2、3人相手にするハズだった仕事で、大虐殺を演じてしまったサマンサ。
「会社(ファーム)」の人事部長・ネイサンは小言を言いつつ、サマンサに更にミッションを言い渡す。「会社」の金を持ち逃げした会計士から、それを奪い返せという指令だった。しかし、事態は思わぬ方向へ進んでしまう、、、
監督は、ナヴォット・パプシャボ。
イスラエル出身。
アハロン・ケシャレスと共同監督/脚本した作品に、
『ザ・マッドネス 狂乱の森』(2010)
『オオカミは嘘をつく』(2013)がある。
本作では、ケシャレスは制作総指揮で、
パプシャボの初単独監督作となる。
出演は、
サマンサ(サム):カレン・ギラン
スカーレット:レナ・ヘディ
エミリー:クロエ・コールマン
マデリン:カーラ・グギーノ
アナ・メイ:アンジェラ・バセット
フローレンス:ミシェル・ヨー
ネイサン:ポール・ジアマッティ
ジル・マカリスター:ラルフ・アイネソン 他
かつて、
1980年代に一世を風靡した漫画に、
三浦みつる『The♡かぼちゃワイン』という作品がありました。
いわゆるラブコメで、
主人公の青葉春助に惚れるのが、
朝丘夏美というヒロインの少女なのですが、
身長が春助より、夏美の方が大分、高いんですよ。
っていうか、
結構大柄なので、あだ名が「エル」。
「エル」と言っても「キラ」を追う探偵ではなくて、
「Lサイズ」の「エル」です。
で、
世の中には、この夏美みたいに、
「自分より大柄な女性が特別に好き」
という男性もいるようで、
人の好みは千差万別なんだな、と思いますね。
そんな事より、
本作『ガンパウダー・ミルクシェイク』。
因みに、
主演を演じるのはカレン・ギラン。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」での、
ネビュラ役で有名です。
その彼女の身長は180センチ。
そんな大柄なカレン・ギランが、
極力、スタント無しで体当たりするアクション映画
それが本作の、
まず第一の特徴と言えるでしょう。
カレン・ギラン本人は、
準備期間が短かったと言っていましたが、
中々どうして、
アクションの一生懸命さ、面白さが、観て分ります。
そう、本作、
観て先ず感じるのは、
ああ、コレは、
監督が一番楽しんで作ってるな
という事です。
何処か、
クエンティン・タランティーノの作品に通じるというか、
監督自身の映画オタク趣味と、
様々な作品のアンサンブルが、
逆に、オリジナルとしての持ち味を出している、
とでも言いますか。
例えば、
本作のネオンの明かりとか、
冒頭の音楽とか、
主人公サマンサの着る「スタジャン」とか、
どれも、
ニコラス・ウィンディング・レフン監督、
ライアン・ゴズリング主演の
『ドライヴ』(2011)を彷彿とさせますが、
それがパクリにならず、
参考程度に留めている辺りに、
本作のバランス感覚が見られます。
そして、そんな本作は、もう、
頭から尻尾まで、
あんこいっぱいの連続アクション活劇
なのです。
余計な事は考えずとも、
バッチリ楽しめちゃいます。
とは言う者の、
作っている方は、ちゃんと考えているので、ご安心を。
例えば、
本作の特徴的な点の一つとして、
明かり、照明、ネオンの使い方
があります。
極彩色のネオンは、
猥雑さと暴力を予感させ、
白さ際立つ病院の明かりは、
極端に漂白された、ある種の異常さが感じられ、
そして、
数少ない自然光の下では、
安らぎと平安がある etc…
つまりは本作、
明かりが、
シーンそのものを彩っているのです。
また、
本作でメインを張る、
印象深い女性陣は、
全て、監督の第一希望が叶ったとの事。
それぞれ、
「宛て書き」されたかの様なフィット感があります。
監督、ナヴォット・パプシャボが、
やりたいようにやった、
楽しんで作った、
だから、本作は面白い、
『ガンパウダー・ミルクシェイク』は、そんな作品です。
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『ガンパウダー・ミルクシェイク』のポイント
叛逆と友情、親子の物語
頭から尻尾まで、アクションてんこ盛り作品
シーンを彩る、明かり、照明、ネオンの使い方
以下、内容に触れた感想となっております
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叛逆と友情の物語
本作『ガンパウダー・ミルクシェイク』は、
頭から尻尾まで、
あんこパンパンの鯛焼きの如くに、
アクションてんこ盛りの大満足作品。
なので基本、
ストーリーは気にする必要ないのですが、
しかし、
主人公サマンサの行動原理、
そこから端を発する形で、
各登場人物の相関関係がキチンと整理されている点が、
本作、
煩雑では無く、スッキリ、アクションを楽しめる事になるのです。
サマンサには、
母親に捨てられた過去があった。
だから、
エミリーを見捨てられなかった。
自分の過去の体験があるから、
エミリーを、必死で守ろうとしているのです。
そのサマンサの母、スカーレットは、
過去に娘を捨てたという負い目がある為に、
今回は、覚悟を決めて、娘の為に動きます。
又、スカーレットのかつての仲間、
図書館の武装司書達も、
かつて
幼少時代のサマンサを知っているからこそ、
そのかつてのサマンサと同じ年代(と思われる)の
エミリーの出現に、巡る因果を汲み取ったのか、
加勢に回ります。
そんな本作、
味方と敵の構図も、分かりやすいです。
女は味方!
男は敵!!以上!!
一応、
病院の看護婦とか、
「会社(ファーム)」の秘書とかが敵側にいますが、
それ以外は、
単純にこの構図が成り立っています。
そして、
成り行きで二進も三進も行かなくなったサマンサを、
権力(ファーム)や、男(ネイサン達)、
マフィア(マカレスター)は、
切り捨てて、
或いは、落とし前を付けさせようとしますが、
味方の女達は、
ヘマしたサマンサを見捨てず、
窮地に陥った彼女の為に、
故に、味方として集結するのです。
構図としては、
極端な女v.s.男という形をとっていますが、
しかし、
本作は、
権力や暴力に屈する事の無い、
窮鼠猫を噛む、
弱者の必死の叛逆と、
それに対し、
「義を見てせざるは勇無きなり」と立ち上がる、
熱き友情と愛情の物語なのです。
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親と子の関係を考えさせられる
そんな本作、
もう一つ思う事に、
親子の関係というものがあります。
ロシアンマフィアのマカレスターは、
死んだ息子の片足に靴が無い事にキレて、
部下に、それを探させます。
細かい、
奇妙なシーンですが、
しかし、父の、息子への愛が垣間見られます。
また、
サマンサとマカレスターが対峙するシーンで、
「娘を愛しているが、理解出来ない」
「息子は単純で、故に、同士だった」
「家庭に居場所が出来た」
と語る場面があります。
全ての人がそうとは限りませんが、
同性の子供と仲が良い親が観ると
思わず、唸ってしまう描写だと思われます。
スカーレットも、
サマンサの窮地に駆け付け、
更には、
死地に向かうサマンサを、
ラストシーンでは決して見捨てません。
この様に、
本作は、親が子へ向ける絶対の愛情が描かれますが、
そのどちらも、
親と子が同性であるのです。
例外は、
ファームの金を盗んだ会計士ですが、
その会計士は、
娘を守れず速攻で死にます。
また、
義理の親子関係とも言える、
ネイサンとサマンサですが、
義理の父親のネイサンは、
サマンサに、逃走の抜け道を用意しつつも、
損得勘定を考え、切るときは切るという非常さを持ちます。
サマンサの方も、
直接に手は下しませんが、
ネイサンに脅しを入れます。
本作で描かれる異性の親子関係は、
破綻しているのですね。
強い親子愛を描きつつ、
その一方で、
全ての親子関係がそうでは無い、
そう掣肘しているのが、
本作のバランス感覚なのですが、
そこでも、
女v.s男という構図を崩していないという所に、
設定に対する忠実さを感じますね。
最初から最後まで、
徹頭徹尾アクションを貫きつつ、
判官贔屓というか、
弱者の叛逆を描き、
そこに、友情と親子関係のエッセンスを注ぐ。
作品そのものも、
監督の好きなモノ、ジャンル、役者を揃えてみた。
だから、面白い!
『ガンパウダー・ミルクシェイク』
中々、拾いものの名作と言えるのではないでしょうか。
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