映画『シンプル・フェイバー』感想  ママ友は見た!?ウザカワママの奇妙な冒険!!


 

死別した夫の保険金で生活している、シングルマザーのステファニー。学校行事に参加するも、元気が空回りして、ママ友達からはちょっと引かれ気味。その帰り、息子マイルズの友達のニッキーの母親、エミリーと出会い、子守がてら、一緒に一杯引っ掛け意気投合する、、、

 

 

 

監督はポール・フェイグ
主な監督作に、
『バッド・ティーチャー』(2011)
『デンジャラス・バディ』(2013)
『SPY/スパイ』(2015)
『ゴーストバスターズ』(2016)等がある。

 

原作は、ダーシー・ベルの『ささやかな頼み』。

 

出演は、
ステファニー:アナ・ケンドリック
エミリー:ブレイク・ライヴリー
ショーン:ヘンリー・ゴールディング 他

 

 

さて、
先ずは、予告篇を、ちょっと観てみましょうか。

 

 

はい、どうでしょうか?

何だか、怖そうですね~
ミステリアスですね~
本作はサスペンスですかねぇ?
ちょっとヴァイオレンスの香りも漂いますよ。

 

しかし、然に非ず。

『シンプル・フェイバー』のノリは、軽やか、
むしろ、ちょっとコメディチックです。

 

ちょっと、ちょっと~
BPOに訴えるまでは行かないけれど、
予告の印象と全然違うじゃないの~
むしろ、正反対と言っていい程。

 

まぁ、
予告篇で期待したものとは、ちょっと違いますが、

本作は、ちゃんと面白い、
だから、損した感じは無いですね。

ミステリーをサスペンスタッチ、
或いは、
ホラータッチで描く作品は多いですが、

なんと本作は、
コメディタッチで描いているのです。

これは、新鮮。

つまり、
予想のナナメ上を行ったという点で、
お得感があるのです。

いやぁ、
予告の時点で、フェイクを入れるとは、
恐れ入りました。

 

 

キャリアウーマンのエミリーの家に行ったステファニー。

すっかり意気投合して、
お互いのエッチな武勇伝を言い合って打ち解けます。

お互い「親友よね」と言い合った二人。

ある日、
仕事が忙しいエミリーの代わりに、
彼女の息子のニッキーを預る事になります。

「ちょっとしたお願い(just a simple favor)だけど、宜しくね」
とエミリー。

しかし、
それ以降、彼女は失踪してしまいます…

 

 

え?
これでコメディ?
むしろ、犯罪の臭いしかしないんですけど。

と、思うでしょう。

しかし、
そこかしこに散見されるユーモア、
ブラックな笑い、
そして、

元気が空回りするステファニーのキャラクター性の魅力

 

が、本作をコメディチックにしているのです。

 

そして、
本作は、オシャレです。

ステファニーのキッチン、
エミリーの住居、

その空間としての清潔感もありあますが、
やはり、

ステファニーは可愛く、
エミリーは格好良く、

二人のファッションが際立ちます。

 

この二人の着せ替えショーを観ているだけでも、
十分に楽しめます。

 

観に行く切っ掛けとなる、
予告編とは全然違った内容の、
『シンプル・フェイバー』。

しかし、
それでも観客を満足させて帰す本作、
観る価値、有りだと思いますよ。

 

 

  • 『シンプル・フェイバー』のポイント

コメディタッチのミステリ

元気過ぎる、ステファニーのキャラクター

ファッション、音楽のオシャレさ

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 


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  • ミステリなのに、コメディ!?

本作『シンプル・フェイバー』は、
いわゆるミステリですが、
コメディ。

シリアスなストーリーの中で
それを利用し、
敢えてギャグ的な描写を入れる事で、
その特異性を際立たせています。

落差がある事で、
ちょっとしたネタでも面白いのですね。

ホラ、
強面が言ったら、つまんないギャグでも面白い(様な気がする)という、アレですよ。

 

それはそうと、
なんか、
ステファニーって、可愛くないですか?

超絶モデル体型のエミリー(ブレイク・ライヴリー)が側に居るせいで、
ちんちくりんに見えるというか…

顔も、
ちょっとハムスターっぽい感じがして、

ちょこまか動き回っている様子が、
コミカルな印象を与えます。

動きが、
『Mr.ビーン』や『ジョニー・イングリッシュ』を演じた、
ローワン・アトキンソンっぽいんですよね。

観る人が楽しめる様に、
計算されたコミカルさなのです。

それで、ですね、
本作がコメディタッチなのは、

物語が、コミカルさを前面に押し出した、
ステファニーの目線であるからなのです。

 

自由奔放なエミリーの言動、
その彼女の、突然の失踪、

ショーンは悲しみ、
戸惑いますが、
何だかんだで性欲に弱い。

この二人の関係だけ見たら、

ゴーン・ガール』みたいなんですよね。

名前も、エミリーで共通してますし。

しかし、
本作は、夫婦の物語であるハズの所に、

ステファニーという異物が、
イントルーダー(intruder:侵入者)が混入してくるのです。

 

  • ステファニーというキャラクター

そもそもの冒頭、
ステファニーとエミリーのファーストコンタクトの場面、

天気雨の中、
ステファニー(正しくはニッキー)の方に近寄って来るエミリーが、
スローモーションで歩んでいます。

その彼女の目の前を、
風で転がるピンクの傘が横断します。

まるで、
西部劇の決闘シーンとかでよく見る、
風に吹かれる、転がり草(タンブルウィード)の様
です。

後から思うと、
もう、この場面で、本作はコメディなのだと、
宣言しているんですね。

 

さて、
その近寄ってくるエミリー。

まるで、スーパーモデルの様。

ステファニーの横に並ぶと、
彼女がちんちくりんに見えてしまいますが、

エミリーを演じているブレイク・ライヴリーの身長は178センチ。

エミリーがデカいのです。

デカいくせに均整の取れた体型、
何だか、エミリーって、何かに似ている、、、

そう、
エミリーは、漫画の『ジョジョの奇妙な冒険』に出て来そうな感じがしませんか?

 

参考画像:パンフレットの表紙より

ジョジョキャラ!?

眉毛、表情、ポーズが「ジョジョ」っぽいですよね。

 

参考画像その2:パンフレット8ページ目より抜粋

プロシュート兄貴!?

参考画像その2をご覧下さい。

「ジョジョ」5部の登場人物、
プロシュート兄貴に似てないですか?

 

ブレイク・ライヴリーがジョジョキャラっぽいだけあって、
まるで、「ジョジョ」の登場人物の様に、
エミリーはサイコっぽい感じです。

 

その相手となるステファニーですが、

彼女、
一見、無邪気なお節介焼きですが、

その反面、
ダークサイド(暗黒面)も持ち合わせています

ステファニーは、
その過去に、義兄とファックした事があり、

さらに、
エミリーが死んだ後は、
彼女の夫のショーンと良い仲になって、
ちゃっかり後釜に収まっています。

どうやら、ステファニーは、
倫理的に問題のある、
禁忌(タブー)絡みの性に興奮するタチのです。

 

こういう性癖というのは、

罪を犯すドキドキが、
恋愛のドキドキと混同するから魅力的に思える、

というのが一般的な、論理的解釈ですが、

しかし、
ステファニーは違います。

ステファニーは、
ショーンにプロポーズされた後、
超ノリノリで、エミリーの服や靴を丸ごと捨てます

親友の夫を速攻で寝取ったという、後ろめたさは皆無。

こりゃあ、
義兄とイチャイチャして、
夫に嫉妬されるのも、
然もありなんと言った所でしょうか。

ステファニーは、タブーを楽しんでいるのです。

 

しかし、
エミリーに言わせれば、
やむを得ず、身を隠す事になった自分の立場に、

遠慮会釈も無く収まった、ステファニーが気に入りません。

なので、
写真やイタズラ、電話でステファニーにプレッシャーを与えますが、

これが逆に、ステファニーのハートに火を付ける始末。

普通の人ならビビる所を、
ステファニーは、好奇心をMAXにして、
探偵行為を始めます。

禁忌に興奮し、
脅されたら、その真相を解かずには居られない。

何と言うか、ステファニーは、
精神的な窮地に追い込まれると、
ポジティブシンキングが発動するという、
何とも奇妙な性格の様です。

だから、
学校行事とかも、積極的に参加していたのですね。

マゾヒスティックに自分を追い込むのが、
逆に楽しい、
と言った所でしょうか?

 

本作は、
基本、ステファニー目線なので、
脳みそハッピーな、コメディタッチになっています。

しかし、
視点を変えて観ると、

エミリー目線では、
図々しいステファニーが、
次々と真相を暴いてゆく、
イライラサスペンスであり、

ショーン目線では、
理性が性欲に負けて、
女性にハメられ続ける、
悲哀の物語と言えます。

 

ミステリーと言えば、
サスペンス、推理モノが一般、

ホラーや、
SFなんかも多いですが、

まさか、コメディとしても描けるとは、驚きです。

本作は、
それを、視点人物のキャラクター性で実現しているのです。

 

予告篇でもあるシーンですが、

ステファニーが、エミリーの服を着て、
その時、
訪問して来た警官の相手をするのですが、
思いの外服がピチピチで、
きつくて、クネクネ姿勢を頻繁に変えているという場面があります。

警官が帰った後、
辛抱堪らず、服にハサミを入れるのですが、

何も知らない、
予告篇で見たその場面は、
ヴァイオレンスと狂気を感じさせました。

しかし、
実際の、そのシーンはコメディであるのです。

同じシーンでも、
登場人物のキャラクター性を知っているだけで、
これだけ印象が違う

それが、
本作の特徴であり、
計算された、コメディセンスなのだと思います。

 

  • ステファニーとエミリーのファッションショー

さて、
本作のもう一つの見所は、

やはり、
ステファニーとエミリーのファッションと言えるでしょう。

 

冒頭、
ステファニーのクソダサネコちゃん靴下とか、
可愛い過ぎですよね。

ワンチャン、ティーンでも着ないセンスです。

一方のエミリー。

自宅に招いたステファニーの前で、
自分の服をバリッ、バリッと脱ぎ捨てていきます。

エロいけれども、カッコ良いシーンです。

このエミリーの服、
男性ストリッパーの演出を参考にしているそうです。

成程、
確かに、男性ストリッパーの映画『マジック・マイク』でも、
こんな感じのシーンが、
あったような(無かったような)。

 

そんなエミリーの衣装は、
ラルフ・ローレンのスーツを、
映画用に衣装係がアレンジして使っているそうです。

エミリーは、
男性的な服を、
スラッとした体型で、着こなしていますね。

反して、ステファニーの方は、
フェミニンなワンピースなどが多いですね。

派手なピンクの服とか、
黄色の雨合羽とか、
花柄がふんだんに施された服とか、

過剰な派手さが可愛らしさとダサさの境界線を行き来しています

 

ちょっと面白いのが、
先程も言いましたが、
エミリーの服を試しに着てみた時に、刑事が訪問したシーン。

着てみて、悦に浸りますが、
実際は、

身長がデカいエミリーの服なのに、
ステファニーが着たらきっついという非情な現実に直面するのです。

まぁ、
どうせ自分が着られないし、
という理由で、服や靴を処分する訳ですが、
自分の服を持ってノリノリで戻ったら、
キッチリ並べられて、エミリーの服が元通りに戻っているのは、

恐怖描写でありますが、
ちょっと笑っちゃいますね。

 

クライマックスシーンでは、
今まで男性的なファッションでキメていたエミリーが、

ステファニーっぽい、
花柄の可愛い服を着ているのが印象的です。

美人は、何を着ても様になりますね。

しかし、
エミリーが、
今までステファニーが着ていたタイプの服をクライマックスで着るというのは、

自分がハメていた相手に、
同じ様に、自分もハメられるという展開を暗示していたのかもしれません。

 

兎に角、
ステファニーとエミリーの着せ替えショーを観るだけでも、
面白い作品です。

 

  • ママ友、ダレン

『シンプル・フェイバー』では、
ママ友に混じって、主夫をやっているダレンというキャラクターがいます。

クライマックスでは、
車でエミリーを轢きますが、

この、一見、唐突なシーンも、
やっぱり、意味があるのです。

 

ダレンは要所で出て来て、
観客を代弁するツッコミや、
世界観、物語設定の解説を入れています

冒頭は、
ステファニーのウザさと、
エミリーの付き合いの悪さを、

その後、
エミリーに体よく使われるステファニーに
さりげなく忠告をしてあげますが、
それは、ステファニーには伝わりません。

中盤、エミリー死後、
葬式で立ち働くステファニーに、
ダレンはお世辞を言って、ブログを観ている事を告白します。

このシーンは、
世間が、徐々にステファニーに注目しつつあると、
それを表しています。

そして、クライマックス。

ステファニーのブログを世間が注目しており、
事件の推移をライブで皆が視聴していました。

視聴者は、ライブ放送時、
コメントする事で、ライブに参加する事が出来ます。

その、視聴者も「参加」する感覚で、
ダレンがライブに乱入したという行為が「エミリーを車ではねる」という行為なのです。

ブログ視聴者の熱狂ぶりと、
先鋭化が見られます。

 

クライマックスでダレンがエミリーを轢くのは、
唐突に見えます。

私も、「え?こんなオイシイ役をするキャラクターって、いたっけ?」
と、意表を突かれました。

しかし、
本筋とは別に、
ステファニーのブログが、注目を浴びつつあった、

その過程と、
世間の熱中度を表す指標として、
ダレンは存在しているのです。

ラストのどんでん返しにも繋がっている、
そんな伏線を含んだキャラクターであったとも言えます。

 

 

 

ミステリーでありながら、
コメディタッチの作品『シンプル・フェイバー』。

ぶっちゃけ、
ミステリ部分は、

フェイスブックに写真を載せていないハズなのに、
何故、フェイスはホープの事が分かったのか?
とか、

子供時代の写真で、
エミリー本人だと、分かるものなのか?
しかも、双子という意外性をすんなり受け入れるのは不自然だ、
とか、

ツッコミ所が多いです。

 

しかし、
登場人物のキャラクター性で、
ミステリーでありながら、コメディという、
二律背反するものを共存させるという不可能性実現しているのが、
本作の希有な部分です。

そんな事を考えなくとも、

ファッションと音楽のオシャレさだけでも十分楽しめる、

『シンプル・フェイバー』とは、そんな作品なのです。

 

 

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ささやかな頼み (ハヤカワ・ミステリ文庫)


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