映画『サスペリア』(1977版)感想  ビビらせる事に全振りした怪作!!これが、ホラーだ!!


 

アメリカ人のスージーは、バレエを極めようと、名門校に入校する為ドイツにやって来た。空港に着いた途端、大雨と雷の嵐。タクシーにて、何とかバレエ学院に辿り着いたが、ドアから出て来たのは、錯乱した生徒らしき若い女性。「秘密のドア、アイリス、青い、、、」と、何か言って逃げ去った、、、

 

 

 

 

監督はダリオ・アルジェント
イタリア出身の、ホラー映画監督。
監督作に
『歓びの毒牙』(1970)
『サスペリア』(1978)
『インフェルノ』(1980)
『トラウマ/鮮血の叫び』(1993)
『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(2007)他

 

出演は、
スージー:ジェシカ・ハーパー
サラ:ステファニア・カッシーニ
パット:エヴァ・アクセン

ミス・タナー:アリダ・ヴァリ
ブランク夫人:ジョーン・ベネット
ダニエル:フラヴィオ・ブッチ 他

 

 

先日、
リメイクの『サスペリア』の、
ソフト版が販売開始されましたね。
(2019/07/02)

そして、
リメイク版の『サスペリア』に合わせる様に、

オリジナル版の『サスペリア』の、
4Kレストア版が発売になります。
(2019/07/19)

 

という事で、
オリジナル版を観ずに、
先に、リメイク版を観た私ですが、

この機に、
オリジナル版も観てみました。

 

あ~、成程、と思いましたね。

私は、
リメイク版『サスペリア』は、面白いと思いましたが、
世間の評価は、それ程ではありませんでした。

それは何故か?

 

Amazonのレビューの一つに、
「これを評価している人は、オリジナル観てないだろ」
というコメントがありました。

つまり、
オリジナルのファンから観ると、
リメイク版は、
全く別の映画に見えたのです。

つまり、
「リメイク」を謳っておきながら、
実際は、
設定だけ横流しした、別物の映画を観せられた
だから、怒っちゃったのですね。

 

「リメイク」ではなくて、
「リボーン」とか、「リターンズ」とかだったら、
まだ、観た人の評価は変わったのだと思います。

オリジナルを、どう解釈して、
再構築するか?

それが、
リメイク作品の面白さと言えますが、

独自要素を入れまくって、
全く別の作品にしてしまった事に、
憤懣やる方ないのでしょう。

しかも、
単品の映画として観ると、それなりに面白いから、
なおのこと、気に触るのだと思います。

 

さて、
長いこと、
オリジナルとリメイクの違いを語りましたが、

では、
オリジナル版とは、どんな特徴を持つ映画なのか、
それを端的にと言うと、

極彩色に彩られた、残虐趣味

 

の作品と言えます。

 

先日、
Diner ダイナー』を観ましたが、
これも、極彩色による、
独特の美意識に彩られた作品でした。

しかし、
原作ファンの私からしたら、
「残虐趣味が無い」事が、
唯一にして、最大の不満点だった作品。

まさか、その飢餓感を、
全く別の作品である『サスペリア』にて満たされるとは、
夢にも思っていませんでした。

 

この『サスペリア』という作品、

先ず、
人体をどう破壊するか?
観る人が何に不快感をもよおすか?
ビックリ、ドッキリするには、何をすればいいか?

その事だけを考え、
ホラー描写を演出する事を最優先にしています。

 

確かに、
ストーリーはあります。

しかし、
私の印象では、
それはあくまでも、後付け

後に、三部作となる「サスペリア」シリーズですが、
三姉妹の魔女の設定なども、
本作では、明確には示されていません。

しかし、
ガチガチに設定を決めていなかったからこそ、

自由に「後付け」の続篇を製作出来たとも言えるのです。

 

設定を作り込まず、
しかし、
如何様にも解釈の仕様がある、
それ故に、観る人間それぞれに、独自の世界観が拡がる

それが、
『サスペリア』の持つ、
ストーリー面での最大の魅力だと思います。

 

そして、
『サスペリア』は、独特の美意識に彩られた美術演出が展開されます。

赤い、
或いは、緑、
青、

何処からともなくスポットライトが当たり、
極彩色の世界を演出しています。

 

そう、
日の当たる昼間からは一転、

夜には、
まるで、悪夢が顕現したかの様な、
派手な地獄が展開されるのです。

 

また、音楽も特徴的。

本作は、
イタリアのプログレッシブ・バンドである「ゴブリン」が、
音楽を担当しています。

「ナーナーナーナーナーナーナーナー」と、
野太い声ががなり立てた時、
必ず、人死にが出る

このパターンを、
観客は、早々に気付くのですが、

その事によって、

「不意打ちのビックリ演出」を意図的に避けている、
つまり、
ゴブリンの音楽が流れると、観客は、次に血が流れると予め知るにも関わらず、

その、観客の心構えを超える、
残酷描写、人体破壊、不快感を提供しているのが、本作の凄い所なのです。

 

これはつまり、
期待に応えて、予想を裏切る、という、
正に、理想的な展開。

特に、
盲目のダニエルが襲われるシーンの恐ろしさといったら!

まさか、そう来るか!
一番信頼出来る相手に裏切られるという絶望感がハンパ無いですね。

 

 

確かに、
ホラー映画は進化し、

現代の、
テーマも、ストーリーも、展開も作り込まれた作品と比べたら、
本作は、物足りない部分もあるかもしれません。

しかし、

例えば、
現代のホラーが、銃でヘッドショットを狙うかの様な一撃必殺ぶりならば、

本作は、
いわば、金槌一本握りしめて、襲いかかって来るかの様な、
根源的な恐怖感、嫌悪感が存在します。

 

生の恐怖を演出しつつ、
極彩色の美意識を展開し、
がなり立てる音楽が煽りを入れる、

『サスペリア』は、
恐怖映画の古典として、
今なお、色褪せない面白さがある作品なのです。

 

 

  • 『サスペリア』のポイント

直接的な、生の恐怖の顕現

夜の闇を切り裂く、極彩色の美意識

死の予感を煽る、がなり立てる音楽の演出

 


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