映画『ザ・ディープ・ハウス』感想  在り来たりのネタが、シチュエーション次第でこんなに面白くなる!!

世界各地の廃墟巡りを行い、その様子を動画サイトにアップしているティナとベンのカップル。
今回はフランスに出向いたが、期待に反して、現地は観光地と化していた。そこでベンは、地元のオジサン・ピエールと話を付け、穴場のスポット「湖に沈んだ屋敷」を教えてもらうのだが、、、

監督は、ジュリアン・モーリーアレクサンドル・パスティロの、
フランス人コンビ。
監督作に、
『屋敷女』(2007)
『リヴィッド』(2011)
『恐怖ノ白魔神』(2014)
『呪術召喚/カンディシャ』(2020)等がある。

出演は、
ティナ:カミーユ・ロウ
ベン:ジェームズ・ジャガー
ピエール:エリック・サヴァン
モンティニャック氏:アレクシス・セルヴァース
モンティニャック夫人:アン・クレサン
サラ:キャロライナ・マッシー 他

水が舞台のスリラー映画と言えば、
真っ先に思い浮かぶのは、
スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975)です。

また、
SF風味のジェームズ・キャメロン監督作『アビス』(1989)や、
その『アビス』にソックリながら、
サバイバルホラーである『リバイアサン』(1989)

近年では、
『サンクタム』(2011)や、
『海底47m』(2017)なんてものもあります。

さて、本作『ザ・ディープ・ハウス』です。

本作は、

いわゆる「ジャンピングスケア」が主体の
「幽霊屋敷」モノのホラー映画です。

「ジャンピングスケア」って言うのは、
ビックリドッキリ演出の事、
急に「わっ!!」と飛び出して、
登場人物(と観客)をビビらせる演出ですね。

これだけで終わったら、
「ああ、よくあるタイプのホラー映画だね」
で終わると思います。

しかし、
本作は一捻りしており、

舞台である「幽霊屋敷」が湖に没しているのです。

この設定が、存外に面白い!!

やっている事は、
確かに、よくあるジャンピングスケアなのです。

それなのに、
シチュエーションが真新しいだけで、
新鮮な恐怖が味わえます

何か、
熟年夫婦でも、
コスプレしてみたら、
存外に捗った、みたいな感じですかね。

過去にも、
水中スリラー映画は沢山ありましたが、

本作は、
正当な幽霊屋敷もので、
シチュエーションが水中という組み合わせが、
新しいのです。

ちょっとB級の雰囲気を醸しつつも、
見飽きたネタを新しくブラッシュアップした作品
『ザ・ディープ・ハウス』。

ホラー映画に期待するものを
キチンと習得しており、
且つ、
古くて新しいネタを提供してくれる佳作と言える作品なのです。

  • 『ザ・ディープ・ハウス』のポイント

正統派「幽霊屋敷」モノ

水中というシチュエーションで、古いモノも新しく

状況を映すカメラの種類の多さも魅力

以下、内容に触れた感想となっております

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  • 拘らない撮影方法(の演出)

本作『ザ・ディープ・ハウス』は、
古典的な「幽霊屋敷」モノ。

なんか、幽霊的なモノが、
突然「わっ!!」と飛び出して来る
「ジャンピングスケア」を多用している、
よくあるタイプのホラー映画です。

しかし、
その舞台を全篇水中で行うという、
意外性というか、
独創性のあるシチュエーションにより、

古いのに新しい面白さがあります。

水中なので、

スピードは必然、
追いかけるお化けも、
逃げる被害者も、共にスローになるのですが、

動きとしては3D、
平面では無く、
上下左右、縦横無尽に動けるという面白さがあります。

更には、
酸素ボンベの残量というプレッシャーもあり、
ノンビリ攻略する事が出来ないという、
時間制限も、面白い設定です。

ここまでは正直、
観る前からある程度は予想していた事ですが、

本作を実際に観て興味深かった点に、
状況を映すカメラの種類が豊富という点が挙げられます。

主役の二人、
ティナとベンは動画投稿者という事で、
ハンディカメラとドローンを以て、
自分達を記録しています。

この辺り、
ホラー映画とも相性のよい、
POV(Point of View:主観視点)であり、
モキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)風味でもあり、
ファウンドフッテージ(後に発見される記録映像)的でもあり、

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)
『REC/レック』(2007)
などの先行するホラー作品を彷彿とさせます。

しかし、
本作の面白い所は、
そういう「本人主観のカメラ目線」が主では無く、

普通の映画の様に、
「神の第三者視点」で状況を映す場面が主旋律であり、
アクセントとして、
ホラー映画的「POV視点」を使っている点です。

湖底に水没した「モンティニャック邸」を探検する二人。

その様子は「第三者視点」で映し出されます。

屋敷の中に入り、
曲がり角や扉の先など、
進むのに不安な場所は、水中ドローンを先行させ、
視点もドローンの映像になる事で、
臨場感が増します

そして、
登場人物が不安な場面、ヤバイ場面になると、
主観カメラ映像となり、
視界が悪く、
よりジャンピングスケアが効果的な視点となります。

主観と客観を織り交ぜるという撮影方法は、
ともすればメタ的な演出になりかねませんが、

本作においては、

ホラーをより際立たせる為の工夫として使っており、

その映像編集の妙とも言うべきものが、
よくあるタイプの「幽霊屋敷」モノに、
新しい面白さを吹き込んだアイディアであるのです。

確かに本作『ザ・ディープ・ハウス』は、
ネタとしては使い古された「幽霊屋敷」モノです。

それを、

水中というシチュエーション、
そして、
「主観視点」「ドローン視点」「第三者視点」を場面によって切り替える視点変化の面白さにて、

古いけれど新しいものへと生まれ変わらせた、

アイディア溢れるエンタメホラー映画として、
面白いものになっているのではないでしょうか。

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