ゴジラとギドラの決戦から3年。
鳴りを潜めていたゴジラが、突如、アメリカ本土に上陸!!先進技術にて人類の進歩を謳うエイペックス社を壊滅状態に追い込んだ。
ゴジラは何故、人間に牙を剥いたのか?この事実に恐れ戦く人間は、コングをドームの外に出す。コングは、ゴジラの襲撃から守る為、モナークのドーム内で生息、観察されていたが、人類側の切り札として利用される事となる、、、
監督は、アダム・ウィンガード。
監督作に
『サプライズ』(2011)
『ザ・ゲスト』(2014)
『プレア・ウィッチ』(2016)
『Death Note/デスノート』(2017)等がある。
こう見ると、ホラー、スリラー映画多数。
出演は、
ネイサン・リンド:アレクサンダー・スカルスガルド
アイリーン・アンドリュース:レベッカ・ホール
ジア:ケイリー・ホトル
マディソン・ラッセル:ミリー・ボビー・ブラウン
バーニー・ヘイズ:ブライアン・タイリー・ヘンリー
ジョシュ・ヴァレンタイン:ジュリアン・デニソン
マーク・ラッセル:カイル・チャンドラー
ウォルター:シモンズ:デミアン・ビチル
マイア・シモンズ:エイザ・ゴンザレス
芹沢蓮:小栗旬 他
レジェンダリー・エンターテインメントが制作、
ワーナー・ブラザーズ・ピクチャーズが共同制作、配給、
そして、日本の東宝が協力する「モンスター・バース」シリーズ。
『GODZILLA ゴジラ』(2014)に始まり、
『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)と続くこのシリーズの、
到達点とされた作品が、遂に公開。
当初は、
2020年に公開予定でしたが、
コロナの影響で、伸びに伸び、日本でも漸く公開!!
世界でも最遅レベル!!
待ちに待ったこの作品、
期待ばかり、嫌が応にも高まりますが、
さて、如何に!?
いやぁ、面白かった!!期待通り!!
大怪獣のプロレスバトル!!
この一言に尽きます。
「モンスター・バース」シリーズは、
一作目の『GODZILLA ゴジラ』は、ちょっと期待外れでしたが、
以降は、大満足。
本作もその流れを汲んで、
正に、怪獣映画ファンが観たいものを提供してくれます。
余計な引き延ばしや、
ゴチャゴチャうるさい理屈など不要!!
兎に角、暴れろや!!
観客が観たいものを、的確に描いてくれています。
まぁ、正直、
ストーリー展開や設定には、
「ん?」と思う事が多いです。
また、人間関係の描写が、
ちょっと、薄っぺらいんですよね。
しかし本作の醍醐味は、
それを補って余りある怪獣の大迫力バトル。
長所を際立たせる為に、
敢えて、切るべく所は切っているのだと思われます。
エンタメ映画で一番面白いのは、
やっぱり王道展開。
作り手が観せたいもの、
観客が観たいもの、
それがガッチリ噛み合った作品『ゴジラvsコング』!!
これが映画の面白さだ!!
ただねぇ、一つ苦言を呈するならば、
私、
本作が楽しみ過ぎて、YouTubeで予告篇を観まくってたら、
オススメで出て来た動画のサムネイル画像で、
映画本篇のネタバレをされた事ですね。
公開時期を遅くし過ぎるのも、問題です。
皆も、YouTubeには気を付けよう!!
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『ゴジラvsコング』のポイント
大怪獣プロレスバトル
観せたいものに特化した一点集中ぶり
過去作のオマージュ満載の小ネタ詰め合わせ
以下、内容に触れた感想となっております
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「VS映画」のあれこれ
「モンスター・バース」の当初の到達点として作られた、
『ゴジラvsコング』。
どうやら、本作の好評を得て、
「モンスター・バース」シリーズは、これ以降も続くそうです。
とは言え、
本来、クライマックスとして作られただけあって、
本作の盛り上がりは、公開前からかなりのもの。
その興味は色々あれど、
やはり、その一番の関心事と言えば、
「ゴジラとコング、どっちが強いの?」という事でしょう。
こういう子供っぽい疑問は、
しかしながら、
観客皆の最大の注目ポイントと言えるのではないでしょうか。
さて、そういうライバル同士が共演というか、
戦うバトル系の「VS映画」というものは、
過去から、ダブル主役的な感じで多く作られてきました。
でも、
一口で「VS映画」と言っても、
色々パターンというか、種類があるんですよね。
例えば、
本作『ゴジラvsコング』の源流となった作品、
『キングコング対ゴジラ』(1962)。
『キングコング対ゴジラ』では、
日米双方のスタッフが、
自国のモンスターを負けさせる事を良しとせず、
結果、
明確な決着を避け、痛み分け的な落とし所に落ち着きました。
この系統で言うと、
映画ではありませんが、
漫画の『範馬刃牙』のラストバトル、
刃牙vs勇次郎も、このパターンと言えるでしょう。
また、ポール・W・S・アンダーソンが監督した、
『エイリアンVS.プレデター』(2004)では、
エイリアンとプレデターの戦いというより、
人間が主に、プレデターに与する事で、
「エイリアン」が悪役になり、
「プレデター」側が勝利という演出になっていました。
こういう「悪役」側を設定し、「正義」側を勝たせる展開もあります。
その一方、『フレディVSジェイソン』(2003)では、
双方、人間を餌食にしつつ、
開幕1分から、ホラー映画のライバル同士がガチバトル。
全篇、火花を散らす「これぞVS映画」でした。
しかし、
「一体どっちが強いのか?」的な煽り文句の「VS映画」において、
一番予想される展開というか、一般的なものは、
一応、マススパー程度で試合をしつつも、
両者共通の強大な敵が現われ、
それを倒す為に共闘する、という展開のものではないでしょうか。
「え?戦ってないじゃん」的な、ね。
このイメージはやはり、
『マジンガーZ対デビルマン』(1973)から来ていると、
私は思います。
そして、本作です。
本作では当初、
監督のアダム・ウィンガードは「明確に決着を付ける」形で終わらせるつもりだったそうです。
しかし、
映画を制作して行く内に、愛着が湧いてきたのか?
結局は、「ゴジラ」と「コング」のバトルとしては、
「どっちが強いのか」という明言は避けているようにも見受けられます。
しかし、
その「誤魔化し方」が、本作は上手いんですよね。
当初は『フレディVSジェイソン』ばりに、
ゴジラとコングのライバルガチバトルを描きつつ、
落とし所としては、
より強大な真の敵、「メカゴジラ」を登場させる事で、
『マジンガーZ対デビルマン』形式で落ち着きます。
つまり、
タイマンバトルでは、ゴジラの2勝1敗、
ラスボスを倒すのはコングという形式を採る事で、
両者に華を持たせているというのが本作の展開です。
結果、両者のファンも満足というね。
う~ん、上手く考えたもんだね。
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過去作のオマージュ満載の小ネタ映画
本作『ゴジラvsコング』の真の敵、
ラスボス「メカゴジラ」。
つまり本作は、
『キングコング対ゴジラ』のみならず、
『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)のリメイクでもあったんですねぇ。
さて、本作を制作するにあたり、
監督のアダム・ウィンガードは、
過去作を相当、鑑賞し直したのだろうな、と思わせます。
それ位、過去作のオマージュ、小ネタが満載であり、
2時間という時間に凝縮されている印象があります。
例えば、
南極にて、ヘリで吊されて地下空洞世界の入り口へ、コングを運ぶシーン。
これは、『キングコング対ゴジラ』にて、
麻酔で眠ったコングを気球で吊して富士山麓まで運ぶシーンのオマージュ。
因みに、その前段、
『キングコング対ゴジラ』にて、コングが女性をつかんで国会議事堂によじ登シーンがありますが、
それは『キングコング』(1973)にてエンパイア・ステート・ビルによじ登るシーンのオマージュ。
つまり、
オマージュの連鎖が起きているんですよね。
他にも、
突如、面白黒人枠のバーニーが、
拳銃のホルスターから酒を取り出しますが、
そのウィスキーの名前が「カズナリ」。
これは、パンフレットによりますと、
昭和のメカゴジラのスーツアクターを演じた森一成から来ているそうです。
そういった、
「何か、観たことあるような」というものから、
「そんなカルトクイズみたいなトリビア、全然気付かねぇよ」というものまで、
どうやら本作は、埋め尽くされているようです。
そういうのを見つけるのもまた、
本作の面白さであると言えます。
また、本作は、
同じレジェンダリーという事で、
何となく、『パシフィック・リム』(2013)も思い出すのは、
私だけでしょうか?
本作のクライマックスとなる香港での決戦は、
正に、『パシフィック・リム』での、香港上陸防衛戦を思い出させますし、
また、
メカゴジラの存外なスピーディーさは、
『パシフィック・リム アップライジング』のCGロボのスピーディーさを想起させます。
地下の空洞世界に行く描写も、
『パシフィック・リム』でのラストシーンっぽかったですし。
つまり本作は、
過去のゴジラシリーズのみならず、
他の怪獣映画のイメージも取り入れていると言えるのです。
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ストーリーを捨てた作品
無茶苦茶面白かった『ゴジラvsコング』。
とは言え、
何も問題が無いだけでは無く、
ストーリーや設定には、
個人的には、ちょっと物足りない部分がありました。
例えば、
タイタン(巨大怪獣)の故郷であるという「地下空洞」の世界、
何故、重力が反転しているのか?
その原理は何?
その設定の必然性とは?
これらの描写が、
ちょっと希薄というか、投げっぱなしで、
ワクワクする設定なのに、
活かしきれていないと感じました。
ストーリー上では、
「地球のタイタンの王者は、古代からゴジラ」という流れですが、
地下空洞世界では、
ゴジラの祖先をコングの祖先が屠った形跡や、
王者の椅子がコングにピッタリだった、
コングの像が作られていた、
ゴジラの背びれの斧があった、
等の理由から、
地下空洞の世界では、
コングこそが、タイタンの王者であったという描写がなされていたのが印象的です。
そこをほのめかす程度で、
明確に語らないのは、良いと思います。
しかし、
個人的には、
登場人物描写をもう少し掘り下げてくれたら、
面白かったと思います。
本作における「人間」は、
皆、類型的と言いますか、
あくまでも「役割」上に当て嵌められた存在に終始しています。
何故、ジアはコングと心を通わせる事が出来るのか?
何故、アイリーンは、ジアの保護者なのか?
ネイサンの抱える鬱屈は?
その辺りの感情を、
もっと描写して欲しかったと思います。
日本から参加した芹沢蓮役の小栗旬なんか、
雑魚扱いでしたしね。
個人的には、
前作から引き続き登場したマーク・ラッセルの立場から、
ゴジラ目線での世界の描き方も観せて欲しかったです。
「ゴジラ」vs「コング」という対立構造が、
より、人間のそれぞれの陣営の立場をも踏まえた抗争として描けたと思います。
「ゴジラ」陣営の視点が、
マディソン・ラッセルがメインであり、
それが、映画の類型的な
「無茶をするけれど、罰せられる事も、傷付く事もない子供」役だったのが、
個人的には残念だった所。
マーク・ラッセルの所属する特務研究機関「モナーク」目線からゴジラを描き、
それが、
洋上なり、
香港なりで、コング陣営と合流するという展開の方が熱かったと思いますが、どうでしょう。
前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、
怪獣バトルを描きつつ、
人間のエゴや家族関係を同時に描写していました。
また、主要登場人物が、
容赦無く死亡する展開も、緊張感があって良かったです。
しかし本作では、
人物が類型的であるが故に、
「好感度の高い人物は死なないだろう」と予想が出来るので、
そういう意味で、緊張感と驚きはありませんでした。
勿論、
ビッチのマイア・シモンズが握りつぶされるシーンや、
ウォルター・シモンズが得意満面で演説中に自業自得で殺されるシーンには溜飲が下がりますし、
ストーリーや人物展開を捨てる断捨離を行う事で、
「VS映画」として、ゴジラとコングのバトルにフォーカス出来たという良い面もあります。
この辺は、
「何を目指すのか?」という方向性なのだと思います。
「モンスター・バース」シリーズは、
脚本のメインとして、マックス・ボレンスタインという人物がおり、
一方、各シリーズは、一作毎に監督を入れ替えています。
ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』では、
怪獣バトルを敢えて描かず、
人間の右往左往を描き、
ラストシーンで盛り上げる展開でした。
これは、個人的な感想は、
引っ張るだけでクソつまらない、
ラーメン食べに来たのに、
ラーメン食べさせないラーメン屋みたいな作品でした。
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督の『キングコング:髑髏島の巨神』では、
巨大生物の居る未知の島を探検する、冒険映画で、
ドキドキワクワクをアクションと共に描く作品でした。
マイケル・ドハティ監督の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、
怪獣バトルをメインに、
それより醜い、人間のエゴを描写する作品でした。
バトルとストーリーの割合は、
本作が一番だと思います。
そして本作、
アダム・ウィンガード監督の『ゴジラvsコング』は、
ストーリーや人物描写など、余計な物は切り捨てて、
「VS映画」としての、怪獣プロレスをメインに描く事に特化した作品です。
だからこそ、面白い、
だからこそ、王道であると、本作は言えるのではないでしょうか。
同じ作品群として
「モンスター・バース」シリーズに属していながら、
全く、毛色の違う4作品。
その意味で、このシリーズは、
稀有でクオリティの高いエンタメ作品であり、
本作の評価にて、
更に、シリーズが続く可能性が出たとの事。
今後の展開にも期待したいところです。
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