映画『運び屋』感想  まだまだ現役!!齢90の麻薬の運び屋、爆誕!!


 

ユリの栽培に人生を懸けているアール。彼は仕事にかまけて、家族との時間を蔑ろにしていた。時は流れ、売り上げが振るわず、農園は差し押さえられ、家族からも見放されたアール。孫の結婚式に出席しようとするも、すげない態度をとられる。そんなアールの姿を見た一人の若者が、彼に声をかける。
「儲け話があるんだ…」、、、

 

 

 

 

監督はクリント・イーストウッド
最近の監督作は、
『J・エドガー』(2011)
『ジャージー・ボーイズ』(2014)
『アメリカン・スナイパー』(2014)
『ハドソン川の奇跡』(2016)
15時17分、パリ行き』(2017)と、
最早、実話系監督と言えるでしょう。

 

出演は、
アール・ストーン:クリント・イーストウッド

コリン・ベイツ捜査官:ブラッドリー・クーパー
主任特別捜査官:ローレンス・フィッシュバーン
トレビノ捜査官:マイケル・ペーニャ

ラトン:アンディ・ガルシア
フリオ:イグナシオ・セリッチオ

メアリー:ダイアン・ウィースト
アイリス:アリソン・イーストウッド
ジニー:タイッサ・ファーミガ 他

 

 

直近の監督作5作が、全て実話ベース。

その流れを汲んで、
本作も実話を基に作られています。

何処から見つけてきたのか?

何と、

失業した、90歳近い老人の再就職先が、
麻薬の運び屋という話。

 

しかも、
自身が監督する作品に、
自身が出演する事はもう無いと、
『グラン・トリノ』(2008)を撮影時に言っていましたが、

どっこい本作は、

クリント・イーストウッド、
自ら主演、監督を果たしています。

 

1930年5月31日生まれのイーストウッド、

おじいさん役を演じるなら、俺しかいない!!

…と、思ったのか?
まさかの現役復帰です。

ジジイがでしゃばって、何が悪い!

今後、
日本は高齢化社会を超えて、
超高齢化社会を迎えます。

最早、
50、60はヒヨッコの部類。

今後は、
80、90のジジイが活躍する時代!?

そんな事も予感させる?のか?

とにかく、
クリント・イーストウッドの演技が再び観られる、
『運び屋』です。

 

 

  • 『運び屋』のポイント

アラナイ(90歳近く)からの新たなる挑戦

人生、楽しんだもの勝ち!?

やっぱり家族が大事!?

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 実話を映画として撮る

本作『運び屋』は、
「based on true story」ってヤツ、
所謂、実話に基づいた作品、です。

とは言え、
本作の実話要素は、
元軍人、
デイリリーを栽培していた80代のじいさんが、
麻薬の運び屋をした。

あだ名は「エル・タタ」だった。

と、いった点です。

つまり、
本作で描かれた、メインのストーリーを補強する部分である、

「家族関係」のエピソードは、
全部創作という事になります。

 

興味深い実話をベースにしたとしても、

ただ「興味深い」題材というだけでは、
映画として面白ものになるとは限りません。

そこで、
観客が感情移入出来る要素を入れるのです。
親近感があれば、物語に入りやすいですからね。

本作では、
観客の事を考えたのは勿論、

作り手であるイーストウッド自身が、
「麻薬の運び屋をした一方で、こんな背景があったとしたら、面白いだろうな」

と思い、
家族関係の要素を入れたのだと、推測されます。

 

  • イーストウッドの懺悔の物語

クリント・イーストウッドが演じるアールは、
外面(そとづら)がいいタイプの人間です。

社交的で、軽妙に冗談を言い放ち、
人生を楽しみ、
咄嗟の機転が利き、
物事に動じず、度胸がある。

正に、
こういう老人になりたい、
他人から見たら、そう思わせる様な人物像となっております。

 

しかし一方、
家族の評価は芳しくない。

おそらく、
何の責任も果たさなかったばかりか、
作中でもアール自身が言っていましたが、
自分は家庭内では役立たずだと感じていた為、
敢えて、家族からは距離をとっていたのでしょう。

外で良いカッコする為に、
家族を蔑ろにする。

外で「あの人は、良い人」と言われていても、
それを聞いた家族は、
「そんなハズあるか!」と、

外で褒められれば褒められる程、
家庭内では嫌われて行くのですね。

それは、
家族関係を重視せずに、

家の外の部分にだけ良いカッコをした男の、末路と言えるでしょう。

 

…と、
ここまで、語って、気付いた事があるんです。

これはつまり、
クリント・イーストウッド自身の事ではないのか、と。

俳優として成功し、
そして、映画監督としても、当代随一の一人として数えられる、
クリント・イーストウッド。

しかし、
その私生活、家庭環境の部分と言えば、
Wikipediaによると、
婚外子を含め、5人の女性との間に、7人の子供がいるとの事です。

 

始めは、不安混じりながら、
鼻歌半分で、ノリノリで運転、
望外のお金が手に入り、

そして、何度も「運び屋」を繰り返す内に、
大きな役を任され、
莫大な報酬を得る。

しかし、
そんな薄氷の、
バブリーな成功の裏では、
家族関係が危機を迎えていた、、、

 

これって、
イーストウッド自身の人生の成功と、
その裏での家族関係をなぞらえていた、
そう受け取る事も出来ないでしょうか?

映画人として、これ以上無い程の成功を収めたイーストウッド。

しかし、
家族関係においては、後悔のある人生なのかもしれません。

その為に、
ある意味、家族に向けた謝罪というか、
懺悔的な意味合いを込めて、
本作のストーリーを練ったのかもしれませんね。

事実、
本作で、アールの娘アイリスを演じたアリソン・イーストウッドは、

クリント・イーストウッドの長女
(最初の奥さんの第二子)なのですから。

 

まぁ、
本作の脚本はニック・シェンクという別人なんですがね!!

 

  • 人生を楽しめ!?

それを踏まえて、
本作で一番私が好きなシーンは、
やはり、
麻薬の運搬の途中で、

地方のブリトー(でしたっけ?)を食べているシーンです。

 

お目付役のフリオやサルはメキシコ人。

ヤクザ稼業の彼達が、地元の人達に混じるには、
あまりに場違いな風貌。

しかしアールは、
挙動不審なフリオ達も、
地元民の目も、何するものぞ、

ブリトーうめぇとかぶりつき、
フリオに対し「もっと人生を楽しめ」とアドバイスする余裕すらあります。

しかし、
そう言われたフリオの返しのセリフ、
「お前は楽しみ過ぎだ。その末路が、今のこの姿だ」

これを聞いたアールは、ぐうの音も出ないのです。

 

このセリフ、
アールならずとも、
図星を指される人も多いのではないでしょうか。

人間、後悔先に立たず。

『北斗の拳』のラオウの様に、
「我が人生、一片の悔い無し」とは、
中々ならないものです。

「アリとキリギリス」
ではありませんが、

ある程度は、
後から後悔せぬように生きたいものですね。

 

 

 

良い役者が一杯出演し、

実話の面白い題材をベースに作った映画『運び屋』。

しかし、
その実態は、
極、個人的な、
クリント・イーストウッド自身の人生の後悔の物語だった。

晩年を迎え、
家族の大事さを訴える一方、

まだまだ俺は、現役だ!

そういうイーストウッドの声が聞こえる、

本作は、そんな作品なのではないでしょうか。

 

 

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