日本史最大の謎、縄文時代。監督の山岡信貴は、フェイスブックの繋がりで、縄文時代を個人研究している弁護士の西垣内堅佑に出会う。そこから始まる、縄文時代を考察する人々、そして場所を巡る物語が本作である、、、
監督は山岡信貴。
長篇映画監督作品に
『PICKLED PUNK』(1993)
『Zeki, Florian and Kelly!』(1997)
『PIG’S INFERNO』(2000)
『ソラノ』(2005)
『天然性侵略と模造愛』(2005)
『死なない子供、荒川修作』(2010)
『遊星メガドルチェ』(2012)がある。
平成は31年、
昭和は64年、
江戸時代は266年続きました。
では、縄文時代は何年間続いたでしょうか?
答え、
なんと、1万年以上も続いているのです!
なんともはや、
スケールがデカい!
しかし、
そんな縄文時代も、
文字文化では無かった為、
現在においても、
その文化様式について、詳しくは解明されてはいません。
しかし、
だからこそ、
謎が、人を狂おしく惹きつける!
本作は、
縄文時代という、
謎と魅力に満ちた時代、
それにハマった人々への数々のインタビューと、
日本全国に存在する、
縄文関連の施設・遺跡を巡る旅です。
…こういう映画って、
何となく、お勉強的な感じで、堅苦しいイメージがあるのかもしれません。
しかし、
本作は、面白い!
何故なら、
皆が皆、勝手な事を言っているからです。
考古学とは、
判明している事実の積み重ねの上に、
推論を展開する事で成り立っている、
と、本作中でも言及されています。
その、
推論の数々が面白い!
そして、皆が皆、熱意を持っているのです。
縄文に宇宙を見る人、
縄文でヨガをする人、
縄文土器、土偶のデザイン性に着目する人、
縄文の文様に意味を見出す人、
縄文の文化を知りたくて、実際に竪穴式住居で暮らしてみた人、
早口で何言ってるのか解らない人、
モゴモゴ喋る人、 etc…
でも、みんな笑顔!
どれが真実で、どれが本物か?
そういう事を言ってしまうのは、野暮。
解けない謎なら、
それで楽しんでしまわないと、損。
皆が自信満々で自説を語り、
そのトンデモ度、説得力、意外性、
色々な要素が、全て興味深いのです。
そしてもう一つ、
映画で巡る、
縄文ゆかりの土地の数々。
博物館を、
ダイジェストにて高速で巡っている様な感覚、
座っていながら、色々な遺物、遺跡を観られる。
これは、お得です。
普通に、博物館、美術館が好きな人にもオススメと言えます。
何だか、よく知らない、縄文という時代。
しかし、
こんなにも、縄文時代にハマっている人達の様子を観ていると、
何だか、自分まで、縄文にハマって行く感覚があります。
パンフレットには、
インタビューを受けた人々、
訪れた縄文ゆかりの
博物館、遺跡も網羅してあります。
本作を観ると、
縄文にハマる切っ掛けとなる、
それが『縄文にハマる人々』の、
一番の効用なのかもしれません。
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『縄文にハマる人々』のポイント
縄文時代にハマった人々の、諸説の面白さ
縄文ゆかりの土地、博物館系を、色々観られるお得感
解けない謎こそ、面白い
以下、私的な縄文についての、あれこれを語ります
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フォボスと遮光器土偶
縄文時代。
その名前のゆかりとなったのは、
アメリカの動物学者、エドワード・E・モースが、
1877年、大森貝塚から出土した土器を
「Cord Marked Pottery」と報告した事が由来だそうです。
それを、
「縄文」と訳し、
縄文土器や、生活様式などから、
弥生時代と区分して「縄文時代」と定義されたのは、
実に戦後、1959年あたりからだそうです。
何と言うか、
意外に、最近ですね。
しかし、
言い換えれば、
それ程までに、
日本における古代史は謎だと言う事なのだと思います。
さて、
縄文時代を何も知らない私からすると、
その時代のイメージは、
「土偶」と「土器」にあります。
火焰土器の異様さもさる事ながら、
やはり、最もインパクトがあるのが、
「遮光器土偶」ではないでしょうか。
その見た目の興味深さ、面白さ。
仮面や冠、装身具を付けた女性をデフォルメした姿と言えなくもないですが、
パッと見では、
宇宙人か、
宇宙服を着た人みたいにも見えますね。
すわ、
縄文時代に、宇宙人が日本に舞い降りていたのか!?
縄文時代が、
宇宙と関連づけられて語られる事があるのは、
遮光器土偶の見た目に拠る所が大きいでしょう。
私の遮光器土偶との思い出と言えば、
ゲームの『ヴァンパイア ハンター』(1995)のフォボスですね。
フォボスとは、
『ヴァンパイア』という対戦格闘ゲームにて、
中ボスとして、ラスト前に戦う相手。
CP専用キャラクターでしたが、
続篇の『ヴァンパイア ハンター』において、
使用可能となりました。
どう見ても、遮光器土偶なのに、
設定では古代マヤ文明のロボット、
空中に浮かび、レーザービームを放ってくる強敵であり、
一瞬で相手を葬り去る「ハメ」を駆使する事で、
最強キャラの一角として猛威を振るっていました。
そんな、ゲームのキャラクターとして、
馴染む深かった遮光器土偶。
しかし、
その存在理由、文化的バックグラウンドなどは、
現在においても判明していません。
これはひとえに、
縄文文化が、文字に拠る文化では無い事に起因しています。
当時の記録は、
出土する、遺跡、遺品の数々から、
推測するしか無いのです。
しかし、
そこにこそに、
縄文時代の魅力があるのだと思います。
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謎が、謎だからこそ、面白い
『ツイン・ピークス』について、
監督のデイヴィッド・リンチが語る時、
こんな趣旨の言葉を言っています。
「謎は解明せずに、謎のまま残しておくべきだった」
「謎という金の卵をみすみす捨ててしまった」
TVシリーズの『ツイン・ピークス』は、
そのドラマの中盤で、作中最大のミステリーが解明されますが、
その後、視聴率が振るわなくなり、
物語は途中で打ち切りとなった作品です。
つまり、
ミステリーにおいては、
如何に謎を考察する事が魅力的なのか、
その事を物語っているのです。
謎を解明してしまったら、
それをアレコレ考察する楽しみが、無くなってしまうのですよね。
その点、
「縄文時代」という謎は、
ある意味永遠に解き明かされません。
遥か昔の出来事故、
答え合わせが出来ないですし、
これが、答えと思えども、
それは現代の思考、文化によって導き出された結論。
もしかして、その思考自体が、
見当違いという可能性すらあるのです。
どんなに考えても、答えが出ない、
だからこそ、
その魅力にハマった人は、抜け出す事が出来ないのでしょうね。
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縄文という文化
本作『縄文にハマる人々』は、
縄文時代について語った作品ですが、
同時に、
縄文について語る「人々」自身をもフューチャーしていると言っていいでしょう。
その上で各人が、
縄文という時代、文化を語る時、
何処に着目するのか?
土偶、土器に込められたデザイン性、意味?
農耕より、狩猟採集が主でありながら、定住していたという住環境や生活様式?
貝塚や、墓にまつわる、死生観や宗教観?
土器や、翡翠の分布から見る、文化圏や地域性の差異?
広範であり、
そして、そのいずれも魅力的です。
縄文時代は、
長く戦争が無く、安定していた時代。
それを、平安と捉えるか、
停滞と捉えるか、それすらも、人に拠って違います。
また、
縄文時代は文字文化では無かった為、
その土器、土偶の製作は、
謂わば、それに代わる創作とも言えます。
故に、
触覚を駆使して、粘土と「対話」する縄文文化は、
現代の言語を基調とした思考法とは、
別の観点を持っていたのかもしれません。
そうして作られた縄文土器、土偶の数々は、
「明らかに、ある種のルール(禁忌)がある」と言う人も居ます。
そのルールを越える為に、
より、複雑なデザインになっていったのでしょうか?
そして、
縄文時代は、竪穴式住居。
地面を堀り下げて、そこに家を建てています。
故に、家の中から出入り口を見ると、
地面=四季が目の前に拡がる、
自然の移ろいが、そのまま生活の目線となっていたと言います。
「答えを得た」と思っても、
見方を変えたら、
様々な謎、観点が、再び湧き起こってくる。
だからこそ、
縄文時代とは、かくも魅力的なのでしょうね。
一見して、魅力的な土器、土偶、
しかし、それを知ろうとすると、
その答えには決して行き付かない。
だからこそ魅力的な縄文時代について語った作品『縄文にハマる人々』。
縄文時代の遺物や文化について、
縄文にハマった人々について、
縄文ゆかりの土地、施設のあれこれ、
色々な縄文要素を観終わった時、
観客もいつしか、縄文にハマっている、
本作は、そんな映画と言えるのです。
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