修行の日々を送るピッコロ。最近は、孫悟飯の娘、パンに修行をつけつつ、幼稚園の送り迎えなどをしていた。
ある日、そんなピッコロが急襲を受ける。敵は、人造人間ガンマ2号。復活したレッドリボン軍を率いるマゼンタが、Dr.ゲロの孫、天才科学者Dr.ヘドを仲間に引き入れ、その彼が作り上げた新手の戦士である、、、
監督は、児玉徹郎。
映像作家として数々の作品を手掛ける。
前作の『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)ではCGパートを担当した。
声の出演は、
孫悟飯/悟空/悟天:野沢雅子
ピッコロ:古川登志夫
パン/ビーデル:皆口裕子
ブルマ:久川綾
ベジータ:堀川りょう
クリリン:田中真弓
トランクス:草尾毅
人造人間18号:伊藤美紀
ビルス:山寺宏一
ウィス:森田成一
ブロリー:島田敏
マゼンタ:ボルケーノ太田
カーマイン:竹内良太
Dr.ヘド:入野自由
ガンマ1号:神谷浩史
ガンマ2号:宮野真守 他
『ドラゴンボール』のTVアニメシリーズと言えば、
世界各国でも放映された、メガヒットシリーズ。
セルでのバトルアニメの頂点の一つとして、
全世界で愛されている作品です。
映画版の前作である、
『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)では、
そのバトルシーンが極まっており、
個人的には、
アニメでのバトル表現の頂点の作品だと思っています。
さて、
そんな「ドラゴンボール」ですが、
本作は、シリーズ初のフルCG作品。
海外、というか、
アメリカ系のアニメ作品では、既に主流ですが、
今回、
「ドラゴンボール」にて、
CGのアクションがどの様に描かれるのか?
それに注目の作品です。
で、
本作『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の感想です。
好きな「ドラゴンボール」なので、
厳しめに言いますが、
起承転結の、
「起・承・転」までは満足ですが、
「結」の部分は、イマイチかなぁ
といった印象。
ドラゴンボールの、
劇場版オリジナルストーリーのシリーズ、
『ドラゴンボールZ 神と神』(2013)
『ドラゴンボールZ 復活の「F」』(2015)
『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)と比べると、
ちょっと、劣るかなぁ。
いや、
物語の「起・承・転」の部分までは、
満足なんですよ。
しかし、
クライマックスのバトルシーンが、
90年代の「ドラゴンボール映画」と同じノリの展開なんですよね。
新劇場版シリーズを共同配給していた「20世紀フォックス」が解散し、
奇しくも、
本作からは、
昔と同じように、「東映」単独の配給となりました。
そういった意味で、
先祖返りしてしまったのかもしれません。
とは言え、
これは、
生粋の「ドラゴンボール」好きが語った、
厳しめの感想です。
ちゃんと、良い場面のあるのでご安心を。
特に、ドラゴンボールならではの、
「ギャグ」と「アクション」の融合(フュージョン)は、
本作でも健在です。
また、
本作の主役は、実質、ピッコロ。
悟空やベジータがメインの、
最近の作品では、
どうしても、サイヤ人的な脳筋の展開になりがちでしたが、
本作においては、
「Z戦士の参謀」的な役割だったピッコロらしい立ち回りを存分に観る事が出来、
往年のピッコロファンを悶死させる事間違い無しです。
特に、
ピッコロと悟飯のファミリーとの関係性が、
興味深い点の一つとなっており、
それが、本作のテーマに直接繋がっています。
ストーリー展開としは、
中々、面白かったです。
一方のアクションシーンは、
熱く燃える展開であったのは確かですが、
特に、CGならではの凄さというモノは感じませんでした。
セルアニメでのアクションシーンを極めたドラゴンボールですが、
CG表現で、
どの様に革新的なモノを描くのか?
その点に興味がありましたが、
初の、フルCGという事で、
先ずは、
基本的に、真っ正直な表現に徹したのかもしれません。
今後、
もし、シリーズが続くのならば、
どの様な「CGならでは」のアクションシーンを描くのか、
その点を期待したいです。
総評的には、
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、
若干、注文点が残りますが
ストーリーやテーマが、
興味深く、面白かったというのが個人的な感想です。
それでも、
令和に「ドラゴンボール」の新作が、
オリジナルキャストで作られるというだけでも、
奇跡的で感謝感激雨霰なのでありますよ。
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『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』感想
ファン垂涎!?ピッコロと悟飯の絡みがメイン!!
ギャグとアクションも満足
クライマックスのノリが90年代
以下、内容に触れた感想となっております
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クライマックスのノリが90年代なんよ!
先ずは、個人的にダメ出ししたい所から語りますか。
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、
物語の「起承転結」の、
「起・承・転」までは良かったですが、
肝心のクライマックスが、
ちょっと、残念に思いました。
以下、ネタバレが含まれています
具体的に言うと、
ラスボスの「セルマックス」にガッカリしました。
ドラゴンボールの劇場版作品は、
トータルで21作作られています。
初期のオリジナル展開を描いた3作品。
直近の、
復活した劇場版シリーズ、
ビルスが登場した「神と神」以降の
本作を含めた4作品。
それ以外は、
いわゆる、
漫画やアニメシリーズの展開の、
オリジナルの延長である、
「劇場版ドラゴンボールZ」シリーズの14作品となります。
で、本作のクライマックスは、
1990年代に、
矢継ぎ早に製作された「劇場版ドラゴンボールZ」シリーズと、
ノリが同じなのです。
映画として、
オリジナルの話を作るのでは無く、
原作の展開、
原作の強いヤツ、
その、
雑な、拡大再生産、
質が劣るジェネリック作品というか、
子供が観て分かる
子供騙し感が凄かったです。
フリーザが恐ろしかったら、
その兄を出し、
伝説のスーパーサイヤ人の話になれば、
別のサイヤ人を出し、
人造人間編では、
13号、14号、15号を出し、
魔神ブウのパチモノみたいなものを出し、
観客に、
「ああ、これは、原作のアイツが元ネタだな」と思わせ、
更には、
クライマックスは、原作の名場面をそのまま流用したものであり、
「ラストまで、一緒かよ」と、
数々の残念感を生んできました。
一方、
劇場版オリジナルの敵キャラは、
物語が脳筋な分、
単純に、デザイン的な人気があり、
クウラ、
ブロリー、
ボージャック、
ジャネンバなど、
一部に人気があるキャラクターを、
多数、生んでいるのもまた、事実です。
で、
本作は、
悟飯とピッコロの絡みがメインという事で、
悟飯が最も輝いた、
人造人間編のラスボス、
セルを登場させ、
そのセルを雑に強くして、
デカくして、
登場させようや、
みたいなノリ、
正に、バブル期の、
90年代ドラゴンボールZのノリでしたね。
やられそうなピッコロを見て、
キレる悟飯ですが、
それは、
セルに踏みつぶされた16号を見て、
覚醒した悟飯、
そのアニメのキレるシーンと描写が同じだったのも、
賛否両論でしょう。
(まぁ、敢えて同じ描写にしたのでしょうが)
また、
「人造人間編」が面白かったのは、
脳筋な「ドラゴンボール」において、
ストーリーと展開が複雑で、
更に、
昆虫的な容姿ながら、
冷静で知的であり、かつ残酷なキャラクターであったセルに、
絶対悪の魅力がありました。
しかし、
本作の「セルマックス」からは、
従来のセルが持っていた魅力が全て削ぎ落とされており、
敢えて、セルである必要は皆無でした。
ただ、
「ぶるるああ」と叫ぶだけ、
サイヤ人の大猿と同じです。
ドラゴンボールの、
新劇場版展開からは、
そういう拡大再生産のノリを排除し、
それでいて、
従来の人気キャラクターを活かす路線を見出していた為に、
今回の雑なクライマックスの流れは、
正直、ガッカリでしたね。
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ピッコロ主役のドラゴンボール
個人的な不満点から述べましたが、
それでも、
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は面白かったです。
最近、
メインが悟空とベジータの脳筋コンビに偏りがちな「ドラゴンボール」ですが、
本作は、
実質的な主人公をピッコロに据え、
そのピッコロと、
悟飯の絡みをメインにする事で、
物語に幅を持たせる事に成功しております。
「サイヤ人襲来編」
「ナメック星編」
「人造人間編」
「魔神ブウ編」における、
ピッコロの役回りは、
「Z戦士の参謀」的な、
チームの知を司るポジションでした。
本作でも、
その位置は変わらず、
ピッコロらしい立ち回りを観る事が出来ます。
悟空やベジータなら、
「とりあえず、殴っとくか」となりがちな所、
ピッコロは、
襲撃者である「ガンマ2号」が強敵であると見定めるや否や、
先ずは、引いて、
敵を追跡、アジトに侵入、
情報を収集し、
ブルマやカリン、デンデと協力しつつ、
迎撃態勢を整え、
足りない戦力を補う為に、
悟飯の覚醒を促す奇策を弄し、
自身の対戦中は、
相手との対話を試みる。
獅子奮迅、
機略縦横のピッコロさんの活躍が、
十二分に堪能出来ます。
ホメロスの叙事詩『イリアス』の主役キャラは、
アキレウスですが、
味方のギリシア側には、
機略縦横のオデュッセウスという人物がいます。
正に、
ピッコロはオデュッセウスであり、
本作は、
ピッコロの『オデュッセイア』であると
言える作品なのかもしれません。
本作は、
『キン肉マン』におけるテリーマンの様に、
チームのサブとして描かれる事が多かったピッコロに、
メインというより、
サブキャラ的な立ち回りのまま、
主役として描いた作品であるという点が、
面白い所です。
また、
日常パート兼、ギャグパートにおいては、
悟飯と、その家族、
パンやビーデルとの、独特な信頼関係が描かれ、
その点も、嬉しい所です。
幼少期の悟飯を鍛えた様に、
3歳児のパンをピッコロが鍛えていたり、
青年期以降は悟空と同じ亀仙流の胴着を着ていた悟飯に、
魔族の胴着を着せたりと、
色々とファンが喜ぶ描写があって、
悟飯とピッコロの絡みが好きな人は、
本作は、特に刺さる内容なのではないでしょうか。
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スーパーヒーロー
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』のオリジナルキャラは、
Dr.ヘドと、
彼の人造人間である、
ガンマ1号と、ガンマ2号です。
Dr.ヘドは、
Dr.ゲロの孫という設定。
私はやってないので詳しくは無いのですが、
どうやら、
対戦型格闘ゲームのキャラも、チラッと移ったので、
それとも、絡みがあるのかもしれません。
そのDr.ヘドは、
自分の興味を研究を優先するという、
典型的なマッドサイエンティスト。
ではあるものの、
基本的には、悪人では無いという点が、
好印象ですね。
その彼の指向で、
人造人間ガンマ1号、2号も、
ヒーローとしての気質を持っているというのが
面白い所。
ハサミは使いようとは言いますが、
本当の悪として、
レッドリボン軍の総帥マゼンタと
秘書のカーマインが居り、
善人でも、
誤った状況、情報により、
悪として利用されるという描写がなされます。
劇中、
ピッコロ側と
人造人間側が和解するとき、
「双方に誤解があったようだ」という台詞があったり、
クライマックスの戦闘終了後、
まるで、
ボクシングや格闘技で、対戦後の相手をねぎらう様に、
Dr.ヘドやガンマ1号に声を掛けていた場面に、
本作ならではの、
今までの「ドラゴンボール」には無い爽やかさがあります。
さて、
そんな本作の副題は、
「スーパーヒーロー」です。
メインで描かれのはピッコロですが、
悟空とベジータが不在の地球において、
ピッコロが期待するのは、
彼達以上の潜在能力を秘める、悟飯です。
生粋の戦闘狂であるサイヤ人と違って、
心優しい気性である悟飯は、
中々、その気にはなりません。
悟飯の戦闘力が最も上昇するのは、
彼がキレた時です。
武道や格闘技においては、
キレて見境無くなるのでは無く、
あくまでも、平常心である方が、
強い事が多いです。
しかし、
素人の喧嘩においては、
キレて、相手を顧みなくなった瞬間が、
最も怖いです。
そういう意味で、
確かに、悟飯は、
戦闘狂というより、
メンタルは素人よりなのですが、
彼がキレる切っ掛けは、
人が傷付けられ、
無力な自分に怒り、それが発火になる事が多いです。
自分というより、
人の為に力を発揮する、
それが、孫悟飯というキャラクターです。
それは、
人造人間ガンマ2号の行動にも見られます。
彼は、
自己の残存エネルギーを消費し尽くす事で、
セルマックスに特攻し、
味方を守ろうとします。
この自己犠牲的な行為は、
Dr.ヘドが、
人造人間をヒーローとして作った為の性質です。
つまり、
本作で描かれる「ヒーロー」とは、
土壇場で、
「人の為に戦えるもの」であると、
描かれているのです。
そして、気付けば、
本作におけるピッコロの立ち回りは、
終始、人との関わりで動いています。
仲間を信じ、
敵とも和解し、
それ故に、
自分を犠牲にしてでも、
悟飯を促す事が出来る。
ドラゴンボールの最も有名な名場面の一つに、
ナッパの破壊光線から、
ピッコロが、身を挺して悟飯を守るシーンがあります。
思えば本作は、
そんなピッコロと、
悟飯の関係性から発展して、
「真のヒーローとは何ぞや」
という事を描いた作品と言えるのではないでしょうか。
クライマックスの「セルマックス」はガッカリですが、
しかし、
ピッコロを主役に据え、
悟飯との関わり、
適役との関わりにおいて、
真のヒーロー像
=スーパーヒーローの活躍を描いた作品
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』。
ドラゴンボールでは珍しく、
脇役の活躍にスポットを当て、
故に、新しい魅力を引き出していると、
言えるのではないでしょうか。
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