映画『キングスマン:ファースト・エージェント』感想  ままならない世の中だからこそ、真摯に信念を貫くべし!!

平和主義者で、赤十字の活動をしているオックスフォード公。1902年、妻と息子を伴い、ボーア戦争を戦うキッチナーと面会した折り、敵の凶弾により、愛妻を喪ってしまう。
それから12年後、欧州に戦争の足音が忍び寄る。それを案じたキッチナーは、オックスフォード公を説得し、オーストリア=ハンガリー帝国の帝位後継者、フランツ・フェルディナント大公の護衛を依頼するのだが、、、

 

 

監督は、マシュー・ボーン
『キングスマン』(2015)
キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)に続いて、
3作目の本作も監督する。
他の映画監督作品に、
『レイヤー・ケーキ』(2004)
『スターダスト』(2007)
『キック・アス』(2010)
X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)
がある。

 

出演は、
オーランド・オックスフォード公:レイフ・ファインズ
コンラッド・オックスフォード:ハリス・ディキンソン
ポリー・ワトキンズ:ジェマ・アータートン
ショーラ:ジャイモン・フンスー

キッチナー:チャールズ・ダンス
モートン:マシュー・グード

イギリス国王ジョージ:トム・ホランダー
ドイツ皇帝ヴィルヘルム:トム・ホランダー
ロシア皇帝ニコライ:トム・ホランダー

グレゴリー・ラスプーチン:スリ・エヴァンス
マタ・ハリ:ヴァレリー・パフナー
エリック・ヤン・ハヌッセン:ダニエル・ブリュール 他

 

皆さん、
全くの別人なのに、
何となく、
脳内でゴッチャになる有名人って居ますか?

私の場合、

竜雷太と峰竜太とか、

黒木瞳と杉本彩とか。

そして、
レイフ・ファインズと、
リーアム・ニーソンって、
ゴッチャになりません?
私は、なっているんですよねぇ…

アレ?
この映画に出演していたのは、
リーアム・じーさんだったけ?
レイフ・ファインズの方だっけ?

と、
ボケ老人の記憶違いをかます事が数々。

 

それは恐らく、

二人とも、イギリス出身であり、
レイフ・ファインズ:イングランド、サフォーク
リーアム・ニーソン:北アイルランド、

また、
『シンドラーのリスト』(1993)
『タイタンの戦い』(2010)
『タイタンの逆襲』(2012)とかで、
共演しているからなのかもしれません。

そして、
何となく、二人とも、
理想のオッサン的な雰囲気を漂わせているからでしょうかね。

 

さて、
それはそれとして、

「キングスマン」シリーズも、
本作で3作目。

今回は、
「プリクエル」
時系列として、第一作目の前日譚となります。

 

そんな「キングスマン」。

一作目は、
過激でイカレた描写の数々と、
何より、語り草となった「教会の乱闘」シーンで、
アクション映画の傑作と言える作品に仕上がっていました。

一方の2作目である「~ゴールデン・サークル」は、
意味不明な展開と、
勘違いした演出の数々、
そして、エルトン・ジョンにて、
典型的な、失敗続篇映画となっておりました。

 

普通ならば、
2作目の駄作ぶりで、
続篇を観るのは、切るレベル。

しかし、
マシュー・ボーン監督の過去作は、
いずれも、粒ぞろいの実績が揃っている映画ばかり。

もしかして、
もしかするかも?

という、
淡い期待を持って、
映画の鑑賞に行きました。

 

で、
どうだったか?
面白かったのか?

と、言いますと、

いやぁ、
盛り返してましたね。

面白かった!

 

本作は、
第一作目、
『キングスマン』の前日譚、

時代は、1902年より始まり、
ストーリー的には、
第一次世界大戦前夜、
1914年から、メインストーリーが始まります。

その混沌たる時代を背景に、

歴史上の怪人が入り乱れる、
「アクション偽史」的な作品に仕上がっています。

 

監督のマシュー・ボーンは、
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でも似た様な事をしていましたが、

実際の歴史上の事件をアレンジし、
エンタメとしてのオリジナルストーリーに落とし込むのが上手いですね。

日本の「大河ドラマ」的な、
わりかし、史実に忠実なものというよりも、

より、自由に、
歴史上の人物、事件を、
映画の面白さのインパクトに寄せたイメージと言いますか。

まぁ、
こういう「if」ストーリー的な物は、
好きな人は、好きですよね。

私は好きですよ。

 

そして本作、
スパイアクション映画としてのメイン描写を活かす為に、

ストーリーの主軸として描かれるのは、

オックスフォード親子の関係、
絆の話です。

 

アクション映画って、
ストーリーが、蔑ろにされがちです。

しかし、
本作は、
親子関係というストーリーを語る為に、
アクションがある、

そう言っても過言では無い位に、
重点が置かれています。

取って付けた様な展開では無く、

映画としてよく練られた、
意外性と興味深さが共存するストーリー展開だったと思います。

 

この辺り、
第二作目が、駄作であった反省を活かし、

一作目の、何がウケたのか、
それを思い返し、

意識的に、
一作目の面白さを再現している印象を受けました。

 

本作、
前日譚が故に、
過去作を観ていなくても、単独で楽しめるのも、ポイントが高いです。

勿論、
過去作、
特に、第一作目を観ていたら、
その類似性、共通性に思い至って、
より、楽しめる事と思います。

 

派手で、
過激で、
意外性があって、
ストーリーも、中々、

完成度の高いスパイアクション映画、
それが、
『キングスマン:ファースト・エージェント』です。

 

 

  • 『キングスマン:ファースト・エージェント』のポイント

偽史、スパイ・アクション映画

親子関係

意外性のある展開と、ストーリー

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 偽史アクション映画

本作『キングスマン:ファースト・エージェント』は、

歴史上の怪人を上手く使い、
史実に上手く組み合わせ、

スパイ・アクション映画として昇華している作品です。

 

有名所の、
グレゴリー・ラスプーチン(1869~1916)は、

帝政ロシア末期、
皇帝ニコライ2世の息子、
アレクセイ皇太子の治療を行った事で取り入り、

また、
宮廷内に、
噂によると、巨大な男性器によって、
多数の女性信者を獲得していたという、
まことしやかな逸話があります。

そして史実でも、
アレックス・ユスポフの一派により、
暗殺されたそうです。

 

謎のラスプーチン推しのプロモビデオ

 

 

 

マタ・ハリ(1876~1917)は、
フランス、パリで活躍した、
オランダ出身のダンサー、ストリッパー。

高級娼婦であり、
フランス軍、ドイツ軍、双方の高官の相手をし、
スパイ活動をしていたという逸話もありますが、
特に、重要な情報を得ていた訳でも無いとも、言われていますが、

実際に、
フランス軍に二重スパイとして捕らえられ、
銃殺されています。

 

エリック・ヤン・ハヌッセン(1889~1933)は、
チェコ系ユダヤ人でありながら、

占星術師、予言者として活躍、
アドルフ・ヒトラーに演説の重要性を説き、
ボディランゲージを伝授したとも言われています。

しかし、
ナチ党の権力抗争に巻き込まれ、
暗殺されたという噂です。

 

ガブリロ・プリンツィプ(1894~1918)は、
セルビアのテロリスト。

オーストリア=ハンガリー帝国の帝位後継者、
フランツ・フェルディナント大公を暗殺し、
(サラエボ事件:1914年6月28日)
第一次世界大戦を引き起こした張本人と言われています。

決行直後、青酸カリで自殺を図るが失敗、
民衆に取り押さえられ、裁判、
未成年であった為死刑にはされず、
収監中に病死したそうです。

 

で、
ラスボスがオリジナルキャラなんですが、

劇中、
ラストまで、
まるで、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の
第三部DIOみたいに、
ずっと、顔が隠れていた訳なんですよ。

それが、
クライマックスで登場して、
「サプラ~イズ?(驚いた?)」とか言うんですが、

いや、驚きましたね、
ショボすぎて

 

途中で活躍した、
歴史上の怪人達のインパクトが強すぎた感がありました。

それは実際、
プロモを作った人も、そう感じたみたいで、

故に、
まるでラスプーチンがラスボスであるかの様な、
作りにしたんでしょうね。

(ネタバレの回避でもあるでしょうが)

 

  • 第一作目との共通点と、親子関係

本作『キングスマン:ファースト・エージェント』は、

話の展開、構成としては、
大ヒットし、評価高い
第一作目の『キングスマン』の再構築と言える作品です。

 

『キングスマン』は、
教会の乱闘シーン、
脳みそバーンとかの過激描写が話題になりましたが、

ストーリー的にも、
道を説くベテラン年長者と、
未熟な若年者である主人公とのバディムービーであり、

そして、
相棒の年長者が途中退場する事で、
若年者がその理念を継承し、奮闘するという、

熱い王道展開も、ウケたと思われます。

 

本作でも、
その形式を踏襲していますが、
少し、違いがあります。

道を説く主人公の父親と、
未熟な息子とのバディムービーなのですが、

本作では年長者が主人公である為、
相棒である息子が途中退場してしまいます。

 

それは、
舞台が第一次世界大戦という事で、

信念を持つ若者から死んで行くという、
絶望の時代を反映したともいえ、

それは、息子の葬儀にて、
オックスフォード公が、
国の為に戦い死ぬ事が尊いなどという、嘘」と言った台詞に、
その想いが込められています。

 

しかし、
『キングスマン』にて、
エグジー(若年者)がハリー(年長者)の理念を継承した様に、

本作でも、
「戦争の無い世界を実現して」という妻の希望
「世の中を良くするには、行動すべき」という息子の理想を、

父親であるオックスフォード公が継承するという展開になります。

 

また、
第一作目にて、ハリーがエグジーを諭した台詞
「マナーが、紳士を作る」という言葉は、
本作において、実は、敵キャラの台詞だったと判明します。

まぁ、その実、
ソイツは、マナーを重んじている様子はありませんでしたが。

そして、
オックスフォード公も息子に、
「紳士(gentlman)は元々、臆病者の謂いだった」と語ります。

息子のコンラッドは、
父に、鳥の羽(臆病者の証)を、町の人に貰ったと告白します。

しかし、
息子が戦争に行って欲しくないオックスフォード公は、
国の大義の為に人殺しをすると、自分の心も死ぬ、
故に、十字勲章を受勲するより、鳥の羽を貰った方がよっぽど良いと、
息子を諭します。

つまり、
後の「キングスマン」という組織が、
「紳士たれ」と掲げるのは、
平和主義である、オックスフォード公自身の理念の標榜でもあるのです。

 

妻と息子の死、
戦争という時代背景、
そんな時代に、平和を貫く、

これが、
平和の為の、攻性な行動をする、独立組織」という、
後の「キングスマン」という組織結成理念に繋がるという展開になるのが、

必然というか、
ストーリー構成の妙として、上手いなと、感じました。

 

因みに、
ハリーも、コンラッドも、
頭を打ち抜かれて死亡という展開でしたが、

これは、監督の過去作、
X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でも、

ラスボスのセバスチャン・ショウを倒す時に使われた描写で、

相手を必殺する時に、
監督が使っている手法だと思われます。
(例外もありますが)

 

 

歴史上の怪人を上手く使い、

第一次世界大戦を舞台に、
偽史としての、

スパイアクション映画である『キングスマン:ファースト・エージェント』。

第一作目を下敷きとし、

しかし、
その構成とストーリー展開にて、

キングスマン結成までの理念を描いた本作、

中々の完成度の作品と、言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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