映画『作兵衛さんと日本を掘る』感想  かつての労働環境に、今を考える

2011年5月25日、ユネスコの世界記憶遺産に、日本で初めて認定された「山本作兵衛炭鉱記録画・記録文書」。学者でも、小説家でも、画家でもなかった一労働者が残した絵画は、およそ2000点。それは、地の底で炭鉱を掘り、命懸けの作業に従事した人々の、生の記録であった、、、

 


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監督は熊谷博子
TVドキュメンタリーの制作を経て、フリーに。
三池炭鉱を扱ったドキュメンタリー、
『三池~終わらない探鉱(やま)の物語』(2005)
『三池を抱きしめる女たち』(2013)等がある。

 

 

 

東日本大震災が起きた、その約2ヶ月半後、

作兵衛さんの作品の記録、
「山本作兵衛炭鉱記録画・記録文書」が、
ユネスコの世界記憶遺産に登録されました。

 

かつて、日本のエネルギー産業を支えた炭鉱。

しかし、最大280もあった炭鉱も、
原発の開発と軌を一にして、次々と閉山(閉鎖)されて行きました。

 

本作は、
かつて、日本に炭鉱があり、
そこで働いた人々が居たという記録を、
個人レベルで続けた山本作兵衛の記録を基に、

主に、福岡、筑豊地方の炭鉱にスポットを当てたドキュメンタリーです。

 

日本でも、
石炭というエネルギー資源を掘削していたという事実。

これを、リアルに知っている人間は、今、どれ程いるでしょうか?

本作は、
当時の、炭鉱労働者にも話しを聞きつつ、
その様子を、山本作兵衛の絵も交え、解説しています。

 

大手の炭鉱会社には、機械を導入している所もあれども、

多くのヤマ(炭鉱)では、
殆どが人間の手作業で成り立っていたとの事。

掘削から、
出て来た石炭を運ぶ作業まで、
全て人力

先山と呼ばれる、石炭を掘り出す係、
後山とよばれる、掘り出した石炭を運び出す係の、
二人一組で作業していました。

 

これは、その殆どが夫婦で行われる事が多かったとの事。

また、
父と娘、兄と妹、時には他人同士で組む時もあったといいます。

 

酷暑を極める地下での作業では、
ほぼ、裸となり、

作業後の浴槽では、
泥と油が混じり、黒々、ドロドロの液体となります。

 

そんな苛酷な作業を終えて、帰宅後、
母は、子供の世話をしつつ、夕ご飯を作っていました。

 

一時は、女性の労働が禁止されども、
太平洋戦争にて男子が出兵させられると、

なし崩し的に女性は再び炭鉱に潜ったと言います。

 

そんな、色んな事、
事実としての知識があれど、
その詳細を知らなかった炭鉱の数々の事情を、

本作は、分かり易く伝えてくれます

 

「日本の炭鉱は、そのまま、日本の国そのものだった」

 

原発も、
炭鉱も、
それを支える現場の労働者は、命懸け。

 

時代が変わっても、
勤労者の精神、
そして、
それを利用する会社、社会、国という関係性は変わらない、

そんな事を考えさせてくれる作品です。

 

 

  • 『作兵衛さんと日本を掘る』のポイント

世界記憶遺産にもなった、山本作兵衛が残した記録の数々

炭鉱と、その周辺で生きた人達の証言

炭鉱のリアルから、現代を考える

 

 

 

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