映画『ビリーブ 未来への大逆転』感想  黙って泣き寝入りか?そうは問屋が卸さない!!


 

1956年、ハーバード大学の法科に所属する夫を追って入学したルース。夫の就職を機に、ハーバード大学からコロンビア大学に移籍、そこを主席で卒業する。しかし、弁護士事務所に就職希望をしていたルースは、「女性」である事を理由に、全ての面接試験で落されてしまう、、、

 

 

 

 

監督はミミ・レダー
監督作に
『ピースメーカー』(1997)
『ディープ・インパクト』(1998)
『ペイ・フォワード 可能性の王国』(2000)
『ザ・エッグ ~ロマノフの秘宝を狙え~』(2009)がある。

 

出演は、
ルース・ベイダー・ギンズバーグ:フェリシティ・ジョーンズ
マーティン・ギンズバーグ:アーミー・ハマー
ジェーン・ギンズバーグ:ケイリー・スピーニー
メイ・ウルフ:ジャスティン・セロー
ドロシー・ケニオン:キャシー・ベイツ
アーウィン・グリスウォルド:サム・ウォーターストン 他

 

 

 

邦題『ビリーブ 未来への大逆転』。

原題は『on the basis of sex』。

直訳すると、
「性別に基づく」。

果たして、性別に基づく、「何」なんでしょうか?

それは、本作で描かれるテーマ、
ズバリ、

性別に基づく「差別」を描いた作品なのです。

 

 

時は1956年、
主人公のルース・ベイダー・ギンズバーグは実在の人物。

彼女がハーバード大学に入学した時、
女子トイレすら無かったと言います。

今とは違い(?)、
女性の権利は家庭内で完結しているという認識がまかり通っていた時代、

それは、
わずか60年前の話。

なんとアメリカでは、
法律で、「区別」という名の女性差別が規定されていたのです。

 

え?
ごく最近じゃね?

そうです、
女性は、家庭で子供を産み育てるという固定観念は、

それこそ、2000年以上続き、
ごく最近まで、
その考えが「普通」だと思われてきました。

本作は、
その現状に風穴を開け、

新しい時代への切っ掛けを作った人物、
ルース・ベイダー・ギンズバーグの物語でもあります。

 

え?
女性差別?
男女雇用機会均等法もあるし、日本においては、
既にそういうモノは無いだろう?

何て、思うのは、男の傲慢。

日本でも、未だに男女差別はまかり通っています。

「産む機械」発言しかり、
医科大学の女子学生忌避問題しかり。

 

むしろ、
本作で描かれるテーマは、
日本においては、非情にタイムリーな話題と言っても良いのです。

 

女性差別を当たり前だと思っている、

そういう固定観念の打破という困難に挑み、
それを為し得た人物の奮闘

物事の変革と、
チャレンジの尊さの両方を描く、
『ビリーブ 未来への大逆転』は、そういう映画なのです。

 

 

  • 『ビリーブ 未来への大逆転』のポイント

女性差別と、その打破を目指す

法は、時代の空気に左右される

信じる道と進む事の困難さ

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 「差別」を認識するという事

本作『ビリーブ 未来への大逆転』は、
女性差別の撤廃を目指す、
ルース・ベイダー・ギンズバーグの奮闘を描いた作品です。

 

「女性は、家庭に居るのがあたりまえ」
そういう固定観念の基、
アメリカでは、様々な法律で、
男女差別が規定されていたと言います。

それを作った人、
その法律に疑問を感じない人は、
「これは”区別”であって、差別では無い」と言うのです。

しかし実際は、
そういう事を言う人間の本音は、

自分の優位性を確保しつつ、上から目線で
相手の可能性を束縛しているというのが実状です。

 

「区別」という名の差別をしている方は、
相手に屈辱を与えているという自覚が無い。

『ジョジョの奇妙な冒険』の第6部で、
自覚の無い悪が最も邪悪だ」というセリフがありましたが、
差別とは、正にそれなのです。

 

現代の日本においても、
ただ、女性というだけで、

パワハラ、セクハラの被害にあったり、

進学や就職が規制されたりしているという現状がある事を、
忘れてはなりません。

 

本作の脚本を書いたのは、
ルース・ベイダー・ギンズバーグの実の甥、
ダニエル・スティープルマン。

おそらく、
彼が最も力を入れた、本作を象徴すると思われるセリフがあります。

それは、
法は、時代の空気に左右される」というものです。

 

これはつまり、
人が変われば、空気が変わる、
時代の空気が変われば、法律が変わる
という事を意味します。

本作で描かれるルールのチャレンジ、
彼女が、法廷にて判事を説得なさしめたのは、

性差によって、「区別」する事は、
既に、
現代において、それは「差別」を意味する

この事を彼達に「認識」させたからなのですね。

 

現状が変わるには、
物事を、新たに認識し直す事が必要になります。

つまり、
認識すれば、人が変わる、
人が変われば、空気が変わる、
空気が変われば、法律が変わる、
という事なのです。

 

  • 困難への挑戦

本作は、テーマとして「女性差別」を扱っています。

とは言え、
女性差別のみならず、
「固定観念」というものを打破するのは、
相当の困難が伴います。

何しろ、
相手は、自分に非は無いと、
お前がむしろ、非常識なんだと、
それが、さも当たり前の様にコチラに接して来るからです。

 

差別にあった事が無い人でも、
誰しも、
思い返せば、そういう理不尽に出会った事があるのではないでしょうか?

教師に依怙贔屓されたり、
会社の方針だからと、無理難題を強いられたり、
仕事の顧客や取り引き先に、立場の優位性を利用され、謝罪を要求されたり。

相手が教師だから、
会社に雇われてるから、
取り引きを切られたく無いから、
オマエはコチラの言う事を聞くのが当たり前だろう!

そういう屈辱に出会った事が、
一度や二度は、あるでしょう?

 

しかし、
それが当たり前だと、
相手のマウントを受け入れる事が仕方の無い事だと、

そこで終わって泣き寝入りをするばかりでいいのでしょうか?

そう、
どんなに困難でも、
その現状を打破した先にしか、
道は拓けないのです。

本作においては、
ルースは、
人権団体を使い、
遭った事の無い憧れの人を訪ね、
夫のキャリアを利用し、

そもそもの、本件は、
「男性の差別」問題ではありますが、
これを突破口として、「女性差別」に繋げようという魂胆があります。

それこそ、様々な手を使って、法廷に臨んでいるのです。

困難な道を切り拓く事、
それにどれ程の覚悟が必要か、

そして、
だからこそ、その価値は計り知れない、

本作は、そういう、
困難に対するチャレンジの尊さをも、同時に描いた作品と言えるのです。

 

  • ルース・ベイダー・ギンズバーグ

本作のモデルとなった人物、
ルース・ベイダー・ギンズバーグ。

彼女は、アイコンとして、
アメリカでは絶大な人気を得ているそうです。

 

名前の頭文字をとって、
「RBG」と呼ばれ、

ラッパーの「ノートリアスB.I.G」をもじって、
「ノートリアスR.G.B」と呼ばれたとか。

「notorious」(ノートリアス)とは、
「悪名高い」という意味。

女性の権利を求めて戦い続けた彼女は、
それを阻む者にとって、「悪名高い」存在だった
という意味でしょうか。

 

そんなルースは、1993年、
クリントン大統領の時代に、
連邦最高裁判事に就任、
(アメリカでは二人目の女性裁判官)

2019現代でも、
最年長の連邦最高裁判事として現役続行中なのです。

 

何を隠そう、
本作のラストシーンに出て来た
眼鏡の大きい老婦人は、
ルース・ベイダー・ギンズバーグ本人なのです。

 

また、本作のみならず、
『RBG 最強の85才』(2018)というドキュメンタリーも作られており、

第91回アカデミー賞にて、
長編ドキュメンタリー映画賞にもノミネートされています。

いやぁ、
同じ「85歳」でも、
先日公開された『運び屋』とは、雲泥の差の境遇ですね。

(『運び屋』は、無職になった85歳の再就職先が、麻薬の運び屋をやってしまうという話です)

 

リベラル派の彼女は、
トランプ政権の誕生後、

反動で、更なる人気を得ているとの事。

むしろ、齢85にして、
今が全盛期なのかもしれませんね。

 

 

 

 

「女性差別」という固定観念の打破を目指したルース・ベイダー・ギンズバーグの奮闘を描いた作品、
『ビリーブ 未来への大逆転』。

 

人の固定観念を打破するには、
時代の空気感が必要となる、

その空気感を醸成するのは、
人の認識。

人に「差別がある」という事を啓蒙したからこそ、
世界を変える事が出来た。

 

彼女の、困難へ挑戦するその姿勢は、
本作を観る人に、勇気を与えます。

何事も、
当たり前の事だと、そのまま受け入れるのでは無く、
疑問に感じたら、それを質す努力が必要、

『ビリーブ 未来への大逆転』を観ると、
そういう思いに駆られるのです。

 

 

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