジェシーを、ジョニーは預る事になるのだが、、、

 

 

 

 

 

監督は、マイク・ミルズ
監督作に、
『サム・サッカー』(2005)
『マイク・ミルズのうつの話』(2007)
『人生はビギナーズ』(2010)
『20センチュリー・ウーマン』(2016)がある。

 

出演は、
ジョニー:ホアキン・フェニックス
ジェシー:ウディー・ノーマン
ヴィヴ:ギャビー・ホフマン
ロクサーヌ:モリー・ウェブスター
ファーン:ジャブーキー・ヤング=ホワイト 他

 

 

 

映画製作、配給会社として、
ここ数年、
質の高い作品を提供し続けている、
「A24」。

そして主演は、
ジョーカー』(2019)の怪演にてアカデミー主演男優賞を受賞した、
その記憶も新しいホアキン・フェニックス。

鑑賞前の期待値は、
嫌が応にも高まる作品、

それが本作『カモン カモン』です。

 

 

以下、内容に触れております

 

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そんな本作、
ホアキン・フェニックスの役は、
独身の伯父さんであり、

その伯父さんが、
妹の息子、甥っ子のジェシーを預る事になるという、

まぁ、
設定的には、よく有る話です。

しかし、
本作の面白い所は、

過剰な感動は無い、
故に、染みる様な共感がある所です。

 

本作の面白さ、
肝は、その共感、
あ~、あるある」という部分です。

 

子供に接していると、
こういう事、あるよな~

 

愛おしい気持ちと、
無性に腹立つ、イライラが同居する、

幸せと表裏一体の忍耐の限界が問われる、
それが延々と続く日常、

子育てって、
こうだよなぁ

これを本作は、
奇を衒う事なく、真摯に描いています。

 

しかし、
本作は、それだけではありません。

 

大人が、
子供と接して、
幸せと同時にイラついたりしているのと同様、

子供の側でも、
大人って、分かってくれないし、
身勝手なんだよなぁ

 

そう思っている、
というか、

あ、確かに、
自分も若い頃
(遥かに昔ですが)
そうだったよなぁ…

と、思い起こさせます。

 

結局、大人って、
子供を舐めているというか、

「自分の方が年上」という先入観がある為、

子供は、
「自分の言う事を聞いて然るべき」と考えている部分があります。

 

しかし、
子供の方は、それを見透かし、

時には、従順に従う時があっても、
時には、ふざけんな、馬鹿野郎と、反抗する時もあるのです。

 

故に、
本作のジェシーの様に、

時には、エキセントリックなごっこ遊びで、
時には、かくれんぼうをしたり、
時には、失踪したり、

自分に付き合ってくれるか、
自分を理解してくれるのか、

様々な行動で、
子供なりの対話を持ちかけるものなのです

 

父親の状況が芳しくないから、
母親は、それを世話するから、
伯父は、仕事があるから、
しかも、ぶっ倒れて心配させたりするけれど、

我慢してね。

それは結局、
子供の意思を無視して、状況を強制してはいないか?

 

映画を製作するのは大人なので、
どうしても、
「子供と、どう付き合うのか」という目線で作品が成り立ちがちですが、

本作の素晴らしい所は、

子供が、普段の日常から、
大人の「我が儘」に、
如何に付き合わされているのか

それを平等に描いている点なのです。

 

更に、注目する点は、
本作、
ジョニーが、
子供達にインタビューをしている点です。

 

ジェシーは、確かに、
ちょっと変わった、エキセントリックな少年です。

しかし、
インタビューで、
様々な場所の子供に、
「将来は、どうなる?」という質問をするのですが、

その質問に、
各個人が真面目に考えて、
独特な、或いは、個性的な、又は、頷ける様な、

それぞれの、答えを聞くことが出来ます。

 

つまり、
子供と言えども、
みんな、独自の考えを持った一人の個人であるのです。

その皆が、
全員個性的である、と描いているというか、

インタビュー自体は、
恐らく、台本では無く、
出演した子供が、ちゃんと自分の考えを述べており

即ち、
子供は、画一的な型に嵌っていない分、
みんな、独特なんだと、
気付かせてくれるのです。

 

大人は、
子供のエキセントリックな行動に付き合わされて、

その様子に、
時には、幸せを感じますが、
それと同等か、
それ以上に、ストレスも感じたりします。

 

一方の子供の方も、

大人の常識という我が儘に、
如何に、付き合わされているのか、

それを描いています。

作品は、その冒頭、
母に溺愛された兄(ジョニー)にくらべ、
自分は、母と理解し合えなかったという、
ヴィヴの心情も吐露されます。

子供の頃に、
親から受けたストレスやトラウマは、
長じても、影響を与えます。

体験として、それを解っていながら、
しかし、
親になった自分(ヴィヴ)は、
子供に孤独と不安というストレスを与えているのです。

 

それでも、
「カモン カモン」と、先に進むのだと、
ジェシーは言います。

子供は
辛い事も、楽しい事も、
忘れて行って、
日々、成長します。

 

一方の大人は、
そんな子供の様子を誇らしく感じ、

子供が成長過程で消化した事でも、
それを、
思い出として忘れずにいる事があります。
(逆に、子供が覚えていて、大人が忘れる事もあるけれど)

 

成長すると、
思い出が貴重となる、大人と、

それを、過去のものとして、
置き去りに成長して行く子供の対比なども、

鮮烈なイメージとして描かれている、

色々と、
共感する事が多い作品、

それが『カモン カモン』なのです。

 

 

 

  • 『カモン カモン』のポイント

子供の行動に、幸せを感じつつも、手こずる大人

大人の我が儘に、付き合わされる子供のストレス

両者の立場で共感出来る作品

 

 

 

 

 

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